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ハイスクール•オンライン  作者: みまたく
67/71

愛する者

勢いで書きました〜

おかしい点が多々あるかもしれませんが、よろしくお願いします

「なあ、リーニャ」

自分の口がそう言った。

「なんですか〜?」

テーブルの反対側にいる女性、リーニャさんがそう返した。

僕の口は少しの間動く事はなく、何かを考えている様だった。

「‥‥‥リーニャにも会わせとくか。隠し通すなんて、無理だしな」

僕の口が、つまり魔王はそう言った。

ドン、ともう慣れてきた、胸を軽く押す様な衝撃の後、自分が表にいることに気づく。

目の前にはリーニャさんという魔王の妻が。

‥‥‥何を話せばいいのか分からない。

おほん、とわざとらしく咳払いをして、言葉を選んだ。

「ええと、僕はこの体の持ち主だった高坂咲人と申します」

まずは自己紹介だろうと思い、そう言った。さりげなくこの体は元は僕の物なんですよ、と伝えた。いや、さりげなくでは無いな‥‥‥。

すると、リーニャさんはクス、と笑い、笑顔で言った。

「どうしたんですか?あなたが冗談を言うだなんて珍しいですね」

ぐ、通じていない‥‥‥。

「つ、つまりですね。魔王が僕の体に取り付くまでは僕は普通の高校生として‥‥‥じゃなくて、人間として暮らしていたんです。それが、ある日魔王に体を乗っ取られて」

何から話していいのか分からず、そう言う。言ってから気付いたのだが、この言い方だと魔王がとても悪く聞こえる。いや、迷惑を被ったのは間違いではないので良しとしよう。

「‥‥‥ダーティ?」

「ダーティ‥‥‥?じゃなくて、高坂咲人です‥‥‥えーと、よろしくお願いし」

ます。までが言えなかった。

それは‥‥‥リーニャさんが、怒っていらっしゃる。どこをどう見ても目が笑っていない。

にしてもダーティ、とは誰の事だろう、と考えたが、すぐに理解した。

『‥‥‥』

中で、あいつがとても深刻な事になっているからだ。いや、顔は見え無いので何となく、なのだが。

「え、何、どういう事?」

僕は何故、リーニャさんが怒っているのか、何故、魔王が項垂れているのかが分からなかった。

『悪い、また変わるぞ』

「あ?ああ」

僕が表にいた時間はおよそ1分ちょっと。なにこれ短すぎる。

再び胸を軽く押されるような感覚を体験し、自分が裏へと移動したことを確認した。

「リーニャ‥‥‥」

「‥‥‥あなたは今、ダーティですね?」

「そうだ、ダーティ•ブライズ。本人だ」

そう、魔王が言うと「そうですか‥‥‥」とリーニャさんはとても冷たい真顔になった。

と、同時に、左頬に強い衝撃が走った。その反動で、頭が右を向き、リーニャさんの顔は見えなくなった。

平手で叩かれたんだと気づくのには少し時間がかかった。

「‥‥‥見損ないました」

僕も、いきなりのことでパニックになっていたが魔王は、もっとショックを受けたに違いない。

「‥‥‥リーニャ、話を聞いてくれ」

「‥‥‥貴方は、他の王候補者達と違って優しい人でした。市民にも分け隔てなく接することのできる人‥‥‥。だから私は貴方に惹かれました。素敵な人だな、と‥‥‥なのに!」

リーニャさんは魔王の言葉には耳も貸さず、そう言った。目には涙を浮かべ、その両手は僕の、魔王の肩をギュッと握り、微かに震えていた。

だが、このおかげで何故リーニャさんが怒っているのか、悲しんでいるのか理解できた。

ーー魔王を、ダーティ•ブライズを愛しているからだ。

「‥‥‥私は、今まで何かの副作用や呪いで、その姿になっているのだと思っていました」

「‥‥‥リーニャ」

「ダーティ、貴方はその方の人生を狂わせたんですよ‥‥‥なぜ‥‥‥」

そう言ってリーニャさんは地面に膝をつき、声を抑えながら泣き始めた。

‥‥‥羨ましいなあ。

僕は、そう思ってしまった。

こんなにも自分を愛してくれている人がいるっていうのは、どんな気分なんだろうか。

僕も、そんな人と出会えたらいいな‥‥‥。

『‥‥魔王、変われ』

そう言うと、返事は無言だった。

イエスかノーか分からなかったが、胸を押す、いつもの衝撃があった。

「リーニャさん」

「あなたは‥‥‥」

「‥‥‥高坂咲人です。正直に言います。僕は魔王に体を乗っ取られて、とても迷惑でした」

そう言うとリーニャさんは暗い顔になって「すみません‥‥‥」と、顔を伏せた。

「‥‥‥でした、です。今は、目的があります。元の人間として生活していたら、知れない真実がありました。だから、僕は」

そこまで言ったのだが、続く言葉がなかなか出てこなかった。

悩んだ末、こうするしかなかった。

とても久しぶりだった。女の人の頭を撫でるのは。

「‥‥‥高坂‥‥さん」

「頑張りますから、大丈夫です」

自分らしくなく、少し笑いが込み上げてきた。


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