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霧崎がホルダーに拳銃をスッと戻した後僕は話し出す。
「霧崎、さっきのはお前の称号スキルか?」
霧崎は無表情のままで僕の目を見た。
「さっき、とはどのことかしら?」
「全部だ。ゴリラの動きが止まったのも、あの黒い光もだ」
「知りたいのかしら?」
「当然だ。あんなのこの世界のバランスが崩壊するぐらいだぞ」
「そうね、でもそんな簡単じゃないのよ」
「なにが簡単じゃないんだ、そこを教えてくれ」
「秘密って、言ったら?」
そう言われたらどうもできない。
「はぁ‥‥‥分かったよ。話したくなった時に話してくれ」
「それより」
霧崎はフッと微笑み
「さっきあのゴリラを倒した時に〈デュホークブレイド〉というものがドロップしたんだけど?」
デュホークブレイドはゴリラからのレアドロップ品である。
「ん、おめでとう。使わなくても売ったらなかなかの金になるはずだぞ」
すると霧崎は剣を僕の前にもっていき言う。
「‥‥‥あげる」
ボソッと小さな、聞き取れないような声で言った。
「え、いいのか?なかなか手に入らないぞこれ」
「いいのよ、私は銃しか使わないしお金にも困ってないもの」
「そうか、ならもらっておくよ。ありがとう」
ここではクールに対応しているが内心では飛び跳ねるほど嬉しい。
霧崎がメールの添付品としてデュホークブレイドを送ってくる。
「よし、受け取った」
「ねぇ、お腹減ってきたよー」
さっきから発言しない沙羅がきゅうぅっという可愛らしい音とともに言った。そう言えば喫茶店でなにも食べていなかった。
「そうだな、戻ろうか」
「ちょっと待って」
霧崎が僕たちの後ろから声をかける。
「ここで分かれましょ、私は次の街へ行くわ。じゃあね」
「ちょっと待ってよ!」
沙羅が霧崎の腕を取って半ば叫ぶように言う。
「なんで1人で行っちゃうの?私達も着いて行くよ!」
達も?あ、僕も入ってるのねそれ。霧崎は無表情のままで沙羅を見つめる。
「‥‥‥あなた達がいても足手まといになるだけよ」
実にストレートで分かりやすい理由だ。
「で、でも!」
「沙羅、俺たちがいても霧崎の足手まといになるのは事実だ」
別に僕は沙羅に賛同するつもりはない。元々は僕も霧崎も1人なのだ。
「沙羅さん、ごめんなさい楽しかったわ」
霧崎も少し微笑み紗羅に言う。
「いつか、私が追いついたらまた一緒に戦ってくれますか?」
紗羅が涙目になりながら聞く。
「ええもちろんよ。それとあなた」
「ん?」
「‥‥‥いえ何でもない。デュホークブレイド、大事に使ってね」
何か言いたそうだったがそこには触れないでおく。
「ああ、大事に使うよ」
「じゃあね、また会いましょ」
霧崎が歩き出す。その黒づくめの後ろ姿は迷いなんてない霧崎らしい分かれかただと思った。
「じゃ僕たちはカフトへ戻ろうか」
僕もお腹減ったしね。
「‥‥‥うん、そうだね」
まだ元気の出てない紗羅が涙を拭きながら答える。
「山菜ドックでいいかな?」
「もう飽きたってば!」
赤くなった目のままで笑う紗羅。そんな沙羅をどこか可愛いと思った。
「とりあえず帰ろう」
「うんっ!」