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真・恋姫†無双 ~昭烈異聞録~   作者: 不識庵・裏
第三部「天下鳴動編」
47/62

幕間其の四『楊威公の正体』 ――弐――

 お晩です、不惑庵です。台風も去り一安心ですが、甚大な被害を蒙った地域にお住まいの方々が物凄く心配です。季節の変わり目に台風が来るのは仕方が無いにしても、毎回嫌になっちまいますよね? 


 さて、3000とせこい文字数では御座いますが、昭烈異聞録『幕間其の四 楊威公の正体 ――弐―― 』最後まで読んで頂けたら嬉しく思います。

 



 ――弐――



「いっ、言われた通り、楊威公只今参上致しましたわ……って、何でこんなに集まっているんですのっ!? わたくしを呼び出した方達だけでなく、国相閣下や沢山の殿方が居るだなんてっ?! 一体、わたくしから何を聞き出すお積りですのっ!?  」



 口調こそは強がってるが、実際の所彼女は可也怯えており、体の方も小刻みに震えている。すると、そんな彼女を落ち着かせるべく、何時もの砕けた口調で桃香が話しかけてきた。



「ごめんね? こんな夜分遅くに、それも沢山の男の人達の前に呼び出しちゃって。でもね、ここの皆は強面揃いだけど、話せば結構良い人達だから 」


「い、いえっ、余り普段話をしない方から呼び出された所為で、わたくしの方も少し気が動転しておりましたの 」



 柔和な彼女の言葉に少し落ち着いたのか、威公が少し態度を和らげると、すかさず桃香が話し掛ける。



「それじゃ、いいかな? 伯起(壮雄の字)さんや伯想(一心の字)兄さんから話は聞いたと思うけど、実は貴女に色々と聞きたい事があったの 」


「わたくしに……色々と? 」


「うん。貴女は朱里……孔明ちゃんを頼って襄陽から来たんだよね? 」


「ええ、その通りですわ 」


「その孔明ちゃんから聞いたんだけど、元々行き倒れていた所を水鏡老師に助けられて、その時貴女のお世話係を命ぜられたのが孔明ちゃんだった。これで良いんだよね? 」


「ええ、劉国相の仰る通りですわ。水鏡老師様と孔明様、お二人はわたくしにとって、とても大切な方達ですわ…… 」



 そう言って威公は両手を胸の前で組み、感慨深げに両の眼を瞑ると、桃香はやや意地悪そうに口角を吊り上げた。



「成る程……それじゃ、その前貴女は一体何処に居たのかな? 出自とかも教えて貰える? 」


「え? そ、それは……どう言う意味ですの? 」


「どう言う意味も何も、言った言葉の通りだよ? だって、貴女や私達は南陽王殿下の臣だし、その臣が出自不明じゃ示しがつかないと思うんだけどな? 」


「え、えと……そのう……ウゥゥ…… 」



 そう桃香に言われ、威公は表情に翳りが出始めると、どう返して良いか判らず彼女は言葉に詰まる。そこから少しして、申し訳無さそうな顔で桃香が口を開いた。



「ごめんね、ちょっと意地悪だったかな? 楊威公、いえ……『真宮璃々香』さん? 」


「なっ!? なっ、何故その名前を知っているんですのっ!? 」



 『真宮(まみや)璃々香(りりか)』――そう呼ばれ、威公は激しく動揺を覚える。何故ならば、この世界に迷い込み、水鏡の庇護を受けた際にその名は心の奥底に封じ込めたからだ。



「威公、いや真宮さんだったな。昼間これを落としただろう? 悪いけど、調べさせてもらったよ。『聖フランチェスカ学園 高等部Ⅰ‐Ⅲ Lyon(リオン) 』在籍 “真宮璃々香”さん 」


「貴方は……仲郷様 」



 いつの間にか桃香の右隣に立っていた一刀が、右手に持った威公、いや璃々香の学生証を彼女に手渡す。一刀から返却されたそれを慌てて胸元に仕舞い込む威公だったが、何かに気付いたのだろう。彼女はハッと両目を見開き、一刀を凝視して声高に叫んだ。



「あ、貴方、何故日本語が読めますの!? わたくしの持ってる学生証はここの人達には読めない文字が沢山あるのに!? 」


「なぁに、答えは簡単さ。俺も君と同じ日本人、それも……聖フランチェスカの生徒だったからさ。だから、フランチェスカの学生証だと判った瞬間、思わず懐かしさを覚えちまったよ 」


「何ですッてぇっ!? 」


「嘘だと思うのなら、これを見るが良いさ 」



 そう言うと、一刀は自分の胸元からとある物を取り出して威公に手渡す。それは、一刀の学生証であった。



「……『聖フランチェスカ学園 高等部 Ⅱ‐Ⅳ ※1Lune(リューヌ) 』在籍 “北郷一刀”……そう、そうですの、これが貴方の本当のお名前…… 」



 威公は、一刀の学生証をまじまじと見ながらそう呟くが、写真の一刀を見た瞬間また更に両目を見開かせて声高に叫ぶ。



「北郷……それと、この写真……!! 思い出しましたわ! 貴方は如耶姉様に身の程知らずな告白をなさった、あのゴミムシ男じゃありませんのっ!? だから、あの時わたくしは貴方に違和感を感じたのですわね……ッ!! 」


「…… 」



 そう叫び、一刀の正体に気付いた威公――真宮璃々香は険しげに顔を顰め、憎っくき仇敵でも見るかのよう一刀を睨み付けた。が、それに対し一刀の反応は実に冷ややかであったし、桃香や一心を始めとした『劉伯想一家』の面々も一刀と同様で、何れも冷ややかな視線を彼女に浴びせる。



「ゴミムシ男か……やれやれ、直ぐに毒吐けるのも相変わらずだな? お前にとっちゃ、普通に吐いた悪態かも知れねぇが、あん時ゃ立ち直るのに結構時間掛かったんだぜ? 」



 いつもと違い、兄一心を真似たかの様なぶっきら棒な口調で話す一刀。普段、彼はどんな事があっても女性を『お前』呼ばわりはしなかったのだが、過去にああ言った経緯が璃々香との間にあったせいか、無意識の内に辛辣な態度を取っていたのである。そんな二人のやり取りを、桃香や一心達は黙視し、余程の事が無い限り口を挟まぬ様控えていた。



「それにしても、随分と姿形が変わりましたのね? きちんと見なければ、写真の北郷様と同一人物と気付きませんでしたわよ?  」


「ここは現代の日本じゃない、俺達がいた時代から遥か昔の時代だからな? 自分の身は自分で護らないと生き残れない。だから、こんな体つきになったのも、ここで生きていく上で必要な事だ 」


「まぁ、そうなんですの? 随分と野蛮な真似をなさってきたのですね? それでは、人殺しも当然なさったのでしょう? おまけに、その右目の眼帯は一体何ですの? まさか、『戦国KABUKI』とか言うゲームやアニメの登場人物の真似でもなさってるお積り? 」


「ああ、殺したよ? それも一人や二人じゃない。二年前、初めて盗賊と戦ってから今まで、少なくとも三百人近くは実際この手に掛けてきた 」


「ッ!? 」



 憎まれ口を叩くかの如く璃々香が言うが、それに対し一刀はしれっと返す。正に、『売り言葉に買い言葉』であろうか。収まりがつかなくなり、璃々香は余りにも酷な問い掛けをするが、対する一刀はさも平然と答える。そして、その瞬間彼女ははっと我に返る。自分が吐いた言葉が、どんなに相手を傷つけたかと言うのに気付いたからだ。



「まぁ、使ってる武具は戦国武将の物を模倣してるし、『戦国ナンチャラ』の点は否めない。が……こっちの方は、ちょっと訳ありでな? 」


「ご、ごめんなさい。言葉が過ぎましたわ。だから、謝ります。だから、これ以上はっ! 」


「知りたいんだろ? だったら教えてやる。黙って見ていろ 」



 己の非を認め、慌てて謝ろうとする璃々香であったが、それを意にも介さず一刀は右手を頭の後ろにやり、眼帯の結び目を解く。眼帯の下に隠された、彼の(めし)いた右目を見た瞬間、璃々香は大きく息を飲んだ。



「ひっ……!! 」


「昨年、黄巾賊と戦った際、黎陽(れいよう)で黄巾の幹部に毒矢を当てられてな……そこから七日ばかりの間俺は生死の境を彷徨い、間一髪で解毒剤を飲ませてもらった。だが、その代償で……御覧の有様さ 」


「あっ、あっ…… 」



 瞳の部分が白く濁り、瞼も異常に狭まった一刀の右目。それは彼にとって勲章でもあり、大きな心の(きずあと)でもあった。彼から右目を喪った経緯を聞かされるにつれ、段々と璃々香の顔色が青ざめていく。それを見て、一刀の方も気が済んだのか、再び刀の鍔の眼帯を付け直した。



「悪いな、嫌なモン見せちまって。俺もついムキになっちまった。謝るよ、すまん 」


「ごめんなさい、本当にごめんなさい……見知らぬ世界に来て、辛い目にあっているのは私だけではないのに……わたくし……ウッ、ウウウウウゥ…… 」



 璃々香は顔を俯かせると、その両目からは涙がぽろぽろと零れ始め、彼女はそのまますすり泣く。彼女が泣き止むまでの間、漢達は誰一人言葉を発さず、桃香は彼女をそっと抱き寄せ、優しく頭を撫で続けていた。



※1:一刀のクラスの名称は、本作オリジナル設定です。因みに、フランス語で「月」と言う意味。




 ここまで読んで頂き真に感謝。楊威公の正体、それはBaseson作品『春恋*乙女』に登場する『真宮璃々香』で御座いました。ここのサイトの場合、Baseson作品は規制対象外と言うこともあり、且つ恋姫†無双シリーズは春恋*乙女とも共通点(フランチェスカ学園等)が御座いますので、誰か使えないかなぁと考えておりましたし、無論資料集めの為春恋*乙女もプレイしました。(正直しんどかったです)


 この『真宮璃々香』なんですが……ぶっちゃけ、桂花にちょっとキャラが似てるんですよね。(特定の女性を盲信、男嫌い、意外と小心者、口が悪い)特定イベントとかを経て、彼女の可愛らしさとかわかるんですけど、そこにたどり着くまでは「生意気な奴」が第一印象でした。


 正史における楊儀も可也の問題人物でしたし、(蜀ファンや魏延ファンからは蛇蝎の様に嫌われてますし)ここの恋姫世界で真宮璃々香を出すとすれば誰が良いかと考えていたら、その楊儀がぴったりじゃね? と思いついた訳なのです。


 さて、次回の話から楊儀と名乗った真宮璃々香がこの世界に来た経緯とか、他にも……一刀にとって身を切られる様な話が彼女の口から伝えられる事となります。それが何なのかはもうバレバレかと思いますが、あえて突っ込まないでくださいね?(汗


 それでは、また! 不惑庵・裏でした~!


追伸:暫くの間、3000前後でのショート更新形式をとります。昔みたいに文字数を稼いでの投稿が出来なくなったからです。本当に申し訳ないです……。

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