第1話 新しい家族(前編)
第1話前編です。
いつものドールハウスでの和やかな日常。
おやおや?マスターが嬉しそうな笑顔を浮かべています。
「あぁ、遅れちゃう!」
トテトテトテトテ...
桜色の袴をふわふわりと翻し、奇麗に磨かれた板張りの廊下を駆けていく。
漆黒の長くストレートの髪もふわふわりとしつつ第1ドールが軽やかに駆けていく。
長い廊下を駆けた先にあるトビラ、それを小さな手がキィィィと音をたてつつ開いた。
ゴタゴタとものが多くおかれた床。ものを踏まないように足を奥へ奥へと進める。
「おくれてすみませんマスター」
「大丈夫だよ、さくら」
優しく微笑む黒い髪の青年。
その青年はドールマスターでありこの店の店主の神木夏太だ。
「それでね、さくら。君を呼んだ訳はね」
一度言葉をきって、子供のように無邪気に笑う。
「新しいさくら達の妹達が増えるよ」
「本当ですか!?マスター!」
嬉しそうにさくらは目を輝かせる。だかすぐに首を傾げてマスターへと訪ねる。
「あの…、妹『達』とは…?」
「さすがさくらだね」
「今回はね、今回のドールはなんと!双子なんだ!」
「また無理をしたんですか…」
呆れの中に少しだけ嬉しさの混じった溜息が部屋にひびいた。