マッチ売りの子供たち
特になし
「あれ?」
「何?」
大野は体を曲げてコンクリートから何かを拾い上げた。
「何これ」
「これはアレだ」
マッチ。
「つくかな」
「無理じゃね?」
赤い頭を壁にこすり付ける。火がついた。
夜道に明かりが灯りその光が大野と山田の顔を照らす。
「パン焼こう」
「アホか」
「焼きたてに戻るよ」
「戻らないよ」
山田はコンビニで買ったメロンパンにかじりついた。
木の棒をつたい火が舐めるように大野の指に近付く。
「願い事を」
「何?」
「願い事を言って」
「なんで?」
「流れ星」
山田は空を見上げた。灰色の綿の群れ。
「何も見えない」
「馬鹿」
細く焼けた棒をコンクリートに落とす。
「願い事を」
「雨が降るよ」
頭をする。光。
「えーっと、世界平和とか?」
「何でもいいよ、何でも叶うよ。もっと、願い事」
細く焼けた棒をコンクリートに落とす。
「もう一度」
「お金持ちになりますように」
細く焼けた棒をコンクリートに落とす。
「モテますように」
細く焼けた棒をコンクリートに落とす。
「もう一度」
「背が伸びますように」
細く焼けた棒をコンクリートに落とす。
「もう一度」
「おばあちゃんに会えますように」
細く焼けた棒をコンクリートに落とす。
「もう一度」
「幸せになりますように」
細く焼けた棒をコンクリートに落とす。
「もう一度」
「雨」
「雨?」
雨粒が、狙ったように火を消していく。
大野はマッチの箱を見た。最後の一本。
山田は手で傘を作り大野の手覆った。
大野は少し山田を見て、マッチをすった。
「願い事を」
小さな光、小さな熱、小さな声。
「またマッチを拾えますように」
マッチの火は二人の手を焼いて消えていった。
「もう行かなきゃ」
山田が大野の手を取る。雨が強くなってくる。
「行こう」
マッチの火は消え、二人は街に消える。
なんとなく書きました。
楽しかったです。