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真・恋姫†無双 ~昭烈異聞録~   作者: 不識庵・裏
第二部「黄巾討伐編」
21/62

第十九話「司馬仲達は蠢動し 広宗にて劉備は盧植と再会す」

 どうも、不識庵・裏です。


 何とか今回の更新に漕ぎ付く事が叶いました。相変わらずのグダグダっす! それでも、読んでくれたらとても嬉しく思います。今回は書いてて相当悩みましたねぇ……。これアップするまでに五回ほど書き直しましたんで。


 それでは、後書きにてお会いしたく思います。

 


 桃香達『楼桑村義勇軍』が青州にて快進撃を繰り広げていた頃、曹操こと華琳は既に自身が治める陳留の黄巾の征伐に成功していた。兗州の中で、唯一黄巾の殲滅に成功したのは華琳が治めていた陳留郡だけで、他の郡の太守は黄巾どもに悪戦苦闘していたのである。


 何故、彼女が治める陳留だけが早く収束出来たのか? それは人材の力にあった。華琳本人は実に優れた人物であるが、正直彼女一人だけで短期間での黄巾殲滅は難しいだろう。彼女の最大の武器の一つは、武と智に優れた人物を逸早く揃えていた事にある。


 武では、宿将たる夏侯姉妹の他に、血の繋がりは無いが、昨年召抱えた許仲康こと季衣に典韋こと流琉、沛国譙県(はいこくしょうけん)曹氏出自で同族の曹子孝と曹子廉に曹文烈と曹子丹。


 智では、昨年軍師及び別駕従事を命じた荀文若こと桂花、新たに軍師として昨年領内での匪賊討伐の際に召抱えた郭奉孝こと稟に程仲徳こと風。


 それに付け加え、先日郡内の雍丘(ようきゅう)県の救援に向かった際に、楽文謙(がくぶんけん)こと(なぎ)李曼成(りまんせい)こと真桜(まおう)于文則(うぶんそく)こと沙和(さわ)の三人を自分の幕下に入れたのである。これらの新旧入り交ざった家臣団を、華琳は見事に使いこなす事によって短期で郡内の黄巾どもを殲滅する事に成功したのだ。


 華琳のこの見事な手腕は、兗州刺史である劉岱の注目を浴びる事となる。早速、彼は途中左車騎将軍皇甫嵩の軍勢と合流し、予州潁川郡は長社(ちょうしゃ)県で篭城している朱儁の救援に向かう事を彼女に命じた。その時、思わず華琳はほくそ笑んでこう言ったものである。



『ふふっ、ここの刺史劉岱って無能者揃いの劉姓を名乗る割に、中々人を見る目があるようじゃない。まぁ、中央への点数稼ぎやご機嫌取りもあるかもしれないけど、こちらとしても願ってもないことだわ。将兵のいい実戦訓練にもなるしね? 』



 実は、華琳は郡内の黄巾を討伐する際にあたり、降伏してきた黄巾兵や或いは彼女を慕い志願して来た者達を自軍に引き入れていたのだ。その数は約二万前後に膨れ上がり、現在の彼女にとっての課題はその新兵の練度であった為に、これはまたとない良い機会だったのである。


 陳留の城内が戦支度で大忙しとなる最中、華琳は仙蓼(しぇんりゃお)こと司馬仲達から突然面会を求められる。


 彼女は、華琳の下で主簿の役職に就いており、現在十八歳。昨年保護した『天の御遣い』の道化を演じさせている『及川佑』の教育係を買って出ており、青みがかかった銀髪と、藍寶石(サファイア)を髣髴させる青く輝く瞳に白皙の肌を持った美少女で、程好い背丈と均整の取れた体つきをしているのが特徴である。


 実は、仙蓼と華琳にの間はちょっとした因縁があった。仙蓼の母司馬建公は現在司隷※1京兆尹(けいちょういん)の役職に就いているが、昔※2尚書右丞(しょうしょうじょう)の役職に就いていた時に、華琳を洛陽北部尉に起用した経緯があったのである。


 昨年、華琳が陳留郡太守を命ぜられた際に、その司馬建公こと司馬防の恩に報いたかったのと、彼女の自慢の八人の娘『司馬八達』に興味を示したのもあり、この姉妹達を召抱えようと思ったのだ。


 然し、長女伯達、三女叔達はすぐ応じた物の、八達の中で一際才覚優れたと噂される次女の仲達こと仙蓼が中々応じない。仙蓼は、曹孟徳の求めに応じなかったのには理由があった。



『曹孟徳殿は能力に秀で、且つ見目麗しい娘の純潔を弄ぶ悪しき性癖がある 』



 仙蓼は華琳の性癖を人伝で聞いており、それを露骨に嫌悪していたのだ。現に、先に仕官した姉や妹から、華琳に体を執拗に触られた話も聞かされている。司馬八達の中でも、仙蓼は特に神童の誉れが高くて見目麗しかった。当の本人も、己の外見にいささか(・・・・)は自負もしているし、現に、華琳の方にも『ソッチ』目的の思惑があるのも事実である。


 だが、仙蓼は同性同士の睦み合い等は世の摂理に反する汚らわしき事と考えており、到って普通の結婚を望んでいたのだ。結局、仙蓼は『病』を装い、華琳の出仕の求めに応じない事を決めたのである。


 これは余談だが、仙蓼の好みはどこか頼りなさげで、自分がしっかりと支えて立派に逞しく(・・・)鍛え上げたい男である。幸か不幸か、佑はモロそれに入っており、仙蓼にとって彼は『的のど真ん中』だったのだ。



『随分、手こずらせてくれるわね……。建公殿の恩義に報いてあげようと思ったのに、仮病を決め込むとは一体何様の積もりなのかしら? 春蘭! 栄華(えいか)! 今から兵を引き連れ司馬仲達の様子を見てきなさい! 病人なら兵を見ても動けないでしょう! もし、仮病であれば即刻首に縄を掛けてでも連れて来なさい! 』



 遂に業を煮やした彼女は、春蘭こと夏侯惇と柊琳こと曹子廉――曹洪の二人に命ずると、早速彼女等は百名余の兵を引き連れ司馬家の邸宅に向かう。二人は追い返そうとする家の使用人達を強引に払いのけ、ずかずかと足音荒く仙蓼の寝室へと殴りこむ。春蘭だけでなく、子孝と子廉の二人も曹家を代表する将の一人に名を連ねていたのだ。



 兵と共に春蘭と栄華が仙蓼の寝室になだれ込んだ瞬間。思わず彼女等は息を呑む。青みがかかった銀髪を寝台の上に広げ、白皙の肌を青ざめさせた仙蓼が苦悶の表情を浮かべながら臥していたからだ。


 今にも崩れ落ちそうで儚げな雰囲気の彼女の姿に、春蘭と栄華は勢いを殺されてしまい、結局二人はすごすごと引き返さざるを得なくなってしまった。そんな二人が引き返していくのを確認すると、仙蓼はホッと胸を撫で下ろす。無論、これは彼女の迫真の演技である。


 然し、今度はまた更なる厄介事が生じた。栄華は華琳とは血は繋がってないものの、『ソッチの気』だけは持っていた。儚げな仙蓼に一目惚れした彼女は、絶対自分が口説き落として見せると華琳に頼み込み、毎日仙蓼の家を訪れては執拗に付回したのだ。


 時には金品を持ち込んだり、またある時には恋文めいた説得の手紙を送りつけ、挙句の果てには家の外で下手糞な恋の歌まで歌う始末。こうなってくると、性質が悪いでは済まされなかった。仙蓼は結局、病のせいで『呆けて気が触れた』振りをする事に決めたのである。


 それ以降、仙蓼は腰を思い切り曲げて杖を突いて歩く様になり、柊琳からの恋文には意味不明の返書を送りつけ、金品には水を掛けて蹴り飛ばす等の奇行を行い、恋の歌に関してはわざと耳に手を添えて聞こえない素振りをして見せた。


 こう言った事をされてしまったもんだから、柊琳としては屈辱他ならない。彼女は主公たる華琳にそれ等を全て告げ口し、声高に泣き叫んだ。



『華琳お姉様ッ!! あたしは本当に誠意を込めたのに、あの娘はそれをことごとく踏みにじったのよ!! これは曹家に生まれた者にとって恥辱だわっ!! 』



 見っとも無く泣き喚く彼女の姿に、流石の華琳も堪忍袋の緒が切れる。こうなった以上、自分自ら兵を率いて強引に連れ出してやると声高に叫ぶが、その瞬間彼女の頭の中で蝋燭に灯が点った。



『見てなさい、この曹孟徳をこけ(・・)にするとどうなるか思い知らせてあげるわ……!! 』



 華琳は不敵に笑うと、共の者を引き連れずに単身仙蓼の家に赴いたのである。然し、この時の華琳は何時もの軍装姿ではなく、正式な陳留太守の衣冠に身を包んでいたのだ。


 使用人に通され、仙蓼の部屋に華琳が入ると、杖を突いて気が触れた振りをしている仙蓼本人が在室しており、華琳は『ふん、見え透いた手をまだ使う積りね? 』と内心毒づくものの、彼女は仙蓼の手にとある物を押し付ける。それは、華琳直筆の辞令であった。


 然し、それを受け取っても仙蓼は『あ~ 』と呻き声らしき声ををあげるだけであったが、お構いなしに華琳は話しかける。



『司馬仲達、私は陳留郡太守曹孟徳よ。私は貴女を※3主簿(ジュブ)として召抱える。嫌とは言わせないわよ? 』


『あ~? ※3煮布(ジュブ)でございますかぁ? 布を煮る等と、随分とまぁ変わった仕事でございますねぇ? 』



 仙蓼は、わざとぼけた(・・・)振りをしてかわそうとするが、遂に華琳は自身を切り替えた。彼女は大げさに深呼吸して見せると、一気に己の小さい体から強烈な覇気を発散し始めたのである。



『……まだ、ぼけた(・・・)振りをしているのかしら? 私が来なさいと言ったら素直に来れば良いのよ。これ以上無駄な抵抗を続けるようならば、貴女の非が姉と妹に行くけどそれでもいいのかしら? 』


『……!! 』



 只でさえ強烈な華琳の覇気に中てられていると言うのに、姉と妹にお咎めを食らわしてやるぞと脅しを掛けられると、遂に仙蓼は杖を投げ捨て華琳にひれ伏す。



『これは失礼をば致しました。主公から『励ましのお言葉』を頂いたお陰か、今のですっかり病も逃げおおせたようです 』


『そう、ならば重畳ね? 明日から出仕する事、良いわね? 』


『畏まりました、主公 』



 この時、華琳は勝利の快感に酔いしれていた。何せ、頑なに出仕を拒んでいた司馬仲達を三度脅した末、遂に従わせる事に成功したからである。それ以降、仙蓼は主簿として華琳に仕えそつ無く仕事をこなす毎日を過ごす様になった。このエピソードを、後世の歴史研究家『(ジア) 康像(カンシャン)』は以下の様に評している。



『曹孟徳程人材に貪欲な人物は居らず、彼女の人材登用術は正道を用いることもあれば、相手の弱みに付けこむと言った邪道を用いることもあり、正に柔剛を織り交ぜた物であった。


 無論、それが裏目に出る事もあったようだが、司馬仲達のケースに関しては『剛』の手法が成功した一例と言えよう。この場合は『三脅の従』と言っても過言ではない 』



「主公、本日はお話したいことがあり目通りを願い出ました 」


「ふむ、珍しいわね? 貴女が私に目通りを願うなんて? 」


「主簿如きが華琳様に急な目通りなんて、随分図々しい真似をするのね? 」



 後ろに筆頭軍師の桂花こと荀文若を従え、華琳は何時もの様に威圧的な視線で仙蓼を見下ろしており、同時にその桂花本人は侮蔑的な視線を向けていた。



(相変わらず、虎の威を借りる狐の如き真似をしているのですね? 折角の『王佐の才』が泣くと言うのに、げに勿体無き事をなさる…… )



 桂花からの侮蔑的な視線に仙蓼は内心毒づく。※4以前佑に言った様に、仙蓼は桂花をモンの凄く嫌っていたのだ。然し、その一方で彼女の才能に対しては、流石に荀家が誇る『王佐の才』と噂されるだけあると、仙蓼は賞賛している。


 だが、彼女は主公たる華琳に隷属的で媚び諂う様な態度を見せる反面。男性の文武官を悪し様に侮辱したり、自分以外で華琳の寵愛を受け始めた卞氏や、優れた才覚を持った郭嘉や程昱に対して露骨に嫉妬するだけでなく、挙句の果てに昨年華琳が保護した『天の御遣い』こと『及川佑』に理不尽な仕打ちをした。


 性質が悪いことに、桂花は春蘭等の武官に対しては舌先三寸でやり込めるが、舌先で叶わぬ相手――主に郭嘉と程昱には対しては歯軋りするだけで何も言えず、自分より立場や能力の低い者に対しては影で意地悪をする等と言った悪質な行為を繰り返していたのである。現に、自分の姉や妹からも、この生意気なちびすけ(・・・・)に影で意地悪をされた話を聞かされていた。 


 仙蓼は大変姉妹想いの人物でもある。本当ならば、公衆の面前でこの女の尻を思いっ切り引っ叩いた後に丸裸にひん剥いてから、城下町の広場にて晒し者にしてやりたいとも思っていた。どの様な経緯があるかは知らないが、桂花こと荀文若と言う人物の『男嫌い』で且つ視野狭窄な面を嫌悪していたのである。


 だが、ここで下手な真似をする訳にはいかない。ここはじっと我慢して、時を得てから姉妹やぞっこんに惚れてる『あの方』の敵を討とうと思った。


 また、仙蓼は華琳に対しては従ってはいるが、心服はしていない。何故なら、この少女も好きになれなかったからだ。華琳は智勇徳と三拍子揃っているものの、全て力ずくでやる姿勢が気に食わなかったのである。


 これ等の思惑を持った仙蓼であったが、普段穏やかに振舞う事によって感情を押し殺しており、周囲に悟られぬ様気を配っていた。現に、今もこうして仙蓼は穏やかな仮面を被り、自分の上でふんぞり返る華琳に話しかける。



「本日お話したき儀は、差し出がましくは思いますが、此度の黄巾討伐の援軍における陣立ての件で御座います 」



 仙蓼が発した言葉に、華琳と桂花の表情が動いた。



「ほう…… 」


「なっ、アンタ! 私と華琳様で考えた陣立てにけち(・・)を付ける気!? 」



 早速桂花が噛み付いてくる。然し、仙蓼は涼やかにそれをサラリとかわして見せた。



「申し訳御座いませんが、別駕従事殿にはお尋ねしておりません。私は曹太守にお尋ねしているのです 」


「なっ……! 」



 仙蓼の言葉に、桂花は思わず絶句しその場に固まる。桂花は周囲から『筆頭軍師殿』呼ばわりされており、尊敬と畏怖のまなざしを一身に受けていた。だが、大の桂花嫌いでもある仙蓼だけは、彼女の事を役職名の『別駕従事殿』呼ばわりしていたのである。


 この仙蓼の毅然とした振る舞いは、桂花の事を快く思わない一部の将兵からは拍手喝采の対象となっており、それどころか天の御遣いの教育係を買って出た話も家中では美談となっていたのだ。



「こっ、このっ! 主簿の分際で~~ッ!! 」


「はて? この主公の下で『分際』等と言う言葉が存在したのでしょうか? ここの太守であらせられる曹孟徳様は才覚ある者を愛され、才覚ある者に身分の貴賎は無しとも聞きました。


 ですが、今の別駕従事殿の私に対する言は、才覚を愛する曹太守の方針と全く異なると思われます。況してや、『筆頭軍師』とまで称えられ太守の耳目たる別駕従事殿が、その主公と正反対のお考えとは到底思えないのですが……? 」


「なっ、ああ言えばこう言うって、何様の積りなのよアンタ!! 」


 

 互いに一歩も退く気配を見せぬ彼女等のやり取りを見て、遂に華琳が動いた。



「……桂花、私が良いと言うまで自室にて控えている事。いいかしら? それと、盗み聞きするのも許さないからその積りでいる様に 」


「……畏まりました、華琳様…… 」



 顔をややひくつかせた華琳に一睨みされ、已む無く桂花はすごすごと自室へと引き下がる。その時彼女は振り向き様に仙蓼を思いっきり睨みつけたのだが……次の瞬間場が凍りついた!! 


 仙蓼は初めて冷気の刃をその美しい顔に纏わせ、首だけを背後に居た桂花に向けていたのである。



「……まだ、私に何か言いたき儀でもあるのでしょうか? 」


「ひっ、ひぎっいいいいいいいい!! 」


「なっ…… 」



 仙蓼は生まれつき首を真後ろに向ける事が出来たので、子供の頃は『ふくろう女』とからかわれた事がある。今、彼女はその特技を桂花に対してやってのけたのだ。


 一方の桂花であるが、自分に対して背を向けていたはずの女が、今こうして真後ろに顔を向けている。この信じられない現実に、彼女は得体の知れない恐怖に襲われ、忽ち腰を抜かしてへたり込んでしまった。


 華琳も思わぬ彼女の特技に、内心度肝を抜かされたものである。桂花程顔には出していなかったが、華琳もまた腰を抜かしていたのだ。



「誰かある!! 」



 腰を抜かしてる事を悟られぬ様、座に腰掛けたままの華琳が声を上げると、数名の女官が姿を現す。その間に仙蓼は首の位置を元に戻していた。



「お呼びで御座いましょうか、主公? 」


「文若が腰を抜かしたわ、まともに歩けない様だから自室に連れて行きなさい 」


「畏まりました 」



 華琳が命じると、すぐさま彼女等は桂花に肩を貸し、顔を青ざめさせて腰を抜かしたままの彼女を自室へと連れて行ったのである。そして、華琳は再び仙蓼に向き直ると、先程までの傲慢な雰囲気を掻き消し真剣な態度で彼女に臨んだ。



「悪かったわね、話を止めてしまって。荀彧の件は完全に私の手落ちだわ。許してもらえるかしら? 」



 華琳にしては珍しく、仙蓼に桂花の非を素直に詫びて来ると、当の仙蓼は穏やかな顔で華琳に頭を下げる。



「いえ、私は気にしておりません。別駕従事殿は気位の高い方です。下級の一文官に過ぎぬ私の差し出がましい真似を、気に食わぬと思うのも仕方の無い事で御座いますから 」


「そう、そう言ってくれるのなら少しは救われたわね? さて、陣立ての件だったわね? 何か問題でもあるのかしら? 」



 フッと笑みを浮かべて華琳が話を戻すと、仙蓼は先程の穏やかな顔から表情をキリッとした物に改めて口を開いた。



「はい、主公は此度の遠征で先日組み入れたばかりの新兵の練度を上げるのが狙いかと思われますが、率いる将はどなたを用いられるお積りでしょうか? また、それを支える軍師はどなたを? 」


「っ! 」



 仙蓼の言に、華琳は僅かにだが片眉を上げる。これまで主簿の仕事しかしてこなかった司馬仲達が、今始めて自分に軍事面で口を挟んできたからだ。


 『面白い』――そう思うと、華琳は連れて行く将と軍師の名を告げ始める。



「夏侯惇と夏侯淵、そして彼女等の補佐として許褚と典韋。軍師としては荀彧を連れて行く積りよ? 何か不満でも? 」


「左様で御座いますか……。ふむ…… 」



 華琳から話を聞かされ、仙蓼は顎を摘むと考え込む素振りをして見せた。彼女の仕草に、華琳は少し期待を寄せるかのように顔を綻ばせる。



「司馬仲達、どうやら貴女には何か考えがあるようね? 良かったら聞かせてもらえるかしら? 」



 華琳に促され、仙蓼は澄んだ声を室内に響かせながら意見を述べ始めた。



「はい、先ず実戦経験を積ませる目的なら、率いる将に熟練を積んだ方のみでは目的は半分しか達せられません。許褚殿と典韋殿は昨年召抱えられたとは言え、まだお二人は経験も浅う御座いますから同行されても宜しいでしょう。ですが、両夏侯を用いるのはどうかと思われます。


 軍師の方も然りで、荀文若殿のみでは何時もと同じです。ここは昨年お召抱えになられた郭奉孝殿と程仲徳殿にお任せされてみては? あのお二方は軍事面での才覚は文若殿よりも優れていると、この仲達は見ます。


 次に武の方です。これについては御同族の子孝様(曹仁)に子廉様(曹洪)がおられますので、このお二人に両夏侯の代役を任せられてみてはいかがでしょうか? その補佐には同じく御同族の文烈様(曹休)と子丹様(曹真)様を付ければ大事無いかと思います。


 子孝様と子廉様のお二方は、何れも両夏侯に引けを取らぬ武勇を誇っておられますし、文烈様と子丹様に到っては智勇の均衡に優れております。我が軍は武と智に優れた者は確かに居りますが、その反面智勇の均衡に長けた方を鍛えていないのが最大の弱点です。


 優れた人材を揃えるのも結構ですが、用いて鍛えなければ宝の持ち腐れと言う物で御座いましょう 」



 仙蓼に指摘され、華琳は怒るどころか満足げに頷く。まるで我が意を得たりと言った顔だ。



「なるほど、流石に司馬八達の中で最も優れた者と言うのは伊達ではないわね? あっさりと我が軍の弱点を見抜くとは恐れ入ったわ 」


「いえ、私の才能等別駕従事殿に比べれば大人と赤子ほどの開きが御座いますし、それはお買い被りと言う物です。後、もう一つ更にお願いが御座います 」


「ほう、それは何なのかしら? 良いわ、久し振りに良い意見を聞かせてくれたのだし、出来る範囲内なら叶えましょう 」



 上機嫌で華琳が答えると、仙蓼は内心ほくそ笑む。彼女にとってこれこそが本題であったのだから。



「はい、つきましては御遣い様も同行させて頂きたく存じ上げます。無論、御遣い様付きの文謙殿(楽進)、曼成殿(李典)、文則殿(于禁)のお三方の他に、普段警邏に回している兵も一緒です。


 僭越ながら、御遣い様には軍師としてこの仲達が付きたいと思います。実は、これこそが今日主公にお願いしたき儀だったのです 」


「なっ…… 」



 彼女の申し出に、華琳は思わず言葉を失う。自分が三度脅してまで従わせた司馬仲達が、あの『ごくつぶし』にしか過ぎない道化にここまで入れ込んでいたからだ。


 然し、自分は先程大言を吐いてしまった経緯がある。ここで約束を違えれば己の沽券に拘ると言うものだ。だが、理由位は聞いても良いだろう。そう考え、華琳は彼女に問いかける。



「判ったわ、良いでしょう。貴女達の参陣を認めましょう……。ところで、何故この様な事を頼んだのかしら? 」



 華琳の問いかけに、仙蓼は少し逡巡した後にゆっくりと口を開いた。



「はい、実は……主公はご存じないのかも知れませんが、我が軍の間では警邏兵と実戦部隊の兵との間でいがみ合いが生じているのです。


 普段城下町の警邏を任されている御遣い様、御遣い様付きの文謙殿、曼成殿、文則殿もそれに大層頭を痛められ、私は度々相談を受けておりました。


 曰く『警邏に回されてる連中は気楽で良い、俺達ゃ、毎回死線を潜り抜けているんだ。極楽蜻蛉で日々を楽しく過ごす警邏の連中には判るまい 』と――


 こんな調子で毎回嫌味を言われており、挙句の果てに彼等の揶揄の対象が御遣い様とお三方にまで及ぶ始末。遂には城下町の中で何度か兵同士の私闘に及んだ報告も聞かされております 」


「何とも馬鹿馬鹿しいわね……。実戦であろうが警邏であろうが、同じ調練を課していると言うものを…… 」



 仙蓼から話を聞かされ、華琳は嘆息して天井を仰ぐ。これを好機と見た仙蓼は一気に畳み掛けるが如く、主公への言上を続けた。



「はい。ですが、これは好機と言えましょう。ここで、警邏の兵を実戦部隊に据え置き、活躍の場を与えれば彼等の主公への忠誠は強固な物となりますし、経験の浅い将の方々には絶好の場です。


 また、『御遣い様』をお傍に置けば、兵達には天の加護があると信じ込ませる事が出来ます。『御遣い様』の才覚を伸ばし、名声を強固な物にする為にも、この司馬仲達。『御遣い様』のお傍で知恵を絞りたく存じ上げる次第です 」



「ふむ……。確かにそう言う考え方もあるわね? 」



「後ですが……。この前幽州は涿郡にて義勇軍を挙げた者が居ると聞かされました。


 その者は『中山靖王劉勝』の末裔を名乗っており、彼女の下には天下に名の知れた『幽州の三賢人』だけでなく、凄腕の豪傑達も沢山居るとか。


 北軍中候の鄒靖将軍はこの義勇軍の力を借りて、瞬く間に青州は済南郡の黄巾賊を駆逐し、先日州都臨菑城にへばりついていた黄巾までをも蹴散らしたそうです。


 その者は劉備、字を玄徳と言い、まだ十七歳の娘にしか過ぎません。ですが、彼女の下に義勇兵や様々な援助物資が集まるようになり、その存在と名声は徐々に高まりつつあります。


 ここは一つ、我々もそのひそみ(・・・)に倣ってみてはいかがでしょうか? 天の御遣いを有する曹家の存在を世に知らしめれば、各地からの支持も集まり易いという物です 」



 そこまで言われ、華琳は深く考え込んだ後に勢い良く開眼した。



「判ったわ。司馬仲達、貴女の言を受け入れましょう! 早速、貴女が言った様に陣立ても変えるわね……ところでだけど、貴女は私に真名を預けてくれないのかしら? 」



 少しばかりの懇願を込めて華琳が言うが、対する仙蓼はあっさりと返したのである。



「いえ、私は主公の臣でもありますが、私は主公がお援けされました御遣い様に心底惚れ込んでしまいました。御遣い様が良いと言うまでは、主公とは言えど真名をお預けする訳には参りませんので、悪しからずお願い申し上げます 」


「そう……判ったわ。だが、司馬仲達。これだけは忘れないで。この曹孟徳、一度狙った獲物は逃さないの。貴女もその積りで居るように 」


「そのお言葉、深く胸に刻んでおきましょう…… 」



 仙蓼は華琳に一礼すると、優雅な足取りで退室した。この時華琳が仙蓼にかけた言葉であったが、終生彼女の事を真名で呼ぶまでには到らなかったのである。



「ふぅ~~。噂には聞いていたけど、恐ろしい娘ね……。私に御す事が適うかしら? だけど、司馬仲達を御せ無ければ私が天を掴むのは到底無理な話だわ…… 」



 緊張が解けたのか、華琳は安堵の溜息を吐き、座の背もたれに身を預けると勢い無くへたり込んだ。そして、手元にあった呼び鈴を鳴らし始めると、別室にて控えていた麗謡(りぃやお)こと卞氏が姿を現す。彼女は鈴の様な美しい声を響かせ、華琳の傍に歩み寄った。



「華琳様、麗謡でございます 」



 華琳の御前にて、麗謡は優雅にひれ伏す。この時の彼女の服装は簡素な女官の物ではなく、装飾が施された綺麗な服を着ており、薄絹の長衣からは白磁の如き透き通った肌がうっすらと窺えた。



「私の可愛い麗謡。今何をしていたのかしら? 」


「はい、華琳様の為に縫い物をしておりました 」


「そう、私の為に縫い物を……。悪いけど、それは後にしてもらえるかしら? ちょっと情けないんだけど腰が抜けてしまったの。一人では立てないから、閨に連れて行ってもらえるかしら? 」



 甘える様に華琳が言ってくると、麗謡は忽ち顔を赤らめてみせる。



「はっ、はい……畏まりました。麗謡は全て華琳様の物で御座います。何なりとお申し付けくださいませ…… 」



 早速麗謡は華琳に肩を貸すと、そのまま二人は閨へと赴いていくのであった。愛人との甘い雰囲気の中、ふと華琳の中で仙蓼の言った人物の名が引っかかる。



「劉備、字は玄徳……。劉玄徳か。どの様な娘なのか一度会ってみたいものね? 」



 この時何気なく呟いた言葉が、まさか近い内に実現されるとは華琳は梅雨ほども思っていなかった。それは同時に華琳にとって、終生の宿敵との出会いを意味していたのである。


 華琳こと曹孟徳、この時齢十六。この黄巾討伐は、彼女が胸に抱いた野心の激炎が本格的に蠢き始める第一歩でもあったのだ。



 

 鄒靖や桃香達が臨菑城を黄巾の魔の手から救った後、その勢いを駆って青州各地の太守が積極的な軍事行動を起こすようになった。


 その結果、青州の黄巾軍は算を乱して逃走し、青州各地に潜伏するようになる。彼等は機会を窺いつつも地道な抵抗を続け、以降青州は黄巾残党の拠点と化し、曹操が鎮圧するまで情勢は混迷を極めるのであった。


 桃香達が臨菑城で束の間の休息を過ごしていたある日の事、彼女と白蓮は鄒靖から呼び出しを受ける。二人が鄒靖の前に参上すると、彼女は笑顔で二人を出迎えた。



「急に呼び出して悪かったっちゃねぇ? 実はしゃっ、二人に聞きてぇ事があったんだわ。確か(たすか)、あんたら二人とも盧閣下のとこで学問ば学んでたんだっちゃよね? 」


訳:『急に呼び出して悪かったわね? 実はね、二人に聞きたい事があるのよ。確か、貴女達二人とも盧閣下の所で学んでいたのよね? 』



 行き成り呼び出して、何を言うのかと思っていた二人は少々面を喰らったものの、素直に頷き返す。



「はい、私と白蓮ちゃん、いえ、公孫閣下は盧老師の下で学びました 」


「はっ、私と桃香、いえ玄徳は盧老師の下で共に学び、そして講義を良く抜け出しては外で遊んでいました! 」


「ちょっ、ちょっと! 白蓮ちゃんってばっ!! 」


「あ゛っ…… 」



 思わず白蓮が余計な事までポロリと言ってしまうと、隣の桃香が慌てて彼女を肘で突付く。白蓮は見る見る内に顔を青ざめさせてしまい、口に手を当てると固まってしまった。



「いやいや、別に気にしなくってもいいんだよぉ? あだしの娘時代もあんたらとおんなじだったもんだからっしゃ。あだしなんか『早弁の鄒』呼ばわりされてたもんだべっちゃよ? 」


訳:『いやいや、別に気にしなくても良いのよ? 私の娘時代も貴女達と同じだったものだから。私なんか『早弁の鄒』呼ばわりされてたものよ? 』



 鄒靖は気に留めるどころか、自分の娘時代の失点を振ってきて二人の緊張を解く。こう言うお茶目な事をするものだから、桃香の方も鄒靖の事を好きになっていた。



「実はね、あだし等の行き先が決まったっちゃよ。先程その盧閣下から救援要請の文が来てねぇ。現在閣下は五万の兵さ引き連れ、冀州の鉅鹿(きょろく)広宗(こうそう)で黄巾どもの本隊十五万と遣り合ってるんだわ。そんで、あだし等はその救援に行く訳なのしゃっ。白蓮も桃香さんも協力してもらっても良いっすか? 」


訳:『実はね、私達の行き先が決まったのよ。先程その盧閣下から救援要請の文が来てね。現在閣下は五万の兵を引き連れ、冀州の鉅鹿は広宗で黄巾どもの本隊十五万と遣り合っているわ。それで、私達はその救援に行く訳なのよ。白蓮も桃香さんも協力してもらっても良いかしら? 』



 この頃から、鄒靖本人も白蓮と桃香の事を真名で呼んでいた。また、彼女等二人も鄒靖の事を真名の『菖蒲』と呼んでいたのである。



「はいっ、菖蒲様。無論、私達は喜んで行かせて貰いますっ! 盧老師に今の私を見てもらいたいですからっ! 」


「私もですっ、菖蒲様っ! 私と桃香は散々盧老師に迷惑を掛けたのにも拘らず、老師は何時も笑って許してくださいました。それどころか、私を孝廉にまで推挙してくださった恩があります。なら、今こそその恩義に報いる時っ! この公孫伯珪、見事白馬陣にて黄狗どもを蹴散らして見せましょう! 」



 鼻息を荒くして二人が叫ぶと、菖蒲はにっこり笑って何も言わず、満足げに大きく頷いてみせるのだった。


 かくして、彼女等は青州の後始末を刺史に任せると、臨菑城を後にする。彼女等が目指すは、ここから丁度真西の冀州は鉅鹿郡広宗県。最初の内は足取りが軽かった義勇軍であったが、段々広宗が近付く内に、彼等からの顔から表情が消えた。



「こっ、これは…… 」


「やだっ……あたし達もこうなっちゃうのかしら? 」


「おっ、おら、こんなとこで野垂れ死にしたくねぇだよっ!! 」



 街道沿いには官軍黄巾関係なく無数の躯が打ち捨てられており、それらは全て鳥獣の餌と化していたのである。


 これ等の無残な姿や発せられる腐臭に中てられたのか、兵の中には気絶したり、大仰に嘔吐する者も出始め、あれだけ高かった士気がカコンと音を立てて下がってしまったのだ。


 この惨たらしい屍の山に、一刀や肝っ玉が据わった一心・義雲・義雷も顔を顰める。蓮華に到っては自分自身を力強く抱きしめると、戦慄の余りガクガクと体を震わせていた。



「これは……惨い、惨すぎる 」


「あぁ、本当にこいつぁひでぇなぁ……。正に地獄絵図たぁ、このこったぜ 」


「これまでの戦では、敵兵の遺体は全て埋めるか焼くなりしてまとめて葬っておった。恐らくだが、ここではそれをする間も無い程逼迫してるのであろう 」


「うへぇ~……。正直言って、こりゃあ胸糞悪くなる光景だぜ…… 」


「判ってはいる積りだけど、余り見たくない光景だわ……。私はああなりたくない……!! 」



 兵達の動揺に危惧を抱いた愛紗が、桃香の傍に馬を寄せてくる。当の桃香本人は無表情のままこれらの屍を凝視しており、彼女の目からは一筋の涙が流れ落ちていた。



「義姉上、如何致しましょう? 兵達の士気が下がっております。恐らく伯珪殿や鄒閣下の方も同じ様になっているかと思われますが? 閣下に具申して兵を休ませましょうか? 」


「……愛紗ちゃん。行軍を休めては駄目だよ? 気持ちは判るけど、広宗では盧老師が黄巾の本隊相手に苦戦してるんだから。


 広宗の方はここよりもっと酷いと思うし、私だって本当は胸が物凄く痛い……でもここで歩みを止めたって事態は改善されない。


 愛紗ちゃん、具合が悪い人達は荷車に上げてくれるかな? 本当はこの人達をちゃんと葬ってあげたいけど、ここで立ち止まる訳には行かないの。……愛紗ちゃん、ごめんね 」



 そこまで言って桃香は顔を俯かせると、キュッと唇を噛み締めて力強く自身の胸元を掴む。そんな彼女の姿は愛紗にはとても痛々しく思えた。ふと、愛紗の脳裏に先日星に言われた言葉が蘇って来る。



『見た所、あの御仁は元来争い事を嫌う性分と思われた。だのに、己を殺してまでも己が道を貫かんとしている…… 』



 先日知り合ったばかりの人物が義姉の心情を見抜いたと言うのに、義妹たる自分は何たる体たらくか? ――愛紗は己自身を不甲斐無く思った。


 なら、自分はどうあるべきか? そう思うものの、中々良い知恵が浮かんで来る訳でもない。ならば、私は自分で出来る範囲内のことをしよう。自分自身で結論付けると、愛紗は桃香に優しく微笑みかける。



「義姉上……畏まりました。ですが苦しかったらいつでも言って下さい。我等は姉妹なのですから…… 」


「うんっ、ありがとう愛紗ちゃん。大丈夫だよ、まだ折れる訳にはいかないんだからっ! 」



 愛紗の気遣いは桃香にとって物凄く嬉しい物であった。彼女は満面の笑みと共に愛紗に答えると、対する愛紗も満面の笑みで返したのである。


 この様な光景を見た影響か、菖蒲・白蓮・桃香の軍勢は士気と行軍速度を落としつつも、何とか広宗の城に辿り着く事が出来た。菖蒲こと鄒靖は早速兵に休息と食事を摂る様に指示を出すと、自身は白蓮と桃香を引き連れて、城内の一室にて総指揮を執る北中郎将盧植との対面を果たしたのである。



「盧閣下、お久し振りでごぜぇます。北軍中候鄒靖、青州の黄巾どもを制圧し、只今応援に参りました 」


「鄒靖、此度はお疲れ様でした……。都から青州に赴くのも大変だったと言うのに、今回はこっちの方に来てもらって本当に申し訳ないと思っているわ 」



 軽装の鎧の上に戦袍を羽織った姿の盧植が、鎧姿の鄒靖の手を取り暖かい笑みで彼女を労った。桃香と白蓮の師である盧植は字を子幹と言い、現在齢は四十二。桃香と同じ幽州涿郡の人である。彼女は年齢に似合わぬ若々しさを持っており、身に纏う雰囲気も穏やかで暖かく包み込む春の日差しを髣髴させた。


 若い頃の盧植は、高名な学者で儒家でもある馬融の下で学問に励み、その姿勢は師たる彼からの賞賛を浴びた。師の下で学問を修めた以降も、盧植は州郡からの誘いを全て断り己の研鑽に励む日々を過ごし、学問だけでなく武にも優れた人物に変貌していたのである。


 その後中央に召喚され出仕すると、※5博士(はくし)の役職に就いた。彼女はその間馬日磾(ばじつてい)蔡邕(さいよう)等の高名な学者と共に、『漢記』と呼ばれる歴史書の編纂や、太学に設立された※6石経に刻む経典の校正などを行う。


 盧植が都に出仕して数年経ち、揚州九江郡にて蛮族が反乱を起こしたとの報が入る。彼女は※7四府から『真に智勇優れし者』との推薦を受け、九江郡太守を拝命すると瞬く間に乱を鎮圧してみせたが、病に罹ったとの口実を作ると下野して故郷に帰って行った。


 その後、彼女は故郷で私塾を開きつつも、現地の役人や要職に就いている者達と交友を持つようになる。彼女と縁を持った者の中に、桃香の父劉弘の姿もあった。暫くして劉弘が世を去ると、盧植は彼の弟であった劉元起(りゅうげんき)から、自分の娘と姪に学問を教えて欲しいと頼み込まれる。


 故人であった劉弘の人となりに好感を持っていた彼女はこれを快諾。盧植は劉元起の娘で九歳の徳然と、姪で十歳の玄徳を自分の門下生に迎え入れたのである。この時玄徳こと桃香はまだ幼く、学問よりは外で遊ぶのを好む年頃であった。


 桃香が入門して一月もしない内に、盧植はまた新たな門下生を迎え入れる。遼東の名門公孫家から多額の謝礼と共に、公孫伯珪こと当時十一歳の白蓮が彼女の門を叩いた。


 清貧を決め込むにも流石に限度があった盧植にとって、公孫家からの多額の謝礼は実に有難い物で、こちらも快く迎え入れたのである。然し、桃香と白蓮はトンデモナイ問題児であったのだ。先ず、二人とも真面目に講義を聞かない。それどころか、時折抜け出しては城下町或いは外で遊び呆ける始末。


 同時に入門した徳然がコツコツと勉強して素晴らしい成績を上げていくのに対し、二人は真面目に取り組む気を見せなかったが、何故か二人に対して盧植は何時も寛大であった。この二人を見た時から、彼女は『何か大業を成す相をしている』と思っていたからである。


 そんなある日、盧植の高弟の一人張鈞(ちょうきん)が、素行の悪い二人の小娘に業を煮やして師である彼女に直訴してきた。



『盧老師、公孫瓉と劉備を破門にすべきです。あの二人、老師のご高説を聞くどころかしょっちゅう外に抜け出しては遊び呆ける始末。これでは他の者への示しになりません 』



 然し、盧植はこの張鈞の訴えに対して軽く笑うだけに留めると、逆に彼をやんわりと窘めたである。



『何も学ぶべきものは学問や武芸だけじゃないのよ? 友情、絆、互いを思いやる心……それこそが人として最も学ぶべき事なの。


 逆に学問や武芸ばかりに固執してると、貴方の様に心の貧しい者ばかりが生まれてしまうわ。ならば、私は心の豊かな人物を育て上げたいわね。


 今それを実践してるあの二人には、いつか皆の導き手になってもらいたいものだわ 』



『老師の今のお言葉にこの張鈞、いたく心洗われましたっ!! 自分がまだまだ未熟でしたっ!! 申し訳ございませんっ!! 』



 張鈞は確かに学問では優れた人物であったが、逆にそれ以外の物が見えなかったのだ。遂には変に気位が高くなってしまい、他の門弟とも諍いを起こすこともしばしば見受けられていたのである。今回の彼の訴えを好機と見た彼女は、逆に彼を窘める事によって、より一層優れた人物になって欲しいと願っていたのだ。



 それ以降、桃香と白蓮に関して誰も盧植に強く訴える者が現れず、そのまま月日が流れる。


 盧植にとって自慢の高弟であった張鈞を茂才に、白蓮を孝廉に推挙するとそれぞれ中央に送り出し、桃香の従妹であった徳然に関しては、荊州は長沙郡の名家である寇家(こうけ)の方から養子縁組が申し込まれた。彼女の父親である元起の妹が寇家に嫁いでおり、子供が得られなかった事情があったのである。


 こうして、門下生が一人、また一人と彼女の下を去って行き、遂に桃香だけが残った。盧植はせめて桃香だけは立派な士大夫にして見せたいと思い、彼女に合わせてゆっくりと優しく学問を教えていたのだが……。辛い現実が二人を襲う。


 何と、故郷にて隠遁生活を過ごしていた盧植に、議郎として再出仕する様にとの辞令が交付されたのである。


 帝の命であれば逆らう事は出来ない。彼女は泣く泣く都に出仕する事を決め、その際にここの県令に『この娘に如何なる者も手出し無用にすべし、さもなくば後日然るべき報いをくれん』との口利き(・・・)の文を押し付けると、いつまでも泣きながら手を振る桃香に後ろ髪を引かれる想いで、故郷を再び去っていったのだ。


 この時桃香十四歳、盧植三十九歳。奇しくも、桃香はその一年後に新たな導き手を得る事となる。



「閣下、実は本日閣下に会わせたい人物が居ります。白蓮、桃香さん、こっちへ…… 」



 流石の菖蒲も自ら尊敬する盧植の前では標準語を話しており、彼女が自分の後ろに控えていた桃香と白蓮と盧植の前に引き合わせると、忽ち盧植は満面の笑みを浮かべた。



「伯珪……。玄徳……。二人とも良くぞ立派になって! これ程嬉しい事はないわ!! 」



 涙ぐみながら、盧植が二人に手を広げると桃香と白蓮は顔をクシャッと歪ませ、涙を流し始める。居ても立っても居られなくなった二人は迷わず盧植の胸へと飛び込んだ。



「盧老師!! 本当にお会いしたかったですっ!! 」


「私も桃香と同じです!! 盧老師っ、盧老師~~!! 」



 再び会いたかった恩師の結構豊満な胸に顔を埋めて大声を上げて泣く桃香と白蓮。この三人の師弟の美しい姿は周囲の涙を誘う。鄒靖も目頭をしきりに拭っており、他の者達もそっと服の袖や戦袍を目に宛がい涙を拭っていた。



 さて、その一方で……広宗城外の義勇軍のとある天幕。その中には『漢』達だけが集まっていたのである。入り口の前に、『女人禁制』とでかでか(・・・・)に書き付けた立て札を突き立て、周囲にはこれまた一心の子分どもを見張りに立たせる等と厳重な物であったのだ。


 天幕の中には卓が置かれ、それを囲む様に『楼桑村義勇軍』の野郎どもが腰掛けている。先ずは上座に座る一心が口を開き始めた。



「さて……ここに集まって貰ったのは他でもないこれからの事だ。今日、桃香ことこの世界の私は、義雲好みの熟女になっていた盧老師と再会した。お前達も、前世で盧老師がどの様な顛末を迎えていたかは覚えているだろう? あの腐れ宦官が余計な事をしてくれた為に、老師の晩年は真に不遇な物であったのだからな? 」



 彼の言葉を追う様に次に義雲が語り始める。その時彼は自分の義兄をジトッと半目で睨んでいた。



「わし好みとは余計ですぞ、兄者? これでもこの世界のわしはまだ二十五ですからな? むむっ、話をそらしましたな。間違いなければ、盧植殿はこの後※8小黄門の左豊と言う俗物に賄賂を送らなんだ為に讒言され、無実の罪を着せられて更迭された筈ですな? 」



 今度は義雷が怒りを押し殺しながら、当時の事を語り始める。彼の周囲では、義憤の熱気が鬱陶しい位纏わりついていた。



「ったく、ありゃあ本当にケッタクソ悪かったぜ! でもよぉ、あんな非常時にまで袖の下要求して、その結果戦局が最悪になっちまったんだ。宦官って奴ぁ、周りが見えねぇ程欲の皮突っ張ってんじゃねぇのかぁ? ケッ、あれなら(ブタ)の方がまだましってモンだぜ? 」



 次に雲昇が何時もの無表情で淡々と話し始める。然し、彼の目は鋭利な刃物の如き鋭さを帯び始めていた。



「ええ……この時代も宦官どもは腐敗の象徴になっております。この雲昇も手を打ちたく思いますし、私としても桃香殿達に辛い別れをさせたくはありません……!! 桃香殿にこれからの事実をお教えしたい…… 」



 すると、永盛が慌てて口を挟む。彼の顔は雲昇をいささかばかりか諌めてる様にも思えた。



「待て待て雲昇殿、気持ちは判る。じゃが、儂等が迂闊に口を挟んでどうするんじゃ? 下手な真似をすれば、儂等の方が桃香殿達に怪しまれてしまうわい 」



 人生経験が長い永盛の言葉に同調するかの様に、壮雄と固生の馬兄弟もしきりに頷いてみせる。



「確かにそうだ、永盛殿の言う通りだろう。俺とて腐れ宦官を八つ裂きにしてやりたいところだが、そうもいかぬ。桃香殿に迷惑を掛ける事だけはしたくないものだ 」


「私も兄上と同じです。然し……やるせないとは正にこの事だ! 事実を知っていても教える事が叶わぬとは……!! 」



 馬兄弟が歯噛みしている所で、今度は困った顔の道信が口を開き始めた。



「壮雄殿、固生殿。既に我々はこの時代に干渉しているんだ、今更ああこう論じても始まらぬよ。然し……ならば何故我等はこの時代に来たのだろうか? ただ手を拱いて(こまねいて)いるだけでは意味が無いし、正直この世界の自分が見す見す曹操等の幕下に行くのも黙って見たくはない 」



 苦虫を噛み潰して道信が顔を顰めてると、ほんのりと酒の匂いを発しながら喜楽は徳利を傾ける。



「そうだなぁ……道信の言う通りさ。多分、俺達ゃ未練を残していたから、この似て非なる世界に呼び出されたんだと思う。そして、この世界の主公こと桃香ちゃんと出会えた訳だ。


 まだ会っちゃ居ないが、恐らくこの世界の俺、道信、そして照世とも出会うだろう。正直言って、俺はこの世界の自分自身が矢の雨を浴びて死ぬのを見たかないね? 」



 面白くなさそうに酒盃を煽る喜楽を他所に、今度は一刀が自分の意見を述べた。



「俺も兄者達や老師達と同意見です。この世界の皆さんの名を名乗るあの娘達が、むざむざ死ぬのを見たくないですよ。正直首を刎ねられる姿だって想像したくない。


 でも……恐らくですけど、俺達が来た時点でこの世界の歴史は既に変わり始めてるんじゃないかと? 多分俺達がいなければ、桃香達はここの皆さんと同じ末路を辿っていたでしょう。


 ですが、もう俺達はあの娘達の運命を変えてしまったんですよ? その影響か、この世界はどこか俺たちが知ってる世界とどこか流れが違う。


 本来会う筈の無い孫策や馬騰の一族がここに来たり、挙句の果てには黄忠親子まで保護してるし、付け加えて、黄巾討伐で会う筈の無い公孫瓉に趙雲とだって会っています。


 ……矢張り俺達の存在が歴史を変えてしまってるんです、今更ああこう言うのも何ですが、でも…… 」



 辛そうに顔を顰める一刀の横で、照世だけは何時ものように白羽扇を優雅に顔の前に翳す。そして、やんわりと皆に語りかけた。



「皆様方の苦しいご心境、この照世には痛い程判ります。私とて高名な盧植殿を見す見す失わせるのは如何かと思いますし、防げるものなら防ぎたいとは思いますが…… 」



 自身と周囲に言い聞かせる様に照世が語っていたその最中である。ふと、照世の双眸に強烈な知性の閃光が激しく輝いた。



「……ッ! 皆様方、私に良い案が御座います。無論、桃香殿達に表立って事実を教えずに済ませる方法で、二つ思い浮かびました。一つは事を荒立てぬ様にする策、もう一つは『力技』を用いた策で御座います。使うのであれば最初の策で行きたい所ですし、ご舎弟様の言う所の『りすく』なる物を減らす事が可能です 」



 彼のこの言葉に、一同は『おおっ! 』と声を上げると一斉に彼に詰め寄り始める。すると、照世はニヤリと笑いながら策を説明し始めると……皆は満足げに顔を綻ばせた。



「おい、照世。流石前世で『臥竜』と呼ばれただけあるじゃあねぇかよ。それなら『りすく』を減らせられるな 」



 一心が悪質な笑みで顔をにや付かせていると、義雷も嬉々とした笑みで顔を大きく歪ませる。彼の笑い顔には正に虎が笑った様な凄まじさがあった。



「さっすが、俺が見込んだ軍師殿だけあるぜ! 本当は力技の方をやってみてぇんだがよう~! まっ、俺ァこれでも知性派って奴だから、今回はそれで納得してやんぜ! 」



 義雷の言葉に『良く言うよ』と内心で思いつつ、顔を引きつらせた一刀が照世に話しかける。



「しっ、然し……上手く行けば良いんですけどね? でも、本当に恐ろしい罠を仕掛けますよね、照世老師って? 正直敵に回したくないですよ…… 」



 皆の反応に涼やかな笑みを浮かべつつ、ゆったりと照世が一刀に語りかけた。



「ふふっ、この様なご時世です。何も権力におもねる連中のみに甘い汁を吸わせるのも何でしょう。少し位苦い汁を吸わせても問題は無いと言う物です。


 それに、ご舎弟様の世界では私の策の事を『いんたぁねっと』なる物でこう仰られるではありませぬか―― 」



 照世は笑みを不敵な物に切り替え、こう言って見せたのである。



「――『孔明の罠』と、ならば本家らしく悪質な罠を仕掛けてご覧に入れて見せましょう…… 」 

 


 この時の彼の顔は、前世での『漢丞相 武郷候諸葛孔明』その物であった。




※1:旧王都長安を含んだ郡及びそこを管轄する長官の役職名の事。


※2:尚書令の属官の一つ。尚書左丞は座を設けたり、民衆や下級官僚の声を皇帝に届ける連絡係の役割なのに対し、尚書右丞は印鑑や筆記用具等の在庫管理を担当した。


※3:『主簿』の同音で『煮布』となる。主簿とは簡単に言えば文書管理係の事。


※4:第七話『蓮華』の追加エピソード参照。


※5:九卿の一つである太常(宮中の祭祀・儀礼等を担当)の属官の一つ。学問を司り、太学(大学)の総長を担った。


※6:断崖、石碑等に刻まれた仏教・道教・儒教等の経典を指す。特に儒教の石経は国家として最重要プロジェクトの一つであり、権威的な五経の定本および漢字の標準字体を示す役割を果たした。


※7:三公と大将軍の役所の事を指す。


※8:当時の宦官の役職名の一つで、九卿の一つ少府の属官。

 元々宮廷の門(禁門)が黄色に塗られていた事から、そこに侍る者という意味で『黄門』と呼ばれる。小黄門とは主に皇帝の連絡係を担当していた。また、徳川光圀の官位『中納言』の唐名(からな)(日本の官位を中国の役職名に当て嵌めた物)が、『黄門侍郎』或いは『黄門』であった為に、水戸黄門と呼ばれる所以になった。

 ここまで読んでくださり真に感謝いたします。


 さて、今回は冒頭に前回登場させてからホッタラカシにしておりました司馬仲達こと仙蓼が再登場。私は彼女に関しては『クセモノ』のポジションにしております。


 知ってる方なら司馬仲達がどの様な事をしたかはご存知でしょう、今回の冒頭にはそれを匂わせる物を入れてみましたし、彼に関するエピソードを知ってる方ならニヤリとする物も入れました。


 彼女は及川の前では竹中半兵衛、曹操の前では黒田官兵衛っぽい感じのキャラにしております。忠臣と野心家の二面性を持たせる事に決めました。


 司馬仲達こと仙蓼と曹操の『三度脅す』話は、偶然読んだ『しばちゅうさん』という漫画に出てきた話を、ウィキ先生にお尋ねして調べた話と絡めて自分風にアレンジしてみました。


 桂花とのやり取りに関しては、剥きになり易い彼女の神経を逆なでするかの様にしてみましたね。ここら辺に荀彧と司馬懿の性能差を如実に表現したかったのもありました。


 仙蓼の首百八十度回頭ネタですが、司馬懿の俗話の一つですね。今作でのモデルは、某ファルコム作品に出てくる双子の女神の姉の方なんで、そんな美少女にそれをやらせるのも気が引けたんですが、ギャップをつけようと思ったんでやらせました。余談ですが、イメージCVは植田佳奈さんか遠藤綾さんにしてます。


 次に、名前のみの登場ですが、華琳の家臣に曹仁、曹洪、曹休、曹真の四人を追加、本当は曹休と曹真はずっと後の時間軸に出てくるのですが、この際やっちゃえーと思いましたので、入れちゃいました。


 鄒靖さんの菖蒲ですが、こちらは『あなたを信じます』の花言葉を持つキショウブをもとにしています。ピンインだと『チャンプゥ』なんで、使うかどうか迷ったのですが、結局無難に音読みの『しょうぶ』さんにしました。菖蒲さんのイメージCVは立野香菜子さんにしています。(ときメモ4のエリサ役です)


 そして、恩師盧植に会う為最初は嬉々としていた桃香だったのですが、道中出くわした放置された屍の山……。これも戦争をすれば必ず出てくる話です。本来だったらキチンとお弔いをせねばならんのですが、桃香は辛い現実に耐えつつ、目的地に早く到着する方を選ばせました。


 恩師盧植との感動の対面シーン。演義だったら劉備一人だけなんですけどね、敢えて白蓮も一緒という事で。(笑 CVイメージは島本須美さんですねぇ~!(私の好きな声優の一人なんですよ)


 最後、これから起こる現実に干渉していいのかどうか悩む漢ども。もう、本来だったらここまで干渉してるのだからやっちまえよと思いつつも、彼等なりに悩んだり葛藤したりします。


 何を今更と思われつつも、結局桃香達にばれぬよう何かしらの手を打つことを決めました。そして、前世の孔明こと照世が策を思いつく。この照世の策はですね、夕べお布団の中で二時間ほど悩んだ末に考えた物です。


 大層立派な物じゃないんですけどね、只あれこれ悩んでて筆が進まないのも嫌なので使う事に決めました。余り期待せんでくださいね?(汗


 また次回も更新されましたら、お会い致したく思います! 第二十話でお会い致しましょう!


 それでは、また~! 不識庵・裏でした~!!

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