図書室に呼び出された俺は。
朝、目を覚ますと俺はリビングにいた。
昨日スイに俺の部屋で寝てもらい、さすがに一緒に寝るのはと思い俺はソファーで寝たんだった。
俺は、大きな欠伸とともにゆっくり起き上がり、テレビをつけた。
「奏斗おはよう」
「あぁ、スイか。おはーー」
俺は”おはよう”言いかけた時、ある事に気がついた。
「スイ、その制服どうしたんだ? 」
紺色の白のラインが入った襟に水色のスカーフ、そして紺色のスカート。
その制服は、俺が通う高校の近くにある立花中学校の制服だ。
「学校に通うから、着ているだけだよ」
「そ、そっか……」
「それより、奏斗。今日学校が終わったら、お出かけしたい」
上目遣いで見つめてくるスイ。
これはわざとなのか?
わざとじゃないならタチが悪いな。スイはもともと可愛い顔しているから、ドキッとしてしまう。
「わかった、いいよ」
「じゃあ学校終わったら、奏斗の学校の校門の前にいるね」
「うん、じゃあご飯食べて学校に行こうか」
俺とスイは、朝食をとりそれぞれ支度をし学校に向かった。
スイと登校している時、俺はある事に気付き一気に緊張してきた。
「奏斗どうしたの? 」
「い、いや……」
そういえば、女の子と登校するの姉ちゃん以外したことがない。
そしてはたから見れば、この状況はカップルに見られるだろう。
ん……?カップルに見られる……
「あ、やっヤバイ……」
この時間帯だといつものように、姉ちゃんに会ってしまう。そしたらどうなるだろう? 考えただけで、鳥肌が立つ。
「スーー」
今すぐスイと別れようとした時、ふと甘い匂いがした。
この甘い匂いはーー
「奏斗、おはよう」
「ね、姉ちゃん……」
手遅れだった。
「そちらは誰かしら? 」
姉ちゃんは、スイを睨む。
「え、えっと……スイだよ」
「ス……イね。初めまして、奏斗の姉の白桜レナよ。まずあなたに、1つだけ言っとくことがあるわ」
スイは姉ちゃんのことを真っ直ぐ見つめていた。
「私の弟、奏斗に手を出したら私の全ての力を使って、あなたを全力で排除するわ。覚悟しときなさい」
姉ちゃんはそう言って、黒髪をなびかせながらスタスタと歩いっていった。
まあ、今回は穏やかにすんだな。
前に一度、ある女の子に怪我の手当てをしてもらったことがあった。
その時に姉ちゃんに偶然会い、彼女と姉ちゃんで大喧嘩になったことがあった。
あれは最悪だった。俺の取り合いで喧嘩しているというラブコメな展開だったが、あれは最悪な修羅場。
あの時の姉ちゃんは、狂っていた。もう2度と、あんな姉ちゃんを見たくないと思った。
あれ以来、女の子が近づいてこなくなったんだよな。
あれ?
今思ったけど、もしかして姉ちゃんが原因で彼女がてきないのか?
スイと別れ、俺はいつも通り午前の授業を受け昼休みをむかえた。
「あれ、三咲どこに行くんだよ」
「図書室に行ってくるから、浦野先食べてていーよ」
図書室に行く理由。
それはいつの間にか入っていた白い手紙に、”4時間目の授業を受けたら、すぐ図書室に来てください”と書かれてあったから。
宛先のない手紙。
字からして女の子だと思う。
いきなりの呼び出し。
もしやこれは、告白ってやつか?
そう思ったとたん、にやけそうになった顔を俺は必死に抑えた。
図書室に着き辺りを確認したが、まだ誰もいなかった。
「本でも読もうかな」
何となく気になった本を取り読もうとした瞬間、運悪く指を切ってしまった。
「痛っ……」
絆創膏をブレザーのポケットから取り出そうとした時、ふと視線を感じた。
前を見ると、黒白のメッシュのおかっぱの背の高い女性がいた。
真っ黒なロング丈のワンピースに白襟に紺色のネクタイをした、まるでどこかのお嬢様みたいだ。
彼女は可愛いというよりは、綺麗といった方がお似合いだ。
「痛いのですか? 」
「痛いです……少しだけ」
ここの生徒じゃないよな。
先生? いや、見かけたことがないな。
すると彼女は、クスッと笑った。
「可笑しな話ですね」
「何がですか? 」
俺が問いかけた瞬間、彼女はさっきの優しい笑みと違った笑顔を見せた。その笑顔に、少し恐怖を覚えた。
「あなたが、”痛い”と言ったことですよ? 」
「は? 」
頭が狂ったのかと俺は思った。
”痛い”と言っただけで、笑える話なのだろうか?
「やっぱり、知らないのですね」
「知らないって……何を……? 」
嫌な予感がした。
けど好奇心っていうのか?
逃げたいけど、知りたくて堪らなくなった。
何でこんなに知りたくて堪らないのだろう?
「知りたい? 」
色っぽい声で耳元で囁かれ、俺は小さな声で彼女に言った。
「知りたい……です」
「じゃあーー」
彼女が言いかけた瞬間、俺の口はハンカチで押さえつけられた。
だんだんと意識が薄れていくなかで聞こえた、彼女の言葉。
「眠ってください」
彼女のゴールドの瞳が、俺を真っ直ぐ見つめていた。




