椿
「君、名前は?」
「‥‥‥椿 桜です」
少し怯えた表情をしながらもなんとか答えてくれた。
正直言ってこの問題を解決するかは悩みどころだと思う。今回はうまくいったがまたギャル達は椿を狙ってくるだろう。あくまでも個人の問題だ。沙羅のはちょっと調子に乗りすぎたと思うし。現実世界での学校での関係をこのHPOの世界でも続けるのか、続けられるのか。
「まあ、まずは食べよーよ」
もう料理はとどいている。
「そうだな、えーと椿さんもなにか頼んだら?」
「あ‥‥‥はい」
そういうと店員がまたもすごいスピードでやってくる。
「オススメはねぇ、このジャンボ山の果実パフェだよ!」
それを夜ご飯として食べるのは沙羅くらいだよ。
「‥‥‥あ、これを」
そう言って僕のサンドイッチを指差す。
「かしこまりました。それと、ありがとうございました」
そう言うとすごいスピードで店員が店の奥に消える。すこし照れ臭くなる。
「まずは自己紹介かな。僕は高坂咲人。16歳だ」
「私は空音沙羅。15歳の高1だよ。よろしくね」
「椿桜です。16歳です」
同い年だったのか。見た目的に年下だと思ってた。
「直球で聞く。気分を悪くしたらすまない。君は、その、いじめられているのか?」
「‥‥‥そう、です」
椿が下を向きながら言う。自分でも酷いことを言っているのはわかっている。
「原因を教えてくれないか?分からないんだったらそれでもいい。言いたく無いのならそれでも構わない。」
ああ、ダメだ。なんか上から目線みたいになっている。こんな時にどういう口調で話しかければいいのか分からない。
「‥‥‥たぶん、あの子達3人のそれぞれ好きな人から告白されたから、だと思います」
‥‥‥ほぅ、モテるのね。そりゃそうか。こんな子がそれも気の弱そうな守ってあげたくなるような子がいたら好きになるのも無理はない。
「あの椿さん、その中の誰かと付き合ったりしてます?」
沙羅が椿に聞く。沙羅、その質問この問題に関係あるのか?
「‥‥‥ううん。私、外見で判断するような人、大嫌いだから」
彼女にしては珍しく、はっきりいった。
「うん、まあイジメの原因は嫉妬で間違いないと思う。でも、僕にはこの問題を解決することはできない。」
「高坂くん!」
沙羅が半ば叫ぶように僕の名前を呼ぶ。
「なんで?目の前に困ってる人がいるんだよ?!私の時も助けてくれたじゃん!」
この言葉になぜか過剰に反応してしまった。
「沙羅、僕が干渉してもっと関係が悪化したらどうする?椿がこれ以上いじめられていい訳ないだろ!」
自分でも何に怒っているのか分からない。こんなのただの八つ当たりだ。本当格好悪い。
「‥‥‥高坂さん」
椿が小さいながらも声を発した。
「あ、ああごめん。なんか取り乱して
「高坂さんが言っているのは結果論です」
僕がいい終わる前に椿が続けた。
「‥‥‥人によってもちろん違いますが、少なくとも私は、私の為に行動されて、私の力になると、言ってくれる人がいたらそれだけで嬉しいんです。結果がどうであれ、その過程が私を支えてくれるんです」
声は小さい。でも、一言一言が重みをもって僕に届く。そんなこと椿本人に言われたら言い返せないじゃないか。
「‥‥‥私は、助けてやるって言われたら、嬉しいんです。あ、高坂さんが私に関わりたくないのなら、話は別ですけど、す、すいません」
「ありがとう、椿。よし」
少し目をつぶり、深呼吸する。
「‥‥‥助けてやる」
「高坂くん、それでよし!だよ」
沙羅が笑顔になる。
「‥‥‥ありがとう」
椿も少し、笑顔になった。
助けてやると言った後とても恥ずかしくなったのは秘密です。