第三十七話「章陵の大掃除 其の参」
どもーっす、不惑庵・裏です。ようやく今回で「章陵の大掃除」も完結です。色々とあるのですが、それは後書きの方で書きます。
それでは、昭烈異聞録第三十七話。最後まで読んで頂けたら嬉しく思います。
平成25年8月20日追記:長過ぎたので、「其の参」「其の四」に分割しました。
――十四――
――寇県令の邸宅より少し東に離れた所に位置する、丁県尉の邸宅の門前にて――
「丁県尉ッ! 丁県尉はいるかッ!? 儂だ、県令の寇だ!! 」
上半身を縄でぐるぐる巻きにされ、県令の寇が息も絶え絶えに駆け込んでくると、その姿を見た二人の門番が驚きの表情で駆け寄ってきた。
「これは寇県令様、一体何があったのですか!? 」
「もしや、押し込み(強盗の事)の類でも入ったので御座いますか!? 」
すると、寇は脂ぎった顔を真っ赤にし、贅肉で弛んだ頬をぶるぶると震わせて声高に叫ぶ。
「そっ、そうだ! 私の屋敷に賊が押し入ってきたのだ!! 今すぐ貴様等の主人に討伐の手勢を集めさせろっ!! 」
「しっ、然し……旦那様は今お休みで御座いますが…… 」
「県令様もご存知と思われますが、旦那様は寝起きが大層悪い物でして…… 」
「やぁかましいっ! そんな事はどうでも良いわっ! とっとと叩き起こし、大至急儂に会わせろッ! 」
「「はっ、はいいいいいいっ!! 」」
「あっ、待て! その前にこの戒めを解いてからにせぬかっ!? 」
戒めを解いてもらおうと、慌てて彼らを呼び止めるが時既に遅しで、結局彼ら県尉を伴い戻って来るまでの間、寇は上半身を縛られたままであった。
――十五――
――それから約半刻(一時間)後、同敷地内の庭において――
「よし、これで全員集まったな? ……ふぁ~あ 」
「はひっ、現時点で集められるのはこれで全てです、ふわぁあああ…… 」
あくびを噛み殺し、目尻に涙を滲ませる丁県尉の前に、四十名ほどの武装した兵が集められる。だが、どうやら眠っていた所を無理矢理叩き起こされたらしく、いずれも寝ぼけ眼で、中には立ったまま舟を漕いでいる者も幾人か見受けられた。
「おいっ、寝ぼけてる場合か貴様らっ!? 」
と、抜き身の剣を片手に喚き散らす寇。そんな彼に、寝ぼけ眼の県尉が話しかけてきた。
「まぁまぁ、余り目くじらを立てなくとも良いではありませんか寇県令? それに、これだけの人数を集めましたから、あっと言う間に制圧できますぞ? 」
「ふんっ……まぁ、確かに貴様の言う通りやも知れぬな? それに、若しやすれば、彼奴等はとっくに逃げ果せたやも知れぬ。おおっ、そうだ! 良い事を思いついたぞ! 確か、先程彼奴等が逃がした『商品』の中に伏家の娘が混ざっていたなぁ? それなら儂の屋敷に向かう前に、伏家の屋敷を当たった方が良いやも知れぬ。何なら、場合によっては何か難癖の一つでも付け、奴等の財産を没収するのもありやも知れんなぁ? グフフフフフ…… 」
彼の言葉に茹った頭を覚ます事が出来たのか、一息吐いて寇は肉の厚い顎に手を宛がい、これからの事を考え始める。
――若しかすれば、『あの賊ども』は逃げ果せたかも知れないし、或いは奴等が逃がした娘の絡みで伏家に匿われてるかも知れない。何れにしても、今回の一件は元中央の人間だった伏完が一枚噛んでる可能性が高い。ならば、その線で当たり、場合によっては自身の権限を振りかざして奴等の財を手中に収めてしまおう――
等と、寇は余りにも自分勝手で邪な事を企んだだけでなく、間抜けな事に、その内容を声に出し、醜く顔を歪めて下卑た笑い声を上げていたその時であった。何処からか、高笑いと共に女の声が飛んできたのである。
「はっはっは、はーっはっはっはっはっ! 正にこれぞ『天知る』ッ! 寇県令。今の独り言、全部聞かせてもらったぞ? 矢張り、貴様は救い様の無い悪党の様だな? 」
「ムッ!? だっ、誰だ? 姿を見せろ!! 」
「だっ、誰だあっ!? 何処に隠れているっ!? 」
「一体何処を見ているっ! 貴様等の目は節穴か? ここだ、ここ 」
その挑発的な言い草に、激しくうろたえた寇達が声がした方を見上げると、塀の上に女の人影が一つ立っていた。そのすらりとした身には、独特の意匠が施された白い服を纏い、比稀なる美貌には華蝶をあしらった仮面がつけられている。そう、彼女は「華蝶仮面」に扮した星であった。
「貴っ、貴様は何者だ! 名を名乗れいっ!! 」
「ふんっ、本当は貴様の様な『女の敵』なぞに名乗りたくはないが、いいだろう。特別に名乗ってやる! 私は美と正義の使者『華蝶仮面』ッ! 寇県令よ、貴様の様な人の道に外れた人非人を成敗する為、私はここに来たのだ! さぁ、大人しく華蝶の裁きを受けて貰おうッ!! 」
そう叫ぶと、華蝶仮面――星はひらりと塀の上から舞い降りると、愛槍「龍牙」をビュンと一振りさせ睨みを利かす。だが然し、大勢の兵に守られ心に余裕があったのだろう。先程のうろたえ振りから一変し、何時もの下卑た好色そうな笑みを浮かべて見せると、寇は舌なめずりすると共に、嘗め回すような視線を星に浴びせる。
「ぐふふふふ、何とか仮面とか申して居るが、中々良い体つきをして居るではないか? 然る後に貴様を捕えたら、その仮面と服を全て剥ぎ取り、たっぷり可愛がってやろうかのう? 」
「フンッ、冗談は休み休みほざくのだな!? 貴様の様な蟇蛙なぞ、どこぞの池か沼で雌蛙に相手して貰うのが、精々お似合いだろうよ!? 」
「ぷ、ププッ。ひ、蟇蛙…… 」
「プククククッ、あっ、アレにお似合いの蟇蛙っているのかね? 」
そう彼女に返されると、丁県尉を始めとした周囲の者から失笑が起こり始めた。虚仮にされた事に堪えられず、怒りの沸点が極端に低い蟇蛙は大声で喚き散らす。
「ええいっ、黙れ、黙らぬかあっ!! おいっ、貴様等何をして居るか! さっさとこの小生意気な女を捕まえぬか! 相手は一人だ、一気に取り押さえろ!! 」
「県令様の命だ。者ども、さっさとこの狼藉者を捕えよ! 」
「「「「ははっ! 」」」」
そう二人から命ぜられると、兵達は星の周りをぐるりと取り囲む。そして、彼等は手にした槍を彼女に向けつつ、ジリジリと詰め寄ってきた。傍から見れば圧倒的に星が不利であったが、そんな状況にもかかわらず彼女は不敵な笑みを浮かべてみせる。
「フッ……言っておくが、ここに来たのが私一人だけだと思うなよ? 」
「なっ、何っ!? まさか、お前の他に誰か仲間でもいるのか? 」
彼女の言葉に、寇が驚きの表情になると、突如兵達の間から悲鳴が上がった。
「ぐぎゃっ! 」
「『地知る』ッ!! フフッ、どうだぁ~? 私のつぶては? ただの小石でも、使い様によっては立派な凶器となるのだぞ、フフン♪ 」
痛みの余り、顔を抑えて蹲った一人の兵士の足元に小さな石つぶてが転がる。そして、声と共に今度は別の方から一人の女が姿を現した。彼女の背は高く、裾の長い裙(スカート)が特徴的な女中服を身に纏っており、その顔には仮面を着けていた。
「ふっふっふー、私は通りすがりの『仮面女中』だ。早速だが寇県令、貴様を成敗させて貰うぞ? 精々、これまで自分が犯した罪の数でも数えておく事だなぁ~? んっふふふふふふふふー 」
この『仮面女中』の正体であるが、白霧こと向寵である。星の華蝶仮面を真似ようと、彼女も適当な面を着けたのだが、そんな彼女に星は呆れ顔でため息を一つ吐いた。
「ハァ~~ッ……どうでも良いのだが、おい『仮面女中』。もう少しまともな面を着けられなかったのか? どう見ても、美意識に欠けるし、趣味が悪いぞ? 」
「何を言う。一体これの何処が美意識に欠けてると言うのだ? 少なくとも中々良い物だと、私は思っているのだぞ? 」
「……判った、そこまで言うのなら何も言わんよ。(……主からは『確かに親戚だけあって、星に似ている 』と言われたが、一体何処が似てるというのだ? 私より、アレの方が美意識に欠けてるではないか? ) 」
そう内心でぼやくと、星は自分より一歳年長の従姉が着けてる『それ』を訝しげに見やる。星が着けている『華蝶』が職人の手で作られた逸品であるのに対し、白霧が着けている『それ』は髯付きの付け鼻が取り付けられた眼鏡で、正直『仮面』とは遠くかけ離れた物であった。
「ぐぬぬ~っ! 仲間と言えどたかが一人ではないか! 者ども、敵はたったの二人だ! さっさと取り押さえろっ!! 」
「そこっ! 後ががら空きなのですっ! 」
「あごっ! 」
「※1愛國者ッ、導彈ッ、踢ーッ!! 」
「ウボァー!! 」
「なっ!? まっ、まだ仲間がいたと言うのかっ!? 」
新たな闖入者の姿に、忌々しげに歯噛みして寇が兵達に命令を下すが、又しても別の方から複数の悲鳴が上がる。焦りを浮かべ、寇が新たに悲鳴の上がった方を見てみれば、そこには小柄な人影が二つあった。
「『子知る』ッ!! 『仮面隠密 黒猫影』只今参上なのですっ! 寇県令ッ、貴方のした事は到底許される物ではないのですっ! 降参するのなら今の内なのですっ!! 」
「『我知る』ッ!! 『飛燕仮面』只今此処に見参っ! そこの蟇蛙さん、自分のしている事がお上にばれてないと思わない事ね? 天知る、地知る、子知る、我知る……仮に他の誰かに知られずとも、当の貴方本人が知っている。永遠に隠し通せる事って存在しないのよ? 」
そう声高に叫ぶは、仮面で変装した明命と楚々こと際的孫で、彼女等もノリノリで適当な仮面を着けていたのである。二人から挑発的な視線を向けられ、又しても寇は逆上して大声で喚き散らした。
「ええいっ! 黙れっ、黙れッ、黙ァれェーーーーッ!! さっきから黙って聞いておれば、好き勝手放題抜かしよって~っ!! 貴様らは一体何様の積もりだあっ!? 」
それに対し、『飛燕仮面』に扮する楚々が悪戯っぽい笑みを浮かべて見せると、彼女は小馬鹿にするかの様にこう言い返す。
「あらぁ? 私、『様』付けされるほど偉くないわよ? 私は『飛燕仮面』。ご覧の通り、とっても、とぉ~っても、可愛い極々普通の女の子でーっす♪ 」
「んなっ!? 」
と、可愛くしなを作って返す楚々に絶句する蟇蛙であったが、それ構う事無く楚々は言葉を続けた。
「そうそう、貴方のした事だけど既に皇天后土の知る所になってるわよ? 」
「何だとっ!? 馬鹿は休み休み言えッ! 儂が斯様な言葉に惑わされると思うてかっ!? 」
「あらあら、嘘じゃないのになぁ? ねぇ、皆も知ってるでしょ? 」
そう言って、楚々が仲間達を見やると、星を始めとした全員が大袈裟に首肯する。
「左様。確かに飛燕仮面の申す通りだ。お生憎だが寇県令。お主を裁く為、泰山の遣いがそちらに向かってるぞ。精々、今の内に詫びの言上でも考えておく事だな? 」
「うむ、全く以ってその通りだなぁ? 言っておくが、泰山の遣いは私達よりもおっそろしいぞ~? そう、どんな悪い奴でも彼等の前では糞尿を垂れ流して命乞いする位だからなぁ~? フフン♪ 」
「そうなのですっ! あの『泰山の遣い』の前では私たちも『可愛い可愛いお猫様』にしか過ぎないのですっ! それ位恐ろしいのですっ! 」
「ふ、ふんっ! 何を言うかと思えば、その様な子供騙しが儂に通用するかと思うたら大間違いだぞっ!? 小娘どもの分際で、大の大人をからかうでないっ!! 」
あたかも、実在するかの様な彼女等の口振りに強がる寇であったが、その足はガクガクと震えており、顔は脂汗塗れである。然も、それだけではない。県尉の丁や兵達の間からも、『ざわ…… ざわ…… 』とどよめきが起こり始めていたのである。
※1:『パトリオットミサイルキック』の中文訳。
――十六――
「おいっ、丁県尉! 何を呆けてるのだ! さっさとこやつ等を……うおっ! 」
後ろを振り返った寇が、丁に命令しようとしたその時だった。突如、何処から『何か』が飛んで来ると、それは風切り音を立てながら彼の足元に勢い良く突き刺さる。悲鳴と共に飛びずさり、『飛んできた何か』をまじまじと見てみれば、それはごく普通に売られてる様な短刀であった。
「何だこれは? もしや短刀か? 誰だ、こんな物を投げたのは! 当たったらどうする積りだ!! 」
顔を真っ赤にし、拳を振り上げて大声で喚き散らす寇の視界の前方に三人の人影が映る。恐らく男であろうか。先程の『仮面』達より遥かに背が高かったし、何よりも体型が男その物であったからだ。やがて、松明の明かりに彼等の姿形がくっきりと映し出され、その姿をはっきりと目にした寇は顔をげんなりとさせる。何故ならば、三人は何れとも仮面で顔を隠していたからだ。
「……ふんっ、良く喋る蟇蛙よな? 」
三人の男は何れも特徴的で、真ん中の男が憤怒の形相の角を生やした怪異の面――日本で言う所の「般若」を模った面を被っている。また、服装の方は和装で言う所の『着流し』と呼ばれる物で、更には両手に持った薄衣で頭を覆っていた。
『クゥォォォォ……プァァァ…… 』
と、般若面の男の左隣に控えた男から、不気味な呼吸音らしき物が辺り一面響き渡る。その出で立ちだが、先程の呼吸音に見合うほど不気味で禍々しい物であった。全身黒尽くめで、黒い鎧兜を身に纏い、その上に羽織った戦袍(マント)も黒く染め上げている。
『クゥォォォォォ……プァァァ…… 』
そして……彼の禍々しさの象徴とも言うべきか、異形の者を髣髴させる黒い面で顔を覆っており、口の部分からはあの不気味な呼吸音が発せられていた。
「ケッ! 虫唾の走る汚ェ面だな、オイ? 」
そう大声で毒吐くは、般若面の右隣に控えし巨漢の男である。先程の二人と同じく彼も面を着けており、彼の場合は吼え狂う虎を模した覆面であった。出で立ちの方も強烈で、殆ど一糸纏わぬ姿で巌の様な筋肉を曝け出しており、唯一身に着けている物は腰元を覆う大きな褌のみで、相撲取りが身に着ける『廻し』に良く似ている。
三人から醸し出されるこの異様な雰囲気に、寇は一瞬呑み込まれ掛けるが、
――そんな事があって堪るか――
そう自分に言い聞かせると、あらん限りの大声でがなり立てた。
「よりにもよって、又も仮面、それも三人追加とはなあっ!? で、今度は一体『何仮面』なんだ? こんなふざけた連中が『泰山の遣い』を騙るとは、儂を虚仮にするのも大概にしろよっ、貴様等ぁ~~!! 」
さっきまで散々『仮面』どもに翻弄されたのもあってか、蟇蛙の怒りは可也の物で、こめかみにはくっきりと青筋を浮かび上がらせている。
「一つ、人の生き血を啜りぃっ!! 」
然し、そんな事など意にも介さず虎面の男が怒鳴り声を上げる。それには、落雷を髣髴させるような威圧が込められており、何人かの兵がたじろいでしまうと、思わず武器を取り落としてしまった。
『クオオオッ……プァアアアアアア……二つ、不埒な悪行三昧……クォオオオオオ……プァアアアアアアア…… 』
次に黒尽くめの怪人が声を発するが、こちらは所々にあの呼吸音を交じえた不気味な濁声で、それには人間味の欠片すら感じられず。聞いてる者達の心肝を寒からしめた。
「三つっ、醜いこの世の妖どもを…… 」
最後に、般若面の男が凛とした声でそこまで言うと、彼は両手に持った薄衣を払い除け開いた右手で面を掴む。そして――
「退治てくれよう、桃太郎っ! 」
と、力強く叫びながら、男は面を外して素顔を曝け出す。『桃太郎』等と名乗ってるが、その男の正体は紛れもない一心本人であった。
――十七――
「なぁにが『桃太郎』だっ、戯言を抜かしおってからに! 貴様の顔は覚えておるぞ? 貴様は先程儂を謀った、あの不埒者ではないかっ!? 」
「はっ! 不埒モンじゃねぇ、『桃太郎』よ。おいらのおっ母さんは西王母。西王母の仙桃から生まれし泰山の遣い、その名も『桃太郎』ッ! お前ェ等の様な悪党ども、この桃太郎が一人残さず退治てやるぜ! 」
どうやら、一心の顔を覚えていた様である。素顔を曝した彼目掛け、唾を撒き散らし大声で喚く寇であったが、そんな彼なぞ意にも介さず一心が不遜に返してみせると、それに続き今度は虎面の巨漢が大声で名乗り上げた。
「俺様は泰山地獄の獄吏にして最強の力士『虎面人』っ!! てめェ等の非道、既に東嶽大帝様の知る所になってんぞっ!! 直ぐにお裁き受けれる様、この俺様が泰山地獄へ誘ってやらぁ!! 」
そう威勢良く啖呵を斬って見せると、『虎面人』と名乗りし男は思い切り相撲で言う所の『四股』を踏んで見せる。虎面の奥の両目は爛々と煌いており、その様はまるで闇夜の中獲物を待ち伏せる猛虎を髣髴させた。そして――
『クゥォォォォォ……プァァァァァァァ……わしは泰山地獄の使者にして西斯の暗黒卿『達斯・維達』……クゥォォォォォォ……プァァァァァァァァ……泰山地獄に堕ちるまでの間、貴様等には儂の原力の暗黒面をとくと味わわせてやろう! ……クゥォォォォォォ……プァァァァァァァァァ…… 』
不気味な呼吸音を交えつつ、黒尽くめの男が名乗りを上げる。『達斯·維達』――名前の響きからして、異形の者を髣髴させる黒尽くめの男であったが、実はその正体は一刀で、また先程の『虎面人』の正体は他ならぬ義雷であった。
何れも特徴的な彼等三兄弟の面だが、これは宛を出立する前に作った物である。それに付け加え、一刀のには楚々が『着用者の声を変える術』を施しており、この面を作る為だけに一刀は彼女に※2二百銭(友情価格込み)を支払うと言う、何とも馬鹿馬鹿しい無駄遣いをしていたのである。
「フッ、フヒッ、フヒヒヒヒヒヒッ! フヒィーヒッヒッヒッヒッヒッ!! 」
ふと、不気味な笑い声が場に響き渡る。それは寇が上げた物であった。暫くして笑いを止めると、彼は感情を押し殺した声で言い放つ。
「成る程成る程、飽く迄も貴様等は儂を余興で愉しませたい訳か? ……良いだろう、ならば儂はそれに対して褒美を取らさなければならぬのう? 」
そこまで言うと、寇は右手を振り上げ、自身の背後に控える丁県尉や他の兵達を一瞥する。右手を力強く振り下ろし大声で叫んだ。
「その褒美だが、それは貴様等自身の命だ!! 者ども掛かれぇいっ! 男も女も関係ないっ、皆殺しにしてしまえっ!! 」
「「「「「おおおおおっ!! 」」」」」
寇の号令の下、丁県尉や兵達はめいめいに武器を振りかざしながら、一心達に襲い掛かる。
「ケッ、ある意味お約束だな? 北の字から聞かされた『水戸黄門』みてぇな展開になりやがったぜ 」
「全くだぜ、兄者っ! どぉれっ、そんじゃ俺様もホンの少しだけ本気出すとすっかい! 」
「フゥ~。矢張り、最後まで醜悪な外面通りの男でしたな、一心大哥。この期に及んでも自分は後ろで喚き散らすだけで、全て他人任せだ。全く、この蟇蛙には呆れて物も言えませぬ 」
「ハァ~、ここまで来ると、ある意味潔いとしか言い様がないのです…… 」
「まっ、いつの世も悪い奴ってこんなモンよ? 」
「フフフフフッ、久し振りの多人数との戦いか……腕が鳴るなぁ~! 」
『クゥォォォォォォォ……プァァァァァァァァァ……ふむ、どうやら命が惜しくないと見た。ならば、わしの原力の暗黒面をとくと見せてやらねばならぬな? 』
対する七人の仮面どもだが、彼等はうろたえるどころか寧ろ泰然自若としており、この状況を愉しんでる様にも思えた。
※2:本作では『一銭=約三百円』にしているので、二百銭だと約六万円になる。
――十八――
「あべしっ! 」
「ひでぶっ! 」
「たわばっ! 」
「なぁにをしとるのだっ!! こっちの方が頭数が多いだろうに!! 」
「貴様等あっ! 気合が足りんっ!! 気合がっ!! あんな連中さっさとやってしまえ! 」
七対四十の圧倒的不利な状況の乱闘が始まり、あちらこちらから悲鳴が上がる。だが、その悲鳴の元は兵達の方であった。思いもよらぬ出来事に、寇と丁の二人は眦を吊り上げ唾を飛ばし兵達を叱咤するが、全然効果はなかった。
「けぇーっ!!」
「あらあら、そんな動きじゃ牛さんの方がもっと早く動くわよ? 」
「こいつっ、ちょこまかと! 」
「それと、杖の使い方がなってないわね? 杖ってのはこう使う物よっ!! 」
「うひはっ!? 」
『飛燕仮面』こと楚々目掛け、捕縛用の杖を手に一人の兵が襲い掛かる。だが、それに対し彼女は小悪魔っぽい笑みを浮かべ、素早い動きで相手を翻弄しすぐさま得物を奪い取り、それを鋭く相手の鳩尾にめり込ませた。当然、やられた方は立っても居られず、鳩尾の辺りを両手で抑えると前のめりで倒れる。
「あららぁ? もうオネンネな訳ぇ? こんなんで倒れるなんて、鍛え方がなってないんじゃないの? 」
白目を剥いて倒れた兵に対し、挑発的な口調で言い捨てる楚々。この時、彼女の表情は完全に呆れが入った物であった。
「動きが遅いッ!! ここが戦場だったら、貴様は死んでいたぞっ! 」
「あばっ!? 」
「いびっ!? 」
「うぶっ!? 」
と、鬼教官の様な口調で威圧的に言い放つは『仮面女中』こと白霧。一体何処から取り出したのか、彼女の両手には※3短拐が握られており、それで敵の攻撃を受け流して強烈な一撃を見舞わせる。台詞を言い終えたのと同時に、あっという間に彼女は三人の相手を片付けてしまった。
「私の慈悲深さに感謝する事だなぁ、ふふん♪ 」
と、ドヤ顔で言ってのける白霧であったが、当然やられた方としては堪った物ではない。何故ならば、三人は何れも『大事な部分』を抑えて悶絶していたからだ。
「はぁ~……全く。子供の頃から全然変わっていないな、アレは? 相も変わらずえげつない戦い方をする。正直、見ていて全然美しくないぞ? 」
「お気持ちは判りますが、華蝶仮面殿。先ずは目前の敵を殲滅する事に専念するべきなのです。如何なる時も油断大敵なのです 」
その光景を傍目で見ていた『華蝶仮面』こと星が呆れ顔でぼやくが、そんな彼女を『仮面隠密 黒猫影』こと明命が強めの口調で諌める。何故ならば、彼女は昨年の黄巾賊との戦において、ちょっとした油断で危うく死に掛けた苦い経験があったからだ。
「ああ、そうだったな。全く、私とした事が……黒猫影、今の諫言有難く受け取っておくぞっ。ふっ! 」
「それに、今ここで頑張れば、後で華蝶仮面殿の大好きな『達斯・維達』様から可愛がって貰えると思うのです。はあっ! 」
「はははっ、それもそうだな? それでは達斯·維達殿からお情けを頂く為にも、ここは一つ気合を入れなおすとするかな? せいっ! 」
「その意気なのですっ! 私も後で虎面人様に可愛がって貰うのですっ! せりゃっ! 」
一撃も喰らわず、鋭い攻めで敵を片付けながらも言葉を交わす星と明命。そんな中、ふと何か思い出したのか、星が明命に訊ね掛ける。
「そう言えば、黒猫影よ。大哥(一心の通称)達の方はどうなっている? 一応、大事は無いと思うのだが? 」
「……華蝶仮面殿、あのお三方に関しては別段気を配る必要は無いと思うのです。一応、先程ちらりと見ましたが、思わず敵の方に同情したくなってしまったのです 」
そう苦笑交じりで答え、明命がとある方を顎で指す。彼女に言われるがまま、星がそこに目を向けてみれば、その先に繰り広げられる光景に思わず苦笑いを浮かべてしまった。
「あ……はははっ、杞憂に過ぎなかったか? 若し、これに義雲殿も加わればある意味『完璧』だろうな? 」
「ふふっ、確かにそうなのですが、物事とは早々都合の良い様に行かない物なのです 」
軽く笑い声を上げた二人であったが、彼女等はすぐに表情を引き締めると、後は只管眼前の敵に立ち向かう。そして、先程彼女等が目を向けた方では、とても凄まじい大立ち回りが行われていた。
※3:トンファーの元になった打撃武器。長い物は長拐、短い物は短拐と言う。
――十九――
「どすこいっ! どすこいっ!! も一つおまけにどすこいっ!!! 」
「ばごっ! 」
「びぎっ! 」
「ぶぐっ! 」
虎の覆面を被った『虎面人』こと義雷が、相撲の技で言う所の『突っ張り』をぶちかます。この一撃だけで、数人がいとも容易く吹っ飛ばされてしまった。
余談であるが、この『虎面人』は一刀から聞かされた『虎の覆面を着けた最強のプロレスラー』の話が元である。『最強』の言葉に刺激され、義雷がこの話をすっかり気に入り、今回彼はその『虎面人』に扮したのだ。
尤も、プロレスラーの意味を教える際一刀は『力士』と説明したのだが、今度は『力士』とは何だと聞かれ『相撲』を取る者だと説明し、更に『相撲』とは何だと尋ねられ……その結果、義雷の出で立ちは虎の覆面に廻しを着けた力士のその物となり、この姿を見て一刀は文化の違いを乗り越えて説明するの実に難しいと痛感させられたのである。
「ごっつぁんですっ! 」
そう叫んで大仰に手刀を切って見せると、虎面人は新たに沸いてきた次の目標目掛け「どすこいっ!」と突っ込んで行くのであった。
「せいっ! 」
「ぐあっ! 」
「峰打ちじゃ、安心せい! 」
敵の攻撃をかわし、がら空きになった腹に剣の腹をめり込ませる一心。この場合だと刀ではなく剣であるので、本来なら『平打ち』なのだが、これはちょっとしたご愛嬌である。
さて、今回『桃太郎』と名乗った一心だが、彼は一刀から元いた世界の話を聞くのがとても好きで、中でも『時代劇』の話を特に好んでいた。自分自身の出自が侠と言う事もあり、典型的な勧善懲悪話の時代劇が彼の琴線に触れたのもある。
やんごとなき身分の人間が素性を隠し『桃太郎』と名乗って悪を斬る――『桃太郎侍』の話に興味を示し、またこれの元となった『桃太郎』の話が桃――仙桃から生まれたと言う設定も、西王母の仙桃の話と相俟っていた事もあり、今回彼は『桃太郎侍』に扮した訳である。
「このっ、※4李太郎がっ、くたばれっ! 」
「なんのっ、桃太郎きっく!! 」
「おごぼっ!? 」
一心の背後から、剣を持った兵が斬りかかって来るが、彼はすぐそれに反応すると、振り向きざま強烈な右足の蹴り、即ち『ヤ◎ザキック』と呼ばれる物を相手の顔に減り込ませる。斬りかかった方も、突っ込んだ勢いがあった物だから突然の事に反応しきれず、もろにそれを受けてしまうともんどり打って倒されてしまった。
「けっ、誰ぁれが“李”太郎だ。李太郎じゃねぇ、“桃”太郎だ。ちゃあんと、覚えときなっ! 」
唾棄交じりでそう言い、一心はとある方をチラリと見やる。彼の視界の先では凄惨なやり取りが繰り広げられていた。
「はあ~~……ったく。一番乗り気じゃ無かった癖に、いざ本番になってみりゃあ意外とノってるじゃねぇか? どうやら、維達卿は随分ご機嫌の様だ。今更おいらが助太刀する必要もなさそうだな? 」
と、苦笑を混じりでぼやく一心こと『桃太郎侍』であったが、直ぐに真剣な表情に改めると周囲の敵を一睨みし、雌雄一対の剣を両手に躍り懸かって行ったのである。
『クゥォォオオオオ……プァアアアアアアアアア…… 』
「このっ、化け物がっ! 倒れろー!! 」
「ひいっ! こっちくんなー!! 」
その『とある方』では、一刀扮する『達斯・維達』が仮面越しで不気味な呼吸音を出しつつ、大立ち回りを演じていた。既に何人か倒したのであろう、彼の足元では幾人かの兵士が気絶させられており、何れも白目を剥いたり或いは口から泡を吹いていたりと、殺されはせずとも可也強烈な一撃を叩き込まれたのが窺える。
「でやあぁあああああああああああ!! 」
『ぬんっ! 』
一刀と対峙していた兵の内一人が、両手に構えた長剣で上段から斬り掛かるも、一刀は手にした刀を一閃。相当な威力だったのか、相手の剣の剣身が半ばから叩き折られると、そのまま落ちて地面に突き刺さった。
「嘘だろっ? この剣は新品なんだぞっ!? 」
『クゥォォオオオオオオ……プァァアアアアアアア……わしの光刃の前では、如何なる武器も鈍ら同然。無駄な抵抗だ! クゥォオオオオオオオ……プァアアアアアアアアア…… 』
新品の武器を叩き折られ、愕然とした表情で剣身が半分になってしまった長剣を眺める兵士に平然と嘯く達斯·維達。彼の手に握られた日本刀は刀身が赤く煌いていたが、これは先程説明した彼の仮面と同じで、楚々がこけおどしの為の術を掛けていたに過ぎず、寧ろこの所業は一刀の技量と膂力が相手より遥かに上回っただけに過ぎなかったのである。
『クゥォオオオオオオ……プァアアアアアアアアア……さぁ、わしの暗黒面におののくが良い! 』
「うわぁああああああああああああっ!! やめろっ、やめろぉーーーーーーーっ!!! 」
一刀扮する異形からの威圧感に中てられ、すっかり恐怖してしまい、その場にへたり込んでしまった兵へとゆっくり歩み寄る達斯・維達。そして、一刀は空いた左手で相手の首を掴むと、そのままぐいと持ち上げて見せたのである。
「がはっ……は、は、なぜ……っ! 」
『どうだ? わしの『原力絞首』は? さぁ、もっと苦しめ! そして原力の暗黒面に恐怖するが良い!! 』
『原力絞首』と謳ってるが、無論『原力』なぞ使っていないし、そう言った物も習得していない。以前、蓮華を殺そうとした丁奉に逆上し、その彼を殺す積りで使った「片腕だけでのネックハンギングツリー」である。
「…… 」
『ふん、堕ちたか? いとも容易かったな? 』
だが、流石に今回は状況が異なり相手を無力化させるのが目的であるから、一刀なりに微妙な頃合を見計っていたのだ。相手が堕ちたのを確認してすぐに手を離すと、首を絞められた兵士の体はズルリと落ちたのである。そして、ゆっくりと後ろを振り向き、仮面越しで不気味な呼吸音を交えた恐ろしい言葉を発した。
『さぁ、次は貴様等の番だ。先に泰山地獄に逝きたい者から掛かってくるが良い! クゥォオオオオオオオオ……プゥァアアアアアアアア…… 』
「ば、ばばばばばばばばっ、ばっ、化け物だ!! あいつは本当の化け物だ!! 」
「こっちに来んじゃねぇ!! やめろーっ!! 」
虚仮脅しの術で赤く光った刀身の日本刀を右手に持ち、何かを掴むかの様に指を曲げた左手を前に出し、『西斯の暗黒卿 達斯・維達』がじりじりと彼等の方へと詰め寄ってくる。
「もう嫌だぁあああああああああああ!! あんな奴に安銭で扱き使われてこんな化け物と戦うなんざ真っ平御免だ!! 俺は一抜けるぞ!! 」
「あっ、てめえだけずるいぞ! 俺も抜ける、二ィ抜けたー!! 」
「うわああああああああああああああああああっ!! 」
完全に心が折られた様だ。達斯·維達の周りを取り囲んでいた兵が我先にと蜘蛛の子散らしでこの場から逃走する。それの煽りを受けてか、他の兵達も続く様に逃げ去って行き、後に残されたのは寇県令と丁県尉そして十名の兵であった。最初の内は数を頼みに余裕であった筈の二人の表情も、今や完全に冷や汗まみれで焦りを露にしている。
「くそっ、あの薄情者どもめらが。最初に護るべき儂を見捨てて、自分等だけさっさと逃げ出すとはなあっ!? 」
「けっ、県令様っ。今ここに残ってるのは最早十名しかおりませぬぞ? まさか、三十人の兵がたった七人にやられるとは、こいつ等は本当の化け物かっ!? 」
段々と屋敷の塀の方に追いやられ、それぞれ喚く寇と丁。彼等の視界の先では、七人の男女がじりじりとそちらの方へと詰め寄ろうとしてしていた。
「こうなれば、ええいっ、ままよっ!! 死中に活を見出すぞっ! かの韓信も背水の陣で死中に活を見出したではないかっ!! 全員儂に続けっ!! 死に物狂いで掛かれば絶対に勝機が見つかるに違いあるまいてっ!! 」
「流石は県令様。博識であられる。良いかっ、者どもっ!! 数の上ではまだ我々が有利だっ! 全員一丸となってあの狂人どもを打ち倒すぞ!! 」
「おおーっ!! 」
「……はぁ~~っ、ここまでやられたのにまだ懲りてねぇのかよ? 仕方が無ェか。野郎どもっ、殺さねェ程度に叩きのめすぞっ!! 」
「「「「「『合点承知之助ッ!! (クゥォオオオオオオ……プゥァアアアアアアアアアア……) 』」」」」」
どうやら自棄を起こしたようだ。最後の最後で悪足掻きし、二人は残った十人の兵と共に襲い掛かって行ったが、如何せん実力が違いすぎる。桃太郎の号令の下、七人の怪人が県令達を迎え撃つと、瞬く間に彼等はこてんぱんに伸されてしまった。
※4:李=スモモ
――二十――
「うっ、ううううう…… 」
「いっ、いつつつつつ…… 」
「い、医者はどこですか…… 」
「あ、ああああああああ…… 」
「かゆい……うま…… 」
七人の怪人の足元で、果敢に吶喊した寇県令をはじめとした十二人の勇士達が無様な姿を曝け出している。まだ、喋る気力が残ってたのだろうか、息も絶え絶えで寇が『桃太郎』に話しかけて来た。
「お前らは一体何者だ? その腕っ節の強さからして、到底只のならず者とは思えぬのだが……? おおっ、そうだ!! 若し何なら儂に雇われぬかっ!? 儂の下にいれば、贅沢し放題だぞ! 」
己に不利な状況を何とか打破したいと思ったのだろう。咄嗟に思いついた良案らしき物を言う蟇蛙であったが、それに対し『桃太郎』は完全に呆れ返る。
「だから言っただろう? 『泰山の遣い』ってよ……然し、この期に及んでもまだ戯言抜かしやがるたぁ、呆れて物も言えねぇ。どうやら、手前ェにゃ……んんっ? 」
と一心が言い掛けた所で、何やら人の声や駆け込んで来る足音が聞こえて来ると、こちらの方にひとかたまりの集団が雪崩込んで来た。恐らくだが、先程逃げおおせた連中の一部か或いは付近住民からの通報があったのだろう。その集団の正体は章陵の町を護る警邏隊であった。人数の方も先程より多く、どう少なく見積もっても五十以上はあると思われる。
「御用だ、御用だっ! 夜遅くに関わらず県尉様の屋敷で乱闘騒ぎを起こす罪人どもめっ! 我等は章陵警邏隊であるっ、大人しく縛につけいっ! 」
「御用だっ! 」
「御用だっ! 」
「智多星呉用だっ! 」
「何のこっちゃ? 」
またぞろと沸いてきた新手の集団に対し、七人の怪人どもは「またか」と言わんばかりに顔をげんなりさせ、それとは逆に寇と丁の顔は一気に晴れやかなものになる。そして、先程とは態度を一変させると二人はそれぞれ身勝手な自己主張を始めた。
「そこの者どもっ、今すぐこやつ等を捕らえよっ!! こやつ等は儂を謀っただけでなく、県尉の屋敷で乱暴狼藉を働いた不届き者だっ! 捕らえ次第即刻斬首せよっ! 」
「寇県令の言う事に嘘偽りは無いっ! 斬首だ! 首を打ってしまえ!! 」
「ははっ! 」
この状況下における、県令と県尉の言葉は絶対的であったようだ。隊長らしき男がそれに首肯すると、警邏隊全員の矛先は怪人どもに向けられる。このやり取りに、怪人どもは眉を顰め、桃太郎さんの傍らで控えていた達斯・維達が彼に話しかけてきた。
『クゥオオオオオオ……プゥァアアアアアアアア……兄上、どうされますか? この状況からして、まだやる必要があると思われますが? 』
「ハァ~ァ。あぁ、わあってらいっ! ……と言う訳で、野郎ども。悪ぃがもうちっと暴れてもらうぞ? こちらの言う事聞かすにゃ、ある程度痛めつけなくっちゃあいけねぇしな!? 」
「「「「「『応っ!!(クゥォオオオオオオオ……プゥァアアアアアアアアアア…… ) 』」」」」」
かくして、意外な形で再戦が行われたが、結果は先程と同じであった。五十以上いた警邏隊の皆さんであったが、あっと言う間に頭数を打ち減らされ、その場に立っていたのは十五人位しか残っておらず、彼等は完全に戦意を喪失させられたのである。
「ううううう…… 」
「いだだだだだだ…… 」
「あいつ等人間じゃねぇ…… 」
そして、悪徳県令と県尉であったが、彼等も言わずもがなで、腰が抜けたのかその場にへたり込んでしまった。
「待っ、待てっ! 金が欲しいのなら全部くれてやるっ!! だから頼むっ! どうか殺さないでくれっ!! 」
「我々の完敗だ、もうこれで気が済んだだろう? だから、これ以上は勘弁してくれ…… 」
これを丁度良い頃合と捉えたのか、大暴れしていた桃太郎さんは傍らで鯖折りをしていた虎面人に大声で叫ぶ。
「好! これ位で良いだろう。虎面人っ! 」
「おうよっ、兄者ッ! 」
そう言うと、虎面人は大きく息を吸い込み、割れんばかりの大声を辺り一面に響かせる。
「蹕ーッ(下がれ)! 下がれっ、下がれっ、下がりおろうっ! 」
『そこの者達控えよ、控えるが良いっ! クゥォオオオオオオオ……プゥァアアアアアアアアアアア…… 』
「合図だ、大哥の許に参るぞ 」
「合点承知之助なのです 」
「了解~♪ 」
「うむ、承知したぞ 」
それを合図に、達斯・維達も続いて叫ぶと、他の怪人達は一斉に桃太郎さんの傍らに並ぶ。そして、虎面人は廻しに括り付けていた物を悪人どもの面前へと見せ付けた。
「この印綬が目に入らねぇかっ!! 」
「なっ!? その印綬はっ? まさか、督郵の印綬となっ? 」
「なん、だとぉっ……!? このふざけたならず者が督郵だと!? 」
「ざわ…… ざわ…… 」
虎面人が見せ付けた物であるが、其の正体は『南陽国督郵』の印綬である。督郵とは各県の役人の不正を取り締まる監察官で、当然その発言力や立場は県の役人よりも高い。それを見た瞬間、寇と丁だけではなく他の者達も一気に表情が凍りつくと、すかさず義雷と一刀は言葉を続けた。
「こちらに居わすは南陽国督郵、劉伯想様であらせられるぞっ! 」
『一同、劉督郵の御前である。頭が高ーいっ! 控え居ろうっ!! クゥォオオオオオオオ……プゥァアアアアアアアア…… 』
「「「「「はっ、ははーっ!! 」」」」」
彼等に言われ、寇達が一斉に平伏すと、本来の表情で一心が平伏している寇を舌鋒鋭く追及し始める。
「寇県令っ! 」
「はっ、ははっ 」
「己が立場を笠に着た其の方の悪行三昧、この伯想確と見届けさせて貰ったぞ? 」
「はて? 何の事やらさっぱり……私めは真面目に勤めを果たしているだけに過ぎませぬが? そもそも、何の前触れも無く突然現れて、やれ督郵だと言われましても手前どもの方が困りますし、お言葉ながら、非礼は劉督郵、貴方方の方にあるのではないのでしょうかなぁ? 」
「…… 」
「このっ、糞猪蛙がッ! この期に及んでまだ白ァ切るってぇのかよっ!? 」
『兄者、落ち着いて下され……クゥォオオオオオオオ……プゥァアアアアアアア…… 』
「むうっ……そこまで腐っていたとは。往生際が悪いとは正にこの事だな? 」
「なっ、何でこの期に及んでまで、そんな真似をするのですかっ!? 」
「ほほう……どうやら、この蟇蛙には徹底的な責め苦を味わわせる必要があると見た! 」
「はぁ……駄目ね、この県令。魂まで腐れ果ててるわ。死んだら間違いなく泰山地獄逝き確定よね~ 」
この期に及び、まだ悪足掻きをしたいのか、寇はすっとぼけた表情で明後日の方向を向く始末。この厚顔無恥な腐れ蛙に、一心は一気に無表情になると、虎面人は逆上し掛けてそれを達斯・維達が何とか宥める。然し、当の彼も内心激しく怒りを抱いており、他の仲間達も皆それぞれ怒りを露にしていた。
「…… 」
「つきましては、今宵の事は互いに『知らなかった方』が無難かと思われますが? さもなければ、私めの方と致しましても、国相閣下(桃香)に直訴し、貴方方がなさった蛮行を御報告しなければならないのですが…… 」
「「「「「『なっ……!?(クゥォオオオオオオオ……プゥァアアアアアアアア……) 』」」」」」
無表情なままの一心の反応に、付け入る隙があると睨んだのか、寇は自信が思いつく限りの詭弁を並び立てる。すっかり調子に乗り、顔を下品な風でにやつかせて逆にこちらを脅そうとした辺りに入ると、皆の顔がより一層険しくなってきた。
「黙れっ!! 」
「ひっ!? 」
然し、この愚かな蟇蛙の詭弁もそこまでで、一心の大喝により寸断される。一喝する様にも、一心は王者の気風を纏っていた。
「先程から黙って聞いておれば、己が非を認める所か開き直り、剰えこの私を脅そうとする始末! 身の程を篤と弁えよ、この下衆めがっ!! 」
「ひっ、ひいいいいいっ! 口が過ぎまして御座います、どうかお許しをーっ!! 」
「あ~あ、あの蟇蛙マジで兄者を怒らせやがった。そう言や、昔猪役人を半殺しにした時もこんなんだったよなぁ~ 」
『クゥォオオオオオ……プゥァアアアアアアア…… 』
(うへぇ~……マジでおっかねえ。やっぱ、前世の劉玄徳だけあるわ…… )
「これは……迫力もさながら、重厚な威厳に満ち溢れている。一瞬、大哥に王者の風格を感じてしまったぞ? 」
「華蝶殿、昔大哥は雪蓮様と義雷様の諍いを止めた事があったのですが、あの時もこんな感じだったのです 」
「ほほう……流石は劉玄徳殿の従兄だけはある。恐らくだが、これだけの漢は中々いないだろうな? ……余りにも凄過ぎたから、思わず濡れてしまったではないか 」
「はぁ~~、一心さんまるで別人みたい。いつもの『べらんめえ』しか見てないから、一瞬同じ人かどうか疑っちゃったわよ? 」
(いつもの一心さんは、※5伯升様にどこか似てるけど、今はまるで……そう、皇帝の風格さえ感じられるわね? この人一体何者なのかしら? ……やめやめっ、考えてみれば私達も結構人の事勘繰れる立場じゃないんだし、要らぬ詮索はしない方が無難よね? )
この一心の姿に皆がそれぞれ思った事を述べる中(約一名物凄い事を言ってたように思えたが、恐らく気のせいだろう)、楚々――嘗ての※6祭遵が、とある人物の面影を思い浮かべ、あれこれと考えを巡らせたが、最後は苦笑一つ浮かべてかぶりを振る。一方の一心であったが、彼は蟇蛙に強烈な睨みを利かせつつ、とある方へと声高に叫ぶ。
「寇県令。貴様が一体何を仕出かしたのか、篤と思い出させてやる。高伯殿っ! 」
「はぁ~いっ☆ お呼びになってぇ~~ン? 」
「こちらの寇県令だが、証拠を見たいとの事だ。願い通りに見せて差し上げよ 」
「了~解っ! ほいっとなっ 」
気色悪く上ずった声と共に、体にぴっちり食い込んだ服を着た筋骨隆々の大男――楚々の兄際武(※7祭午)がその場に姿を現すと、彼は両手に掴んでいたとある物をぽいと地面に放り投げる。投げられたそれらからは、二つの悲鳴が上がった。
「いだっ! 乱暴にしないでくれっ!! 」
「いった~! ちょっとぉ、嫁入り前なんだからもう少し丁寧に扱いなさいよねっ!? 」
「なっ…… 」
その正体であるが、一人は寇の悪事に加担していた奴隷商人の辛と、もう一人は年の頃二十歳前後かと思われる若い娘で、彼等の姿を確認し寇の表情が一気に凍りつく。それを見逃さず、畳み掛けるかのように一心は言葉を続けた。
「どうだ、見覚えがあるだろう? 貴様に加担していた奴隷商人の辛と、呂範なる袁術の家来だ。この二人に尋ねてみれば、実に興味深い話を色々と聞かせてもらったぞ? 」
「しっ、知らぬッ!! 儂は斯様な者達など知らぬッ!! 」
「この期に及んで見苦しいですなぁ、寇県令……。私はもう全て白状しましたぞ? かくなる上は、私と共に神妙にお裁きを受けようではありませぬか? 」
「ちょっとぉ! アンタのせいでこっちはこいつらから赤っ恥かかされたんだからねっ!! おまけに、目が覚めたら丸裸で吊るされてたわ、そこの女達から羽箒で全身くすぐり責めにされるわで……ウウッ、思い出しただけで鳥肌が立つし、余りにも自分が情けなくなって涙が出てきちゃったわよ…… 」
そう叫び、呂範なる娘がとある方を睨みつけると、その先に居たのは不敵な笑みを浮かべる華蝶仮面と仮面女中に、気拙そうな表情の黒猫影の三人であった。
「おやおや、拷問で痛めつけるよりは遥かに生易しいと思ったのだが……? フフッ、それに陰門から菊門にかけて丁寧になぞってやったら、中々良い顔で喘いでいたではないか? 」
「そう、その通りだ。その気になれば、こっちは苦痛と言う苦痛を貴様に大牢(フルコース)で味わわせる事だって出来たのだからなぁ? だが、女相手にそれは流石に無体だろうと劉督郵が仰ったから、とても優しい方法にしてやったのだぞ? 寧ろそれより、督郵様の慈悲深さに感謝すべきではないのかなぁ? フフフフフ…… 」
「ええと……これも任務ですので、どうか悪く思わないで欲しいのです。お二人が言う様に、少なくとも苦痛を与えるよりは可也ましだと思うのです……それに、あの手の拷問となると男より女の方が凄惨で、中には数人掛りによる強姦を交えたとても恐ろしい物もありますので…… 」
「くぅ~~っ!! それで慰めてる積りなのっ!? こっちとしては一生モンの不覚よっ! あ、あんなくすぐり責めで機密をばらしてしまうなんて~~!! 」
(嗚呼、とても無念だ。あの娘の裸と悶える様を、是非ともこの眼に焼き付けてみたかったぞ……!! )
(俺もです、兄上。矢張り、刺激が無いと人生は面白う御座いませぬ……!! )
(本当は、俺様も見てみたかったんだけどよぉ、あの芸人兄妹に邪魔されたしなぁ~……はぁ、モンの凄く残念だぜ )
「……ちょっとぉ、そこの助平三兄弟。口に出さずとも、表情や雰囲気でばればれなんだけどー? 自重しないと、後で皆に言いつけちゃうわよ? 」
「だ・め・よぉ~~ん! それはそれ、これはこれ! きちんと区別できないお馬鹿さん達には、後でアタシの秘密の花園で愛の大牢をご馳走させちゃうわよ~~ん!! 」
等と、間抜けなやり取りはあった物の、辛と呂範にそれぞれ詰られ、寇は完全に言葉を失ってしまい。それを頃合と判断すると、一心は先程明命が回収した金の耳飾りを懐から取り出し、寇の前へと放り投げた。
「寇よ、これが何か判るか? 」
「なっ!? 督郵様、これは…… 」
「それか? それは貴様の屋敷の蔵にあった物だ。この耳飾りだが、どう見ても一つ千銭は下らぬし、この他にも大量の銭が詰まった木箱が沢山積み上げられていたとの報告も受けている。幾ら県令が高禄とは言えども、何故そこまでの財を築く事が出来るのだ? 」
「くっ……! 」
「以前、貴様は『税率を前の物に戻したがその反面徴税額が可也減ってしまった』と、殿下や国相閣下に報告したな? 然し、この伯想が実際にここで耳にしたのは、何れも『税率が全然変わっていない』と悲嘆の声しか聞こえておらなんだし、大した事も無い飯店の宿泊代が一泊百銭だったりと異常な物価高も目の当たりにしたぞ。一体、これのどこが税率を元に戻したと言うのだ? そして、これらの事をどう殿下達に申し開きする積りなのだ!? 」
「いっ、いやそのっ、それは…… 」
「まだあるぞ? 貴様は己が私利私欲の為、辛と申す奴隷商人と結託。各地から沢山の罪無き人々を不当に捕らえては、方々に売り捌く行為を繰り返していただけでなく、恐れ多くも伏閣下の御息女にまで手を出そうとしたな? 挙句の果てには、それから得た金の一部を袁術に渡していたと、この呂範なる女が白状している。寇よ、これでもまだ白を切ると申すかっ!? 」
「おっ、恐れ入りまして御座いまするっ! 全て督郵様が仰られる通りにて御座いまするーっ!! 」
そう一心が睨みを効かして一喝すると、顔色をコロコロ変えて呻いてた蟇蛙であったが、遂に参ったのか彼は地に這い蹲り、己が罪を認めた。
「貴様の罪、断じて許し難し! 然る後、殿下から厳しいお沙汰が来るのを覚悟しておくが良い! 」
「は、ははっ…… 」
そう力なく答え、完全に憔悴して寇はその場に崩れ落ちると、次に一心は共犯者の一人である県尉の丁に鋭い視線を浴びせた。
「丁県尉っ! 」
「はっ、ははっ 」
「本来なら、貴様は治安を護るべき重き立場である筈なのに、甘い汁を吸いたいが為に寇に加担するとはなっ!? 貴様も寇と同罪だ、厳しいお沙汰を覚悟して待っておるがいい 」
「ははっ、恐れ入りまして御座いまする…… 」
と、今度は丁ががくりと項垂れると、一心は未だ平伏したままの警邏隊の方を向き、声高に指示を出す。
「そなた等、今のやり取りで事情は掴めたな? 」
「ははっ、我々はとんだ心得違いをしておりました。これより、我が隊は督郵様の指示に従いまする 」
「そうか、ならば自分等が今すべき事を行ってくれ 」
「はっ! おいっ、今すぐこの罪人どもを引っ立ていっ! 」
「「「「ははっ!! 」」」」
隊長の号令一下、警邏隊の面々が寇を始めとした罪人達に縄を打って全員連行していくと、後に残されていたのは一心達のみであった。辺り一面静寂に覆われ、ついさっきまで激しい立ち回りがあった事が嘘の様に思えた。
「流石は兄上! 久し振りに真剣な兄上の姿に、この一刀完全に恐れ入りました 」
と、『達斯・維達』の面を外し、穏やかな笑みで一刀が感慨深げに一心に話し掛けると、他の仲間達もそれぞれ笑顔を彼に向ける。
「おいおい、北の字よぉ、むず痒くなる事を言うねい。あ゛~~、流石に疲れたぜ。こう言う顔すんのって肩が凝ってしゃあねぇ。まっ、取り敢えずでけぇゴミを片付ける事は出来たか? 」
そう言って一心はいつも通りの姿に戻ると、照れ隠しか、わざとらしげに自身の肩をポンポンと叩く。そして、共に戦ってくれた仲間達に暖かい眼差しと共に労いの言葉を掛けた。
「皆ぁ、今夜はお疲れさんな。さっき言った様に、でけぇゴミは片付ける事が出来たが、まだ後始末が残ってる。早速、おいらはこの事を大至急宛(南陽国首都)に知らせる積りだ。返事が来るまでの間、皆はゆっくり体を休めてくれ 」
そう一心が締め括って全員無言で頷くと、後は休むべく逗留先の伏家の屋敷へと引き上げる。屋敷に戻り、早速一心は事の始終を文に認め短時間で仕上げると直ぐに早馬を手配し、書き上げたそれを大至急宛に届けさせたのである。
※5:名は劉縯。光武帝劉秀の兄で剛毅な人物。一説によれば、彼の遺児が劉備の先祖であると言われている。
※6:字は弟孫。雲台二十八将の一人。容姿端麗でとっても強い。詳しくは家康像様著「恋姫†先史 光武帝紀 ~仕官当作執金吾~ 」を読んでね!
※7:歳の離れた祭遵の兄。詳しくは(以下略)
先ず一言……
「一年以上の間タラタラ運転で申し訳ありませんでしたっ!! 」
昨年六月から「章陵の大掃除」に取り掛かり、本当はこんなに時間かけずに書き終えたかったのですが、諸事情(偽者騒ぎや何処ぞのスレでの陰口)の他に、公私のバランスが取れなくなったりと「度スランプ」状態が長続きしてしまいました。
実は、二十三と二十四の部分は昨年六月に書いており、その間の話を書き終えるのに滅茶苦茶時間が掛かってしまったのですよ。ましてや今回もここまで来るのに仮更新を七回も繰り返し、皆々様にご不快な思いをさせてるのかと思うと……酷い時は情緒不安定や睡眠障害に悩まされましたね。(苦笑
ですが、今回の一件は良い経験になったと思います。この章陵の大掃除ですが、元々は「あっぱれ!天下御免」プレイして、所々に散りばめられた時代劇ネタに影響された物です。(尤も、恋姫に比べると作品自体は劣ると思ってます)
サクサク行きたかったんですけど、中々書く気が起こらなかったり、或いは少し書いてやめるの繰り返し、これじゃ進む訳無いですよね……正直、安堵すると共に激しい自己嫌悪に陥ってます。
さて、今回は登場させたオリキャラですが、元キャラは居ますが敢えて伏せておきます。でも、判る方は判るかも知れませんね? 扱いを悪し様にする気は無かったんですけど、元袁術の部下の孫家の臣って誰か居ないかと思ったら、呂範がヒットしたんです。本当です。(演義での設定ですが
本当は派手好きだった呂範に「あのキャラ」当てはめるのもアレかなと思ったのですが、それは私の味付けと思い勘弁して下さい。(汗 流石に全てが全て忠実にーってやると、こっちも焼き切れてしまうので。(汗
でも、書いてて不憫な扱いしちゃいました。何せ、袁術からヤバイお遣いさせられて、眠らされたらスッポンポンにひん剥かれてのくすぐり責め、それも「ア~ン」な所を執拗にやられて全て白状! 極めつけは袁術からの蜥蜴の尻尾切り&雪蓮に半分脅されて孫家に仕官……うん、不憫だな。
他にも登場させたオリキャラですが、後でまた活躍する場を設けたいと思っております。ただ、その反面原作キャラの出番が少なかったり、或いは一刀を差し置いて一心兄さんが表に出過ぎたなと反省してます。バランスとるのって本当に難しいですよね?(汗
陽と紅麗>このシーンは書きたかったんですよねぇ~! 本作の世界観は、家康像様の「恋姫†先史 ~光武帝紀~」の後の時代に設定してるので、秀ちゃんと麗ちゃんの生まれ変わりとも言える陽と紅麗の初めての出会いを書きたかったんですよ。余計なモン書き加えんなよと思ってる方も居るかもしれませんが、どうしても細かくなっちまうのは私の悪癖です。本当に申し訳御座いません。
そして最後の「劉宏崩御」の報せ……ようやっと第三部のスタートラインに漕ぎ着けました。どの様な展開に持ってくのか、まだ大まかなものしか決めていないんで、書きながら細部を固めたいと思っております。
次回更新はいつになるかわかりません。ですが、今晩からまた書き始めます。間を置くと、またスランプになっちまいますので。また次回も更新出来ましたら、読んでいただけると嬉しく思います。
それでは、また~! 不惑庵・裏でした~!
……楽天、今日こそ勝てよー! 三連敗は洒落にならんから……。