第三十四話 第二部最終話『後編』 「南陽国相 宜城亭候 劉玄徳」
どうも、不識庵・裏です。
今回の話で本当の第二部終了と相成りました。只、昨日投稿した話に比べると『アッサリしすぎじゃね?』と思われるかも知れません。
何せ、元々一つの話で終わらせる筈だったのが、文字制限数を突破しそうだったので、適当な箇所でちょん切り、残りの部分に何とか肉付けをしただけですので……。
それでも、何とか読み応えのあるモンにしたいと思い、土曜の休みを一日ブッ潰し、今の今の時間までほぼ不眠不休でタイプを打ち続けました。
流石に精根尽き果ててしまいましたので、前振りはここまでにしておきます。
それでは、照烈異聞録第三十四話。最後まで読んで頂けたら嬉しく思います。
――五――
その後、黄巾討伐軍は潁川郡でもっとも被害が激しかった潁陽、潁陰、長社の三県を回った。
何故なら、その先々で『張三兄弟』の偽首にさせられた張闓等三悪童の首を晒し、民心を安堵させる必要があると、華琳が何進に提言したのである。当のケツデカババアは嫌がったが、先の陽翟の戦いで醜態を曝け出した諸将の前では大きく出られずに、大人しく言う事を聞くしかできなかったのだ。
『ふうっ……何だか、自分のお墓参りをするって変な気分よね? あ、見て兄さん? 優ちゃんよ!? 』
『本当だわ! 優ちゃん……お久し振りねェ~ン♪ 極・好~~ン♪ 』
潁陽に入った際、楚々と高伯の際兄妹は陽春に断りを入れると、嘗ての自身が葬られている『潁陽成候 祭弟孫』の墓参りに向かったのである。
楚々の墓に辿り着いた彼等は、墓の前で、それも自分達以外誰も居ない筈なのに、彼等はとある方へと何やら言葉を交わしていたのだ。そう、まるで誰かと会話を楽しむかのように。そして、そんな彼等のやり取りを、木陰に隠れてジッと見やる人影が一人――
(ふむ……潁陽に来た故に『雲台二十八将』が一人祭遵の墓に参り、桃香殿達をお見守り頂きたく思っていたが、際兄妹の二人も来ていたとは意外であったな? )
その正体は照世であった。似て非なる世界とは言え、偉大なる先人達に礼を尽くさんと思い、彼も陽春に断りを入れて祭遵の墓参に来ていたのである。然し、彼が足を運んで見れば、何やら先客が居り、迂闊に声を掛けられぬと判断すると近くの木に隠れて様子を見る事にしたのだ。
(何を話しているのかは存ぜぬが、若しやすると彼等は……いや、下衆の勘ぐりになるな? やめておこう。それに、私達自身も元々『余所者』にしか過ぎぬのだからな? )
この時、楚々達の並々ならぬ雰囲気を目の当たりにした照世は『とある仮説』を立てたのだが、直ぐにかぶりを振ってそれらを全て消し去る。何故なら、自分の目的は『桃香を支える』事にあるからだ。
(貴女達が何者かは、この照世、知ろうとは思いませぬ。ですが、これからも桃香殿へのお力添えをお願い致しますぞ? )
余計な詮索はしない方が良かろうと、直ぐに自身を納得させると、彼は踵を返してこの場を後にしたのである。この様な出来事もあったが、何進率いる黄巾討伐軍はようやく潁川郡を抜け、帝都雒陽のある河南尹に入った。
「これが帝都雒陽……何て壮大な都なんだろ? 」
「ああっ……生まれて初めて目にするけど、マジででかいや……流石は世祖が築いた都だけはあるな? 」
帝都雒陽の巨大な城門を前にし、その威容に馬上の桃香と一刀がそれぞれ言うと、自分等の総司令官である陽春が声高に命を下す。
「これより門を潜り、直ちに都に入りますっ! そう、凱旋ですっ! 故に、全軍は列を乱さず整然と歩を進める事っ! さあ、皆さん誇らしげに胸を張りなさいっ!! 貴方達は国難に立ち向かった勇者なのですからっ!! 」
「「「「「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!! 」」」」」
陽春の号令に応ずるかの様に、皆はこぞって鬨の声を上げた。その中には楼桑村義勇軍の将兵の姿もあり、彼等は道半ばで倒れた仲間の形見を手に持ち涙ながらに叫んでいたのである。
――六――
雒陽入りした後、桃香達の周辺は目まぐるしく変わり始めた。民衆からの熱気と歓声に包まれ、勇ましく凱旋する黄巾討伐軍であったが、やがて彼等は宮殿の門を潜ると閲兵場にて劉宏の出迎えを受ける。
早速、大将軍たる何進は拱手行礼で跪くと、彼女は戦勝報告を行い『張角』等三人の首を差し出す。それを見て、劉宏は満足そうに頷くと、彼女の後ろに控えし主だった将達に労いの言葉を掛けて回った。その際、陽春と菖蒲は桃香を伴っており、早速劉宏の興味は彼女等に向けられる。
『むっ? 盧植に鄒靖よ、そち達の後ろに控えし娘は何者かな? 』
『はっ、陛下。この者は幽州より義勇軍を率いて黄巾と戦った者で、且つこの盧子幹の教え子でもあります。我らの様な臣だけではなく、民草の中にも斯様な者が居ると言う事を存じて頂きたく思い、ここに連れて参りました次第にて御座います 』
『陛下に言上致しまする。この者は憂国の志を胸に抱き、何の見返りも望まずに自ら死地へと赴きました。どうか、この者にも温かきお言葉を掛けて頂きとう存じ上げ奉りまする 』
『ほう……そうか、そうか。で、そちに尋ねる。名は何と申すのじゃ? 忠義の士である盧植と鄒靖にここまで言われたのじゃ、遠慮せずに名乗るが良いぞ? 』
『さぁ、桃香。帝からお許しを頂きました。名を名乗りなさい 』
『んだっちゃよぉ? さっ、桃香さん…… 』
陽春と菖蒲に促され、桃香は実に畏まった風でそれぞれ名乗りを上げた。
『ご尊顔を拝し奉り、恐悦至極にて御座います。私は劉備、字を玄徳と申します。この玄徳漢に仇成す黄巾を討伐せんと、此度は故郷にて義勇軍を立ち上げ、漢の恩に報いまして御座います 』
桃香から名を告げられたその瞬間、劉宏は目を大きく見開くと、桃香を益々興味深そうにじっと見つめる。劉宏が桃香に注ぐ視線には物凄い熱気が込められていた。
『なるほど……そちが『劉玄徳』であるか? 朕は真に幸せ者じゃ。そちのような勇敢な者と直接相見える事が出来たからの? 時に玄徳よ、そちは劉姓を名乗っているようじゃが、朕と同じ縁の者かの? 』
『!? 』
劉宏の言葉に戸惑いを覚える桃香であったが、すかさず陽春が彼女に助け舟を出す。
『主上、この娘で御座いますが、漢の中山靖王劉勝の末裔にて御座います。その証で御座いますが、この宝剣をご覧下さいませ 』
そう言うと、陽春は桃香の愛剣である『靖王伝家』をススッと劉宏に差し出し、彼はそれを手に取るやまじまじと眺めて見せた。
『ふむ……美しい装飾を施されておるが、剣としても可也の業物のようじゃの? それに……中山靖王の刻印もされておるではないかっ! 』
『はい、私は以前博士の任に就いていた折、古の諸侯王に関する記録を調べた事がありましたので、彼の中山靖王がこれと同じ剣を打たせていたのを覚えていたのです。故に、この娘が中山靖王の末裔である事の何よりの証かと存じ上げます 』
陽春は武人としても有名であったが、学者としての知名度の方が高い。彼女のその言葉に、劉宏は相好を崩して見せた。
『ふむ、流石は博識で知られた盧子幹だけはある。それに、朕も中山靖王くらいは知っておるぞ? 精力絶倫の上子沢山で、煌びやかな装飾品や宝剣を作らせた話も存じておる。じゃが、この玄徳なる娘、実に気品に溢れた面立ちをしておるではないか? これほどの娘、只の庶人にしておくには勿体が無さ過ぎる! よしっ、今決めたぞ! これ、劉備よ 』
『はっ、ははっ! 』
『漢の宗室に相応しくあるべく、一先ずそちを宜城亭候に封ずる! 役職の方じゃが、そちに見合った物を用意するからの? 追って沙汰を寄越す故、それまでの間暫し盧植の元にて待つが良いぞっ!! 』
『ッ!? みっ、帝ッ!? 今何とッ!? 』
その言葉内容に、桃香は我が耳を疑い、思わず劉宏に聞き返す。何故なら、『亭候』とは『列候』と呼ばれる爵位の一つだからだ。
『我が耳を疑うのは仕方があるまい? 朕はそちに爵位を与えるのだからな? で――受けてくれるのか? 』
『恐れながら、帝。私の様な劉姓を名乗るだけの田舎者に『亭候』の爵位なぞ、過ぎた物で御座いますし、他の戦ってくれた方々にも申し訳が立ちません。ここは辞退させて頂きとう御座います 』
『ふむ、殊勝な心掛けじゃが劉備よ。れっきとした漢の宗室の末裔でありがながら、長きの間不憫な思いをしてきたそちに対し、何もせなんだ朕からのせめてもの罪滅ぼしじゃ? 故に、改めて申し渡すぞ? 劉備よ、そちを本日より『宜城亭候』に封ずる。受けてくれるな? 』
『はっ、ははーっ!! 』
再度念を押されるように、劉宏から言われてしまうと、桃香には黙って爵位を受け取るしか選択肢は残されていない。思いつきで物事を決める悪癖がある劉宏であったが、この時ばかりは極めつけとも言える。何と、彼は劉姓を名乗るだけの桃香を『漢の宗室』の一員とし、且つ列候の爵位まで与えたのだ。
列候になると言う事は、無論候国の君主になると言う事である。この時より桃香は『宜城亭候 劉玄徳』となったのだが、当然劉宏の後ろに控えし他の朝臣達が黙っては居ない。
『な、なんと……主上は一体何をお考えか? 斯様な卑しき庶人を列候に封ずるなどとは……これでは、漢の威信が台無しではないか!? 』
『全くだ、これでは泰山に居わす世祖もさぞお嘆きであろう…… 』
『何だよ、あの女……死に物狂いで戦ったのは俺達官兵だぜ? 何であんな義勇軍引っ張っただけで美味しい目に遭えるんだよ? 大方体でも売ってたんじゃないのか? 』
『……ッ! 』
それどころか、他の軍の将兵からも彼女を野次る声が飛ぶ有様で、これらの罵声に桃香は辛そうに顔を顰めると、劉宏は顔を真っ赤にして激昂し始める。
『黙るが良いッ!! 漢の宗室の末裔でありながら、勇敢に戦ってくれたこの者に対し、朕はそれ相応に報いただけに過ぎぬっ!! これ以上この者を貶すのはやめよっ!! この者を貶す者は、之即ち朕を貶す者同然と見なし、即刻腰斬に処してくれようぞっ!? 』
初めて劉宏が見せるそれは、正に『帝王の怒り』であった。時折子供染みた癇癪を起こす劉宏であったが、それとは全く異なり、今の彼は『帝王』としての怒気と威厳を漲らせていたのである。結局、劉宏の一喝を受けそれまで騒いでいた者達は一斉に押し黙ってしまった。
『ねぇ、張譲。あの蟇蛙に好き勝手に言わせてて良いの? 貴方は私達中常侍筆頭でしょ? 早く、帝をお諌めなさいよ。あの劉備とか言う田舎娘にはどこぞの県令で十分と思うわ? 』
『そうよ、そうよっ! あんな事決めちゃったら、田舎娘がでかい顔をするに違いないわ? 』
と陰に隠れて趙忠を始めとした十常侍達もボソボソと張譲に耳打ちしてくるが、当の本人は虚ろな目で抑揚の篭ってない口調でこう言い捨てた。
『これは帝の勅令である。今の僕達に帝をお止めする事は出来ないのだ。さぁ、判ったのなら大人しく勅令に従おう 』
『『…… 』』
筆頭たる彼にそう言われてしまうと、流石の十常侍達も引き下がる事しか出来なかったのである。
『皆の者っ! 此度は真に大儀であった! 然るに本日を以って黄巾討伐の軍勢を全て解散する物とするっ! また、遠方の任地より軍勢を率いてきた者達であるが、暫しの間都にて戦の疲れを存分に癒すが良いぞ!? 』
最後に劉宏の名の下黄巾討伐軍は全て解散となると、何進と皇甫嵩に朱儁、そして陽春と菖蒲と言った中央の将は兵馬の権を全て劉宏に返還し、ようやく戦勝報告の儀は全て滞りなく終了した。この時、将兵の間からは絶え間ない歓声が巻き起こり、彼等は生きて帰れた事や愛する者達に再び逢える事への喜びを噛み締めていたのである。
さて、軍を解散すると、陽春と菖蒲は直ぐに桃香達の方へと足を運び、これからの事をテキパキと決め始めた。先ず、桃香と奏香の義勇兵は白蓮の兵と共に城外に宿営する事となり、門限を破らねば自由に出入りして良いとした。また、兵達だけではたがが緩む恐れがある為、宿営している陣には留守居役として常時将を三名交代で置く事に決めたのである。
それ以外の者達は、陽春と菖蒲の屋敷に寝泊りする事となり、彼等はここで戦の疲れを癒す事になった。また、陽春と菖蒲は実に気配りの効く人物である。陽春の屋敷に辿り着いた彼等を、嬉しい先客達が待ち受けていたのだ。
「おとうさぁ~ん! おかあさぁ~んっ!! 」
「璃々っ!! おおっ、少し大きゅうなったな!? 」
「璃々っ……! まぁ、少し背が伸びたわね? 」
「お父様? それにお母様までっ!? 」
「松花……随分逞しくなったようだな? 私は隠居する事にしたよ。商売の方は別の者に頼んできた 」
「これからは、私とお父様で貴女を一人前の花嫁にするべくみっちり仕込んで上げますからね? 」
「……ソッチの方は余計なんだけどー…… 」
桃香達が潁川で激闘を繰り広げた最中、二人は楼桑村に遣いをやっており、璃々と松花こと簡雍の両親を至急雒陽に向かわせていたのだ。これに関してであるが、心無い外部の者が彼等を人質に取り、無理矢理そう言った連中に仕えさせるのを防ぐ為の予防策も含まれていたのである。
「フフッ、どうやら喜んでくれてるみたいね? 義雲殿と紫苑殿には一人娘が居たと聞かされてたし、松花の両親はまだ健在だったのよ。だから、一緒にさせておこうと思ったのよ……それに、人質に取られ、桃香にとって大切な仲間が他の所に引き抜かれるのを防ぎたかったのもあるわ 」
「んだっちゃねぇ、陽春様ぁ。何せ、渤海のオバカ太守みてぇに、家柄すか能の無ぇおだづもっこのほでなす(ふざけた大馬鹿野郎)もいますしねぇ? 確かぁ、両親をアレに人質に取られて嫌々袁紹の家来になった人がいたって話も聞いてますよぉ? 」
「はあっ……それは本当に気の毒ね? あの様な者の下では、どんなに優れた人材が集まろうとも『宝の持ち腐れ』に終わるわ……恐らくだけど、袁紹はこの先上手く行かないかも知れないわね? 」
「はい、ほにそう思います 」
家柄しか能の無い麗羽の高笑いする姿を脳裏に思い浮かべ、陽春と菖蒲はそれぞれ顔をげんなりさせるのであった。
――七――
桃香が陽春の屋敷に身を寄せたその翌朝、桃香と陽春は劉宏からの呼び出しを受ける。正装姿に身を包んだ二人が通されたのは、本殿ではなく離宮の庭園であった。
二人がそこに通されると、既に劉宏は後手で手を組みながら池を眺めており、その傍らではまだあどけない十二、三位の少年が座に腰掛けており、二人をじっと見やっている。彼女等の到着を確認すると、劉宏は実に穏やかな笑みで二人を出迎えた。
「北中郎将盧子幹、只今参上致しまして御座います 」
「宜城亭候劉玄徳、只今参上致しまして御座います 」
「おおっ、苦しゅうないぞ? 北中郎将に宜城亭候、もうじき来ると思うが鄒靖も呼んでおる。今日はそなた達に話しておきたい事があるのじゃ? ささ、そこに掛けるが良いぞ? 」
そう劉宏が言うと、すかさず宦官達が陽春と桃香に座を用意し、二人は言われるままにそこに腰掛ける。そこから間もなくして正装姿の菖蒲も姿を現すと、劉宏はゆっくりとした足取りで自分の座に腰掛けた。
「さて、朝早く呼びつけて真に申し訳ないの? 実はの、朕は『真の漢の忠臣』たるそち達三人にとある事を頼みたいのじゃ。その前に、協よ。この三人に挨拶するが良いぞ? 」
「はい、父上 」
そう劉宏が先程の少年を促すと、早速彼は三人の方に向き直り、溌剌として名乗りを上げる。
「そなた達とは初めて相見える。余は南陽王劉伯和である。劉玄徳と盧子幹にそして鄒靖よ、今後とも良しなに頼むぞ? 」
「「「!? 」」」
その少年――陽の名を聞いた瞬間、三人の顔に一気に緊張の色が走った。桃香は言うに及ばずであったが、中央の人間である陽春や菖蒲も陽に関しては名前位しか知っておらず、直接本人に見えた事が無かったのである。
慌てて陽に拱手行礼で跪く三人であったが、それを陽はやんわりと制して見せた。
「待って欲しい、ここは宮中ではないし堅苦しい挨拶は抜きだ。さぁ、座に腰掛けて欲しい 」
「「「ははっ 」」」
陽に言われた通り、三人が座に腰掛け直すと、すかさず劉宏が言葉を発する。
「……さて、先程申した『とある事』なのじゃが、劉備よ。そちには『南陽国相』として協を助けて欲しいのじゃ。然し、協もじゃがそなたもまだまだ若年故に、何かと大変であろう? そこで盧植と鄒靖よ、そち達には協と劉備の後見になって貰い、色々と助言して欲しいのじゃ。無論、そち達には今より高い禄を出す。どうじゃ? ここは一つ朕の顔を立ててくれぬかの? 」
「わっ、私が……殿下の補佐役ですか? お言葉ですが、帝。私如き無知な田舎者に、斯様な大役は不相応と言う物で御座いますっ!! 」
「これは……何と…… 」
「はぁ~~ 」
昨日に引き続き、驚愕の余り顔を強張らせた桃香が何とか断ろうとするのに対し、思わず呆然となる陽春と菖蒲。
桃香にとって、劉宏から持ちかけられた話は、自分の当面の希望より遥かに上を行っていた。彼女の一番の希望は太守の役職であったが、それは無理だろうと考えており、何処かの県令にしてもらえば御の字であると睨んでいたのである。
国相も内容は太守の要職と同じであるが、国相の場合だと自分の上に国王が居る事になる。然も国王となると、漢の宗室それも皇帝の近親の親族が命ぜられる為、劉姓を名乗る自分にとっては過ぎた物としか思えなかったのだ。
「どうか、どうか……国相などと、私には過ぎた物で御座います。何卒お考え直しを……! 」
「…… 」
恐縮する余り平身低頭する桃香であったが、そんな彼女に陽はゆっくりと歩み寄ると、彼女の手を取るや真剣な表情で熱く語り始める。
「玄徳、帝だけでなく余からも頼む……生まれて間もなく、余はこの離宮に預けられ、十三になる今まで外に出た事が全く無かったのだ。此度余は王に封ぜられたが、帝の命により余は封土に赴かねばならぬ。故に、そなたの様に余と歳も近く、且つ外の世界を知っている者に余を支えて欲しいのだ。この通り……頼むッ!! 」
(お願いだっ、玄徳ッ! 僕をここから連れ出してくれっ!! )
「ッ!? 殿下…… 」
言葉を進める内に陽の双眸から涙がぽろぽろと零れ始めると、最後の方では言葉を詰まらせながら、力強く頭を下げる。この時、桃香の脳裏には陽の魂の叫びが聞こえた様な気がした。そして――遂に桃香は決意を固める。
「畏まりました、不肖の若輩者ではありますがこの劉玄徳、全身全霊を以って殿下をお支え致したく存知奉ります…… 」
「ああっ! 玄徳よ、そなたには真に感謝するぞ? 何も知らぬ愚かな余であるが、どうか余の力になってくれ!! 」
互いに良い笑顔を見せ合い、熱い涙を流す桃香と陽。この二人の姿に、陽春と菖蒲は満面の笑みで頷いて見せると、彼女等も腹を括って見せた。
「主上、この盧子幹二人の後見として、そして師として玄徳と殿下をお支え致したく存知奉りまする 」
「某も盧閣下と同じで御座りまする。この鄒靖、漢への最後のご奉公として玄徳殿、ひいては南陽王殿下をお支え致しまするっ! 」
「うむっ、流石は『真の忠臣』ぞ! それでは、改めて申し渡す。宜城亭候よ、本日よりそちを南陽国相に命ずるっ! そして盧植と鄒靖よっ! そち達にはこの二人の後見を命ずるぞ、良いかっ!? 」
「「「ははっ、御意にて御座いまする 」」」
正に、『大満足』と言った風で劉宏が頷いてみせると、三人は一斉に拱手行礼で応じたのである。この後、三人は屋敷に戻り、一同全員を集めてそれ等の事を報告すると、皆一斉にワッと歓声を上げた。
結局その日は一日中宴会騒ぎとなり、義雷が瓶ごと酒を飲み干せば、永盛、紫苑、祭の三人は弓の腕を競い合う等の余興を見せ、雪蓮は『戦拳大会』を催して、自分以外の恋姫達を全員丸裸に引ん剥いたと思えば、逆に完全に酔っ払った一心に完敗して全部引ん剥かれたりと、正に『狂歓』宛らの宴席だったのである。
「フフッ、今日位は無礼講です。さぁ、皆さんもっともっと愉しみなさい? 」
こう言う時、大抵お堅い陽春が止めに入るのだが、流石の彼女もこの時ばかりは無礼講と言う事で、軽く笑うだけに留めていたのだ。
やがて夜も更け、宴も終わりを迎えると、宴会場と化した大広間には劉家や孫家の面々、特に恋姫達なんかは丸裸で雑魚寝を決め込んでおり、最後まで素面を貫き通した陽春、菖蒲、照世に雲昇、そして一刀が一人一人に上掛けを掛けて回っていたのである。
「ふう……これで全員終わりかな? 」
黙々と作業を続けていた為か、額に滲んだ汗を手の甲で拭い去り、一刀は安堵の溜め息を吐く。この時の彼であるが、頭に結う髷を茶筅髷と呼ばれる物に変えており、着ている物も小袖に袴と、言ってしまえば『武士』の平服姿であった。無論、これらの物も楼桑村に居た時照世が手配して作ってくれた物である。
これまでの自分を捨て去る為、フランチェスカの制服等と言った洋装を着る事をやめた一刀ではあったが、その一方ではこの様な『和装』を纏う事により、何かしら自分の『拠り所』を設けておきたかったのも事実であったのだ。
「お疲れ様でした、それでは私は休ませて貰いますね? 菖蒲、今宵は泊まって行きなさい。他の皆さんも早く休むのですよ? 」
「はい、喜んでお受けしますよ陽春様。んだらばっ、皆の衆ッ! これからも頼むっちゃよ~! 」
「さて、私もそろそろ休ませて貰いますかな? それでは、これにて…… 」
「では、私も休ませて貰います。又明日にお会いしましょう 」
「あ、お休みなさい 」
陽春を始めとした四人が一斉に場を後にすると、一刀一人だけが残される。すると、彼はゆっくり窓辺の方へと歩み寄り、そこに腰掛けて夜空に輝く満月を見上げた。
「あの夜も満月だったよなぁ……そう言えば、あの時はまだ両目が見えてたんだっけ。今じゃ左目しか見えないし、体つきもこんなにごつくなっちまった。思えば、この一年半以上の間、色々あったよなぁ 」
両目を瞑ると、一刀の脳裏にこれまでの事がありありと蘇ってくる。右も左も判らず彷徨い行き倒れになった事、偶然通りすがった桃香に助けてもらった事、一心と兄弟の誓いを立てた事、蓮華や翠に初めて出会った事……全てが全てに於いて余りにも強烈過ぎる事ばかりだ。
「そして、今日桃香は南陽国相に命ぜられた。この先桃香は一体どのような道を歩むんだろうか? これから先も俺は桃香とずっと共に歩んでいけるんだろうか? それに及川の奴……アイツは一体これから何を仕出かす気なんだ!? ハアッ……やだなぁ、何だか妙に不安になってきやがった。ハハッ、まだまだ俺もなっさけねぇでやんの~ 」
そこまで言うと、一刀はクックッと自虐的に乾いた笑い声を上げてみせる。すると、そんな彼を誰かが背中から優しく抱きしめてきた。
「!? 」
「大丈夫だよ、一刀さん……一刀さんはずーっと私と一緒だよ? 」
思わぬ柔らかくそして暖かな感触に、一刀が驚いて首を後ろに向ければ、そこには裸の上に上掛けを羽織っただけの桃香の姿がある。彼女の優しい言葉に打たれたのか、思わず一刀は落涙してしまい、光を喪った右目からも熱い涙が止め処無く流れていた。
「桃香……有難う。俺、桃香が居なければとっくの昔に野垂れ死んでたと思う。今の俺は『独眼竜』だとか『黒将軍』呼ばわりされてる様だけど、君と逢わなければそう呼ばれてなかったと思うし、こうやって君の温もりすらも感じていられなかっただろうな? 」
「ううんっ、それは私も同じだよ? 私、一刀さんが居なければここまでなれなかったと思うんだ。そりゃ、一心兄さん達や姉妹の契りを交わした愛紗ちゃんや鈴々ちゃんに出会った事はとても大きかったけど、一刀さんに出会った事の方が私にとって一番大きかったかな? だって……私の背中を押してくれたのは、他ならぬ一刀さんなんだよ? 」
「桃香…… 」
互いに見詰め合う一刀と桃香、そして一刀は桃香を少し乱暴に抱き寄せて見せると、彼女の顎を摘みそのままゆっくりと唇を重ね合わせる。夜空に煌々と輝く満月から注がれる月明かりが二人を照らし、まるで月の女神が二人を祝福しているようにも思えた。その数日後、桃香は正式に南陽国相を命ぜられ、『南陽国相 宜城亭候 劉玄徳』となったのである。
――八――
「全軍、南陽へ出立! 」
そこから約二ヵ月後。年が開けると、新年早々正式に南陽国相に命ぜられた桃香は新たな南陽王たる陽を伴い、封地である南陽へと出立する。それは国相としての彼女の初仕事であった。無論、国相に命ぜられたから、即出立と言う訳には行かない。
陽は直ぐにでも都を出たかったらしいのだが、南陽国の人事や連れて行く兵の割り振りに、楼桑村義勇軍の解散と、この二ヶ月の間桃香達は忙殺され捲くりだったのだ。
他にも、朝臣達の下心見え見えな挨拶や、青蓮こと孫堅から使者を遣わされ先日の詫びや雪蓮たちの当面の生活費を送られたり、はたまた或いは華琳からお誘いを受け、先日の約束どおり『啤酒』と『清酒』を飲み交わして挙句に酔っ払って倒れたりと、息吐く暇も無かったのである。
「ふうっ……私に勤まるのかしら? ※6国丞だなんてやった事が無いし…… 」
「なーに言ってんのよ? 母様だって太守と言うメンドクサイ仕事やってるんだし、それの補佐役の丞くらい今の蓮華なら楽勝でこなせるわよ? 」
と憂鬱そうな表情で溜め息を吐く蓮華の肩を、いつものお気楽な顔の雪蓮がポンポンと軽く叩いて見せた。何と、今回蓮華は国相の補佐役である国丞の役職を命ぜられたのである。これに関しては、陽春と菖蒲が大きく絡んでいた。
彼女等は、雪蓮たち孫家の人間に対しても心を砕き、『不公平感』がもたらす対立を避ける為にも、孫家の者達にも何かの役職に就けるべきだと判断したのである。
最初、丞の役職には雪蓮が選ばれたのだが、当の彼女は『え~!? それ、メンドクサイからヤダッ! 私は政苦手なんだし、悪いけど妹の蓮華にしてくれないかな?』と即座に拒否し、哀れそのお鉢が蓮華に回る羽目になってしまったのだ。
余談であるが、雪蓮は何の役職も選ばなかったと言うか、やりたがらなかったので、これは拙いと睨んだ陽春に大鉈を振るわれる。
学者として博識な陽春は、無理矢理国丞の役職を『左』と『右』に分けると、本気で嫌がる雪蓮を二つの内『右』の方に就けさせたのだ。余談であるが、同じ役職でも『左』より『右』の方が扱いは上である。
この様な経緯で『南陽右国丞 孫伯符』の肩書きを無理矢理持たせられた雪蓮に、蓮華は『ざまあ見ろ!』と言わんばかりの晴れやかな顔になる。もっとも、当の雪蓮本人は実に面白くなかったのだが――
『良いですか、雪蓮殿? これでも大きく譲歩して上げたのですよ? ですから、貴女も真面目に働きなさい。貴女も南陽王の臣です、南陽王の臣になった以上……働かざる者喰うべからずっ!! 』
『――ッ!! わっ、わっかりましたー!! 』
(陽春様なら母様より優しいから楽勝かと思ってたけど、考えが甘過ぎた~~っ!! )
と陽春に一喝されてしまうと、流石の雪蓮もそれに従わざるを得なかったのだ。彼女は母青蓮よりも年上であったし、何よりも『母親』そして『女』としての『怖さ』が雪蓮とは段違いだったのである。
さて治安を司る都尉であるが、先ず義雲が選ばれた。そして、それに続く様に愛紗、祭、更には遼東属国の長史職を辞し、一旦下野した白蓮が選ばれたのである。これに関してだが、最近更に仲を深めた固生と共に居たかった事と、『私も桃香の仲間の一人に入れてくれないか?』と白蓮個人が懇願してきたのもあったからだ。
行政面での補佐官であるが、※7別駕に照世、※8主簿に朱里、※9治中に雛里、そして……※10督郵には一心が選ばれたのだが、この時彼は……思いっき~り『嫌な顔』をして拝命したのである。
『まさか……嘗ておいらが血祭りに上げたあの猪野郎と同じ役職になるたぁ、これはある意味皮肉かいっ!? 』
『あはははは……あ、兄上、まぁ、余り気にしない方が宜しいかと? 』
『うんっ、判ってるよぉ……さぁ一刀、真面目で優しいお兄様についてき給へ。間違っても、県令に吊るし上げられた挙句に、鞭で打たれない様に気をつけるのだぞ? 』
『あはははは……はい 』
苦虫を噛み潰した顔になる一心に一刀は乾いた笑みを交えつつ、兄である彼に慰めの言葉を掛けた物だが、その一刀本人も『丞』として一心の補佐役を命ぜられたのだ。この場合の『丞』とは補佐役を意味し、大小を問わず様々な役職には『補佐役』として『丞』がついたのである。
他にも、琥珀本人から頼まれ翠と蒲公英も桃香の臣として南陽に赴く事となり、何と二人は陽個人の親衛に組み込まれる事となった。その親衛であるが、蹇碩なる宦官がその長で、彼は宦官ながらにして身の丈八尺をゆうに超え、堂々たる体躯の持ち主である。
「蹇碩……宜しく頼む…… 」
到って寡黙な彼であるが、元は中常侍の一人に挙げられるほどの宦官ではあった物の、弁皇女や何一族を激しく嫌悪しており、逆に不憫な目に合わされていた陽に思い入れていた。それ故に、体制派とも言える張譲ら十常侍と確執が生じており、今回の陽の南陽行きは彼にとって又と無い好機だったのである。
また、彼は『陽個人の忠臣』でもあり、陽とは真名を預け合う関係でもあった事から、その陽から真っ先に彼を連れて行く者の一人に挙げられたのも事実であった。彼は張譲を代表するような『悪宦官』の典型的な例ではなく、私心無く陽に仕え、金銭欲や物欲と全く無縁の人物でもあり、その姿勢は桃香達の方からも快く受け入れたのである。
「はぁ……国譲さんは物凄く残念だったなぁ……照世老師からも太鼓判押されたほどの娘だったんだけどね? 」
「こればかりは致し方ありません。故郷の母君が病を患ってるとなれば、戻らぬを得ませんでしょうから 」
「そうなのだ、だけど田ちゃんとはまた会えると鈴々は信じているのだー! 」
南陽へ続く途上、馬上の桃香が顔を曇らせていると、彼女と轡と蹄を並べる愛紗と鈴々がそれぞれ言葉を掛けてきた。その話に上がった国譲であるが、名は田豫、字は国譲と言う十五歳の娘で、桃香と同じ楼桑村の人間である。
彼女も照世等の私塾にて研鑽を積み、智勇にどちらも優れた素養を持っていた為、何れは桃香の下で思う存分力を発揮して欲しいと期待を寄せられていたのだが、松花の両親から村に残った国譲の母親が病に倒れたと知らされるや、彼女は後ろ髪を引かれながらも、解散した楼桑村義勇軍の内故郷に戻る者達を引き連れて桃香の下を去って行ったのだ。
「うんっ……そうだよね? 鈴々ちゃんの言う通りだよ。何れ、また国譲さんとは会えると信じてるから…… 」
鈴々に慰められ、笑顔を見せる桃香であったが、これ以降彼女と国譲が再び会う事は無かった。何故なら、故郷に戻った国譲を待ち受けていたのは、何処で嗅ぎ付けたかは知らぬが、袁紹こと麗羽の使者であった。何と、破廉恥極まりない事に麗羽は病床の国譲の母親を人質に取るという暴挙に出たのである。
已む無く、国譲は袁紹に仕える事となり、その後年には華琳に仕える事になってしまった。この事に関してだが、紫苑や松花などと言った表立った者には気を配れた陽春と菖蒲ではあった物の、流石に国譲の方まで気を配る事が出来なかった事実がある。後でこの話を知らされ、二人は天を仰いで激しく後悔した。
「陽様……ここまで来れば大丈夫。さぁ、楽に…… 」
「有難う、卅庫捜 」
「? 」
帝都を抜け、暫く進んだその時である。協が座上する馬車の隣に、巨漢の蹇碩が馬を寄せて陽に何やら言いかけると、陽は行き成りとある行動に出始め、それは桃香だけでなく劉家や孫家の人間を大いに驚かせたのだ。
「ふうっ……これでいいかな? あ~! 苦しかったなぁ~~!! 」
「「「「「「「!? 」」」」」」」
何と、協は服の中から詰め物らしき布の塊を取り出すと、頭に被っていた冠を外して纏めていた髪をも一気に解く。その姿はどう見ても『皇子』ではなく、『皇女』の物であったし、声の方も本来の高い娘の物になっていたのだ。
「え、ええええええ~~っ!? でっ、殿下!? これは一体……どう見ても、女の子にしか……見えないんだけど? 」
「え、ええっ、殿下、まさか殿下は女だったの!? 」
「んなっ!? おっ、男が女に化けただぁ~~!? アンタ一体どんな術使ったんだよォ~!? 」
「……アーンビリバボー…… 」
突然の出来事に思わず混乱してしまい、桃香、蓮華、翠の三人が素の口調になってしまうと、一刀の方も眼帯がずり落ちて『横文字』がプッと口を吐いて出てしまい、それどころか他の者達からもざわめき声が上がり始めていたのである。
「皆を騙していた事は謝る。これには事情があって、協殿下は男の振りをしなければならなかった……だから、殿下の変わりに自分が謝る……ごめん 」
そんな中、蹇碩が重苦しく口を開き始めた。たどたどしく喋ると、彼は地面に頭突きを噛ます位の勢いで頭を下げてみせるが、慌てて陽が口を挟む。この時、彼女の口調も気品に溢れた皇族の者ではなく、ボクボクしい物になっていた。
「ちょっ、ちょっと待ってよ卅庫捜!? 僕が説明するよ!! だから、卅庫捜は謝らないでっ!? 」
「殿下…… 」
この混乱を収めるべく、陽が真っ直ぐと桃香を始めとした全員を見据えると、アレだけ動揺を露にしていた面々であったがしんと静まり返り、皆動きを止めていた。そして、コホンと咳払いをして見せると、陽は本来の少女の声で、それも普段の口調で語りかけたのである。
「皆を騙していた事は謝るよ。始めに言って置くけど、ご覧の通り僕は女だ。こちらの卅庫捜、いや蹇碩は僕が赤ん坊の頃から世話をしてくれている者で、僕が女だと言う事も既に知っている。何で皇子と称されているのかは、これには理由があるんだ…… 」
その後、協は自身が生まれる前の事から今日に至るまでの経緯を全て桃香達に話した。劉宏に皇子を産むように強要された生母王氏であったが、生まれた自分は女であった為、性別を男として誤魔化さなければならなかった事。その母は何后に毒殺された事。異母姉弁が皇太女として正式に擁立されたその一方で、祖母と共に離宮に隠棲する事になった事などを。
「殿下……なんてお労しい 」
「殿下、貴女は……本当にお辛い目に遭われたのですね? 」
「こっ、こんな酷い話ってありなのかよ……っ!? 」
「ハアッ……この手の話は判っている積りなのだが、何とも聞き苦しい物があるな…… 」
「はい……何時の世も、至尊の座を巡る争いはまこと醜う物にて御座いますな? 然し、まさか協殿下が斯様な生い立ちであったとは…… 」
彼女の話を聞かされる内に、桃香や蓮華は涙ぐみ、一心や一刀、そして照世は辛そうに顔を顰めていたのである。
「皆、本当に、本当にごめん。だけど……僕はあのまま雒陽に居ても何れ女だとばれてしまう。だから、今回の南陽行きはとても嬉しかったんだ……ウッ、ウウッ…… 」
「殿下…… 」
話していく内に感情が昂ってきたのか、最後の方で言葉を詰まらせると、陽は細い肩を小刻みに震わせてすすり泣いてしまい、彼女の忠臣たる卅庫捜も顔を曇らせてしまった。
「殿下 」
「玄徳…… 」
未だにすすり泣く陽であったが、彼女が座す馬車の隣に桃香が馬を寄せてくる。顔を上げ、陽が涙に濡れた瞳を桃香に向けると、彼女は涙を滲ませながら優しく微笑んでいた。
「さぞ、お辛い目に遭われてきたのですね? それに、今までは蹇碩さん一人だけが殿下にとって頼れる人だったと思いますけど、もう大丈夫ですっ! 私が居ます、私だけじゃありません! ここに居る仲間がいますっ! それに、私は殿下の部下である前に、一人の『お友達』になりたいと思ってますからっ!! 」
「玄徳、それは本当なのっ? 僕の、僕の『友達』になってくれるのっ!? 」
「はいっ! 今日から殿下は私のお友達ですっ!! それと、私の事は桃香と呼んで下さい! 私の真名ですから 」
「判ったよ、桃香。それじゃ僕の真名も桃香に預ける。僕の真名は『陽』、太陽の陽だ。だから、僕を友達として助けて欲しい! 」
「畏まりました、陽様っ! 」
期待に目を輝かせる陽に、桃香は花が咲いた様な満面の笑みで答えてみせると、二人は真名を預け合う。すると、今度は別の方から蓮華が声を掛けてきた。
「恐れながら殿下、この孫仲謀も今日から殿下の『お友達』になりたいと存じます。私は玄徳の親友です。故に、玄徳にとっての友は私にとっても友ですから…… 」
「蓮華ちゃん…… 」
「孫左国丞…… 」
「フフッ、私の事は『蓮華』と呼んで下さいませ。私の真名ですから 」
「判ったよ、蓮華! それじゃ、桃香と同じく僕の事も『陽』と呼んで欲しい! 」
「御意で御座います、陽様 」
「あっ、蓮華ずりぃぞ~~!! アタシも真名を預けようと思ってたのに~!! 」
「あー、たんぽぽもーっ!! 」
「鈴々もなのだー!! 」
「これっ、鈴々ッ!! 仮にも王殿下の前で馴れ馴れしいと言う物だぞっ!? 」
「え、えーと、君達は? 」
「あ、ちょっと皆待ってよ~? 行き成りドッと押し寄せたら陽様も大変だし、先ずは一旦皆で集まろうよ? 」
蓮華まで真名を預けたのを皮切りに、翠や蒲公英だけでなく鈴々までもが声高に叫んで見せると、桃香は仲間達を一旦下馬させて陽の下に集めさせる。そして、一人一人順番ずつ自分の真名を陽と預け合い、全員陽を王ではなく友人として支える事を誓ったのだ。
「チュルルルッ! 幼い皇子は実は女の子! 忍従の日々に耐え続け、やがて王となった彼女は沢山の友人を得る様になる……うーんイイ話だと思わない、兄さん? チュルルルルッ! 」
「ズッズズズズズズーッ!! そうよねぇ、楚々ちゃんっ!! ウッウ~ン! 極・好~~ンッ!! ズズズズズズズズズーッ! 」
と蚊帳の外で暢気に麺を啜るは楚々と高伯の際兄妹。街道筋にも関わらず、彼女等の後ろには麺料理を出す屋台が存在しており、彼等は普通に営業をしていたのだ。この屋台の持ち主であるが、『劉洪』と『汪銀嶺』なる夫婦である。
元々、彼等は雒陽で麺料理を提供する屋台を営んでいたのだが、帝都の喧騒が肌に合わず南の南陽に移住しようと考える様になると、早速夫婦二人で屋台を引き南陽へと向かっていたのだが、その道中でバッタリと南陽王の行列に遭遇してしまったのだ。
慌てて行列にひれ伏す二人であったが、その姿は陽の興味を偶然に惹いてしまい、結局彼等は彼女の格別の配慮により同行を許されたのである。美しい光景を見やりつつ、淡々と麺を啜っていた楚々と高伯であったが、彼等が湯を啜ったその瞬間、ちょっとした違和感が二人の舌に走った。
「ンンッ!? ちょっと、おじさーん? これ、湯が少ししょっぱいわよ? 」
「ウーン、ホント、これちょっとしょっぱいわねーん? 」
いちゃもんを付ける訳ではないが、一言言っておこうと思い、二人が屋台の中を覗き込んだその時である。思わぬ光景が二人の目に飛び込んだ。
「ウッ、ウウッ…… 」
「ウウッ…… 」
そこでは、劉洪と銀嶺が夫婦二人互いに身を抱き合い声を殺して偲び泣いていたのである。どうやら、楚々と高伯が啜った『湯麺』の味が少し塩辛かったのは、調理中にこの二人の涙が雑ざった為と思われた。
「ちょっ、ちょっとー! 二人とも一体どうしちゃったの!? 」
「そうよ、そうよ? 一体どうしたのかしらね!? 」
心配そうにこの兄妹が声を掛けて来ると、二人はゆっくり立ち上がりそれぞれ前掛けで涙を拭く。
「なっ、何でもナイヨー! ちょと埃が目に入ただけアルヨ! 」
「申し訳御座いません、帝都から外に出るのは生まれて初めてでしたので、思わず感情が昂っただけですから…… 」
「ふーん、まっ色々大変だと思うけど、南陽に着いたら少し休んだ方がいいんじゃない? 」
「妹の言う通りよ~ン! 南陽は帝都と違うんだから、あっちに到着したら少し休んで土地に慣れた方がいいんじゃないの~? 」、
しゃくり上げながら釈明をするこの二人に、楚々と高伯は嘘だと直ぐに見抜く物の、余計な詮索はやめて置こうと思い、以降は互いに口を聞かなかった。然し、その一方で二人は心の中で言葉を交わす。これは二人が泰山に居た時に会得した術であった。
(ねぇ、兄さん。あの二人だけど何だか妙に匂わない? )
(そうねぇ~ン、もしかするとだけど、あの二人。ひょっとしたらひょっとするかもよぉ~ン? )
(……かもね? まぁ、それを知ったとこで無理に教える必要も無いかな? )
(そうよぉ~ン! そ・れ・にぃっ! アタシ達は必要以上の干渉はしちゃ“めー”って、秀児様にも言われていたじゃな~い! )
(うんっ、そうだよね? まっ、いっかぁ? そ・れ・よ・り・もぉっ! 今の尊娘々様は、南陽の人達の心を鷲掴みする事で頭が一杯なんだからねっ! 兄さんッ、アッチに着いたら、南陽に於ける巡業の計画を練るわよっ!? それに、人も雇う必要もでてきたしね? )
(まっかしといてぇ~ン♪ そうだわっ! 楚々ちゃんの後ろで歌う『合唱隊』とかも考えた方が良さそうねぇ~ン! ウッウーン、極・好~ン♪ )
と最後には『気になる夫婦』の事なぞそっちのけになってしまい、二人は新たな土地での『活動』の方に話を弾ませていたのである。 然し、別のとある方では例の『彼女』が木陰に潜んでおり、両目を険しくさせ陽達を凝視していたのだ。
『南陽王が女だと……取るに足らぬ事かも知れぬが、一応仙蓼様にご報告しておくか? これからは南陽王の家臣になった劉備どもの動向も逐一知らせておかねばならないし、全く以って不本意だが、南陽に着いたら奴と親しい劉仲郷に今よりもっと接近する必要がありそうだな? 』
そして――この時、彼女の脳内に恐ろしい考えが閃くと、やがてそれは『劉仲郷暗殺計画』にまで発展してしまい、それを防ぐべく後に修史こと陳叔至と明命は『彼女』と『彼女』率いる暗殺者集団と命懸けの死闘を繰り広げる事となる。
――終――
帝都雒陽を出立してから一月余り経過して、その年の二月。新王陽を擁した桃香率いる『南陽軍』約五万の軍勢は封地の南陽に入ると、ようやく彼等は王国の首都であり荊州の州都たる宛の城門を潜った。
「南陽王殿下バンザ~イ!! 」
「新王殿下万歳っ! 南陽国に永久の繁栄あれっ!! 」
「新王殿下ッ、ようこそ南陽へっ!! 私達に明るい未来をお与え下さいませっ!! 」
既に城下町には住民達が集まっており、『南陽国王 劉伯和』『南陽国相 宜城亭候 劉玄徳』と大きく書かれた二つの戦旗をはためかせ、内城へ向かう軍勢の姿に彼等は熱の篭った歓声を次々と浴びせる。この光景を目の当たりにし、馬車に座す協は緊張の余り固まってしまった。
「……な、何て凄い熱気なんだ? ぼっ、僕にこれだけ沢山の人達が声を掛けてくれていると思うと……ウウッ、今更ながらだけど僕に王の務めが果たせるんだろうか? 」
すると、馬車の側に馬上の桃香と蓮華がそれぞれ馬を寄せてくる。二人は陽に柔らかく微笑みかけると、それぞれ彼女に言葉をかけた。
「大丈夫ですよ、陽様? 陽様には私と言うお友達が居ますし、皆と言うお友達も居ます。ですから、陽様は普段通りデーンと構えていて下さい 」
「陽様、桃香だけでは御座いません。この蓮華も『友』として陽様をお支え致します。ですから、桃香の言う通り普段通りにしていて下さい 」
「ありがとう、二人とも。二人にそう言って貰ったら、少し気が楽になったよ? 」
二人に緊張を解され、陽がにこやかに笑って見せると、二人も笑みで返してみせる。その光景を後ろの一刀が隻眼を狭めさせながらジッと見詰めており、この時彼は幾許かの寂寥感を背中に漂わせていた。
「ふうっ……何だか桃香と蓮華が段々遠くの人間に見えてくるよなぁ…… 」
「なぁ~に寝ぼけた事抜かしてんだぁ、北の字よぉ? ンな事抜かして黄昏てる暇なんざぁ、あると思ってンのかいっ!? 」
「あっ、兄上!? 」
「全くだな、少しばかり修羅場を掻い潜り『漢の顔』になったと思えば、矢張りお前はまだまだ尻の青い孺子だな? 斯様な事を心配するよりも、これからの自分に気を配るが良い。わしは桃香殿から都尉に任命された故に、兄者のお傍にいる事も叶わぬ。然るに一刀よ、わしの代わりとして義雷と共に兄者をお支えするのだぞ? 」
「義雲兄者っ!? 」
「北の字よぉ、桃香ちゃんは国相になったんだぜ? これまでみてぇに、暇さえありゃ馬みてぇにまぐわってる事なんざ出来ゃあしねえんだっ! それよりも、おめぇも俺様と同じ『丞』として兄者の補佐役に回るんだぜ? 城に着いたら『督郵』のお勉強でもしとけってんだいっ! 」
「義雷兄者までっ!? あ、あははははははは…… 」
然し、そんな彼に活を入れるべく『三人の優しいお兄様達』がそれぞれ『温かい言葉』を掛けて来る。頼もしく且つオッカナ~イ彼等に次々声を掛けられた物だから、思わず一刀は怯んでしまい、引きつった笑みを浮かべてしまった。
そして、わざとらしく咳払いを一つして見せると、一心は至って真面目な口振りでこれからの事を三人に話し始める、だが、彼の話す内容は至って不真面目な物であった。
「オホンッ! さて、大雑把だが『督郵』として私の方針を決めておくぞ? この南陽だが、袁術の暴政で可也荒れていると聞くし、県令どもも袁術の物真似をしていることが考えられる。然るに、悪い県令が居たら即刻『ふるちん』に引ん剥き、次に木に括りつけて二百ほど鞭で打つ。最後に義雷か一刀にその罪を擦り付けて私はトンズラ……こんな物でどうだ? 」
「……はぁーーーーっ!? 何じゃそりゃあああああああああっ!? 」
「ちょっ、チョット待てよ兄者ッ! そりゃ前の時と同じじゃねぇかっ!? 」
「兄者……冗談はやめて下され。あの時はわしと義雷も兄者の尻拭いで散々泣き目を見たのですからな? 」
この大哥の言葉に、三人は一斉に声を大にしてしまう。特に『前の世界』で一心に散々振り回された義雲と義雷は露骨に顔を顰めてみせた。然し、当の一心は悪びれもせず高らかに笑い声を上げる。
「はははははっ、冗談だ、冗談。だから、三人ともそんなに目くじらを立てるな? さぁ、それよりもこれから先我等の運命がどう転がるかは判らぬ。故に、桃香が道を過たぬよう我等四人であの娘をしかと支えねばならないからなっ!? 」
「無論ですぞ、兄者。これから先もわしは桃香殿を支えて参りますぞ? 」
「あったぼうじゃねぇかよ、兄者ッ! これからも俺様に任せとけってんだ! 」
「兄上、俺も兄者達と同じですっ! ですから、これから先桃香の支えになれるよう、もっとビシバシしごいて下さいッ! 」
一心の呼びかけに、三人がそれぞれ強い眼差しと共に深く頷いて見せると、彼は右手をスッと差し出してくる。すかさずその上に義雲、義雷、そして一刀の三人がそれぞれ自分達の右手を重ねて見せた。
「さぁ、桃香の進む道はまだまだ長いッ! 我等四人一丸となり、桃香の道を妨げんとする者達を全て打ち砕いてくれようぞっ!! 」
「「「応ッ!! 」」」
改めて決意を固め直したこの四兄弟であったが、彼等は直ぐに元の位置に戻ると、後は悠然と愛馬の歩を進めさせる。南陽と言う新たな地盤を得た桃香達であったが、今後彼女等はどの様な道を歩んでいくのかはまだ誰も知らない。然し、この時ばかりは皆希望に満ち溢れた顔をしており、そんな彼等の姿にとある老官吏はこう涙したものである。
『嗚呼、廃れてしまった世祖の故郷にて、誇り高き漢の威容をこの眼にする事が出来ようとは 』と――
「よーっし、私もっと頑張っちゃうからね~!! 」
昨年までは只の村娘にしか過ぎなかった桃香であったが、『南陽国相 宜城亭候』の肩書きと主君でもあり友人でもある陽を得た事により、彼女は新たな『群雄』の一人に名を連ね、華琳や麗羽そして青蓮と肩を並べる事が出来たのである。
今は南陽の国相になった事で夢中の彼女であったが、ようやく出発点に立っただけに過ぎなかったのだ。そして――
「皇天后土よ、そして泰山の先人達よ、とくと御照覧あれっ! 今動き出し始めた桃香の夢が美しく象って行く様をッ! 」
愛馬黒風に跨ったまま、誇らしげに一刀は蒼天を見上げる。昨年とは異なり、彼の右目は物を映さなくなってしまっていたが、それでも残った目には昨年の物よりもっと眩い物が宿っていたのである。
北郷一刀――姓は劉、名は北、字は仲郷、そして真名は一刀。彼がこの世界に降り立ってからもうじき二年になろうとしており、冬の寒さが残る宛の都には春の訪れがせまろうとしていた。
真・恋姫†無双 ~照烈異聞録~ 第二部『黄巾討伐編』 ~終劇~
※6:郡の場合は郡丞と呼ばれる。太守の副官に相当する役職で、中央から選出される。
※7:郡太守(国相)の国内(郡内)視察の際、随行する補佐官。別の乗り物に乗る事を許可される為に、そう呼ばれている。
※8:文書管理を司る事務補佐官。
※9:文書記録を司る事務補佐官。
※10:国内(郡内)の県(或いは候国)の監督・評定を行う監督官
ここまで読んで下さり、真に、真に大感謝致しますっ!!!
本音を申さば、短大二年の時に一年がかりで行った卒論作成を終えた時の爽快感に近い物を感じておりますね。
第一部が三ヶ月で終わったのに対し、この第二部は終わらせるのに約十ヶ月掛かってしまいましたから。(汗
夏場の暑さで大幅ペースダウンしたり、何時しか『文字数稼がないと落ち着かない病』に罹ったりと、小気味よく話を書けなくなった自業自得でもあるんですけどね?
さて、今回は第二部のフィナーレに相応しく、桃香は『劉協』即ち私達が知ってるとこの『献帝』を擁し、更には『太守』に相当する『国相』の官職と『亭候』と呼ばれる爵位を手にする事になりました。
また、桃香とともに行動する蓮華とかにも役職を与え、存在意義を強める事にも腐心した積りです。流石に劉家贔屓ばっかじゃ、何の為に蓮華達を組み込んだのかその意味が死んでしまいますからね?
あ、一応『国相』(太守)は桃香ですが、ここでの注意点は飽く迄も桃香は『劉協の家臣』と言う所です。従って、蓮華や雪蓮達も『劉協の家臣』と言う形になっています。
要は、陽君(劉協)がナンバー1、桃香がナンバー2、雪蓮がナンバー3、蓮華がナンバー4ってな感じで見て貰えばいいですね?
冒頭のお墓参りのシーンですが、潁川郡で戦った事や楚々こと祭遵の出身地が潁川郡潁陽県だった為、『本人のお墓参りイベント』位は挟んで置こうと思いました。
また、楚々が『優ちゃん』と言った人物ですが、アレは家康像様の寄稿作品に出てきた祭遵が子祭肜の真名です。余り詳しく書きすぎると、今度はこっちが家康像様の作品の雰囲気をぶち壊しかねないので、サラッとした感じで終わらせました。(汗 照世さんが覗いちゃいましたが、アレは作者の思い付きです。家康像様、本当にゴメンなさい!(DOGEZA
そこから都への凱旋~帝に拝謁~爵位貰った~国相になった~劉協に見えた~って、もう急ピッチにしてしまいました。
実は私自身来週からチョット状況が変わる物でして、勝負できるのは今日と明日位かと焦りが御座いました。何が何でも今日中に終わらせようと思ったからなんです。(汗
そして、璃々がやってきたり、白蓮が下野して桃香の下に来たと、なんてご都合主義と思われるかも知れませんが……白蓮と麗羽のグダグダ~まで書く気になれなかったんですよ。本当に申し訳ないです。(汗
あと、今回出てきた『蹇碩』ですが、アレ演義ではサクッと殺されてるんですよね。(苦笑 只、身体壮健で劉弁と何氏一派を毛嫌いしており、且つ劉協擁立派だったという事から、ここでは『陽君のボディーガード兼忠臣』と言うポジションにしました。
キャラのモデルですが、アリスソフトの名作『ぱすてるちゃいむ Continue』に出て来る「サクソ」です。テキストだけだと恋みたいな喋り方なんですが、声が入ると中々味のあるキャラになっています。CVイメージは藤原祐樹さんです。
楚々と高伯さんに『湯麺』を提供した夫婦ですが……彼等の正体は第三部以降に判明します。それまでお待ち下さい。でも……ミエミエのバレバレかも?(汗
ラストの方で『督郵』ネタで一心兄さんが抜かした事ですが、アレはウケ狙いの皮肉を込めて書きました。他にも前にも書いた『やる夫が光武帝~』スレに出てきたネタを引用した物を再び出しましたが、改めて出しとこうと思い書きました。
『彼女』の危険な思惑ですが、こっちの正体判明も第三部以降の予定です。
さて、一年チョイ書いたこの照烈異聞録ですが、取り敢えずこのタイトル自体は今回のお話で終わりに致します。流石に、十ヶ月第二部を書き続けたのもあり、可也しんどかったので暫く充電させてください。
……ルール改正で筆が鈍ったり、今回の前後編仕上げるのに十回書き直したりと、心身とも可也滅入ってしまいました。
ですが、『照烈異聞録』自体はまだまだ終わりにさせません。第三部以降は別タイトル……と言っても『照烈異聞録』のまんまにする積りですけどね? 少し付け加えたタイトル名にするかも?
そう言う訳で、今回で一旦この作品も終劇です。何時書くかは判りませんが、第三部でお会い致しましょう!
それでは、また~! 不識庵・裏でした~! 再見!
……飽きっぽい自分が良くここまでやれたモンだよなぁ~! 今日ばかりは自分を褒めて上げたい。(苦笑