蜂蜜屋
更新ですー。誤字などあったら指摘して頂けると幸いです〜。
現在時刻17時20分。僕と夏美は蜂蜜屋に到着した。少し古ぼけた看板にはhoneyの文字。間違えてないな。
「すいません」
扉を開けて呼びかけるが誰も返事をしない。おかしいな
「すいません」
もう一度誰もいない空間に声をかける。すると奥からやつれた感じの中年の男の人がやってきた。
「‥‥‥なにか」
「おじさん」
すると僕の後ろから夏美の声がした。どうやらこの人が蜂蜜屋の主人か。
「き、君は。金は渡したのか?!」
ん?
「ごめん、お金はあいつらに渡さない。でも、娘さんは絶対助けるよ。待ってて」
夏美が凛とした声で言い放った。
「そ、そんな。他にどんな方法があるんだ。大人しく金を払ってくれないか」
んん?
「だ、だから詳しくは言えないけど助けるから、信じて!」
夏美は少し驚いた顔でそう言った。
「あいつらに金を払えば解決するんだ!頼む。払ってくれ!」
んんん?
「おじさ
「夏美、僕に任せて」
言いかけた夏美を止める。なにか、なにかおかしくないか?
「主人、俺たちは今から奴らのボスの首を取りに行く。そうすると娘はかえってくる。それじゃダメなのか?」
そう言うと主人はギョッとした顔で僕を見る。
「そ、そんなのダメだ!」
「何故です?」
「そ、それでむ、娘がかえってくる保証はないだろ!」
そう、ここだ。ここを切り抜ければ答えが見えるはずだ。
「もしボスの首を取った後にまだ反抗してくる奴らがいるならそいつらも確実に排除して責任を持って娘さんを助けます。それでもダメですか」
「さ、咲人?」
夏美はどこか心配そうな声で僕を呼ぶ。が、今は構ってられない。
「だ、ダメだ。君達はまだ子供じゃないか。殺すなんてできないだろう!それに平和的に解決するのが一番だろう?!」
客観的に聞けばいい事を言っている様に聞こえる。いや、普通に聞いてもいい事を言っている。しかし
「ここで大人しく金を渡すとまた金を要求され、娘は永遠にここには返ってこないぞ。俺は知っている。確信がある」
さぁ、どうくる。
「‥‥‥そ、そんなの分からないだろう!渡してみなければ」
確信した。
「主人!」
「咲人?!」
また。また自分の声じゃない様な低い怒鳴り声が出る。夏美は驚きを隠せず甲高い声を上げる。
「あんたは、本当に娘を助けたいと思っているか?」
「あ、当たり前だろう!何を言ってるんだお前は!」
「なら、俺たちに任せてくれ。主人には迷惑は絶対かけない。それじゃダメなのか?」
「ダメだと言っているだろう!金を払えと言っているんだ!」
「お、おじさん?」
夏美が人が変わったように怒鳴った主人に戸惑いを隠せずに呟いた。
「‥‥‥主人、最後だ」
俺は自分の背中にあるデュホークブレイドを手に取り素早く主人の首元に当てる。
「な、なにをする!」
「咲人!何やってるの!?」
「最後に聞く。お前は本当に娘を助けたいんだな?‥‥‥金の為じゃなく」
デュホークブレイドの刀身は今にも主人の首を切りそうなくらい突き付けている。
「あ、当たり前だ‥‥‥本当だ」
「‥‥‥本当の事を言わないと」
グッとデュホークブレイドに力を入れる。
「首、なくなるぞ」
「首、なくなるぞ」
ゾクッ!とする様な声が咲人から出た。なんだか、黒い。黒くて、濃い霧みたいな声だ。自分で何言ってるのか分かんない事くらい分かってる。でも、そう思うのが一番当てはまると思う。
あたしは咲人が何を言ってるのか分からない。おじさんは娘を助けたいと言ってるのになんでそんな事を言うの?お金のため?実の娘とお金なんてどっちが大切かなんて分かりきってるじゃん!なのに‥‥‥。
「俺がいる」そう言ってくれた咲人とは別人みたいだ。
‥‥‥なんか、イヤだ。こんなの違う。
「咲人、いい加減に」
「ひぃぃい!分かった!分かったから!その剣を下ろしてくれぇ!」
‥‥‥え‥‥‥?
「何が分かったんだ?ちゃんと言え」
ま、待ってよ。
「だ、だから、俺が娘を金を得るために利用した事だよ!いいから下ろせよぉ」
ちょ、ちょっと‥‥‥
「お前は俺たち旅人に娘が囚われた、お金がいるんだ。助けてくれとお願いした。そりゃ大抵の人は無視するだろう。でも断れない人や心から優しい人は断れない。でも、お前は奴らと協力して俺たち旅人から金を巻き上げようとしていた。そうだな?」
待って、待って、待ってよ
「そ、そうだよ!いいからどけろって!」
「何故、普通に奴隷にして売り飛ばさなかった?」
「そ、そうした方がトータルで考えると儲かるんだよ。だからどけろよ!」
「ちょっと待ってよ!!」
「‥‥‥夏美?」
「夏美?じゃないよ!なんで?!おじさん娘さん助けたいんじゃないの?!」
分からない、分からない!
「‥‥‥へっ、いいカモだと思ってたのにさぁ‥‥‥」
おじさんは首に剣を当てられながらも肩をすくめながら言った。
もう、ダメだよ。
「いい加減にしろ。切り飛ばすぞ」
黒い声で咲人が言う。
「お、おじさんは娘は大事じゃないの?!」
納得できないよ!できない!
「生意気なんだよ。なんでもかんでも逆らいやがってさ。蜂蜜屋だけじゃ食ってすらいけないのに結婚まで考えてるとさ。やってられるかってんだよ」
おじさんは吐き捨てるようにそういった。
「もう、分からないよ、なにも分からないよ」
力が入らなくて地面に座り込んでしまう。
「もうお前に用はない、死ね」
‥‥‥は?
「や、やめろ!金ならやる!やめろ!」
「‥‥‥その大事な大事な金に助けてもらえ」
やめて、やめてやめてやめて!
「ひぃぃいぃっ‥‥‥」
するといきなりおじさんはカクッと線が切れたように動かなくなった。気絶したの‥‥‥?
「‥‥‥僕は最初から人を殺す気なんてなかったさ。イラつきはしたけどね」
いつもの、咲人だ。あの優しくて柔らかい‥‥‥。
「ゴメン、ちょっと調子に乗りすぎたね」
「ホントよ、ばか」
「さて、この人はどうしようか。警察はいるのかな」
「どうなんだろう‥‥‥あっ、そういえば!」
確か、メニュー画面の奥の方に‥‥‥
「あった、牢獄!〈条例を犯した者をシスターが判断し入れる事が出来る。出るには心の改善が必要となる〉って」
「よし、そのシスターを呼んでみよう」
「分かった。シスター、来て!」
「分かった。シスター、来て!」
夏美がそう言うとその瞬間、上空から1人の女性が舞い降りた。
「呼び出しを確認。対象者を差し出してください」
腰まである白い髪が特徴的な人だった。いや、人かも分からないけど。とても無機質な声だ。
「あ、こいつです」
「了解、ジャッジします。‥‥‥完了。牢獄入りとします。感謝します」
そう言って主人とシスターは白い光に包まれて消えた。
「な、なんかすごかったな」
「うん、そうだね‥‥‥」
今回の一件で完全に確信した。この世界にNPCはいない。人間だ。しかしそうなるとクエストはどうなる?
「夏美、クエストはどうなってる?」
「どうなってるって‥‥‥。まだ、進行中だよ」
まだ続行中か‥‥‥。
「とりあえず、娘を助けに行こう。考えるのはその後だ」
「うん」
謎が多すぎるけど、分かった事もある。終わったら沙羅達にも教えてあげなきゃな。‥‥‥一応霧崎にも。




