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あしたの糧  作者: たびー
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勇気とは……

中学校で本の紹介をするときに書いた原稿を発見。

※2015年の2月に中学二年生に対してのものです。

 作者の江川紹子さんは、オウム事件で有名なオウム真理教という宗教団体を事件以前からずっと取材していた人です。テレビで見たことがある人もいるかもしれませんが、普通の女性ですよ。

 でも、この人はそれこそ命をかけて(実際殺されそうになったりしながら)オウムを追い詰めていった勇気のある人です。


 その江川さんが「勇気とはなにか」について取材してまとめた本です。

 取り上げられているのは、野口健さん、元国会議員の山本譲司さん、蓮池透さんなど九名の方々です。

 マスコミに取り上げされた人もいますし、そうでなくとも一生懸命に「大きなもの」と闘った人たちのインタビューをもとに本が書かれています。


 例えばアルピニスト(登山家)としてテレビでもよく見る、野口健さんは登山について登頂を断念して引き返す勇気を語ります。


 皆さん、ともすると忘れてしまうかも知れませんが、山は登ったら同じくらいの時間をかけて山から下りてこなければならないのですよ。

 山は天気が変わりやすく、見誤るとすぐ死へと一直線です。

 山に登るにはお金がかかります。ヒマラヤで2002年でネパール側からだと一人25000ドル・二百五十万円くらい? です。ちなみに、一人で登れるわけがないので、費用はとんでもない金額になります。

そのお金を出してくれた人たちのためにも、登頂は成功させなければと思って無理をしてしまうこともあるでしょう。

 でも野口さんは引き返し、登頂した別の人は下山途中で亡くなりました。

 引き返すことも勇気なんですね。失敗したことをなんだかんだ言われるかも知れませんが、生きてさえいれば、再チャレンジもできるでしょう。


 ところでオウム事件は二十年まえの出来事ですから、中二の皆さんはまだ生まれてませんね。

 私はその日は勤め先の図書館で仕事中でした。

 テレビで東京で何か大きな事件が発生したと伝えられましたが、当時はサリンなんてものも知りませんし、あの事件がオウムが引き起こしたことだというのだって、全く漫画のような話で信じられませんでした。

ところが、そこからの報道でオウムの怪しさがどんどん表面化してきて、その時に以前からオウムと闘っていた江川さんが一気にテレビに出るようになったのを覚えています。


 世間はオウムをどんどん追い詰めていき、みんなが「オウムは悪だ」と口々に言うようになったころ、オウムの幹部が殺されるという事件が発生しました。


 これはまた別の事件ですが、とある詐欺事件では、その首謀者がアパートの一室に閉じこもり、それを取材に来た大勢の前で二人の男が窓を割って部屋に押し入り、その人を殺したということもありました。


 何か大きな事件が起こった時、「許せない、死刑になったってたりないくらいだ」という怒りを第三者が持つことがあります。


 今回の川崎の事件もそういったものなのでしょう。

 殺されてしまった村上くんが「かわいそうだ」「犯人は厳罰を受けるべきだ」「死刑にするべきだ」「家族だって同罪だから社会的に殺してしまえ」……今そういった心理で動いている人もいるようです。

 犯人である少年たちの顔写真や家の住所、家族の名前までネットでは流れているようです。


 オウムの事件があった二十年前は今ほどネット社会ではなく、そういった「パソコン通信」のやりとりは一部の愛好家だけのもので、社会的な影響力も今ほど大きくありませんでした。今のように個人の考えや思いつきを世界に向けて発信できませんでしたから。

 でも、今は違いますね。

 Twitterとか、全世界の人が見ます。ネットは全世界に繋がっています。


 今回、その犯人の顔写真や名前がtweetされたものを、あなたがリツイートすれば、あなたも罪に問われます。「いや、自分はただ来たものを回しただけだから」というのは通用しないそうです。


「目には目を、歯には歯を」というのはハムラビ法典の中の有名な一節ですが、これは「片目をつぶされら片目をつぶす」という、同じことをしていいではなく、それ以上のことはしてはダメという法律なんですよ。勘違いしてはいけません。


 今回のことはどうでしょうか?


 例えば、自分の大切な友だちが殺されたりしたら、あなたたちはその怒りを閉じ込めておけるでしょうか。もし犯人を知っているとしたら、そいつもヒドイ目に合えばいいと、個人情報をネットに流すでしょうか。

 それともナイフを持って、直接傷つけにいくのでしょうか。

 そうではなく、もっと別の方法で亡くなった友人のために闘うでしょうか。

 例えば、法律を変えて欲しいという運動や、自分が友人を亡くした話を別の人に聞いてもらって、二度とこんな出来事は起きて欲しくないと訴えるでしょうか。


 みなさんはまだ子どもです。

 子どもは大人に心配や迷惑をかけていいんです。三十にもなってそんなだったら困りますけど。

 だから困ったことや悩むことがあるならば、大人に、親や先生に言っていいんですよ。相談してください。勇気はそういったところに使ってください。

 それで皆さんが大人になったら、そういった相談を聞いてあげてください。


 私からは以上です。


『勇気ってなんだろう』江川紹子/著 岩波ジュニア新書

こんな原稿を書いて読みあげたワタシ……すごい勇気がある(笑)


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