ゴリラ
15.ゴリラ
草原エリアは見晴らしが良く、相手のレベルも低いことから様々なプレイヤーが狩りをしていた。僕と沙羅は効率重視だったので相手のレベルが高い洞窟エリアに行っていた。今は鬼坂の死んだ場所へ向かっているところだ。
「霧崎、草原エリアもゲームのころと同じモンスターか?」
「ええ、そうよ。まああまり強くないから直ぐに洞窟の奥で戦い始めたけどね」
霧崎も洞窟で戦っていたようだ。と、そこで僕は霧崎のレベルが気になり霧崎のプロフィールを出す。パーティを組んでいると装備しているものなど、簡単なプロフィールはわかる。ええと、レベルは
「じゅごっ!」
ちょっと噛みすぎて変な発音になってしまった。霧崎の現時点のレベルは15。沙羅でも9なのだ。
「お前、チートとか使った?」
「バカにしてるのかしら?というより、この世界にチートというものは存在するの?」
「冗談だよ‥‥‥でも良くレベル上げたな。チートについては分からんが使えたら苦労しないと思う」
「ま、カフトへ帰って来たの4日ぶりになるわ。ずっと洞窟に篭ってたの。陽の光が眩しいわ」
ん?‥‥‥
「4日ぶりって、お前無茶しすぎだろ‥‥‥」
洞窟にも安全地帯があるため休憩はできる。しかし目の前をモンスターが通ったりモンスターの鳴き声が聞こえたりと、安心できる場所ではない。
「あ、あのー」
沙羅がちょこんと手を上げて言った。
「前々から思ってたんだけど2人って現実世界ではどういう関係だったの?」
なぜか最後は弱々しく言った。疲れてるのかな。
「んー‥‥‥そうだな他人以上知り合い未満、かな」
多分的中しているだろう。
「そうね、席が隣だったというだけよ?心配しないで、沙羅さん」
霧崎は少し微笑んでそういった。何に心配するのか分からんがその笑顔はレアだ。カメラ持ってたらつい撮影しちゃうくらい。
「えぇ?!心配ってなんのことですかぁー?あははー」
急に元気になった沙羅。‥‥‥よく分からないけど、体調気をつけてね。
「沙羅、後どれくらいだ?」
「ん、いま高坂くんの踏んでる場所だよー」
「ここか‥‥‥」
特に何もない平原だ。見晴らしもいい。こんな所でマップボスが出るのだろうか‥‥‥。すると霧崎が拳銃を太もものホルダーから勢いよく抜いた。
「何をやってるの?くるわよ」
「いや、だからなにも」
そう言った瞬間、凄いスピードで僕の後ろからゴリラが突進して来た。
速あっ!
「くっ!」
勢いよく緊急回避し、なんとか躱す。
「スピード速すぎだろこいつ!」
僕の両手剣の攻撃当てれるわけないじゃん!
「わ、私のスワンストロークも無理かも‥‥」
このゴリラの名前は〈MB.クイックゴリラ〉まんまだな。しかしレベルは14。勝てるかは分からない。
クイックゴリラは狂ったようにグボァァァアッっと咆哮し、また僕に向かって突進してくる。だから速いって!
「はっ‥‥‥!」
また緊急回避をギリギリでし、なんとか躱す。くそっ、よけてるだけじゃダメだ。攻撃しろ!
「はあぁっ!」
剣を上段に構え、突進して来たゴリラの真正面に立ち、初期スキル〈スイング〉を勢い良く振り下ろす。
「グボァァッ」
ゴリラの目にヒットしたが削れたHPは雀の涙ほどだ。
「やぁっ!」
沙羅が細剣初期スキル〈フェンシン〉を素早くゴリラに向かって突き刺す。しかし、僕よりかはダメージを与えられたが、それでも倒し切るにはあと1時間はかかるぞ、これ。精神を疲労させながらのギリギリの戦いを1時間以上も続けられる自信がない。
「霧崎!一回撤退するか?!」
ゴリラの突進を躱しながらそう言うが、返事は帰ってこない。
「霧崎!友達いない霧崎咲子!撤退するか?!」
「あなた、あとで覚えときなさいよ」
すると、いつの間にいたのかゴリラの正面に霧崎が立っていた。拳銃をスッとゴリラに向け、ゴリラの口の中に銃身を押し込む。何故かゴリラは動けていない。
「さようなら」
ゴリラ口に隠れていて何をしたか分からないが、ゴリラの体の内側から黒色の光が漏れてきている。その光はどんどん漏れていく。
「グ、ボァァ」
そして、体すべてが黒色の光に覆われ、その光はゴリラを包みながら圧縮されていく。テニスボールくらいの小さな球体になった光はズッと霧崎の拳銃に吸い込まれる。
「な‥‥‥」
「な、なに?」
沙羅も驚いている。
ふぅ‥‥‥疑問点が多すぎる