死人
よろしくお願いします。
11.死人
「霧崎‥‥‥」
膝まである黒いロングコートに黒のロングスカートを履いていた。女子高生にあるまじき姿なのに、なぜか似合ってみえる。まだカフトにいたのか。てっきりさっさと次の街に行ってるかと思っていた。
「いいからさっさと言えコラァ!」
名前が分からないからとりあえず金髪くんと呼ぼう。金髪くんは何か霧崎に対して用があるようだ。
「うわっ、ああいうの苦手だなぁ」
沙羅が少し嫌そうな顔をして呟く。霧崎はため息をつき、見られると凍りそうな目で金髪くんを見る。
「‥‥‥なにを?」
「っ、だから!俺のダチが死んだんだよ!その近くでお前を見たって奴がいんだよ!お前が殺したのか?アァ?!」
少し霧崎の雰囲気にビビりつつも言い切った。
ここで一つ説明すると、ゲームの頃からプレイヤーが他のプレイヤーを攻撃しHPを0にした場合、0になったプレイヤーはモンスターに倒された場合と同じで〈死亡〉扱いになる。これを通称PKという。勿論ゲームでは死亡しても近くの教会で復活した。ゲームの頃は暗黙の了解で禁止にはなっていたが、運営がPKをできない設定にすることはなかった。しかし、この世界で死亡した場合は教会で復活できるわけでは無い。本当の意味で死亡するのだから。
「‥‥‥もし、そうだとしたらどうするの?」
僕は霧崎が人を殺すとは思わないが、その言い方は良く無い印象を与えてしまう。
「や、やっぱりお前がやったのかぁ!殺してやる!」
そう言って金髪くんは腰にある剣を鞘から抜く。ここは街の中だから攻撃はできてもHPが減ることは無いし痛みも武器による痛みはない。金髪はもはやそんな事まで頭が回ってないようだ。
「死ねェェェ!」
キャッと悲鳴を上げる沙羅。周りもHPが減ることは無いので止めようとはしない。僕も止める気はない。金髪くんの言いたいことも分かるのだ。いや、僕には友達いなかったからちゃんとは分かってないだろうけど。友達が死んだ。それだけで辛いだろうに、そこに殺した可能性のある人物が目の前にいたら憎いのは当然だろう。
「‥‥‥」
霧崎も避ける気は無いようだ。
金髪くんの剣が霧崎の頭に振り下ろされ、頭と剣の距離は10センチもないようなところでドンッ!という発砲音がした。その発射された銃弾は振り下ろされていた剣に直撃し、金髪の手から剣が吹っ飛んだ。その銃を持っていたのは霧崎の右手。シルバー色の拳銃だ。
「痛みがなくたって罪も無いのに切られるのは嫌よ」
拳銃を太もものホルスターへと戻しながらそう言う。
「やってないなら最初にそう言えよ」
つい、僕の口から言葉が漏れる。ボソッと沙羅くらいにしか聞こえないような声だったのに霧崎には聞こえたようだ。
「久しぶりね」
無表情のまま話しかけてくる。
「5日しかたってないから久しぶりとは言わないだろ」
我ながらどうでもいいことを言っていると思う。霧崎の目は僕から隣にいる沙羅に向け少し驚いたような顔をする。無表情以外の顔を見るのは初めてかもしれない。
「あなたに女子を口説く事ができるとは思わなかったわ」
「ばか言うな、学校で友達すらいなかった僕が口説ける訳ないだろ」
「あなた名前は?」
いつの間にか無表情に戻っていた。
しかも完全にスルーされた。
「空音沙羅、です」
「そう、私は霧崎咲子。そこのひととは」
「自己紹介の前に聞きたいことがある。お前、本当に金髪くんの友達を殺して無いんだな?」
霧崎が全部良い終わらない内に割って入る。まずはこの事を確認しなければいけない。あとそこの人って僕の名前知らないの?
「‥‥‥あなたは私がやったと思う
の?」
「聞き返すな、答えろ」
つい強い口調になる。霧崎は無表情のまま言った。
「殺すわけないじゃない」
霧崎は迷いのない口調で言う。そう最初から言えばいいんだよ。
「なら、金髪くんに話を聞かないとな」
「‥‥‥相変わらずね。で、金髪くんって何かしら?」
「あ」
心の中のあだ名で呼んでた。