赤髪
コメディタッチですね。お願いいたします
現在時刻18時。僕と夏美は主人の娘を助けに奴のグループのアジト?に来た。
「まぁアジトっていうかただのビルだな」
少し廃れた4階建てのビルだ。
「そうだね、でも油断はしないようにしなくちゃね」
夏美は迷いのない声で、まるで自分に言い聞かせてるように言った。
「ああ、油断大敵だな。‥‥‥いくぞ」
「うん」
ビルの中に入るとあまり掃除されていないのかあちこちにタバコの吸殻が落ちている。この世界にもタバコは存在するのか。高校生でも吸う奴は結構いると思うしマズイかもなぁ。
あと、夏美に言っておかなければならない事がある。
「夏美、これから戦う奴らは正直もうNPCとは呼べない。本来ならこのクエストは主人の元に娘を返してハッピーエンドで終わるはずなんだ。でも今回のは違う。分かってると思うけど主人は奴らと手を組んだ。もう、NPCじゃない。僕たちと同じ人と考えたほうがいい」
夏美ももう分かってるとは思っているが言わずにいられない。ちょっと心配性なのかな。
「‥‥‥分かってる。でもそしたら尚更殺せないよ‥‥‥」
「こんな状況になった今、殺さなくてもいいとは思うけど、っち!」
前から赤髪にサングラスをかけた20台後半くらいの男がガムを噛みながら歩いてきた。いま夏美に戦わせるのはマズイ!
「夏美隠れろ!」
「え、きゃっ」
隣にあった部屋に夏美を押し込む。さて、どうするか‥‥‥
「んぁ?おいおめぇどこのモンだ?」
なんかダルそうにしてるなこの人‥‥‥
「お前らのボスの首を取りにきた。大人しくしてれば他に危害を加えるつもりはない」
まぁ上手くいくなんて思っていないが相手は一人だ。何とかなるだろ。
「おぉ?んじゃあこの廊下まっすーぐ行ったとこの階段上がって右な〜。ま、頑張れや」
な、なんだこの人。この情報は本当の事か?分からん。
「お前はここのグループの人じゃないのか?」
「何言ってんだおめぇ、ここのモンに決まってんだろ〜?じゃなきゃここにいねーしよ」
頭をボリボリかきながら言うけど全然怖くないな‥‥‥。
「ま、ボス殺してーんならせいぜい頑張れや。あ〜ねむっ。ほら、いけいけ。そこの部屋は俺の部屋なんだよ」
‥‥‥え?
「な、夏美!」
ハッとして部屋に入る。
「さ、咲人〜」
そこには女の人の裸体の写真?が載っている本達が散乱している部屋の中に涙目になった夏美がいた。‥‥‥この世界にもエロ本があるのか‥‥‥。
「おぉ?おめぇきょーみあんのか?そりゃあるよな〜年頃みてーだしよ。なんなら一冊分けてやっても、え、女?」
うわっ、酒くさっ。あと僕の肩に顎を乗せるな。
「あ、あぁ俺たちは2人で来たんだ。夏美、こっち来い。汚れるぞ」
「う、うん」
「汚れるってなんだおめぇ?!目上の人にはなぁ、敬語ってモンをだなぁ」
なんかつっこまれた。ノリいいなこの人。
「この人は?」
少し身構えながら夏美はキッと赤髪を睨む。
「あ、夏美、身構えなくてもいいぞ。見たところ武器も持ってないし。ただの臭くて整理整頓できないおっさんだから」
「さ、散々な言い様じゃねーか。それに、見る目があめぇよ。武器は持ってるっつの」
そう言って着ていた汚いコートの中から小さな赤色の拳銃を出した。
「っ!」
直ぐにデュホークブレイドに手をかける。油断した!ビルに入る前に油断大敵とか言ってたのに!こんな奴でもここのグループの一員なんだ。
「だ・か・ら、やる気はねえって。ほれ、さっさと行け」
「‥‥‥咲人、信じていいと思う?」
「‥‥‥分からん。いきなり後ろから撃たれるかもしれない」
疑え、とにかく疑え。こいつは敵だ。
「メンドクセーなおめぇら。じゃあこれでいいだろ?ほれ!」
そう言って拳銃を僕に投げる。結構重いなこれ。
「他には何も持ってねぇよ。いいから行けよー。本が読めねぇだろ?」
「文字じゃないだろ?!」
あぁ、ついつっこんじゃった。調子狂うなもう。
「わ、分かった。夏美、行くぞ」
「いいのかな‥‥‥」
「多分大丈夫だろ。多分」
その時赤髪が手をポンッと叩いて僕の耳元で言った。近づくなよ!
「おめぇ、やっぱ欲しいんだろ?ほれ、これやるからよ。バレねぇ様にしろよ?」
夏美に見えないようにエロ本を僕に渡す。こんな誘い乗るわけが、あれ、ちょっとこの本に載ってる人沙羅に似てるな。沙羅の方が可愛いけど。
「ほれ、欲しいんだろ?俺のお気に入りだぜ?」
「さ、咲人?どうしたの?」
「な、なんでもない!なんでもない!ホント!」
「ほれ、いいから持ってけって。なかなかのブツだぞ?あ、彼女にゃバレねぇ様にな?」
赤髪が夏美をチラッと見ながら僕の服の中にグイッと押し込む。し、仕方ないなぁ
「彼女じゃないよ。じゃあ夏美、行こう!」
「う、うん?」
「おめぇ気をつけろよー?いろんな意味でよ!」
くそ、また余計なことを
「いろんな意味?」
夏美が首を傾げながら言う。
「なんでもないよ、無視だ無視」
というか一体何なんだあいつは。帰ったらじっくり考察しないと。NPCの事も服の中にあるこの本も!




