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ミッション:時間内に脱出せよ!

登場人物 岡田:無想流剣道部二年部員。今回、とある目的の為にある計画を実行する。

 今、帝龍高校である計画が着々と進行している。その詳細を知るのは俺だけだ。計画に参加している他の四人は手駒に過ぎない。要は俺が助かればいいのだ。

「岡田。次、読め」

 教師が突然指名してきても問題ない。

「聞いてませんでした」

「廊下に立っとれ」

 無論、この古臭い教師がこう言うのは計算済みだ。

 廊下には既に、隣の教室の前にエージェントが一人立っている。俺はポケットからテニスボールを取り出し、エージェントの方に転がす。

 エージェントはそれを拾いあげると、予め貼付けていたメモを剥がして読む。エージェントは何故か呆れたような顔でこちらを見ている。そして携帯電話を取り出し、なにやら操作を始めた。

 エージェントが携帯電話をしまうと同時に、俺の携帯電話が振動した。

『送信者:脇野

本文:メールで言えよ』

 どうやらエージェント脇野はまだ理解していないようだ。

 敵は恐ろしい。証拠は何一つ残してはならない。送信者と受信者に記録が残るメール等言語道断だ。手紙なら受け取った方が処分すれば済む。

 また携帯電話が振動した。エージェント脇野がまたメールを寄越したのだ。

『送信者:脇野

本文:オレがこの紙捨て忘れたらどうするんだよ?』

 エージェント脇野……なかなか優秀なようだ。俺の心の内を適確に読み取り、完璧な答えを出した。

 良し。次からは機密文書はメールにしよう。

 学校にチャイムが鳴り響く。

 とにかく、司令は無事に届いた。後は実行だけだ。


 本日最後の授業終了を告げるチャイムが、学校中の人間の耳に届く。遊びに行きたくてうずうずしていた者、かったるい授業を辛抱強く聞いていた者、部活の練習を早く始めたい者、そして俺やエージェント達、無論、敵にもチャイムの音は公平に届く。

 エージェント達は行動を開始したはずだ。恐らく敵も……。

 敵は二人。だがムトーの足止めは済んでいる。後は楠木のみ。

 校舎からの出口は正面玄関、隣校舎への渡り廊下、そして今は閉鎖されている北玄関。エージェントと俺が二手に分かれれば半分は逃げられる。だが重要なのは逃げられる人数ではない。俺が逃げられるかどうかだ。

 俺はゆっくりと渡り廊下へ向かう。佐藤の声が聞こえる。予定通り楠木に捕まったようだ。

「なんでぇお前がここにいるんだぁ?」

 佐藤、それはお前が囮だからだ。

 俺は念の為、この目で確かめる。その瞬間俺は目を疑った。楠木ではない。ムトーだ。

「えーと、今日は生徒会、中止になった」

 橋浦め……しくじったな。

 ムトーが佐藤を足止めしたまま言う。

「えーと、パッシーがさあ、書類のデータ消しちゃったんだよ」

 馬鹿顧問代理め。書類をゆっくり丁寧に作れって言ったのだ。生徒会中止にしてどうする。

 いかん! ということは敵は二人だ。正面玄関に急がねば……。佐藤は……まあ仕方ない。ムトーを足止めしててくれ。


 やはり楠木の怒鳴り声が聞こえる。

 俺は陰から玄関の様子を窺った。既に佐々木が楠木に捕まっている。

「佐々木! 他のやつらはどこだ!? お前一人で逃げようと思ったわけじゃないだろう!」

「知らないよー? 一緒に逃げようって言われたけど、ここから逃げろって言われただけだよ?」

 佐々木は本当に何も知らん。だが急がねばいかんな。俺は急いで自分用の逃走経路に向かう。残りエージェント、いや、囮は脇野ただ一人。敵に気付かれる前に逃げねば。

 俺は閉鎖されている出口に向かう。合い鍵は既に用意してある。後は敵との時間勝負。

 大分遠くから話し声が聞こえていた。

「えーと、逃がさねえぞ、脇野」

「……ムトー……お前が来るとは思っていなかった……」

 早いな。既にムトーが来ている。

 暫く脇野は、ムトーをかわして出口に向かおうとしていた。だがそのうち脇野は諦めて別の出口に向かった。

 計算通りだ。俺は誰もいなくなった北玄関に向かって歩きだす。ミスもあったが、大方計算通りに行き、俺は独り言を漏らす。

「脇野も別の出口に向かって正解だ。ここの出口はまだ開いていないのだからな。……後はここから出てしまえばこっちのものだ」

 俺は鍵を開け外へ出る。鍵を閉めていると、後ろから怒鳴られた。

「お見通しなんだよ! 岡田!」

 驚いて振り返ると、楠木が立っていた。

「よく分かったな、楠木」

「お前らの考えていることなんて直ぐわかるんだよ!」

 楠木は少し腰を落し、戦闘体勢に入る。無想流で言う所の猫足だ。

 俺の方も体勢を整える。足を左右に広げる。蛙腰だ。

「絶対に逃がさねえぞ!」「押し通る」

 うちの部一の使い手である楠木に並の手は通じない。俺は左右に激しくフェイントを仕掛け、楠木を抜こうとする。だがやはり楠木は動じない。目線や他にも色々仕掛けるが、役に立たない。

「無駄だ! 大人しく捕まれ!」

 まずい……時間がない……

 焦った俺は強引に通ろうとする。だがやはり捕まってしまった。

「離せ! 俺は行かねばならんのだ」

「諦めろ! ちゃんと練習に出ろ!」

「今日だけは勘弁しろ。頼む」

 俺の嘆願を楠木は叩き潰す。

「いっつもそう言ってるだろ!」

「俺の計画が折れるとは……。新作ゲームが……」

 諦めて力の抜けた俺を楠木が引きずって行く……


大変申し訳ありませんが、一身上の都合によりしばし当作品を休載します。修行して出直してきますので、それまでお待ちいただければ幸いです。ご評価、ご感想は随時募集しておりますので、よろしくお願いします。

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