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あしたの糧  作者: たびー


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課外授業の高村光太郎

街コンの文章を書くために、高村山荘まで行って来たこととか。

 ぼんやりと暮らして、それが当たり前だと思っていると実はそうでもないらしい岩手県、というか地元。

 県ゆかりの文筆家のなかで、わたしは啄木よりも光太郎のほうが身近です。なんといっても地元には光太郎が戦時中から疎開してその後も七年暮らした高村山荘がありますから。

 賢治記念館よりもはるかに前から存在していた、高村光太郎記念館は小学校の格好の教材というか当時の数少ない教育関連施設だったようで、遠足で何回か訪れましたし、大人になってからも散歩がてら足を運びました。

 記念館と山荘があるのは、市内の西のはずれ。かつては「開拓」という名称がついていた地域です。ま、それだけ不便なところなんです。一応バスは通ってますが、本数は少ないです。

 ましてや、光太郎が住んでいた戦後のあたりは一番近い公共交通である花巻電鉄の停車場までも、歩いて一時間くらいかかったと思います。

 そんな不便な場所に、山荘は今も山を背にしてひっそりとあります。

 思えば光太郎は子ども時代のわたしにとっては『不便な山奥に住んでいたおじいさん』程度の認識しかありませんでした。どこかの湖のほとりに、このおじいさんが作った彫刻があるらしいというのは分かりましたが、どうにもうまく結びつきませんでした。


 大人になった今、思い返すに子どもでは非常に理解しがたい「大人の事情」が背景にありすぎです。少なくとも子ども向けのテキストではないと。

 背景を説明しなくて済む、『道程』『冬がきた』やそれとなく事情が伝わる『レモン哀歌』、『あどけない話』などがギリでしょうか。


 子どものときには分かりませんでした。

 なぜ、智恵子が心の病になったのか。

 彫刻家の苦悩も、理想も、妻への思慕も(ついでにいうと、智恵子の紙絵の素晴らしさも分かっていませんでした。前日記念館で展示作品をみて目を張りました)。


 智恵子は当時の女子の中では、飛び抜けて『新しい風』を受けた人だったとここに来て知りました。江戸からの封建的な軛から放たれ(少なくとも学生・独身時代。実家が破産する前)、自由を謳歌したように資料からは感じられました。


 光太郎が智恵子から創作の自由を奪ったのだ、とどこかで読みましたが、ふたりのことを論じられるほど詳しくないので、そういう論もあるのだとしかいえません。


 今回、短い文を書くのに図書館から光太郎の詩集を借りてきて読みました。


 その中の一篇、『もしも智恵子が』が、まっすぐに胸にきました。


 光太郎は、心の病が癒えた智恵子と貧しい山荘で暮らす幻を一篇の詩にしていました。

 のびやかで、明るく、健やかに笑う千恵子を光太郎は夢想します。


 それに続く『案内』。


 光太郎の智恵子への愛情が伝わる言葉の数々。


 東京にいた時に書いた『冬がきた』と、実際雪深い山荘の初めての冬に書かれた『雪白く積めり』の違い。


 荒々しい自然と、そこに住む素朴な人々との交流で光太郎は少しずつ変わっていったのでしょう。


 そして、わたしが詩歌好きなのは、子どものころから身近にあった光太郎のおかげかも知れないと思う今日この頃です。



花巻で光太郎の後見人となった佐藤医師は当時、現在の花巻総合病院の医院長で宮沢賢治の主治医でもありました。

記念館の展示品や説明を読んでいて、今さらながら「おお」と思ったのは

「疎開先の宮沢家も空襲で焼け…」とあったのが「昭和20年8月10日」とあり、そうだよ花巻駅前の空襲はまさしく8/10。あのときに宮沢家も焼けたのか…とか(ちなみに光太郎のアトリエは3/10の東京大空襲で焼失)、そのとき賢治の弟清六さんは、賢治の原稿用紙が詰まったトランクを抱えて逃げたのか。

そして、そのトランクから『雨ニモ負ケズ』が書かれた手帳が見つかったのは、高村光太郎ら文人が集まった席でのことだとか。

なんだか、生きた歴史をきいたようでワクワクしました。

ミュージアムグッズも豊富です。

ぜひ一度、記念館と山荘へどうぞ(*'▽')


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