やんわりわかる沖縄方言②
ヨナハ「はいさい……やんわりわかる沖縄方言のコーナーその②……臨時で講師を務める事になった年齢不詳の無気力☆寝不足☆早く帰ってしに寝たいお姉さん、ヨナハです」
ミスズ「はいたい! 瑞々しい現役女子大生で本講座の生徒役、ミスズです!」
ミスズ(まさか本当に第二弾があるとは……)
ミスズ「あ、と言うかヨナハ先生。二点ほど質問が……」
ヨナハ「しんけん…?(※) 早速やる気満々やんにこの子……にりーわー……しににりーわー……」
※しんけん……基本疑問形。「本当に?」「リアリー?」みたいな感覚で使う事がある。おそらく原型は【真剣】。
年配の方々が使う所を見た事が無いので、若者言葉やスラングの類と思われる。
ミスズ「あ、あの……」
ヨナハ「……で、なんだば?」
ミスズ「えーとですね……前回、ヒガ先生に習ったのですが……女性は【はいさい】ではなく【はいたい】を使うのでは……」
ヨナハ「うっわ、出たよそれ……せこせこ細かい揚げ足取ってお利口さんのふり(※)か貴様。それともヒガぽってかすーと一緒で趣味が悪いだけかー?」
ミスズ「でぃ、でぃきゃーじら……?」
※でぃきやー…よくできる子・優等生・利口な奴。
じらー…○○面、○○風、パッと見の状態を指す。類似する方言に「ふーじー」と言うのもある。
「良い人じらーしてよー、このぽってかす」だと「善人ぶりやがって、このゴミクズ野郎」的なニュアンスになる。
ヨナハ「……はぁぁー(クソデカ溜息)。……良いね? ハッキリ言うよ? 沖縄県民がそんな細かい事を気にすると思ってるわけ? んな訳ないやんに」
※実際、沖縄のお土産屋さんの客引きの女性は余裕で「はいさい」と言っている人が多い。
おばあ店員さんですらたまに言う人がいるレベル。
この現状に対し、2012年頃、「地域文化を守りたい」と言う非常にまともな感性を持ったごく一部の方々が「流石にこれはダメでしょ」と危機感を抱き、「女性は【はいたい】を使いましょう」を広めるために、五分尺のローカル萌えアニメの製作に乗り出したりもした。
そんなプロジェクトが始動すると言う時点で、大多数の県民がこの問題に頓着していなかったと言う事が伺えるだろう。
ちなみにこのアニメは2013年、CSのアニメ専門チャンネルで全国放送されている。
権利関係が恐いので作品名は出さないが、気になった人は「はいたい 三姉妹 アニメ」で検索してみると情報がヒットすると思う。
効果の程を正確には把握していないが、近年は国際通りなどの観光地で「はいたい」を聞く機会が若干増えた気はする。
ヨナハ「本土民ですら最近は日本語の誤用を気にしないのが増えてるのに、輪をかけて雑な生態してる私達が拘る訳ないやんに。大体、最近の子はそもそも沖縄言葉に男言葉・女言葉の区分がある事すら知らない子も多いからね」
ミスズ「何か身も蓋も無い事を言ってませんか……?」
ヨナハ「目や二見(※)がなんね。本当の事だし仕方無いよ」
※二見は沖縄県名護市に実際にあるの地名。
ヨナハ「良いね? まず大前提としてよー、極一部の例外を除いて、沖縄県民は本ッッッ当に細かい事を気にしない。例えば……まず、沖縄県民は待ち合わせ時間ぴったしに家を出てもどうにかなるさーと思ってる民族だあるよ?」
ミスズ「あ、有名な【うちなータイム(※)】って奴ですね……」
※沖縄県民が保有する特殊能力。自身の時間感覚を麻痺させる。
三〇分か一時間くらいの遅刻は遅刻ではない。「一九時に集合な」は「一九時(から二〇時の間)に集合な」と言う行間が存在している説がある。
僕は私はうちなータイムしませんよ、と豪語する奴でも割と普通に五分一〇分遅刻してくる。
五分一〇分の遅刻はうちなータイムを発動するまでもなく遅刻ではないと言う宣言だろうか。
一応念のためフォローしておくが、あくまで私用に置ける場合にのみいかんなく発揮される超能力であり(それでも問題だが)、仕事等公用の場面に置いては発動を控える者の方が主流層である。
ヨナハ「一部の猛者は私用に留まらず公用でもうちなータイムを発動するからねー……そら悪い意味で有名になるよ。風評被害ひどい」
ミスズ「先生、この事で何か苦労を……?」
ヨナハ「教授会に一時間遅刻しただけで『これだから沖縄県民は……』みたいなパワハラ発言を受けたばーよ。やってられんしマジで」
ミスズ「確かにそれを面と向かって言うのはパワハラ及び差別発言で社会的に問題ありますけど、先生個人に関しては風評被害ではないですよね?」
ヨナハ「はいはいうんこうんこ。あ、それと、沖縄県民の雑さはそれだけにあらんよ」
ミスズ「え、他にも何か逸話が?」
ヨナハ「逸話と言うか個人の体験談だけど、沖縄のサンタクロースはポケ●ンとウルト●マンの区別が付かない」
ミスズ「えぇぇッ!? せめてデ●モンとか妖怪ウ●ッチじゃなくてですか!?」
ヨナハ「あの時はしに驚いたよ、クリスマスの朝に目が覚めたら、独特な全身タイツを纏った宇宙人のソフビが枕元に無造作に転がされてるんど? あれのどこがポ●モン図鑑だば?(※)」
※サンタクロース(母)「あんたが言ったの売り切れてた訳よ~(笑)。まぁ似た様なもんでしょ?」
ヨナハ「そんな連中が男言葉女言葉の些事に拘ると思うば? って言う」
ミスズ「それだのに前回、私は冒頭からあんな罵倒を……!?」
ヨナハ「まぁ、ヒガ先輩の事だから……生徒を罵倒できる機会は完膚なきまで利用しただけじゃないの」
ミスズ「お、おのれ……あ、で、二つ目の質問なんですが……そのヒガ先生は何処に?」
ヨナハ「……………………」
ミスズ「せ、せんせ……?」
ヨナハ「……私が最期に聞いた先輩の言葉は『あきさみよー』だったさぁ……」
ミスズ「あ、あきさみ……?」
ヨナハ「『なんて日だ』(※)」
ミスズ「……ああ、何かしらバレて青い制服の公務員に連れて行かれたんですか」
※あきさみよ…なんてこった・ちくしょう的な感嘆詞。悔しい時などに口から自然に溢れる溜息の様な言葉。基本的に語尾は力無く伸ばす。
「あきさみよー、このにじりめーが鮭ぐぁーだからよー」 → 「この握り飯が鮭だからちくしょう!!」
ミスズ「因果応報ですね」
ヨナハ「バッサリしてるねー。ヒガ先生のことあんま好きくないば?」
ミスズ「前回のあの扱いから好意的感情を抱けたら、私はマゾヒストとして世界を狙える気がします」
ヨナハ「そう……ちなみに先輩言ってたよー。『ミスズさんは自分に取って【ひーらー】の様な存在だ』って」
ミスズ「ヒーラー? 癒し要員って事ですか……? そりゃああんだけ弄り倒せばデトックスもできるでしょうよ……」
ヨナハ「違うよ。癒しは【ぬちぐすい】。ひーらーは別の意味がちゃんとある」
ミスズ「……それって一体どんな……」
ヨナハ「ゴ●ブリ」
ミスズ「……………………」
※ひーらー…黒いG(バ●シィじゃないぞ)。
ちなみに飛ぶタイプは【とーびーらー】と呼ばれる。
ヨナハ「と言う訳でヒガ先生に代わり、臨時講師の私がはいさい、もとい、はいたいした訳ばーよな。……はぁー……にりーし、しににーぶい……」
ミスズ(どうしよう……この人もまともな方言を教えてくれそうにない感じがする……いや、ダメ、ダメよミスズ…!! 人を見た目と数分の対話で感じた印象だけで判断しては……)
◆
ヨナハ「じゃあ、余談はここまでにして……早速、講義に入っていくよー。まずは『これを覚えてないと生きていくのに不自由するレベルの日常頻出常用ワード』、【にりー】」
ミスズ「にりー……? あれ? そう言えばさっきから先生が何回か使ってる気が……」
ヨナハ「はい、これは『しんどい』『面倒くさい』『萎える』『だるい』などの意味を持つよー」
ミスズ(やっぱりこの先生もダメだァ……ッ!!)
にりー……しんどい。面倒くさい。萎える。だるい。やってられん。
「はぁー、しににりたー……」 → 「うわー、超めんどくせー……」
「にりるよやー」 → 「マジ萎えるわー」
「にりてるわこれ」 → 「これは負け確のクソゲーですわ」
ヨナハ「ちなみに先生はこの講堂に入るずっと前……社会に出てからずっとにりてるよ」
ミスズ「このコーナーを受け持つ講師陣はヒガ先生(故)やヨナハ先生みたいな『講師として教鞭を取る立場にありながら、F言葉の類や退廃的な言葉を【常用ワード】と喝破して教えようとする様な人』しかいないんですか!?」
ヨナハ「大変だね(笑)」
ミスズ「笑い事じゃないですからね!?」
◆
ヨナハ「続いてはこちら【にーぶい】。これまた一日に数百回、下手したら数千回は使うよね的な…もはや半ば呼吸によって排出される二酸化炭素の様な言葉」
ミスズ「……それも、さっき先生が使ってましたね」
ヨナハ「記憶力よろし。これはズバリ【眠い】」
ミスズ「……まぁ、そんな所だろうと思ってました……」
にーぶい……眠い。寝たい。睡眠欲求・眠気が顕著な状態を指す。
「ただただ、にーぶい」 → 「切実に、眠い」
「体がにーぶいしてるばーよ」 → 「体が眠りたがっているんだ」
「あい、この子よー、にーぶさーしてるねー」 → 「この子、眠たそうにしてますね」
「にーぶいしてる時は運転しちゃダメさぁ」 → 「睡眠不足で運転するのは事故の元だぞ」
ヨナハ「常日頃からにりてるし、にーぶい。それが私」
ミスズ「このダメ人間!!」
ヨナハ「ありがとう。最高の褒め言葉やっさぁ……」
ミスズ「綺麗な方言をなんてタイミングで使うんですか貴女は!?」
ヨナハ「底辺に落ちたら後は登るだけやんに? ダメ人間は可能性の獣だあるよー」
ミスズ「厄介なパターンのポジティブ……ッ!!」
◆
ヨナハ「この勢いのまま行くよー。はい、続いては私の座右の銘の一端でもあるこの言葉、【ひんぎる】」
ミスズ「確実にろくでもない言葉ですね」
ヨナハ「数分前の様子からは想像もできない荒んだ目で私を見る様になったねー」
ミスズ「御教示の賜物です」
ヨナハ「どういたしまして。じゃあ賞賛に応えまして、この言葉は私が身体を張って意味を教えるよー」
ミスズ「身体を張って……?」
ヨナハ「つまり実践。実演とも言う」
ミスズ「……? 先生? どこに行かれるんですか? あ、何か機材を取りに?」
ヨナハ「……【ひんぎる】、端的に【逃げる】」
ひんぎる……逃げる。身を隠す。
「しにヤバたん。ひんぎれ!!」 → 「超絶ヤバい。逃げろ!!」
「よーばーはひんぎる理由にならんばーよッ…!」 → 「弱さは戦わなくていい理由にはならないッ…!」
「ひんぎっても良いんど?」 → 「大丈夫? 現実逃避する?」
ミスズ「へ? ……あッ!! えぇッ!? ちょ、せんせ…って足早ッ!? え、嘘!? 本気で講義投げてエスケイプする気ですか!? どこへ!? 何のためにそんな事を!?」
ヨナハ「にーぶい」
ミスズ「先生ィィーーーッ!!」
続く?
ミスズ「いや、もう私この講義受けないから!!」
ヒガ「しんけん?」
ミスズ「ひょぁぁああッ!? って、ヒガ先生!?」
ヒガ「ちゃお。くたびれた中年男、ヒガさんだお……にしてもなんですか、今のまるで悪霊か魔物と遭遇した様な悲鳴は。一教の恩を忘れたんですか薄情者、本当にクソガキ。絶世のひーらー系女子大生」
ミスズ「ひーらー言うなッ!! あと指差さないでくださいってば!! って、ヒガ先生、お縄になって速やかに処理されたんじゃ……」
ヒガ「確かにしくじってお縄にはなりましたが、流石の先生と言えど即日で殺処分される様な畜生以下の存在ではないですよ」
ミスズ「……あ、本当にお縄にはなったんですね……」
ヒガ「はい。今ひんぎってる最中です☆ 見てこの素敵な銀のブレスレット。いやー、一〇年前より錠の構造がややこしくなってて、中々どうして外れない。しにイライラする」
ミスズ「先生ィィーーーッ!!」
続かない。
■誰得PROFILE■
●ミスズ
・フルネームは戸峡木 翠珠。
・いつだって被害者な東京都出身・在住の都会子女子大生。
・ストリエ版の名残で、特に活かされる事も無い巨乳設定がある。
・なのでツッコミ時に無駄に乳を揺らしてクーパー靭帯にダメージを蓄積している可能性が。
・巨乳設定が純粋にデメリットでしかないと言う珍しいタイプのヒロイン。
・もし第三回が開催された場合も、受刑…じゃなくて受講するのはこいつ。
・頑張れ負けるなクーパー靭帯。
●ヒガ
・薬学の分野に置いてやらかし、世界的な指名手配犯となっている人物によく似た風貌の非常任講師的おっさん。
・実は出生は沖縄ではないそうだが、沖縄での潜伏歴…ゴホンゴホン、沖縄での生活が長かったらしく、下手な県民より沖縄に関する造詣が深い。
・ヒガは偽名…じゃなくてアダ名であり、特に後ろめたい事はないけど(本人談)必死にひた隠しされている実名は長めのアルファベット系だそう。
・そのイニシャルを取って繋げた結果【H・I・G・A】になったとか。
・しかし第一回では幼少期を沖縄で過ごしていた事を匂わせる様な発言が……?
・今回ノリと勢いでガチの犯罪者になってしまったので、出身地はボカしといた方が余計なクレームは入らないだろう……なんて保身的思惑は一切無い。本当だぞ。信じて。……ダメ?
●リューちゃん
・本名は東恩納 竜帝。
・沖縄生まれ沖縄育ちの暗黒大魔界覇竜♀。
・今シリーズに登場する自称を含めた沖縄出身者の中で一番まともな常識者。人懐っこい。慈悲深い。
・暇な日はサーターアンダギーを揚げる。
・お菓子作りが趣味なの☆と言えば女子力高い。
・けど実情サーターアンダギー。おばあ力高い。
●ヨナハ
・(-_-)zzz…