母と相棒と彼女
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「ミャーン♪」
突然、何の連絡も無しに勝手に息子の部屋に上がり込んでる母に向かってオレが非難の言葉を発する前に、キャリーの中の相棒が外へ出せと催促して一声鳴いた。
「あ。その子が、チビか? 可愛いやん♪」
「ああ、そやった。オカンにまだ会わせてなかったもんな。可愛いやろ?」
何故か相棒の一声でその場は和み。オレと母は相棒を見て笑っていた。
「それにしても、来るんやったら連絡してくれたら駅まで迎えに行ったのに。どうしたんや?」
「フフフフ。抜き打ちに決まってるやん♪ せいちゃんに可愛い彼女が出来たって、陽子ちゃんに聞いたからな。ひと目見たくて、こっそり会いに来たんよ」
「やっぱり、陽子さんに聞いてたんや。そやろなぁとは思ってたけど、抜き打ちて……オカンには参るわ」
母の話にオレが本気で呆れてると、母はケラケラと笑ってオレの好物の里芋とイカの煮物を器に盛り付けて出してくれていた。
「せいちゃんの大好物の里芋とイカの煮物やで!」
「お! そやそや! 家に入った瞬間にええ匂いすると思ったんや! さすが、オカンやわ。ありがとう」
オレは洗面所で手を洗って食卓に着いて母が作ってくれた煮物を口いっぱいに頬張った。オレが上手い上手いと煮物を食べている間に、相棒も母が手土産に持ってきた子猫用の缶詰をお皿へ入れてもらって、美味しそうに平らげていた。
「それで? 今日はユイちゃんは遊びに来るん?」
「ああ。多分、そろそろ来ると思うねんけど……ほんまに会うんか? まだ、どうなるかわからんで? なんせユイは女子高生やからな!」
「わかってる。わかってるけど、陽子ちゃんがええ子やでって言うてくれてるし、それやったら、うちもユイちゃんと会って仲良くしたいなぁーって思ったんよ」
母が突然訪れた理由を聞かされたオレは心の中で「オカンらしいなぁー」と思いながら、少し胸が熱くなった。母も伯母とは本当に良く似ていて、とても人好きのする性格の陽気で明るい優しい人やから、ほんまに心の底から彼女と仲良くなりたくてわざわざ家の用事を放って会いに来てくれたに決まってる。
(なんかこれって、彼女にとってもええ展開なんちゃう?)とオレが喜んでいると、良いタイミングでその彼女からメールが届いた。
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[あと、30分くらいで行くけど、何かいるものありますか?]
オレは特に何もいるものは無いとメールを返して彼女を驚かすことにした。
「ユイちゃんからやったん? 何て? 来るって?」
「ああ。あと30分くらいで来るってメール来たわ。オカンのことは内緒にしてるねん。驚かしてやりたいからな!」
「せいちゃんもイケズやなぁー! フフフ。ほんなら、楽しみに片付けしながら待ってよ♪」
彼女が来ると知った母は嬉しそうにニッコリ笑ってテーブルの上の洗い物を片付け始めた。
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そして、オレが彼女が来るまでにシャワーを浴びて汗を流している間に、母は片づけを全部済ませてくれていた。母の足元をチョロチョロしていた相棒は、スッカリ母に慣れてしまっていて猫じゃらしで楽しそうに遊んでもらっていた。
「さすが、猫好きなだけに猫の扱いが上手いな。今は実家に何匹おるんやったっけ?」
「家の中には三匹やで! 外は庭に五匹位は毎日ご飯食べに来てるのがおるわ」
「家の中の猫は去勢手術とかしてるん?」
「中も外もうちの猫は皆、手術は済んでる。子猫生まれても貰い手見つけるん大変やし、自然の摂理に反してるんかも知らんけど。共存していく為やと思ってやってるんよ」
母がずっとずっとオレなんかよりも、猫たちのことを真剣に考えて向き合っていることを聞かされて、オレはマジで自分の母親を凄いと思って感動していた。
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「ただいまー!」
オレが相棒と遊んでいる母の横でソファーに座って缶ビールを片手にテレビを見ていると、彼女がいつもの様に鍵を開けて帰って来た。
「おかえりー!! おつかれさん!」
「え!? ??? 誠二さんのお母さん?」
「フフフフ♪ びっくりした? 初めまして、誠二の母の光江です。よろしくお願いします」
「あ、はい。こちらこそ、よろしくお願いします。若林ユイと言います。誠二さんにはお世話になってます」
オレの狙い通りに彼女は驚いて目をパチクリさせて母と挨拶を交わしていた。その足元で相棒がなんだか嬉しそうに母と彼女を見比べて一声「ミャーン♪」と鳴いて、またその場を和ませてくれていた。




