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キスというものは。

何が起きた?

なぜスイは倒れている?



「スイ? 」



スイの体に触れると、俺の手は赤く染まった。鉄サビのような匂いがし、これは血だと分かった。



「救急車を呼ばないと…… 」



ポケットから携帯電話を取り出し震える手で119の番号を押そうとした瞬間、頭に何かが当たった。



「あれー? まだ生きてる」



恐る恐る振り返ると、フードを被った人がいた。フードで、顔がよく見えない。声からして、きっと女だろう。女は銃を持っており、それを俺の頭に向けている。



「殺す? 殺しちゃう? ……あっ、でもあの人から命令されてないからな……。悩むな〜 」

「お、おいっ! 」



声を震わせながら俺は叫んだ瞬間、突然、体に激痛が走った。



「喋るな、この糞が」



腹からポタポタと赤い液体が垂れている。傷口からして、鋭利な刃物でやったのだろう。口に銃と思えるものが入り、赤いフードを被った奴の顔が近づいた。

真っ黒な大きな瞳に髪。雪のような白い肌。声のトーンが高く、姿は女のようだが多分こいつは男だ。いわゆる男の娘って感じだ。



「僕に話しかけんなよ、耳が痛いじゃないか」



こいつ、性格悪すぎだろ。きっとMの奴なら、羨ましがれるプレイだろう。って……俺は何考えてんだよ!



「奏斗、何しているのかしら? 」



聞き覚えのある声。



「姉ちゃん‼︎ 」



何で姉ちゃんがいるんだ?

そういえば、こういう危ない何かが起きているとき必ず姉ちゃんはいる。……そう、俺が5歳のとき。あの日は、最悪だった。それだけは覚えている。それ以外はあまり覚えていない。具体的に何があったとか、起こった場所とか何も思い出せない。



「あっ、あなたは…… 」



赤いフードの奴は、目を丸くし一歩二歩と後ろに下がっていった。



「あら、お久しぶりね。こんなとこで会うなんて偶然かしら? 」



赤いフードの奴は、なぜか怯えた表情を浮かべている。さっきまでの態度とは明らかに違った。姉ちゃんと知り合いなのか?



「姉ちゃん……こいつと知り合いなの? 」

「ええ、まあね。……って、奏斗怪我してるじゃない! 」



姉ちゃんは慌てて、俺の側に駆け寄った。



「大丈夫、少し腹を斬られただけだから。……そんなことより、スイをーー 」

「何を言ってるの? そんなことよりって!あの子より、あなたが優先よ」

「はっ⁉︎ 何言ってんだよ! スイが優先だよ! 」



意味分かんない。早く、早くスイを助けないと。スイの方が重症に決まっている。俺は腹をおさえながら、スイのもとにゆっくりと歩いて行った。

スイの手に触れると、氷のように冷たかった。人の温かさが感じられない。



「……スイ? おい、起きろってば……スーー 」

「起きてる」



スイはそう言って、むくっと起き上がる。そしてスイは何もなかったかのように、大きな欠伸をし始めた。

夢を見ているようだった。だって、そうだろう?血をたくさん流し、倒れた人がこうして起き上がり、欠伸をしているのだから。



「ど、どうして……血は…… 」

「血? 」



スイは右に顔を傾け、不思議そうに俺を見つめる。スイの体からは血らしきものは、どこにもなかった。じゃあ、何でスイは倒れたんだ?さっきの手についた赤い血は誰のだ?

そうだ、手についた血!俺はすぐに手のひらを見た。が、血なんてものはどこにもなかった。どういうことだ?確かに俺はーー



「奏斗」



スイと俺の距離は0㎝。俺の唇に柔らかいものが優しく触れた。

それは一瞬のことで、何が起きたのか理解するに少し時間がかかった。思考が一気に停止した。数秒経って俺は、ふと思った。この一瞬は、前にもあったような気がした。ずっと昔に。



「スイは大丈夫だよ」



ひまわりのような、優しい笑みを浮かべるスイ。その一言で、俺はなぜか安心してしまった。何もなかった、俺の勘違いだったんだって。



「スーー 」



スイに触れようとした瞬間、後ろからおどろおどろしいオーラが伝わってきた。このオーラは、きっと姉ちゃんだろう。振り返るの怖い。姉ちゃんが、どんな顔をしているのか考えるだけで背筋がぞくっとした。



「今、何してたのかしら? 」

「さっ、さあ〜? 何だろうね…… 」



俺がその言葉を口にした途端、頭に痛みが走った。恐る恐る後ろを向くと案の定、手をグーにして目じりを険しく吊り上げて怒っていた。うっすらと涙を浮かべて。



「な、何だよ」

「バカ! 変態! 何で、あの子とキスしたのよ! 」

「はっ⁉︎ べっ別に構わねーだろう、俺が誰ときっ、キスしようが…… 」

「構わなくないわよ! キスなんかしないで!」



姉ちゃんは怒りに満ちた表情を見せ、俺の頬をつねった。これじゃあまるで、俺と姉ちゃんは付き合っているみたいじゃないか……。



「じゃあ、何だよ。俺は一生キスなんかしちゃ、いけねーのかよ? 」

「そうよ。当たり前でしょ」



姉ちゃんは、当然のように言った。ブラコンにも程があるだろう……。

そして思った。今、一番言いたいことがある。”姉ちゃんが欲しいな”と言っている奴、考え直した方がいいと思う。


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