オレの気持ちと彼女の気持ち
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突然の彼女の大胆な発言にオレはかなり、同様していたけど。なんとか、落ち着いてオレが彼女を部屋の中へ入れると。相棒がちょこちょこと彼女の足元まで来て、彼女をきょとんとした顔で見上げていた。
「ほら、チビもびっくりしてるで! まぁ、ええ機会やから、ちょっと落ち着いて座ってゆっくり話ししよか? な!?」
「……はい。……おじゃまします」
何があったかはさておいて、話を始める前にオレは温かい紅茶を彼女に入れてやって相棒にもミルクを少し温めて一緒に出してやった。少し、気持ちが落ち着いてきたようで彼女はミルクを皿から飲んでる相棒の様子を見てクスクスっと笑っていた。
「良かった。少し、落ち着いたみたいやな! こういう時ってほんま、子猫って場を和ませてくれるから助かるわ~」
「突然、すみませんでした。ちょっと、母親と口論になって気持ちが高ぶって家を飛び出して来てしまって……こんな時間にごめんなさい」
彼女は何か母親と口論したらしく。(多分オレへの彼女の気持ちについてなんやろけど)母親に現実を突きつけられた彼女は気持ちが高ぶってしまって、家を出て来たと言って苦笑していた。
「あ。それやったら、お母さんにちゃんと連絡入れとき。 きっと、心配してるわ! メールでもええから、オレと話してるって連絡しとき」
「え!? 良いの? 私と一緒にいてるってうちの親に知られるんって、嫌じゃないですか?」
オレの顔を真剣に見つめながら彼女は少し驚いたように聞いてきたので、オレは首を横に振って彼女の頭を優しく撫でてやった。
「別に嫌じゃないで、やましいこともないしな。それに、親に心配かけるようなことは、あかんやろ? そやからすぐに連絡しときなさい」
「あ。はい。わかりました」
彼女が母親へメールを送信し終えたのを確認してから、オレは彼女と向き合って真剣に話を始めた。
「今さらやねんけどな、ユイちゃんはほんまにオレのこと好きなんか? こんなおじさんより、もっと同年代とかでええ男がおるやろ?」
「私は、誠二さんが好きなんです。どうしても、誠二さんじゃないとダメなんです」
人生で初めてやった。こんな風に異性からストレートに好きと言われたのは……。しかも、彼女の目は間違いなく本気の眼差しをしている。オレは、観念して正直に彼女への思いを告げる覚悟を決めた。
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「ありがとう。正直、嬉しい。ユイちゃんみたいな良い子に好きって言うてもらえて、マジで今もドキドキしてるわ。それに、オレも初めて動物病院でユイちゃんを見たときから、多分好きになってた。ひとめぼれってやつや」
「嘘!? ほんまに?」
「ほんまや! 嘘じゃない。そやけど、オレはええ歳したおじさん。大人やねん! 気持ちに任せて突っ走るなんてことは出来んのや。ユイちゃんは、まだ高校生やろ? これから、自分が何をするかを決めて進む時やん。こんなおじさんに恋してる場合やない。もっと自分を大切にしてほしいんや」
オレの話を聞いていた彼女は、大きな瞳にいっぱい涙をためて首を横に何度も振って、向かい合っているオレの両手をギュッと力を込めて握り締めてきた。
「ずるい。そうやって大人やからって、私のこと子ども扱いして、自分の気持ちに嘘ついてる。もし、嘘じゃないんやったら、誠二さんは、私のことなんか好きでもなんでもないんやん」
「そんなことない! オレは、オレは……。本気やから、本気で好きやからユイちゃんには幸せになってほしい思って……あっ」
彼女にずるいと責められて、オレはカッとして少し感情的になって身を乗り出して、彼女にオレの思いが本気なんだと熱く語っていると、彼女も立ち上がって身を乗り出してきてオレの首へ両手を絡めて自分の唇をオレの唇に重ねていた。
長かった。……時が止まってしまったかと思った。彼女はオレに唇を重ねたまま、なかなか離れようとしなかった。拒めば済んだことなんやけど、オレも男やからね。こういうシチュエーションには弱い訳や。そのまま、彼女はテーブルを上って来てオレに抱かれる格好で熱い抱擁を続けた。
何分くらいかな? やっと、気が済んだのか? 我に返ったのか? 彼女は顔を真っ赤にしてオレの膝の上で固まっていた。
「なぁ……。ひとつ聞いてええか?」
「な、何?」
「ユイちゃんて? 積極的な方なん? もう、経験ありなんか?」
「ちょっと!! 誠二さん!? ひどい! こんなん初めてです! 誰ともしたことありません」
ついつい、オレが無神経なことを聞いてしまったので、彼女は怒ってオレの胸板を思いっきり叩いていた。オレは笑いながら、冗談やと言って彼女の腕を掴んで、今度はオレから彼女の唇に自分の唇を重ねていた。