表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あしたの糧  作者: たびー
33/49

【番外編】 娘と創作活動

娘の旅立ち 2020。

オリンピック、延期だってよ。

 娘が進学のため、家を出ました。

 四月一日、夫と二人で空港まで見送りました。見送ったあとそれぞれの車で、夫は夫の実家へ両親の様子を見に、わたしはわたしの実家の仕事へと向かいました。


 じぶん、見送りの時に泣くかな、と思っていましたが、泣きませんでした。

 帰る途中コンビニに寄って、いつも通りにコーヒーを買いました。

 じぶん、よくやった。毎日の食事、洗濯、病気になったら病院、被服を整え、娘の習い事や学校の送迎、学費や新生活の用意、全部済ませて送り出したんだ。

 よくやった、と。一人ささやかな祝杯をあげました。


 一人娘が家から居なくなって、淋しいでしょうとよく言われますが、いまはあまり淋しいとは感じません。モバイルが発達したおかげで、連絡もすぐできることが大きいです。たぶん、夏まで帰れないと思いますが、なんとかやっていけそうです。世話をしなきゃいけない猫もいますし。


 わたしがオンノベ活動を始めたのは、娘が小6の四月でした。

 独身時代、二度ほど小説を書いていた時期があり、結婚直前にはBL雑誌の新人賞へ二度応募したこともありました。一度目は選外、二度目は期待賞というのをいただきました。


 しかし、結婚してすぐに娘が出来てその後、出産→育児&仕事→引越し、義父実父手術闘病などが続き、小説を書いている暇がありませんでした。

 震災があり、無我夢中で仕事したら翌年春に胆石で救急車に乗り、病気と付き合いながら更に一年、気づけは娘が小学校最後の年になっていました。


 そこから、みたび筆を執り、現在に至ります。


 当初、小説を書いていることは家族には秘密でした。

「フルサトRadio」を書いていたころ娘は中一、旦那は無職で家の中は大荒れでした。殺伐とした気持ちを救ってくれたのは、小説を書くことでした。

 フルサトを書いてから少しして、電書にもなっている「こどもへん・けものへん」を書きました。

 主人公は東北から京都へ引っ越して来た中二のヤコ。

 この作品中、主人公を始めとして娘の友人の名前を数人使わせていただきました。

 ヤコちゃん、いるんですよ。ショートヘアの可愛い子です。


 その後も家族に内緒で、文フリ岩手に初めて出たときも同年東京へ行ったときも、家族に隠れて必死に準備しました。

 それで東京から帰って来た時、フォロワーさんから頂いた娘へのプレゼントを渡しました。

 娘からすれば、なぜ見知らぬ人から自分宛にプレゼントが来たのか謎でしょうし、何よりそれを作ってくださった方が、


 太ましき猫さま……というさらに謎な名前では、娘も戸惑うというもの。しかし、ご本名を存じ上げないんだからしょうがない。


 それでとうとう、実はお母さんは小説を書いているのだよ、とカミングアウトしました。

 娘、高1になっていました。

 その後は、活動もいくぶんやりやすくなりました。

 小説講座に通っている間には、娘が夫の気を逸らしたり口裏を合わせることに協力してくれました。

 まだ娘には、このサイトを始め具体的なところは教えていませんが、筆名はすでにバレているので、まあ、読みたくなったら読めばいいんじゃないかと思っています。

 もう18歳。そう、R18も読めるんですね。


 おかげさまで、娘は読書好きに育ちました。手仕事も好きな子に育ちました。

 お勉強は、正直今一つではありますが、家にいればわたしの手伝いもよくしてくれる子になりました。


 あとは、娘に任せるしかありません。

 このご時世、海外で働くことを視野に入れていいと思っています。学校で技術を身につければ、仕事場は世界に広がります。英語も頑張ってね、と伝えました。


 本好きな娘、いつか小説を書くかも知れません。ずっと先かも知れませんし、書かずに終わるかも知れません。

 どっちでも、いいんです。

 これから出会うたくさんの物語と、リアルのお友だちと、仕事をする仲間と娘の人生を歩んでいくんです。


 わたしも、少しの淋しさと気楽さとをポンポンとお手玉しながら、書いて行こうと思います。


そして、夫にはいまだに秘密の執筆です。

ここに書きます。

わたしはもうコンテストに入賞することも、書籍デビューすることもないでしょう。

ここ数年、つくずく自分は商業向きではないしそのレベルではないと実感しました。

だからといって、書くことを止めるわけではありません。物語を作ることは好きなので、書きたいうちは書こうと思います。

いずれ、書かなくなるでしょうし、書けなくなるでしょう。

けれど、いつかなすすべもなく、ただ白い天井を見つめるだけになったときに、悔しい思いをしたくはあません。

なので、書きます。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 娘さん、ご卒業おめでとうございます。 なんだか親戚の子供が大きく育ったような、そんな不思議な気分です。 表現の世界において、ユウレツは本位存在しないのですが、賞という「レース」は、嫌でも…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ