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あしたの糧  作者: たびー


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贅沢な時間だったのだ

 今の仕事を始めて、来年で30年になる。自営業なので、基本家にいる(家でする仕事です)。

 今年還暦を迎えたので、短大を卒業してから40年間働いたことになる。自営業者になるまでは普通に勤め人だったわけで、「退勤後」という時間があった。

 仕事が終わると、毎日書店によって帰った。

 最初の職場のときには、昼休み時間もたいがい書店にいたので(職場のすぐそばにあった)、日に二回書店に行っていたことになる。最も、ビデオとCDのレンタルも兼ねたお店だったので、お店をひとわたり見ていたのだが。

 勤めていた会社は始業と終業がおそかった。帰りは早くて夜七時。帰宅して夕飯だったけれど、

ひとまず書店によって、立ち読みしたり(いまみたいにテープでふさがれたりしていなかった)、店に貼られているコミックの新刊情報を確かめたりした。結局、昼と夜二回。たいした変化などなかったろうに、判で押したようにほぼ毎日通っていた。そして、何かしら本を買って帰っていた。

 彼氏もいない、友人たちだって毎日遊べるわけじゃない。※当時のわたしの定休日は水曜。

 帰宅すると、本を読んでいた。図書館からも借りていたし。

 親からすれば、年頃になっても毎日毎日本を読む娘に多分一抹の不安を抱えていたかもしれないが、自分たちも仕事で忙しいから、なかば放置だったろう。

 そして、次の仕事に転職したとき。

 家を離れて一人暮らしになった。

 仕事が終わると、書店へ必ず立ち寄った。必ずだ。

 それで、また本を買う。図書館からも借りていた。なんせ職場が図書館だったのだ。生まれ育った市にある図書館からも借りてきていた。どんだけ借りれば気が済むのだ、若かりし頃のじぶん。

 相変わらず、本ばかり読んでいた。友人たちと離れてしまったし、今のようにスマホも通信アプリもない時代だ。

 一人暮らしだ。

 いくらでも読めた。ひとりぐらし、万歳。

 読みたい本がいくらでもあって、帰宅してから1.5冊読むことを一週間続けたら眼精疲労でさすがにギブアップした。


 毎日毎日書店に通った日々は遠くなり、気づけば市内から書店が姿を消した。

 今、わたしの住む市内に書店はわずか2店、働いていた図書館のある町からは書店がなくなった。

 代り映えしなくても、判でおしたような生活でも、書店がある生活は楽しかった。


 今は、自宅から書店までわざわざ足を運ぶ……という距離になり行けるのは、せいぜい月に数回だ。

 思えば、書店へ毎日寄って、なにがしかの本を買う。それは一冊のコミックだったり、単行本だったり、定期購読していた雑誌だったり。ちょっと高くて手が出せないあの本は、給料がでたら買おうと思っていた日々は、ひたすらに幸福なだったのだな、と過ぎてから思う。

 ネットで本を買えるのは便利だけれど、書店をあてもなくぶらぶら歩けるのは、実はとても贅沢なのだ。そんな時間がわたしには、今も必要だ。

 どこへも出かける予定のない日曜日など、ぶらつくには書店はちょうどよい。


図書館を辞めて自営業になったわたしは、二年ほどだが書店でもアルバイトをしていた。

アルバイト代の数割は本代になったので、みごとなマッチポンプだった。

本好きは、書店で働いたらだめだ。お金がたまらない。

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