ギャル達
椿のサンドイッチもテーブルに運ばれ、改めて話を再開する。
このイジメ問題を解決するにはまず、あのギャル達を知ることが必要だと思う。
「椿、あのギャル達の名前を教えてくれないか」
椿は腕を組み、んーと唸る。
「あの冷静だった人が中野麗美さん。最初に高坂さんに食ってかかったのが高橋くるみさん、もう1人が沢野恋歌さん、だったはず、です」
中野麗美、か。1番難しいのはこの人だろう。
「あ、それと同い年なんだから敬語使わなくていいよ?」
「い、いやちょっと難しいです‥‥‥。い、いずれそうさせてください」
「うん、まあゆっくりね」
無理はしちゃいけない。特に今はイジメの問題があるのだ。こんなことで気を使わせたくない。
「よし!まずはその3人を調べようよ!」
沙羅、なんでそんなに元気なんだい。まぁ同意見だ。でも、このイジメの問題源が本当に嫉妬だけか。そこも問題である。
「椿、そのギャル達の好きな人達からは何て言って告白されて何て言ってフったんだ?」
正直こんなプライベートな質問大変失礼だとは思う。僕だって聞かれたら困る。まあ告白されたことないけどね。
「え、えぇとみんな同じように、好きです付き合ってください。みたいな感じでした」
告白の言葉は普通なのか。でも普通に考えて単にフっただけであそこまで椿に執着するとは考えられない。人によって違うだろうけどさ。
「フった言葉は、えーと確か、私のどこを好きになったんですか?って聞き返しました」
‥‥‥え。
「それで確か全員が、顔が好みなのと〜みたいな感じでした」
成る程。
「えぇと、そのあと私なんて言ったかな。顔でしか判断できないようなゴミムシとはお付き合いできません。だったかなぁ」
‥‥‥WHAT?
「え、あの、これはどういうことでしょう沙羅さん?」
沙羅に振る。沙羅もとても困ったような顔をしている。
「さ、さあー?」
苦笑しながらそう言う沙羅。僕も同意見だよ。
「つ、椿?その、ゴミムシとか言っちゃったの?」
「あ、その私イラつくと性格変わるみたいで‥‥‥イジメの時は何故か変わらないんだけどね」
椿は少し苦笑しながら言う。ま、マジですか。なんかすごいな。
「や、やっぱり気味が悪いよね‥‥‥」
「あ、いやいやそうじゃなくて、なんか意外だったんだ。いいじゃないか、椿は武器をもってるんだよ」
そう、これは武器になる。ギャル達がこの性格が変わる事を知っているかは知らないが、これを見せれば少なくとも相手の気持ちも変わるだろう。
「え、あ、ありがとう‥‥‥初めてだな。そんな風に言われたの。」
椿が俯きながら言う。あれ、なんかまずいこと言ったかなこれ。いや、でもお礼言われたしいいのかな。まあいいか。
「かっこいー!椿さんマンガのキャラクターみたい!」
沙羅が半ば興奮したように言う。
「そんなに良いものじゃないよ‥‥‥友達とか、できないし」
「?もう友達じゃないんですか?私達」
沙羅が首を傾げながら言う。見事なコミュニケーション能力だ。
「あ、ありがとう。空音さん」
「沙羅でいいですよー。それに敬語もいらないですよ。私年下なんだし」
「あ、うん、沙羅ちゃんホントありがとう」
椿がニコッと笑って沙羅にお礼を言った。おお、確かに可愛い。
「それなら、沙羅ちゃんも敬語、いらないよ?」
「いやいやー、年上の人には敬語使うのは当たり前ですからー」
沙羅が手をブンブン振る。あれ?
「あれ、僕って沙羅より年上だよね?」
沙羅があっ!と思い出したように叫んだ。えぇ、忘れてたの?今日の出来事だよこれ。
「い、いやー、今日まで知らなかったからその、ね?」
何が、ね?なのか分からないよ。
「ま、今更沙羅に敬語使われても僕が困るからね。そのままの方が助かるかな」
正直敬語を使われるとこの世界で一緒に行動する場合不便になりそうであまり使って欲しくない。どうしてもって事なら仕方ないけど。
「うん!じゃあこのままで。椿さんにもできるだけタメ語で話すようにしますよー」
「うん、ありがと」
何にせよ、椿の性格の変化は予想外だった。僕はあのギャル達を傷つけたいわけではない。単に椿をイジメないで欲しいだけだ。さて、これからどうするか。




