必須科目、宮沢賢治
地元に生まれてきたからには……という気負いはないっす。
※M家への他意などございませんから!!
岩手県生まれで岩手県育ち。と、いうか花巻生まれです、はい。
十数年前に、東京で読書関係の勉強会に出た時に
「住まいは遠野です」で
「おう……」と、いうざわめき。
「生まれは花巻です」で
「うおぉぉぉ!!」と、いうどよめき。
これって、一部の読書クラスタには羨ましがられたりしますが、住んでみればどちらも一地方都市というか田舎ですよ。
賢治の地元で生まれたからには、子どものころからそれはそれは賢治作品が身近にあり……身近にありすぎて、アレルギーな感じでした。
主要な作品くらいしか読まなかったし、「雨ニモ負ケズ」の詩も暗唱しなかったです(熱心な先生が担任にあたると、やっていたけど)。
そんな私が司書という仕事をしていたときに、勤めていた館で宮沢賢治展をすることになりました。
館長の「じゃあ、担当はたびーさんで。(だって花巻生まれだし)」一言で賢治と向き合うことに。
年表を作ったり、花巻でゆかりの場所をまわって写真を撮ったり。
ああ、花巻生まれというだけで「賢治」なわけですね。
「あのね、館長。賢治の母方の実家は花巻では三本の指にはいるくらいの有力者で、現に商工会の会長はそこの社長さんだし、まあその色々と言えないことはあるけれど、とにかく皆さんが思い描くような「賢治」の親戚はあまりいないんだよ」と言いたくなったりしましたが、言わずにおきました(書かずにおきます)。
賢治アレな私でしたが、一冊の本との出会いで変わってきます。
それは
『宮沢賢治の青春―“ただ一人の友”保阪嘉内をめぐって』 (角川文庫)
菅原 千恵子/著
これには、賢治と親友の保阪の「濃い目の友情」が描かれていました(研究書ですよ)。それで、私のなかで合点が行ったのが『銀河鉄道の夜』のジョバンニとカムパネルラ二人の関係でした。
ジョバンニとカムパネルラって、読んでいて始終モヤモヤしていたんですよ。それで本書を読んで分かりました。
「二人は両片想い(しかも相手が自分を好いていると薄々感じている)にも関わらず、いまだ告白していない状態」
これだ!! これでスッキリした。
本書で語られる、同級生への濃い目の友情というか微妙に透けて見える同性愛的な情愛。
くう、これだ……。
これだったんだ。
ああ、すっきりしたぜ。
これで賢治を愛せる。
ま、それは結局は裏打が希薄なことなんだろうけれど。賢治は入院先の看護婦との結婚したいと父(この父との関係もまた切ないのな)に伝えて大反対されて諦めたり、社会人になってから付き合っていた女性もいたようだし、断定はできませんが生涯独身で童貞だったそうです。
ものを書くようになってから読み返す賢治は、やはりとても偉大だと思います。
ことに、方言バリバリで書かれた『風の又三郎』など、よくもまあ当時これだけ方言を入れた作品を発表したものだと驚愕します。
私は『狼森と笊森 盗人森』『水仙月の四日』が好きです。
記念館に勤めていた友人にそれを言ったら、「どっちもマイナー作品だよ」と言われましたが。
あ、『雪渡り』もすきですよー。
図書館では、その後「石川啄木展」もしました。
知れば知るほど、啄木の破壊破滅ぶり半端ねぇ……ベビーフェイスでなんと恐ろしい。そして賢治のカッキリ十学年上の先輩です。