第四十三話 『義の旗に集え!! ――魔王討伐連合軍結成……?―― 』 ――序――
みなさん、こんにちは。一年ぶりのご無沙汰の不識庵・裏です。
昨年の更新から一年経過したのにも拘わらず、進捗状況がまぁ~~目も当てられない状態でした!
生活環境と労働環境が激変し、自分の好きな事がまともに出来ない状態がずーっと続いておりました。その中でチョボチョボと書き進めており、見せられる部分だけ載せとこうと思い、今回の投稿に到った訳なのです。
前置きはこの位にしておきます。それでは……大した内容では御座いませんが、一年ぶりの更新です。読んで頂けたら幸いで御座います。
――序――
――某日夜半過ぎ、雒陽のとある猪小屋にて――
“呼噜呼噜ッ!”
“呼噜呼噜ッ!”
「ウッ、グズッ、フ、呼噜呼噜、呼噜呼噜ッ…… 」
十数頭の大小様々な猪の鳴き声の中に、若い娘の物と思われる涙交じりの鳴き声が混ざっている。その鳴き声の主は丸裸で四つんばいにされており、くすんだ銀髪と白い肌は豚の毛や排泄物に塗れ、何とも言えぬ悪臭を放っていた。
『な、なんで朕が斯様な目に遭わねばならぬのじゃ? 大体こうなってしまったのも、母上や十常侍どもが自分の事しか考えぬからこうなってしまったのではないか!? 』
と、涙と鼻水に塗れた生意気そうな顔をしかめながら、内心呪詛の言葉を吐くは丁擢により廃帝にされた劉弁。今年齢十六になる彼女は、通常であれば美少女で通用する顔立ちと母譲りの男好きしそうな肉体の持ち主であったが、豚の毛や糞尿まみれで悪臭を放つ今のその姿に、とてもではないがそれだけの魅力は感じられなかった。彼女がこうなった経緯だが、丁擢とその配下於夫羅により丸裸にされて猪小屋に放り込まれ、挙句の果てに
『呼噜呼噜』――即ち『ブウブウ』と猪の様に泣けと脅され、人間の言葉を発したら見張りの兵の慰み物として、死ぬまで輪姦するぞとまで言われてしまったのだ。
『かの“人猪”にされなかっただけでも有難く思うのだな? 丁閣下の慈悲の心に感謝するが良いぞ 』
そう丁擢の側近李儒に嘲られ、哀れ彼女は母親が既に屠殺された事も知らず、只々豚の真似事をするだけの日々を過していたのである。周りは言葉の通じぬ匈奴兵で固められ、彼らは実にいやらしい視線を劉弁に浴びせ髭と垢に塗れた顔を下品ににやつかせていた。
『おい、確かあの雌の仔猪って“こうてい”って呼ばれてたんだろ? 』
『ああ、そうだ 』
『じゃ、こうていってどういう意味なんだ? 』
『他の奴から聞いた話じゃ、何でもここの単于様の事をそう言うんだってよ 』
『そうか? でもよ、コイツは今単于じゃなくって只の猪なんだろ? 』
『ん? ああ、確かにそうだけどよ 』
『だったら……猪とヤっても誰も文句は言わねぇよなぁ? 』
『おお~~っ! うまいこと思いつくじゃねぇかよ、オメェ! じゃ、さっそくヤるか? 』
『だな? こんなクセェとこで見張り番やらされてムシャクシャしてたとこだしよ! それに、コイツ以外と上玉だしな? 』
『猪のクソまみれで臭ェのはしかたねぇが、乳やケツも意外とでけえし、案外ヤりごたえあるかもしれねぇぞ 』
『オイ、次は俺だぞ? 』
『どうせ、明日にはバラされて喰われちまうんだ。だったら、最後に俺達が男を教えてやるよ! 』
「ピイッ!? 」
そこまで言うと、性欲を抑え切れなかったか兵どもは一斉にギラついた目を劉弁に向ける。その様子に、幾ら愚鈍な彼女でも己の身の危険が迫ってる事が十分に理解できた。次の瞬間、このケダモノどもは一斉に飛び掛かると、何本もの太い腕で彼女を地べたにねじ伏せる。
「イッ、いやじゃああああああああーっ!! 誰か、誰か助けてたもれーっ!! 」
『うるせぇぞ! 猪の癖に人間の言葉喋るんじゃねえ!! 』
「アグウッ!! 」
大声で喚き散らす劉弁であったが、分厚い手による平手打ちを右頬に食らってしまう。その影響で口を切ったのか、口元には血がにじみ、哀れ彼女の抵抗はその一撃によって呆気無く無力化されてしまった。恐らくだがこれまで散々甘やかされ、ちやほやされて育った為か、彼女に精神的な逞しさが全く無かったのもあったのだろう。
「ア、アアアアアアア…… 」
双眸から理性の光が失われ、うわ言を言うだけになってしまった彼女。もうこうなってしまえば、ケダモノどもからすれば黙らせた雌に己の欲望を吐き出すだけであった。
『よし、大人しくなったか? 全く手こずらせやがって。それじゃ、ヘヘヘ…… 』
と、下卑た笑いと共に劉弁を殴った男が欲望を吐き出すべく、彼女にのしかかろうとしたその時であった。
「待てえっ! 」
『あ? 』
『あん? 』
『え? 』
高らかな男の叫び声が猪小屋の中に響き渡ると、ケダモノどもは一斉に声のした方を向く。すると、そこには豪奢な作りの鎧兜に身を包んだ一人の偉丈夫が鋭い眼光を放っており、見た感じ二十代半ば位と思えた。
「人の道に外れ、本能のまま己が欲望を満たさんとする獣達よ、その行いを恥と知れ……人、其れを外道と言う! 」
『だっ、誰だテメェは! 』
言葉が通じぬとは言え、男が放った言葉に兵の一人が動揺をあらわにしながら言うと、彼らの言葉が通じたのだろうか、それに対し彼が返した言葉は以下の通りであった。
「お前達に名乗る名前は無いっ! とうっ! 」
そう叫ぶと、男は腰に帯びた長剣を抜き放ちケダモノ達へ斬り掛かる。その剣身には北斗七星が彫られており、星の部分にはそれぞれ色合いの異なる宝玉が嵌め込まれていた。
「董承、王子服も助太刀するぞっ! 」
「この呉子蘭もだ、同じく助太刀するっ! 」
「二人ともすまない、感謝するぞ! 」
それと同時に別の方から声と共に武装した二人の男が足早に駆けつけてきた。そして彼らも手にした得物を振りかざすや、匈奴兵と大立ち回りを演じる。
「遅いッ、遅すぎるッ! 匈奴兵は獰猛と聞いていたがこの程度かッ!? せえいっ!! 」
『ウギャアアアアアッ!! 』
「うおっしゃあ~~っ!! これでもくらえーっ!! 」
『ゴボッ!! 』
『ヒッ、ヒイイイッ!! なっ、何だこいつらは! 滅茶苦茶強ぇぞ!? 早くみんなに知らせねぇと!! 』
素早い動きで相手を翻弄し、王子服が長剣の斬撃を浴びせれば、呉子蘭は屈強な両腕に構えた鈍器の一撃を相手の腹にめり込ませる。勢いのまま次々と仲間を屠られ、思いもよらぬ状況に恐怖したか、先ほど弁を犯そうとした兵がこの場から逃げ出す。だが、それは無駄な足掻きであった。
「何処へ行くつもりだ? 貴様の行き先は泰山地獄のみ、ここから先は俺が通さん! 」
『なっ! いつの間に!? 』
『董承』――そう王子服と呉子蘭の二人から呼ばれた男が、手にした宝剣をそれの眼前に突きつけていたからだ。そして――
「この七星剣の一撃受けてみろっ! とぅあああああああーっ!! 」
『ギャアアアアアアアッ!! 』
「成敗っ!! 」
やや芝居掛かった風はあったが、董承は実に鮮やかな動きで兵を斬り捨てた。そして、その後彼ら三人は残りの兵と斬り合いを演ずる。三対十と分の悪い戦いであったのにも拘らず、彼らはあっと言う間に全員倒してしまった。
「董承、帝はご無事か? 」
「ああ、豚の糞尿に汚されてるが、純潔を穢された様子は無い。少し時が経てば気も落ち着かれるであろう 」
「糞がっ! 高々幷州牧の養子風情がよもや帝にこの様な真似をするとは……後で同じ目に遭わせてやるっ! 」
忌々しげに呉子蘭が歯噛みして言うが、それを董承が諌める。
「呉子蘭。義憤に駆られるのは良く判るが、今はその時でない。やがて、騒ぎを聞きつけ別の兵が来るだろう。そうなる前に脱出だ 」
「ああ、判ったぜ 」
ばつが悪そうに呉子蘭がそう答えると、三人はまだ気絶したままの弁を布で包むと、呉子蘭がそれを背負って彼らは城の外に抜け出す。そして、彼らは準備していた荷馬車の藁の中に弁を隠すと、三人は農民の姿に化けこっそりと雒陽を脱出したのであった。無論、その際汚物に塗れた弁の玉体を清める事も忘れてはいなかった。
「董承、これから何処へ向かうのだ? 」
雒陽を離れ、とある街道で荷馬車を走らせながら、手綱を握る董承の隣に腰掛けた王子服が問いかける。
「……兗州へ向かおうと思っている。州牧の劉公山(劉岱)殿は、高祖(劉邦)に連なる家の出で、歴然たる漢の宗室だ。現在の漢の窮乏は既に聞き及んでいると思うし、我々が説明すれば力を貸してくれるだろう 」
「そうだな、確かにお前の言う通りだ。力を借りるにしても、漢に縁のある者に頼むのが上策だ 」
「ああ、俺もそう思うぜ? こうなりゃ善は急げだ。兗州へ急ごうぜ 」
そう、呉子蘭が言って改めて三人が気を引き締めたその時である。荷台に積まれた藁がもぞもぞと蠢くと、中から弁が顔を出した。彼女の表情は虚ろで、現在の状況がまだ判っていない様である。
「う、うう……こ、ここはどこじゃ? そ、そなたらは何者じゃ? そうじゃ、確か妾は彼奴等に裸にされて猪小屋に放り込まれて……ううっ 」
次の瞬間である。これまで恐怖で押えつけられていた反動か、弁は半狂乱状態でわめき始めた。
「わ、妾を誰だと思っておる! 妾、いや朕は皇帝であるぞ! まさか、そち達もあの丁擢の仲間で無かろうな!? 」
「「「み、帝っ? 」」」
「こ、こっちに来るでない! 朕に触れるな! 」
そう叫ぶと、弁はこれまで自分を覆い隠していた藁を掴んで董承達に投げつける。そんな彼女に彼ら三人は一瞬うろたえる物の、直ぐに董承が弁に近寄るや、彼女を宥め始めた。
「帝、私は董承と申します。こちらは我が友の王子服と呉子蘭。我ら三人帝の、ひいては漢の忠実なる僕で御座います。ですから、どうかどうかお心を安んじられませ 」
「何っ、そち達は朕の忠実な僕とな? 」
董承の言葉に弁が動きを止めると、それに続く様に王子服と呉子蘭も言葉を発する。
「左様で御座います。我ら三人どこまでも帝と運命を共に致す所存。どうかご安心下さいませ 」
「如何にもっ! 我々が居る限り、帝には指一本触れさせませぬ! 」
そう言って彼らは一旦馬車を停めると、裸の上に布を覆っただけの姿で荷台の上に御座す弁に拱手行礼で跪く。そして董承は更に言葉を続けた。
「帝、今の雒陽は大変危険な場所で御座います。太后様は丁擢により亡き者とされ、張譲殿を始めとした十常侍、いや中常侍も全員処刑されてしまいました。然るに、これから帝には我らが安全な場所へと連れて行き、そこで再起を図りたいと思います 」
『再起』――彼のその言葉に弁は少し落ち着いたのか、彼女は一息吐いて口を開いた。
「再起……董承と申したよな? そちは一体どの様に再起を図るのじゃ? 」
「さすれば、臣達はこれより兗州に向かいたく存じ上げまする 」
「兗州とな? 何故そこに向かうのじゃ? 」
「兗州牧を任せれている劉公山殿は歴然たる漢の宗室の一人。その宗室たる兗州殿ならば、今のこの国と帝の窮乏を知れば、必ずや我等に味方して下さいましょう 」
「そうか、朕には何処に何があるかはさっぱり判らぬ。故に全てそちに任せる 」
「御意。我等必ず帝を兗州へお連れ致しまする 」
「あと、どこでも良いから早う朕の服を用意してたもれ。裸のままは嫌じゃ。この際文句は言わぬ、着れれば何でも良い 」
「これはしたり……帝の玉体を隠す服を手に入れませぬと 」
そう弁に答え、三人は近くの民家に立ち寄ると、そこの住人から銭と引き換えに女物の衣服を入手しそれを弁に着させた。ようやく人間らしい格好になり、人心地ついたのか弁はそのまま藁の中で眠りにつく。それを見て安堵した彼らは、兗州への道を急ぎ、そこへたどり着けたのだが……彼らを待ち受けていたのは予想から大きく外れた結果であった。
え? こんだけかよ? と思われたでしょう。でも、今の私の状態ではそれが精一杯だったのです。昔みたいに長く話を書けるモチベーションも無く、朝四時半に起きて仕事、家に帰ったら直ぐ飯食って風呂入って寝る。休みの日も何もする気も起こらないと、目も当てられないライフサイクル。
ですが、もう少ししたら状況も変わるので、その際にまた続きを書けたらなと思っております。こんな私にエールを送ってくださる方々に改めて感謝すると共に、御礼申し上げます。本当に有難うございます!
それでは、また~! 不識庵・裏でした~!
追伸:「Airily Steps」のまーちん様、ありがとう御座います! 貴方様にリクして描いて貰った恋姫の絵が私のモチベーション高揚に役立っておりますよ~~!!