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相棒とボディーガード

******** 


 仕事を終えて会社を急いで出ると。オレはすぐに駅に小走りで向かっていた。伯母には猫の世話には慣れているから、あわてて帰ってこなくて良いと言われてたけど。これはなんなんやろ? どうしても早く相棒に会いたくて、オレはどこにも立ち寄らずに伯母の営んでいる飲み屋へ直行していた。


*****


「おかえり~! せいちゃん早かったやん!」

「ただいま~! あはは。なんかやっぱり気になってしもて」


 オレが店の戸を勢い良く開けて入ると。伯母はニィッと笑って迎えてくれていた。きっと。オレが急いで帰ってくるって伯母にはお見通しやったんかもしれへん。


『ミャーン……ミャーン』


相棒は座敷で伯母の猫のがんもとミケと一緒に寝ていたみたいやったけど。オレがわかったのか? 起き上がってこっちを向いて鳴いていた。


「あらあら。チビちゃんもせいちゃんに会いたかったみたいやね」

「そやろか? ほんまにそうなら。うれしいけどな!へへへ」


 伯母の店で夜定食を格安で食べさせてもらって、オレは伯母と従姉の比奈にもお礼を言って、あまり長居はせずに相棒をつれて店を出た。週の前半は出来るだけ体力を温存しておきたいから。日付が変わらんうちに早く布団にオレは入って眠りたかった。


 家に帰ると、オレはすぐに相棒をキャリーから出してやって、シャワーを浴びてビールを片手に少しソファーでくつろぎながらテレビを見ていた。すると相棒は器用にオレの部屋着をよじ登って右側の脇に頭を突っ込んで寝る体制に入っていた。


「たまらんなぁー♪」


オレは脇に相棒を抱えたままの姿勢で歯を磨いて布団に入った。毎日寝つきが悪かったはずのオレが、睡眠薬でも飲まされたみたいに。布団へ入ってほんの十分程で眠りについてしまっていた。


*****


 翌朝も昨日と同じように一時間早く起きてオレは相棒を連れて『黒猫』で伯母に相棒を預けてから駅へ向かった。オレがホームで電車を待っているとオレに気づいた彼女が手を振りながらオレの方へ走ってきた。


「おはようござます。昨日は本当にありがとうございました」

「おはよう。あんまし、こんなこと朝から聞かれたくないやろけど……。チカンされたん。初めてでは無かったんちゃう? あいつら、常習犯っぽく見えたんやけど」


 オレは少し立ち入って彼女に昨日の二人組のことを聞いて見た。すると、やはり彼女は小さく二回頷いて少し唇を震わせていた。


「先週から、私が一人でこの時間の電車に乗るようになってからです。それまでは、部活の朝練とかがあって、友達とか後輩と電車に乗っていたので、チカンにあうことは無かったんですけど」

「多分、この時間帯のラッシュを狙ったチカンの常習犯なんやろな。伯母の知り合いに刑事さんがおるから、一応相談しとくわ」


 オレが思っていた通り。電車に乗ると昨日の二人組も少し離れた場所で乗っていた。あいつら、オレが通報するとか思わんかったんやろか? ああいう輩は神経図太いからな。出来れば私服刑事に現行犯で逮捕されてしまえばええんや。


「藤田さん? 顔こわくなってます」

「あ。え? マジで? ごめんごめん」


 ついつい彼女の存在を忘れて、あの二人組を凝視していたのでオレの顔が凄い怖い顔になっていたらしい。下からオレの顔をのぞき込んで話しかけて来た彼女は、クスクスと笑ってオレの右手をギュッと握っていた。


「子猫ちゃん。元気ですか?」

「ああ。めっちゃ元気やで! オレが帰るまでは伯母が見てくれてる」

「伯母さんって? あの。陽子さんですよね?」


やっぱり知っていたのか。世間は広いようで狭いからなとオレは思いながら、黙って二回頷いていた。


「お店に子猫ちゃん。おるんですか?」

「うん。オレが会社から帰るまでやったらおるで」

「あ。じゃぁ……。今日帰りにのぞいてみよう♪」


 彼女は大きな綺麗な黒い瞳をオレの顔に近づけて、嬉しそうにニィッと笑っていた。そして電車を降りるまでオレの右手を彼女は離してくれなかった。


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