目撃者
よろしくお願いします。
13.目撃者
鬼坂のHPが0になり、そのそばに霧崎がいたという現場を目撃した神木の友達に会えることになり、今はカフト内の喫茶店もどきにいる。時間になっても神木の友達は現れず、店内で待ちぼうけをくらっていた。
「時間に遅れる非常識な人からなにを聞くつもりなのかしら?」
なんかトゲがある言い方で霧崎が僕に聞いてくる。
「会ってもらうのはこっちなんだ。少しは我慢しろよ‥‥‥聞くことは他に何か見ていないかと、ボスモンスターについて何か知らないかだ」
聞くことは実に単純だ。なにも見ていないと言われたらお終いだ。しかし、神木の話からするとダチが死んだ、その近くに霧崎がいたという情報しかない。他にも何か知っている可能性は十分ある。ボスモンスターについては様々な人に聞いたりしているからついでのようなものだ。
「ボスモンスター?」
沙羅が首を傾げながら聞いてくる。
「そう。ボスモンスターには2種類いるんだ。一つはエリアボス。街のヌシみたいなものかな。これは絶対に倒さないと次の街へ進めない。確か、5の倍数の街で倒さないといけないはず。レイドパーティとかじゃないと攻略するのは厳しいかな。あ、レイドってのはパーティをいくつも合わせて作る大きいパーティみたいなものかな。で、もう一つは」
続いて言おうとしたとき霧崎が話をつないで説明した。
「もう一つはマップボス。ある地帯に稀に出現するレアボス。その地帯にしてはズバ抜けて強いわ。倒すと凄いアイテムや装備がドロップすると言われているけど倒した人はまだいないはずよ」
「えーと、じゃあ今回聞くのはマップボスの方ってこと?」
沙羅がオレンジジュース(のようなもの)を飲みながら聞いてくる。
「そう、カフトの草原地帯はマップボスが存在するはずなんだ。たしかゴリラみたいなやつだったと思うけど‥‥‥」
そう、だから色んな人に話を聞いている。もしかしたらゲーム時代とモンスターが違うかもしれない。霧崎も情報は特にないようだ。
何故、僕がそのマップボスを探しているか、それはそのモンスターはレアドロップで超強い両手剣をドロップする可能性があるのだ。
「あなたはレアドロップ狙いでしょうね」
霧崎が心を見透かしたように言う。
「あぁ、そうだ。まだ勝てるとは思ってないけどな」
そう。マップボスは通常モンスターのレベルより5〜10上なのだ。僕のレベルは8。安全を考えると相手のレベルより3は上でいたい。
ボスについて話していると、喫茶店の扉が開き、茶髪でピアスのこれまたイメージ通りのヤンキーくんが現れた。
「あ、お前らか?話聞きたいっての」
何故か距離を詰められて睨まれる。
「そうだ。来てもらって助かるよ。話を聞かせてくれ」
だがここで怯んではダメだ。言いたいことを言わなければ。
「鬼坂についてか?」
「それもだが、まあとりあえず座ってくれ」
何故かチッと舌打ちして座るヤンキーくん。
「僕は高坂咲人。えーと」
チラッと沙羅と霧崎の方を見る。自分で自己紹介してくれ。
「あ、えと空音沙羅です」
「霧崎咲子よ。覚えなくていいわ。いや覚えないで」
すると霧崎の黒づくめの格好に見覚えがあるヤンキーくんは叫んだ。
「て、てめぇ!鬼坂んときの!」
「誤解だヤンキーくん。霧崎じゃない。たまたま居合わせただけだったんだ」
「ヤンキーくん!?舐めてんのかぁてめぇ!」
あ、またやっちゃった。
「ち、ちょっとやめてよー」
レストランの中で浮いてる僕たちに沙羅が慌てたように注意する。
「す、すまん。名前を教えてくれ」
素直に謝り名前を聞くとまたしても舌打ちして言った。
「早乙女豪太だ。覚えとけ!」
またすごい名前だな。いや、人のこと言えないけど。
「覚える意味もないわね。ヤンキーくんでいいんじゃないかしら?」
「いい加減にしろよてめぇ?!」
「霧崎、俺から頼む。これ以上ややこしくさせないでくれ」
こんな毒舌キャラだったのかこいつ。クールな美少女ってだけじゃなかった。
「も、もうやめてよー」
するとヤンキーくん、じゃなかった。早乙女が沙羅のことをジッとみる。
「あんた可愛いじゃん。これ終わったらちょっと付き合えよ」
あ、なんかイラっとした。
「ちょ、ちょっと困るかなーていうか」
「悪いけどこの後用事があるんだ」
あるはずないけど言っておく。
「そ、そうなのー。ごめんね」
困ったように笑って誤魔化す沙羅。
「チッ彼氏持ちかよ」
なんだか誤解されたがこの際構わないだろう。乗っかった方が楽だ。
「で、肝心の話についてだが」
ここからが本題だ。