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ちょっと長めです。

 西の空には綺麗な夕焼けが広がり、東の空には三日月が淡い輝きを放っている。

黒髪の男性とシンが睨み合っている。シンの横にはアヤミとユキが並び、同じように彼を見つめている。

「アヤミは、渡さない。俺の婚約者だ。」

「それは、マザーが勝手に決めた事だ。俺達は、愛し合っているんだ。どうして、邪魔をするんだ。」

「邪魔をする?冗談だろう?俺とアヤミの間を邪魔しているのは、お前だろう。」

「平行線だな。」

「アヤミの事を、マザーは犯罪者として追っている。そんなアヤミにしたのは、お前だ。間違っているのは、お前達だ。」

「それでもアヤミは、俺といる事を選んだ。」

「ごめんなさい。私、やっぱり、シンと離れられない。一緒にいたいの。」

 アヤミが黒髪の男性に静かに言い放つ。彼は、少し淋しそうにアヤミを見つめた。

「こんな事で一生をダメにしてしまうんだ。今なら、未だ戻れる。考え直すんだ。」

「ごめんなさい。もう、戻れない。例え、マザーに追われてもシンといたいの。シンと一緒なら、強制(きょうせい)消却(しょうきゃく)処理(しょり)も怖くないわ。」

「アヤミ…。」

 シンの足元に突然、大きな炎の塊が飛んでくる。後ろにジャンプをして、それを避けた。

「アヤミ、離れるんだ。」

 アヤミはユキに連れられ、シンから離れる。シンの周りだけ炎が燃え盛ていた。

「シン!」

 シンが天に手を伸ばすと、さっきまでの晴れが嘘のように雨雲が集まってきて、一瞬にして雨が降り出す。

 黒髪の彼が不敵に微笑み、地面に掌を向けると大地が揺れ始めた。

「やめて!」

 強い風が吹き、地面の揺れは収まる。

「アヤミは、手を出すな。大丈夫だよ。俺にも負けないほどの力があるんだ。アヤミも知っているだろう。」

 シンがアヤミに優しく微笑みかけた。



「RRRRRR、RRRRRR。」

 けたたましい目覚まし時計の音で夢から覚めた。

まだ頭の中は夢の中のようにふわふわしている。

「シンにも力があるの?」

 呆然と呟き、自分の掌を見つめた。

「私達、天上球で一緒にいたの?」

 立ち上がり、カーテンを開けると眩しいほどの光が入り込む。

「教えて。これは、夢なの?それとも本当の私達なの?」

 空を見上げた。太陽は光を降り注ぐだけで何も言ってくれない。

「トントン。」

 ドアをノックする音でここじゃない場所にある思考が現実に戻ってくる。

「お姉ちゃん、起きている?」

 一紗が顔を覗かせ、私服姿で現れる。

今日は、土曜日だった事を忘れていた。学校がある日のように目覚ましをセットしたのがその証拠。

「一紗ちゃん、おはよう。どうしたの?」

「お姉ちゃんに相談にのって欲しい事があるの?今、いいかな?」

「いいよ。どうぞ。」

 小さな体で椅子に座り込むと、彩美はベッドに腰掛けた。

「あのね、私、学校に好きな人がいるの。」

「好きな人?」

「うん。勇気(ゆうき)くんと言って、とっても格好良いの。それに優しいの。」

「うん、それで?」

「でも、いつも飛鳥(あすか)ちゃんといるの。飛鳥ちゃんと勇気くんは、お家が傍なの。勇気くんは、飛鳥ちゃんが好きなのかな?私に勝ち目がないかな?」

「勇気くんは、飛鳥ちゃんが好きだと言っているの?」

「ううん。聞いてない。」

「そっか。」

 彩美は目を細め、一紗を見つめた。幼いなりに真剣に人を好きになり、胸を痛めているのが表情に表れている。

「勇気くんに聞いてみたら?飛鳥ちゃんを好きなのか、それだけでも。」

「それでも友達でいられる?」

「うん。一紗ちゃんが、望むなら。」

「そうかな?」

「そうだよ。」

「告白は、まだしたくないの。だって、勇気くんと仲良しでいたいんだもん。」

「そっか。頑張ってね。一紗ちゃん。」

「ありがとう、お姉ちゃん。私、聞いてみる。頑張ってみるね。」

「うん。」

 一紗が肩の荷が下りたように嬉しそうに笑う。

「お姉ちゃんも好きな人がいるんでしょう?でも、お兄ちゃんじゃない。」

「うん。」

 彩美は少しだけ俯き、小さく頷いた。

一紗は真剣に相談に来てくれた。はぐらかしたりせず、答えるべきだろう。

「上手くいっていないの?」

「えっ。」

 驚いて顔を上げると、一紗は彩美を真っ直ぐに見つめていた。

「ちょっと、ね。」

「好きなら手を離しちゃ、ダメだよ。」

「一紗ちゃん…。」

「ねっ。お姉ちゃんの幸せが一番大切だよ。お兄ちゃんなら平気。格好良いから、他の人を見つけられる。だから、気にしなくても大丈夫だと思うよ。」

「ありがとう、一紗ちゃん。」

「そろそろ、朝御飯だよ。下に行こう。」

「うん。着替えをしてから行くから、先に行っていて。」

「うん。」

 一紗の背中を見送って、溜息を漏らす。

「好きなら手を離してはダメ、か。」

 呟き、着替えを済ませる。

新と一緒にいたい気持ちでいっぱいだった。それでも、一緒にいてはいけないと自分に言い聞かせようとしているのに…。


 食欲なんてない。その気持ちを無理矢理押し潰し、朝食を詰め込み、部屋に戻ってきた。

何もする気になれずに、手元にあった雑誌を開くと、華やかな夏服がページを彩っている。

「もうすぐ、夏休みね。」

 独り言を呟き、雑誌を捲る。鮮やかな色合いに心は躍らないまま。

「トントン。」

 ノックが聞こえて、顔を上げた。

「はい。」

「俺。入ってもいいか?」

「どうぞ。」

 一仁が、ポケットに手を入れて、中に入ってくる。

「どうしたの?」

 ベッドに腰掛けたまま、一仁を見上げた。

「遊びに行かないか?と言っても、どうせ拒否するつもりだろう。せめて、散歩くらい一緒に行かないか?いつまで、家に閉じ籠っているつもりだ?」

「ごめん。そんな気分じゃないの。」

「七海の事か?」

 彩美は黙ったまま頷いた。

「忘れてしまえばいいさ。」

「そんな簡単な気持ちじゃないの。」

 一仁から目線を逸らして、俯いた。

「俺と付き合えばいい。俺が忘れさせてやるよ。簡単な事だよ。いい加減、現実を受け入れろよ。」

「ごめんね。」

 彩美は立ち上がり、一仁を見上げた。

「もう、一人にしてくれる?」

「彩美、俺を見ろよ。もう七海の事なんて、忘れてしまえ。」

「かずちゃん、ごめんなさい。まだ、そんな気持ちになれない。私はどうしようもなく新が好きなの。好きなままなの。」

 一仁が彩美の肩を強く持った。彩美は、身体を左右に揺らしながら、その手から逃れようとするが、びくりともしない。

「かずちゃん?」

「彩美が俺のモノになればいいんだ。」

 一仁の瞳の色が変わる。一気に距離を詰め、彩美を両手で囲うように両手が伸ばされる。

「嫌。」

 逃げ出そうと身体を逸らすが、強く腕を掴まれ引き寄せられてしまう。

「やめて!」

 彩美が懸命に拒否を示し、抵抗する。それでも力では勝てずに顔が近付いてくる。

「イヤッ!」

 身体が熱ると同時に、鋭い風が吹き荒れる。その一太刀が一仁の頬に傷を作り、血を滲ませる。

「あっ。」

 一仁の瞳に表情が戻った。彩美を解き放ち、呆然と立ち尽くしている。

「ごめん。」

 小さく呟き、そのまま背中を向け、部屋を出て行った。

再び一人きりになった彩美は、ベッドの上に崩れ落ちる。

「かずちゃんのバカ。」

 涙が一気に溢れ出す。膝を抱え、声を潜めて、しばらく泣き続けた。

「TRRR、TRRR。」

 携帯電話が着信を知ら始める。出るつもりはなかったが、なかなか鳴り止まない着信に、涙を拭いてゆっくり通話を開いた。

「もしもし。」

「彩美か?」

「新…。」

「今から、会いたい。どうしても会って、話がしたい。今から、会えないか?」

 彩美は、電話を持ったまま、呆然とする。彩美も新に会いたかった。でも…。

「家の前にいるんだ。少しでもいい。ダメかな?」

「わかった。すぐに行くね。」

 急ぎ足で、外に出た。自分の顔が泣いたままの酷い状態である事を忘れたまま。

広い庭を抜けると、新が門の前に立っている。

「新…。」

「彩美。おはよう。」

 目元に泣いた後の違和感を残したまま、出来るだけの笑顔を作った。

「おはよう。」

 新は、笑顔で彩美を迎え入れた。

「どうしたの?」

「うん。彩美が力を使ったのが、わかったから、心配になってさ。」

「えっ?」

 新が言っている意味が理解出来ずに、何度も瞬きを繰り返す。

「どうして?」

「知っているよ。俺達は、ずっと一緒にいたじゃないか。」

「嘘…。」

 彩美の瞳から涙が零れ落ちた。

さっき、泣いたのとは違う。少しぬくもりを取り戻した涙。

「どうして、早く言ってくれないのよ。バカ。」

 新の胸に頬を寄せる。

「彩美?」

 慌てながらも彩美の肩を抱き寄せる。

「それで、ずっと様子がおかしかったのか?俺を避けていたのか?」

 泣きながら、声も出せずにただ頷いた。

「ごめんな。」

 新の優しい手がそっと彩美の髪を撫ぜる。その手の心地よさに安堵しながら、彩美は涙目のまま、新を見上げた。

「これからも、ずっと一緒にいられるよね?」

 笑顔を見せる。

「ずっと一緒だよ。」

 新も笑顔で応えた。

「よかった。」

 彩美の涙を指先で拭い、愛しそうに瞳を細める新。

「行こう。」

「何処へ?」

「俺達の部屋。お茶でも飲みながら、話をしよう。ゆっくり出来るだろう?」

「そうね。」

 新は、右手で彩美の手を握り締め、左手でマウンテンバイクを転がしながら、歩き出す。

彩美は嬉しそうに新を見上げた。

「どうした?」

「新、ごめんね。」

「気にしていないよ。それに、力だけが戻ってきたら、一緒にいられないと思うだろう。彩美の力に気が付いて、良かったよ。」

「ありがとう。」

 新の手をきつく握り締めた。


 部屋に着き、上がりこむ。静まり返っている。

「行は?」

「出掛けたよ。友達と遊びに行った。」

「新は、いいの?」

「断った。彩美の方が大切だから、さ。」

「ごめんね。」

「いいよ。こうして、一緒にいられる。」

「ありがとう。」

 ソファーに並んで座り、新に寄り添う。片手で、彩美の肩を抱き寄せた。

「俺の力について、少し話すよ。スィ・オウシャン、水の天使と呼ばれている。彩美は、ライト・シャインとブリーズ・ウインド、光と風の天使だ。行は、ブリーズ・ウインドと二層人のハーフだ。」

「二層人?」

「俺達の住んでいた天上球という場所は、三層に別れている。背中に翼を持つ俺達、三層人。一般的に超能力と言われる力を持つ、二層人。普通の地球人と同じ一層人。行は、風の力と人の心を読む力を持ち合わせている。他にも弱いけれど特別な力を持っている。」

「うん。」

「あと、三層には、アース・グラウンド、地の天使と火の天使、ブロウト・ファイヤーがいる。」

「かずちゃんが、そうね。」

「奥山の力も知っているのか?」

「うん。かずちゃんが、教えてくれたの。」

「そうか。」

 彩美は戸惑いながら、口を開いた。

「かずちゃんと新が砂浜にいた時、急に雨が降り出したのは、新の力なの?」

「あぁ。俺が力を使った。奥山が炎を飛ばしてきたから、それを消すために雨を呼んだ。海水を使ってもよかったと、あとから思ったよ。ごめん。そのせいで、彩美が濡れてしまったね。俺も、だけれど。」

「ううん。新が無事だっただけで、よかった。」

「どうして、俺達の居場所がわかったんだ?」

「風が教えてくれたの。」

「風が、ね。昔から、変わっていないんだな。」

「変わっていないって?」

「よく、風が囁きかけると言っていたんだ。」

 彩美は、そっと瞳を閉じてから、新を真っ直ぐに見つめた。

「ねぇ、新。私、よく夢を見るの。シンとユキ、黒髪の人が、向かい合って、力を使って、戦うの。これは、ただの夢なの?それとも?」

「天上球にいる時の俺達だよ。黒髪の人、それは奥山だ。奥山はマザーに決められた、彩美の婚約者だった。」

「マザー?」

「天上球で絶対的な力を持つ、コンピュータ。政治、経済、全てを支配している。俺達、三層人は結婚相手までマザーによって、決められている。力を保つためだとされている。スィ・オウシャンとブロウト・ファイヤーの間に出来た子供は、互いの力を打ち消すとされているんだ。だからだと、教わった。」

「そんなマザーに逆らって、大丈夫なの?」

「ダメさ。もし、捕まったら、強制(きょうせい)消却(しょうきゃく)処理(しょり)、つまり死刑にされてしまう。」

「夢の中で、シンが言っていたわ。」

「それでも俺達は、一緒にいた。離れる事が出来なかった。皆は、好きな人が出来ても上手に忘れる事が出来た。でも、俺達は、不器用過ぎたのかもしれない。」

「新…。」

不安そうな顔をする彩美に微笑みかける。

「でも、地球(ここ)では、ただ一緒にいられる。俺は、それだけでいい。」

 彩美の身体をぎゅっと強く抱き寄せた。

「でも、かずちゃんが…。」

「そうだな。奥山は、彩美の事が好きだ。今も変わらないみたいだな。だから、俺達の邪魔をする。奥山が望むのなら、戦いをするよ。彩美と一緒にいるためなら、それも辞さない。仕方がないと思っているよ。」

「新…。」

 少し哀しそうな表情をした後、ゆっくり顔を上げた。 新が立ち上がる。

「天上球にいる時の俺達の映像があるんだ。見るか?」

「うん。」

 改造されたビデオカメラ。テレビに繋ぐと古惚けた映像が映し出される。

「どうしても見たくて、改造したんだ。やっと、ここまで映るようになった。」

 ノイズが邪魔をするけれど、夢で見ていたアヤミ達だとわかる。

『ユキ、何を撮っているの?』

『親父が使っていたカメラを見つけたんだ。俺達が小さな頃、使っていたものだけれど、壊れていないから、ちょっと興味が出てね。』

 アヤミが、カメラを覗き込む。

『今、撮れているの?』

『アヤミのアップが映っているよ。』

『やだ。そう言う事は、早く言ってよ。』

 カメラ越しにアヤミの頬が染まる。

「この頃、俺達は、ずっと一緒にいた。未だ、アヤミの結婚も言い渡されていなくて、毎日楽しかった。」

「学生だったの?」

「そう。飛び級を繰り返して、最後の高等(こうとう)技術(ぎじゅつ)を修了するところだったんだ。」

「高等技術?」

「ここで言う大学だよ。」

「えっ、私達、いくつだったの?」

「十八歳。」

「そうなんだ。」

 新が映像に目をやったのを見てから、彩美もテレビに視線を向けた。

 映像の中のシンが、電話に出る。

『第二研究所で爆発事故だ。行こう。』

『あそこの傍には、学校があったわね。急がないと子供達が危ないわ。』

 三人が部屋を出て行くのに合わせ、映像が揺れている。

「行こうって?」

「俺達は、その力の直系の家系で、力が強かった。だから、アルバイトで消火活動の手助けをしていたんだ。」

「そう。」

『シン!』

 映像の中のアヤミの声で振り返る。

燃え盛る炎の中、シンが天に手を向け、雨雲を呼ぶ。ユキもカメラをアヤミに渡し、風を使い、雲を呼び寄せ加勢をしていた。

「あっ。」

 彩美は激しい頭痛を覚え、頭を抱えた。走馬灯のように景色が流れていく。

「彩美、どうした?」

 新が彩美の顔を覗き込むと、彩美の瞳から一粒涙が零れ落ちる。

「思い出せたの。全て、思い出したの。」

「彩美。」

 新が嬉しそうに笑みを浮かべる。

「私達が出会ったのは、桜が綺麗に咲き誇る学校へ続く道だった。恋に落ちる、その言葉の通りに、私達は一瞬で惹かれ合った。そうでしょう?」

「そうだよ。運命を感じた。」

 彩美も嬉しそうに新を見上げた。

「忘れていたのが、不思議なくらい、新を好きだった。ううん、今も好きよ。今の方が、ずっと好きかもしれない。」

「俺もずっと彩美だけを好きだった。愛しているんだ。」

 新が、手を伸ばし、彩美の頬に触れる。彩美は、くすぐったそうに微笑み、そっと瞳を閉じた。二人の距離はゆっくり縮み、唇が重なる。唇を離すと、お互いの瞳の奥を探り合うように、無言で見つめ合った。

「新。」

 先に口を開いたのは、彩美。

「今、私が考えている事がわかる?」

 少し頬を染め、微笑む。

「俺と同じ事を考えているのなら、すごく嬉しい。彩美の口から聞きたいな。」

 新も彩美に微笑みかける。

「えっ。」

 彩美は耳まで赤く染め、新の耳元に唇を寄せた。

「新と一つになりたい。」

 恥ずかしそうに、はにかむ。

「じゃあ、行こう。」

 彩美の手を握り締めて、立ち上がる。二人は、新の部屋に入った。口付けを交わしながら、彩美をベッドに押し倒した。

「行は、帰ってこない?」

「大丈夫だよ。夕方まで戻ってこない。」

 彩美が声を出して、笑い出した。

「何を笑っているんだよ。」

「だって、小さな子供がお母さんに見つからないように悪い事をしようとしている気分じゃない?」

「別に悪い事はしていないよ。愛し合っていれば、普通だろう。」

「でも、行が帰ってきたら慌てるでしょう?」

「それは、そうだろう。」

「じゃあ、同じじゃない。新が慌てている姿が思い浮かぶようだわ。」

「彩美だって、慌てるだろう?そうだ。彩美のせいにしよう。」

「えっ、私のせい?」

「彩美がどうしてもって、聞かなくてと、言えば言い訳が立つ。」

「行が信じるとは思えないわ。逆だと思うと思うけれど?」

 二人で顔を合わせて、笑った。

「彩美、真面目にしようよ。」

「えっ、何を?」

「そう言う事を言うんだな。覚悟は出来ているんだろうな?」

 新は、彩美の脇に手をいれ、準備をする。

「ごめんなさい。冗談よ。」

 照れを隠すように微笑み合い、口付けを交わす。彩美の胸に直接触れる。彩美の唇から吐息が零れ落ちた。

「覚悟しておくように。」

「えっ?何を?」

「離れた時間を取り戻すくらい、彩美を抱きたい。だから、明日、筋肉痛で苦しむかもしれない。」

「わかった。覚悟します。」

 二人で微笑み合い、ゆっくりとした速度で肌を重ねていく。


唐突だなと思うけど、全てを思い出させてしまった。だって、そうしないと話が進まないんだもん。(だもんじゃないだろうと、突っ込まないでね。)

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