メール
4.メール
目の前が真っ白でなにも見えない。ポケモ○かい。あ、あれは真っ暗か。
「‥‥‥っ!」
更に白い光が強くなり、目を閉じずにはいられなくなる。
すると、まだ目は開けられないが聴覚は復活したようで、周りの音が聞こえる。もはや騒音になるほどの人の声が聞こえる。誰かが叫び、また誰かが泣き声をあげたりしている。
すると光が収まり、目を開けると僕は見知らぬ街の広場にいた。いや、僕はこの街を知っている。
HPOのファーストタウン〈スルト〉だ。というか、凄まじい人数だな。全国の高校生をファーストタウンの広さを拡大して収容しているのだろうか。前はパソコンのディスプレイ越しに見ていたから気づくのに時間がかかった。
「いい加減にしろよ!」
「ここどこなの?!」
どうやらクラスメイト達も全員同じ場所にいるようだ。
「どういうことだ‥」
誰にも聞こえないような声でボソッとつぶやく。
すると、ポケットに入っていたケータイにメールの着信がきた。
〈無事転送が完了した高校生諸君。全国の高校生を転送するのはなかなか骨が折れる仕事だった。君たちにはここでもう一つの人生を送ってもらう。ここはHPOの世界。しかしゲームの中ではない。この意味くらいは分かってくれるはずだ。
ご武運を HPO運営〉
‥‥‥つまり、この体はゲームのアバターではない、生身の体の言うことだ。つまり、この世界で命を失えば、当然‥‥‥それに、このメールにはゲームのクリア方法が書かれていない。HPOは街が120もあり、街によって難易度が決められている。ゲームのときに街の名前ぜんぶ覚えてるのはゲーム廃人くらいなものだ。
それに、もちろん街と街は繋がってるわけではない。全国の高校生と書いてある。一体どれだけの人がこの世界に来てしまったのだろうか。分からない事だらけだ。疑問が多すぎる。
すると泣き叫ぶ者や怒鳴りちらす者などを尻目に無表情でスタスタと迷いのない足取りで歩き出す者が1人。
霧崎咲子だ。
「どこへ行くつもりだ?」
僕はその無表情な顔へ向かって質問した。すると見ているだけで吸い込まれそうな緑がかった目をこちらに向けた。
「‥‥‥次の街の〈カフト〉へよ」
透き通るような声でそう言った。
彼女はどうやらHPO経験者のようだ。しかし、僕が気になったのはそこじゃない。
「なぜ、そんなに冷静でいられる?」
「‥‥‥あなたも似たようなものでしょ。他に用が無いならもう行くわ」
「クリアの仕方すら分かってないんだ。どうするつもりだ?」
すると彼女は僕の目を見据えて
「やれることをやるのよ」
と、一言残し歩き始めた。やれること、ね。
今の僕にできること、それは考えることだ。状況を整理する。
•まずここはHPOの世界だが、ゲームの中ではない。
•そしてこの世界に転送されたのは全国の高校生ということ。おそらく全員このファーストタウンにいる。
•手掛かりのメールにはもう一つの人生を送ってもらうと書いてある。つまり元からクリアさせる気は無いのかもしれない。
•‥‥‥そして、霧崎咲子はこの世界に来ても冷静で、無表情のままだった。