【番外編】「仕事は続けてもいいよ」という人の気が知れない、と思っていた
「仕事は続けてもいいよ」あるいは「仕事は続けても続けなくてもいいよ」と言われた。
二十代のころ、お見合いした人に。
わたしは短大を卒業するとすぐに、母から見合いをさせられた。結局結婚するまで三十回ほどしたのだが、どの男性も漏れなく、わたしに言ってきた。まるで、わたしの仕事を決めることを「手伝ってあげるよ」とばかりに。
わたしは不思議でならなかった。
わたしの仕事なのに、なぜ口を出すのか。だったら、わたしも「仕事を続けるかどうか、決めたら教えて」くらい言えばよかったのか(しかし、無職となど結婚はしない)。
わたしの収入など微々たるもので、なんのあてにもならないだろうから、軽く見られていたんだろう。「妻になる人の行動に対して、決定権があるのは自分だ」と殿方は信じて疑わないものなのだろうか。
ほんとうに不思議でならなかった。
「あなたはわたしの上司にでも、なろうというのか」と。
夫は、わたしの仕事について一切何も言わなかった。夫の母親は自営業者だったので、分かっているひとだと思った。
※しかし、それは夫が働くこと自体に関心が薄かったからで、事実結婚してから「つぎに仕事を辞めたら、一年くらい就職しないで暮らしたい」と言ってわたしを大いにあきれさせた。実際、何度も転職して、トータルの無職が一年くらいにはなった。
先日、いつも聞いている朝のラジオで
「転勤がないと会社から聞いていたので家を建てたが、夫が異動を命じられた。わたしには辞められない仕事があり、夫の単身赴任になる。子供はまだ小さい。どういった方法で家族のコミュニケーションをとったらいいだろうか」
というリスナーからのメールが読まれた。
それへの回答がリスナー、パーソナリティの両方が
「旦那さんの赴任先へまずは遊びに行ってみたら、いいと思う」とか「行ってみたら意外といい場所でなじめるかもしれない」とかそういうのばかり。
いやいや、妻側は「辞められない仕事がある」と言っているのになぜ皆が皆、それは耳に入らなかったかのように、赴任先へいずれいった方がいい、みたいなことしか言わないのか不思議でならなかったし、突っ込みもなかった。しかも、男女関係なく妻側に、夫に合わせよというのがまた驚愕だった。
妻の「辞められない仕事」に対する周囲の無理解ぶりよ。
女の仕事など、どうでもいいのか。
そういうことに、あきれたり怒ったりしたままで、還暦になった。
この先もそうなのだろうか。
娘が結婚するかどうかは分からないが、自分の仕事と通帳はしっかり握っていてほしいと思う。
仕事も家庭もというダブルバインドになるのは、夫側が家事育児をしないからだろう。




