同棲一日目
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年越しも無事過ぎて、正月の三が日もオレは彼女と伯母の店でこうちゃんたちとなかなか楽しい正月を過ごしてあっという間に七草粥を食べる日を迎えていた。
「それでは、これから末永く宜しくお願いいたします♪」
「なんやねん! 急にあらたまって……緊張するわ!」
「だって、一応これくらいは挨拶しとかなアカンかなぁと思ったんやもん!」
「そうか……。ほな、これからよろしくお願いします。……アカンわぁー! なんか、照れるわ!」
こんな風にやね。オレと彼女の同棲生活が始まったわけやね。
『ニャーン! ミャーン!』
相棒も嬉しそうにオレと彼女の側へ来て、彼女を歓迎してるみたいに見えた。
もともと、毎週土曜にはほとんど欠かさず彼女はオレの家に来ていたから、相棒もそれほど環境の変化を感じないで済んでいるみたいやった。
「そやけど。この家ってそこそこ広かったんやね? 私はいつも二階へ上がることが無かったから、気付かへんかった」
「そやな。一階は台所とリビングとオレの寝室にしてる洋室にもう一部屋は、物置やからな。二階は二部屋あるけど、ユイが使う部屋は12畳くらいの広さはあるから、広いよな!」
「このまま結婚して、子供が出来ても十分やね♪」
「おーい。気が早すぎるで? 子供はまだ先でええ! まずはユイがユイのやりたいことをすればええんやで?」
オレがこの家の間取りの話をしてたら、彼女は嬉しそうに笑って子供が出来たら? みたいな話をするから、オレは何か照れくさくて話をはぐらかしてしまった。
「もう~! 誠二さん。また、こういう話になるとそういうこと言うねんから! 別に子供がおってもしたいことが出来んようになるとは限らんのよ?」
「おっ? ユイも言うようになったやん。確かにそうやけど、ほんまにユイはそう思ってるんか? 子供を育てるって大変なことやと思うんやで?」
「私は大丈夫な気がする。それに、ほんまに早く誠二さんと結婚して子供が欲しいって思ってるよ!」
話をはぐらかしたオレの背中に彼女がおんぶされるみたいに抱きついて来て、自分の本当の胸の内を話しながらオレの頬に優しくキスをして、耳元でクスクスと笑っていた。
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たまらんなぁーと。背中に当たっている彼女の胸の感触を味わいながら、オレはそのまま立ち上がって彼女をおんぶしたままベッドへダイブした。
「ほんなら、今から子作りするか?」
「嘘!? 今? 今するの?」
「そやで? もう、さっきからユイの胸がグイグイ背中に当たってる感触が、めっちゃオレを刺激してるんや!」
「……別に良いけど。シャワーしよ? バタバタしたからシャワーでスッキリしてからにしよ?」
彼女は口では子供が欲しいって簡単に言うけど、やっぱりいざその行為にオレが持ち込もうとすると、恥ずかしそうに顔を真っ赤にして必死になって平気なふりをしようとする。
「あんな…仲の良い新婚さんは、毎日するらしいで? 多いときは一日何回もするねんて? どうする?」
「またそんなこと言うて私をからかってるやろ? 誠二さんのイケズ!」
「ごめん! ごめん! 冗談やって♪ ついつい意地悪したくなるんや! そんなに怒らんでもええやん」
追い討ちをかけてオレが彼女をいじめてると、彼女は膨れっ面をして見せて起き上がって枕を手に取って、オレの顔面にぶつけて来た。
オレも起き上がって彼女を捕まえて、そのままベッドに押し倒して彼女の唇をオレの唇で塞いでちょっと濃厚なキスをした。
【ピンポーン♪ ピンポーン♪】
一番良い雰囲気になっていたその時に玄関のインターホンが鳴って、オレと彼女は一瞬で現実に引き戻されてしまった。
オレが起き上がってモニターを見ると、オカンがニコニコ笑いながらカメラに向かって手をふっていた。
「オカンや……絶対にこうなるのわかってて来たんや」
「えっ!? お母さん? ほんまに?」
慌てて彼女は玄関を開けてオカンを笑顔で出迎えてくれていた。
「今日が引越しやて、陽子ちゃんから連絡もらってたから引越し蕎麦を食べさせたろうと思って来てん♪」
「あ。お蕎麦!? そや。忘れてたわ!」
「せいちゃんのことやから、そうやと思ってん。フフフ」
オカンはそう言って笑うと、台所へ立ってエプロンをして蕎麦を湯がき始めた。そんなオカンを見て彼女はクスクスと嬉しそうに笑って美味しい蕎麦の湯がき方をオカンに教えてもらっていた。
そして、オレと彼女に引越し蕎麦をふるまって満足したオカンはまた遊びに来るからと言い残して帰って行った。