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ハイスクール•オンライン  作者: みまたく
54/71

ジーラの薬草屋

遅れてしまいました(ーー;)すいません

どうぞお楽しみください。

誤字などもありましたら遠慮なくお願いします〜。


「着いたわ。ジーラの薬草屋」

霧崎がボロっちい空き家のような建物の前で足を止めて言った。

「随分古い建物だな」

「そうね」

素っ気ない返事が返ってくる。相変わらずだな、と横目に見ながらその扉を開ける。が、誰もいない。

「すいません、どなたかいらっしゃいませんか」

するとドタドタッとした音の後、奥の方から人が現れた。

「す、すいません。じゃないや。いらっしゃい」

茶色の少し汚れた作業服に身を包んだ背の低い少女がペコッと頭を下げて言った。ショートカットで現実で言うと小学校の中学年、くらいかな。NPCのマークが頭上に出現した。

「あ、えーと、今お母さんかお父さんいるかな?」

「はい。いますけど、何か」

小首を傾げる少女。そんな可愛いく見られても‥‥‥。

「少しお話があるんだ。呼んでもらえるかな」

おい待て、なんか僕怪しいやつみたいになってない?大丈夫?

「お話は私が聞きますけど」

少し警戒しているのかおろしている手をぎゅっと握っている。

「う、うーん。もう少し年上の人じゃないと分からないお話なんだよ」

「17歳でも駄目なお話なんですか?」

‥‥‥。

「‥‥‥なあ霧崎?」

僕の後ろで静かに立っていた霧崎に話しかける。

「何かしら」

「これはこの子は17歳だと捉えていいのか?」

「何故わざわざ私に言うのかしら」

「いや、問題にならない?これ。だってどう見てもあれじゃん。ロリじゃん」

目の前にいる少女はどう見ても小学生くらいだろう。

「君、17歳、なの?」

「はい。しかも明日で18になります」

明日で18‥‥‥?ふむ。

「ダウト」

「え、ダウ‥‥‥?」

「嘘は良くないよ。嘘つきは泥棒の始まりって言うしね」

でもどちらかって言うと泥棒じゃなくて詐欺師だと思う。ワンクリック詐欺とか超怖い。メアドとか迂闊に教えるもんじゃないよ!

「嘘じゃないですよ!?もう結婚できる年です!」

結婚。この子と結婚か。うん、犯罪としか思えない。

「ん‥‥‥?結婚〈できる〉年、だって?」

「はい、そうですよー」

「待ってくれ。NPC‥‥‥じゃない。君たちのこの世界に法律があるのか?」

すると目の前の少女は大きな目をパチパチと瞬かせた。

「そりゃありますよ。知らなかったんですか?」

そうか‥‥‥。僕達、異世界人には無くてもNPCには存在するのか。

そりゃそうだ。人がいれば決まりごとや法律もできるだろう。

でも、それはこの世界でも大人達が決めていることだろう。高校生の僕達は、何をすれば良いのかが分かっていない。

絶望。多くの者がその感情を抱いただろう。今まで当たり前の様に過ごしていた日常を過ごせ無くなった。

高校生なんてまだ子供だ。体は大人に近づいていても、心はまだまだ子供。甘えて、助けられて、支えられないと生きていけない。

「やっぱり、必要だよな。法律」

僕の漏れた言葉に反応して霧崎が一歩前に出て言う。

「考えが脱線してるわ。それはそれよ。今はこっちが先よ」

「‥‥‥だな。悪い」

考えを膨らませても、僕に出来ることなんてたかが知れている。今できることをするしかない。

「あ、あのう。それでお話とは‥‥‥」

少女、まあ幼女と言った方が妥当な彼女が、困った様に言った。

「ここでタバコを売っていますよね」

霧崎は彼女が本当に17歳だと信じたみたいだ。

「タバコ?ああ巻き草の事ですね。100サンになります!」

巻き草、この世界ではタバコを巻き草と言うのか‥‥‥。

「買いに来た訳ではないです。その商品を私達異世界人に売るのをやめて欲しいんです」

霧崎が続けて話すが僕はここである違和感を感じた。

「え、何故ですか?」

「私たちがいた世界では、それは20歳になってからでないと使う事が出来ない法律があるんです」

「で、でもこの世界ではそんな法律ないですよ。それにこれが売れなくなると私達は暮らしていけません‥‥‥」

ここで、完全に違和感の正体に気づいた。

「すいません。出直します」

霧崎の腕を掴んで店から出る。後ろから責めるような声が飛んできた。体質の、拒絶反応が例外なく発生したが、思ったよりも軽く、我慢することができた。

「ちょっと、あなたねぇ!」

その声は無視して、店から少し離れたベンチに座った。

「高坂咲人のー、質問コーナー」

「どういう事かしら。私でも怒るわよ」

いや、常に怒ってるみたいだよ?とは言えない。心にしまっておく。

「まあ聞けって。なんでこの世界にはタバコを規制する法律がないと思う?」

「そんな事関係ないでしょう」

「あるんだよ。なら、なんで現実世界では規制する法律があった?」

すると霧崎は何か察したのか、ふう、と溜息をついて言った。

「有害物質、ね」

「そういうことだ。現実世界でのタバコにはニコチンやタールみたいな有害物質が入っている。が、この世界でのタバコの巻き草については有害物質の有無がはっきりしていない。それにこの世界の法律で規制されていないんだ。販売をやめろと言ったところで了承するわけがない」

それを聞くと霧崎も僕の隣に座り、腕組みをした。

「‥‥‥考える事が増えたわね」

「ああ‥‥‥スルトにも長くはいられないからな。というか明日までしか無理だ」

オーバーすると片桐に殴られそうだし。

「そう‥‥‥」

霧崎は無表情のままそう言ったっきり、口を開くことは無かった。

僕と霧崎の間に静寂が訪れた。

僕に今できることは何があるだろう。目標は高く設定すればする程、実現は難しくなる。目標を高くするのは悪い事じゃない。むしろいい事だ。が、今回は掲げるだけではいけない。必ず実行しなければ‥‥‥。

「はあ、どうしたものかなあ」

「そうね‥‥‥」

霧崎も答えが出ていないのか、腕組みをしたまま考え込むように頭を下げた。

今しなければならないのは僕達へのタバコの販売停止。スルトだけじゃ無い。他の街にもタバコを売っている店は存在するだろう。スルトにもまだ売っている店があるかもしれない。

やはり、しなければならない事は法律の改正だ。

「今の僕達じゃ難しいな‥‥‥」

この世界の王様の存在についてももっと調べなければならない。

「よし、ちょっと待っててくれ。2分くらいで戻る」

霧崎にそう言ってベンチを立つ。

「どこへ行くの?」

「ジーラの薬草屋だ。じゃ」

ついて来られては困るので小走りで立ち去る。霧崎が「ちょっと‥‥」と何か言いたげだったが無視した。ここは2人で押しかけるとなおさら警戒されてしまう。「すぐ戻る!」と霧崎に伝えてジーラの薬草屋へ足を戻した。



「いらっしゃいませー。あ、さっきの」

僕を幼女が迎えてくれる。

「あはは、何回もごめんね」

「売らないって言うのは無理ですよ」

少し怯えながら彼女はそう言う。少し汚れた作業服はそんな彼女をますます小さく見せた。

「‥‥‥違うよ。その話は関係無いんだ。この世界の王様についてなんだけどさ」

そう言った瞬間、彼女の顔は真っ青になった。それに、どこか震えている。

「な、なんでしょうか」

何故うろたえるんだ。何故怖がる。色々聞きたいことはある。が、目の前で顔を真っ青にしている女の子を見ていると聞けるような雰囲気じゃ

なかった。

「‥‥‥この話やめ。そうだな、じゃあ君について教えてくれないか」

「え、ええ?」

何言ってんのこいつ?みたいな目で見られた。ちょっとショックだ。

「いや、変な意味じゃなくて。名前はなんて言うんですか?」

そう言えば17歳だと今更ながら思ったので最後は敬語になった。敬語は大事だよね。

「ローイ、です」

「ローイさん。残念ながら僕は客じゃない。敬語は入りません」

「は、はあ」

未だ意味が分からない、という顔で僕を見る。

「特に意味はないよ。気楽にお話ししよう‥‥‥しませんか」

やばい。本当にはたから見ると僕怪しい奴じゃん。違うよ?これ大丈夫だから。合法だから。

「はあ‥‥‥いいですけど‥‥‥」

可愛く小首をかしげながらも了承してくれた。拒否されたら手詰まりだったから良かった。

「ローイ?友達かい?」

「あ、お母さん。友達じゃないよー‥‥‥なんだろう」

うん、なんだろうか。僕にもよく分からない。あと、母親も相当若く見える。20代にしか見えない。

「か、か、彼氏かしら?ごめんなさいねえこんな格好で。お茶持ってくるわね」

「お母さん、違うからね?!」

ローイの母親はそう言って笑顔を見せた。彼女にも頭上にNの文字が現れる。

「あ、お構いなく」

ローイの母親は僕のその言葉をまた笑顔で返し店の奥へ戻っていった。

「あはは、ごめんなさい。お母さん早とちりで」

少し苦笑いしながらローイが言う。

「いい母親じゃないですか」

「それは知ってる。けど、いい人すぎるんですよ‥‥‥」

苦笑いをしていたローイの顔が曇った。

「それはどういう‥‥‥?」

「お願いだからお母さんに、巻き草を売るなって、言わないでくれませんか」

「‥‥‥」

「お母さん優しいから、絶対にいうこと聞いちゃうと思います‥‥‥。そうしたら私たち‥‥‥」

ローイは目に涙を浮かべ、深々と頭を下げた。床に水滴がポツ、ポツと落ちた。

「‥‥‥言いませんよ」

「ほ、本当‥‥‥?」

「はい。言いません」

言える訳が、ない。

この世界の住人は彼女らNPCだ。僕たちじゃない。簡単に言うと日本の法律を外国へ押し付けるようなものだ。

少ししてローイの母親がニコニコしてお茶を持ってきた。

「はーい、お茶です」

「すいません。いただきます」

「どうぞー。それで、いつから付き合ってるのかな?」

こう言った話が好きなのか、それとも娘の恋事情が気になるのか、ローイの母親は目を輝かせた。

「だから!付き合ってないってばー」

少し顔を赤くしながらローイがぷーっ、とふくれる。

「あら、あなたは異世界人さんね」

母親がお茶を勧めつつ言った。その言葉には僕達に対する敵意は感じられなかった。

「はい。それと伺いたいことがあるのですが‥‥‥」

「ええ、いいわよー。その前に名前を教えてくれるかな」

ここでまだ名乗っていないことに気づいた。何やってんだ僕。

「あ、すいません。高坂咲人です」「高坂くんか〜。それで?聞きたいことって何かな」

「‥‥‥あの」

言うべきか、でも‥‥‥。いや、言おう!

「‥‥‥ローイさんを僕に」

「ねえ」

意を決して出した言葉の途中で後ろから声がした。どこか棘のあるその声の主はすぐに分かってしまった。

「あなたの2分ってこんなに長いのかしら?」

‥‥‥あっ。


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