一息?
現在時刻6人でのボスについての話し合いの翌日の朝9時。
僕達がいる街、レイクヘッドは街の中心に湖がある綺麗な街だ。
沙羅と椿、夏美にリーティは今日一日湖で遊ぶといって朝早くから出かけてしまった。
「お前は行かないの?」
僕の正面でコーヒーを啜っている霧崎に聞く。
「そんなことしてる暇があったらレベルを上げるわ」
実に霧崎らしい答えだ。正に遊んでる暇があるなら〜てやつだ。
「まあそうかもしれないけどさ、こう、羽休め、みたいな感じでさ」
そう言うと霧崎はコーヒーカップを置き、冷たい目で僕を見る。
「そんな格好してる人に言われたく無いわ」
今の僕の格好は完全に戦闘する時のスタイルだ。背中には愛刀のデュホークブレイドがある。
「し、仕方ないだろ。俺の方が休んでる暇ないんだよ」
称号スキルを持っていない以上、基本ステータスの底上げをするしかない。みんなの足を引っ張りたくはないし、ここで頑張らなければ。
「今、あなたレベルは?」
「‥‥‥12だよ」
昨日の夜、一人でフィールドに出てなんとか1レベル上がった。
沙羅や夏美には「一人で戦うなんて危険でしょ!」としかられたが安全マージンは取っているし経験値の効率的には一人の方が良い。
確かに4人のパーティで一体のモンスターを集中攻撃すると自分が死亡する確率はほぼゼロだろう。安全面は完璧だ。
「‥‥‥そう、防具は‥‥‥カフトでモンスタードロップするやつね。その赤色のジャケット回避型よね」
「お、おお。そうだ」
なんでこんなに聞かれてんの?何か怖いです。
「武器はこの街レベルでは最強クラスのデュホークブレイド、火力に問題は無いわ‥‥‥。やっぱり防具ね‥‥‥」
「ちょ、ちょっと待った。何だいきなり」
「‥‥‥あなたの装備の強さの差、かしら」
強さの差?あ、なるほど。
「確かにな‥‥‥。このジャケットなんてカフトの最初の方で手に入るからな。そんな強くないな‥‥‥」
シーサイドでも防具はいくつかドロップしたりしたが全て防御型。運営側からのいじめかと思った。沙羅はあれから少しいいものがドロップしたらしく、今はそれを防具にしている。
沙羅達から「ドロップしたのいる?」と言われたことが何回かあるが、僕の納得のいく物は無かった。「そう。デュホークブレイドは現状では最強レベル。はたから見たらすごい組み合わせよそれ」
「これについては本当に感謝してるよ」
そう言うと霧崎は口元に手を当て少し考えて話し始めた。
「‥‥‥防具、譲ったほうがいいかしら」
‥‥‥はい?
「い、いやいやデュホークブレイド貰ってるんだから流石に悪いって。というかお前が自分で着ろよ。お前もカフトからそれだろ」
「‥‥‥私の防具、あれでも変わっているのだけれど‥‥‥」
「いや、全身黒づくめってだけでインパクトあるからちょっと変わったくらいじゃあな‥‥‥」
あれで変わってたのかよ。もう少し黒くないものにすればいいのに。
「まあいいわ。でも着ようと思っても私が持ってるいるのmaleなのよ。装備出来ないの。持ってても仕方がないわ」
male、メイルは男性専用の防具や武器に付けられる名称だ。逆に女性専用はfemaleと付けられる。
「そうは言ってもなあ。男の威厳っていうか」
そう言うと霧崎は少し微笑んで言った。
「大丈夫よ、私はあなたを男性として見たこと無いから」
ここで毒舌ですか‥‥‥。もはや無表情キャラなくなったな。
「はいはい、それでも売ったりとかもできるだろう?」
「お金には困っていないし、見ず知らずの人に渡すくらいなら知り合いのあなたに上げるわ」
「‥‥‥そうか。なら、貰おうかな」
「最初からそう言えばいいのよ」
霧崎そう言ってメニュー画面を開いた。何秒かしてメールの添付品として二つの防具が届いた。
名前は〈ブラックシーズコート〉に〈ブラックシーズレギンス〉。何これ名前超かっこいいんだけど。
「って、数値高すぎじゃね?!こんなのどこでドロップするんだよ」
今まで着ていた防具に比べるとおよそ3倍くらい数値が高い。しかも回避型だ。
「この街から少し行った所の洞窟でのレアドロップよ。確率はすごく低いけど数値は高いわ」
あ、ありがたい。装備だけでいうなら最強クラスの武器と防具が揃ったわけだ。
「なんか、本当に感謝だ。っと、早速装備変えるか」
メニューから装備を変更する。えっ
「あれ、これ、お前とお揃い‥‥‥?」
霧崎が少し気まずい顔をした。
「そうよ。私が着ていたのはブラックシーズボディにブラックシーズパンツ‥‥‥あなたのと一緒のシリーズよ」
‥‥‥なんだか、気まずい。
「ま、まあ強い武装にすると人とかぶることはよくあるしな。うん、気にするな。僕も気にしない」
気にしたら負けだと思います。
「気にしてなんかないわ‥‥‥それで、今日はどうするの?」
僕が霧崎にこの言葉を言うなんてな。ちょっと顔に笑みが混ざる。
「レベルを上げる。それが今の自分にできることだ」
「‥‥‥そう。なら、私も付き合うわ。それが私にできることだから。というとパーティ組むのかしら」
「当たり前だ」
今できることをする。進め、高坂咲人。
あと、霧崎さっき僕の事知り合いって言った気が。グレードアップしたのかな?
まだまだ続きますよ〜




