カフト
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9.カフト
初戦闘を無事に終えた僕と沙羅は第2の街〈カフト〉へ来ていた。カフトは森をイメージされていて最初にすることは今日の宿探し。今の時間が18時30分。この時間は元いた現実世界と一緒かは分からないが、今は少し暗くなり始めている。
「できるだけ安い宿を探そう。今の
僕たちは600サン弱しか持ってないんだ。」
「そうだねー安いところかー、んー」
すると沙羅がここは?と聞いてくる。
「ほら、これなら割り勘すれば1人60サンですむし」
んん?
「結構眺めも良さそうだよー。建物も7階まであるらしいよ。」
んんん?
「ちょ、ちょっと待って。何かおかしくない?」
沙羅はキョトンとしている。
「へ?なにが?」
「なにが、じゃないよ。割り勘って何のことなの?」
「だから宿の‥‥」
なにか勘違いしているようだ。
「別に割り勘しなくてもお互いが一部屋分払えばいいじゃないか」
「んん?一部屋しか借りないのに何でお互いが一部屋分払わないといけないの?」
なるほど。意見の食い違いがどこで起こっていたか分かった。しかし
「それは却下だ」
勿論ダメに決まっている。
「えぇ!なんで?安いよ?!」
そういう問題ではない。
「安くないよ!安いとこもっと探せば‥‥‥ほら、ここだと一部屋40サンだ。」
相当ボロいしベッドは石だけど。
「えぇ、じゃあそこを割り勘?」
違うってーの!
「僕は寝る時だけは一人じゃないとダメなんだよ。」
「あーそうなんだ。ごめんね、安くなると思ったんだけど‥‥‥」
「沙羅は好きな所でちゃんと寝た方がいいよ。」
流石に女子はボロボロで石のベッドで寝ることは嫌がるだろう。
「じゃあその宿屋行く?」
「え、沙羅もそこで寝るつもり?石のベッドだよ?超ボロいよ?」
何故かそこで沙羅はドヤ顔をする。
「ふふん、私寝ることに関してはプロなんだよ!授業中にもすぐに寝れるし!」
いや、それはダメだろ
「ということでー、レッツゴー!」
この世界に来てまだ一日も立っていないが、今日でこんな笑顔を見せれるのは沙羅だけではないだろうか。しかしやはり疑問に思ってしまう。
「‥‥‥辛くないのか?」
聞かない方がいいのかもしれない。でも、無理はダメだ。
「大丈夫だよ。現実世界の私は親のいいなりになってただけなんだー。将来はこうなれ、恥をかかせるな、って。だから、変だと思うけど、今は少し楽だよ」
沙羅も現実世界では色々と苦労しているらしい。
「そうか、だが同情はしないぞ」
他の家の事だ。僕が口を出しても変だし、同情なんてするのも何か違うと思う。
「うん、同情されちゃうとこっちも気を使っちゃうからね」
沙羅は少し困ったような笑顔でそう言った。
そこから少し歩くと沙羅のお腹がクゥゥとなった。
「あ、あははー、お腹すいちゃった」
この世界でもお腹は空くようだ。なにか食べるものを売ってないか周りを見渡す。するとパンに山菜が挟まれた〈山菜ドック〉なるものを発見する。
「あれでいいか?」
「うん!」
一つ5サンか。
「山菜ドック二つ」
10サン減った後、NPCの店員が無言で山菜ドックを二つ渡してくる。愛想ないなあ。
「はい」
沙羅に手渡したら僕もお腹が減ってきた。その場でかぶりつく。
「あ、お金‥‥‥」
「ん、あぁ、いいよ。1人ずつ買うと時間かかっちゃうし」
「うん‥‥‥ありがと」
山菜ドックを見つめながら微笑んでいる沙羅をみているとこのくらいいくらでも奢ってやると思ってしまう。
「じゃ、宿屋いって早めに寝るか」
「うん!今日は濃すぎる一日だったねぇ」
いきなり連れて来られた世界でいきなり慣れろという方が無理だろう。
でも、もう戻れないし戻り方も分からない。現実世界にいる家族のことを思い出すと涙が出そうになる。だが泣いてもどうにもならない。今はとにかく前に進もう。
それから僕たちは宿屋に着き、別々の部屋の石のベッドで寝た。次の日体のあちこちが痛かったのは言うまでもない。