昔と今
遅くなって申し訳ないです…>_<…
「おーい高坂、お前もこれからカラオケくるか?」
誰かが僕を呼ぶ。
「え、いいの?」
「おう、入学したばっかでみんなのことよくしらねーし、よろしく頼むぜ!」
そう言い僕の首に腕を回す。
その瞬間体が、心が、拒絶した。
「さ、触るなよ!」
考える間も無く、僕の口からは怒鳴り声が出ていた。
「あ、す、すま」
僕は急いで謝ろうとした。でも
「い、いや俺も悪かったよ。‥‥‥じゃあな」
そう言って彼は急ぎ足で立ち去っていった高校の入学式。
僕はスキンシップに過度の拒絶反応が出てしまう。こうなったのは中学2年生の頃からだったと思う。なぜかは自分でも分からない。
家族は大丈夫なのだが、多少のスキンシップは受け入れなければとは思うものの、心臓がキュッと縮まる様に体が受け付けてくれない。
それは沙羅も椿も、霧崎も例外ではない。
一度、本当に奇跡かとも思ったが、中学3年の一学期に転校してきた女の子には不思議と触れた。
しかし、その半年後に彼女は突然また転校してしまった。
僕は彼女に恋をしていたのかもしれない。人と別れるのが辛いと、初めて思った。
「高坂くん!」
「っ!」
「大丈夫?なんかすっごい思いつめてた顔してたよ?」
手を額に当てると変な汗がべったりとついていた。
「あ、ああ大丈夫だよ。朝食中にごめん」
「本当に大丈夫ですか?熱とかあるんじゃ?」
椿も心配しながら聞いてくる。
「ほんと大丈夫だって。ちょっと昔のこと思い出してただけだしね」
そう言うと沙羅が目を少し伏せた。
「辛い思い出?」
ありゃ、なんか余計な心配させてるな。
「いい思い出、ではないけどね。でも心配しないで?対したことないからさ」
余計な心配をかけるわけにはいかない。少し慣れてけたとはいえ、ここは異世界なのだ。
今は椿の問題を解決した翌日の朝だ。食事も食べ終わり、今日どうするかをみんなで考える。
「今の僕のレベルが9、沙羅は10、椿も6だ。次の街に行くのも一つの手だと思う。」
そう言うと沙羅はうーんと考え込む。
「私はスキルのスワンストローク、高坂くんはこの前手に入れたデュホークブレイドがあるからなんとかなるかな。あとは椿さんだね。」
そう、今の僕には新しい武器デュホークブレイドがある。黒みがかった刀身が特徴のレア武器だ。霧崎には感謝しなきゃな。
「そういえば椿はどの武器を使ってるんだ?」
「あ、短剣です。えーと、これなんですけど、この前NPCの人から話しかけられて、これを貰ったんです」
そう言って短剣を机の上に置いた。
「‥‥‥見たことないな、ん?NPCから声をかけられた?」
「?はい」
ゲームをやっていたころに見たことない武器に目を引かれたが、NPCから話をかけられるなんて事普通じゃあり得ない。ゲームの頃も向こうから話しかけてくることはなかったはずだ。それも当然、NPCはプログラムで決められた言葉を話すだけた。
「椿、その時なんて言われてこれを貰った?」
「えぇと、そこの旅人さん、これをもっていってください。って。断ったけど、どうかお願いしますって頼み込まれちゃって」
おかしすぎる。NPCから話しかけられるのもおかしな話だが、頼み込む?そんなことあるはずがないのに‥‥‥まさか
「NPCは、ノップはこの世界で〈生きている〉?プログラムじゃなく、自我を持っているのかもしれない。」
「こ、高坂くん?」
あ、また自分の世界に入ってた。まずいまずい。
「ま、まあその話はおいといて、この武器のステータスを見せてくれないか?」
「あ、はい」
椿が武器のステータスを見せてくれる。
「ありがとう、んーと、武器の名前は〈花風丸 カフウマル〉か。ん、んんっ?!」
「ど、どうしたの?」
沙羅が驚いた様に聞いてくる。
「あ、あれ僕のデュホークブレイドよりも攻撃値が高い‥‥‥」
「‥‥‥」
いや、沙羅さん、黙らないでよ。なんか僕が惨めになっちゃうじゃないかい。いや、それにしてもこの花風丸、攻撃値が半端ないことになってる。その代わりに防御値や素早さは無いに等しいが。まあどっちも当たらなければどうということはというわけで。それに装飾が綺麗だ。真っ赤な刀身に緑色の花の絵が掘られてる。
「いや、本当強いなこれ」
「よかったです。2人の力になれそうで」
ニコッと笑う椿。うん、なんて言うか、いい子やー‥‥‥。
「じゃあ、次の街に行こう。みんな十分すぎるくらいに強くなってる。椿もこれからよろしく。」
「よろしくお願いします!椿さん!」
「ーーはい!」




