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ハイスクール•オンライン  作者: みまたく
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人の考え

これから少しずつ物語が動き始めます。

引き続きよろしくお願いします。

「どこから話そうかな‥‥‥。そうだな、ギルドは分かるよね?」

ギルドはRPG、それもMMO系をやっている人は必ずと言っていいほど知っているだろう。様は仲のいいプレイヤー達の集まりみたいなものだ。

「はい、それでナネディアギルド、とは?」

「ナネディアギルドは通称NDGと呼ばれていてね。そのまんまだけど。相当強いギルドで最強ギルドとまで言われたこともあったよ。ギルドマスターはHPO界最強という話まで出ててね」

ふむふむ。最強ギルドの最強ギルドマスターがいた、と。どんな奴なんだよ。絶対廃人とかでしょそれ。

「でもある日、1人のプレイヤーがギルマスに決闘を申し込んだんだ。あの時はびっくりしたよ。何せそのプレイヤーのレベルはギルマスの半分も無かったし武器もそんなに強くなかったからね」

そう言って笹森さんは水を一口コクリと飲んだ。

「‥‥‥ギルマスも遊び感覚で受けたんだ。‥‥‥でも結果は圧倒的差での敗北。信じられなかったよ‥‥‥で、そのプレイヤーっていうのが」

笹森さんの目線の先にはもちろん霧崎がいる。

「‥‥‥そう。私よ」

私よ、って言われてもな‥‥‥。

「でもギルドを潰すって‥‥‥?別に決闘で勝ったからって潰す何てことにはならないだろ」

「ギルドを潰す、というよりメンツを潰すという感じだったよ。所構わず有名ギルドのギルマスに決闘仕掛けてたしね」

笹森さんが霧崎を見ながら言った言葉にはどこか懐かしさが含まれていた。

「それが潰す、と?」

「まあ話は大きくなりすぎてたね。でもねえ、マナーも何もあったものじゃなくってね」

霧崎は顔を伏せ、頭を下げた。

「‥‥‥ごめんなさい、あの頃の私は何だか自暴自棄というか、気にくわないことがあってそれを受け止めることができないでいました」

その結果が伝説と呼ばれた、というわけか。なにそれHPO伝説多すぎない?あの頃の僕に謝ってほしい。称号貰えなかったけど伝説って言われてたからちょっと嬉しかったのに。伝説他にもあんのかよ。

「いや、別に攻めてるわけじゃないんだ。私は面白いものが見れたとも思っているしね。今反省してればそれでいいさ。それよりも、だ」

笹森さんの目線が未だにポカンとしている桜庭さんに向いた。そして桜庭さんの頬をぐにーっと引っ張った。

「桜庭、お前はいつまでそうしているつもりだ?」

「いたたっ!痛いっすよ!」

この2人仲良いなぁ。まあ朝食を一緒に食べるくらいなんだからそりゃそうか。

「あれ、もしかして桜庭さんと笹森さんって付き合ってるんですかあ?」

‥‥‥夏美、さっきまでウトウトしてただろ‥‥‥。まあ気になりはしてたけども。

「「それはない(っす)」」

即答かい!

「こいつとは、そうだな。腐れ縁という奴だ。保育園から一緒でな」

「そうっすよ。そこから小中高って一緒っす。まあ大学はおそらく別っすけど。笹森さん頭イイっすから」

そこでふと気になったことがあった。

「ところで何で桜庭さんは笹森さんをさん付けで呼んでるんですか?ダメではないですけど‥‥‥」

「ああ、小学生の時に「そんけーする人にはさんをつけるんだぞ」って笹森さんに言われてからっすね」

「へぇ、笹森さんの事尊敬してるんですね」

同級生を尊敬できるってすごいことだと思う。

「そりゃそっすよ。勉強もできる、容姿端麗、性格もいいし腕っぷしもある。尊敬しない理由がないっすよ」

笹森さんは少し顔を赤らめながら桜庭さんの頬をつねった。

「恥ずかしいだろ、口を閉じろ」

「痛いっすよ!分かりました。閉じます閉じるっす!」

二人はずっとこんな感じなんだろうな‥‥‥。なんかいいなあ。

少し賑やかになったテーブルで全員朝食を食べ終わった。

「お、こんな時間か。じゃあ桜庭、公園に行くぞ」

「え、こんな時間って、会議は10時からですよね?」

「ああ、私達は会議の準備があるんだ」

うわ、大変だな。でもこういうしっかりとした頼れる人がいると正直助かる。

「あ、手伝いますよ?」

沙羅がはいっと手を上げて言った。

「僕も手伝いますよ。僕も一応参加する訳ですし」

その後にリーティ、夏美と椿もうんうんと頷いた。霧崎も無表情で無言だが否定はして無いので了解の意と捉えた。

あと自分で一応とか言ってしまうあたり僕マジでネガティブ思考。

「助かるよ。正直言って人手が足りなくてね。じゃあ行こうか」

たはは、と困ったように笑う笹森さんとそうっす、と頷いている桜庭さん。そうしてみんなで公園に向かって歩き出した。

「そんなに足りてないんですか?」

「まあ、普通に考えてみてくれ。現時点でこのレイクヘッドには全体の何%くらいの高校生がいると思う?」

「え?んー、10%、とかですか?」

高校生は330万人もいるんだ。その10%、33万人位はいるんじゃないか‥‥‥?

「残念。正解は0.01%未満、だ」

はあ?!0.01%って、さ、三百人くらい?!

「君は昨日の会議のことを覚えてるかな?およそ百人位の人達が会議に来たよね」

「はい」

「あれは驚いたね。どんなに少なくとも千人は来ると踏んでたんだ。でも来たのは百人。どういうことか分かるかな?」

どういう事って‥‥‥?どういう事?

「つまり、みんな高校生、なんだよ」

「え?はあそれは分かってますけど」

「ん、言い方が悪かったな。そうだな。簡単に言うとまだ子供、という事さ」

「まあまだ成人してませんしね」

そう言うと笹森さんは少し微笑んで言った。

「年の話じゃないさ。精神面の方かな。いきなり意味の分からない世界に飛ばされて〈死〉というものに対しての恐怖が身にしみたんだろう」

「死、ですか」

「そうだ。まだ大抵の人はスルトにいるはずだよ。毎日初期金額の1000サンやスルト周辺のモンスターを4人パーティで安全に安全に狩って暮らしているはずだよ」

「そうですか‥‥‥」

「何故だろうな。現実世界にいた頃は信号無視や暴走行為をしていた者がこの世界では自分の命を張ることができないんだからね」

まあ、その通りだ。信号無視や暴走行為は運が悪ければ命に関わる。なのにこの世界では戦うことができない。様は彼ら彼女らは現実世界ではその行為自体が自分の命とは関係の無いものとしているんだろう。

「今、スルトは治安がとても悪い。金に困った者が集団で1人を襲うんだ。それが女子であっても、ね」

桜庭さんも頷いた。

酷い話だ。命を張れないなら張った者を集団で襲う。バカバカしい。

「‥‥‥ここには、この世界には法律もないから誰も裁けない。か」

「その通りだよ。高坂くん。法律、というより上の者がいないんだ」

「上の‥‥‥?」

「そう、なんというかな。今スルトで人を襲っている連中にはストッパーが無いのさ。法律もそうだけど、基本的なルールが無いんだよ。これを止めるには‥‥‥」

今までずっと話を聞いていた霧崎がポツリと呟いた。

「誰かが、作らないといけない」

その霧崎の言葉に笹森さんは苦笑いをして頷いた。

「そうだ。でも私達にそんな時間はない。この世界の攻略が第1だと私は考えてるからね」

笹森さんの言っている事は正しいのかもしれない。1日でも早く、この世界から脱出するために、その可能性のあるこの世界の攻略をする‥‥‥でも‥‥‥。

「‥‥‥それは、力を持っている人の理屈ですよ」

「高坂くん?」

「今、苦しめられている人は「今」が苦しいんです。先のことよりも、今が、今、苦しいんだ」

何を言っているんだ僕は。言っていること全部同じ事の繰り返しだ‥‥‥。

すると霧崎がまた、ポツリと呟いた。

「‥‥‥本当、変わらないわね」

‥‥‥またか。何を言っとるんだこいつは。

「まあこの話はまた今度だ」

笹森さんがパンッと手を叩いた。

あ、いつの間にか公園着いてたんだな。

「よし、準備開始だ」




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