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いま、宇宙にある日常  作者: 水無月 林檎
ep1。いま、宇宙(ここ)にある日常
5/22

03

    4

 診察室から出てきたミィは、腕をギプスで固定されていた。

「ほら見なさい。舐めて治るようなものじゃなかったじゃない」

「骨にヒビ入ってるって言われたー。金属バットをも凌駕するミィ様の腕にヒビだなんて、ショックだーー!ありえない!!」

 会計の前で、ブーブーとブーたれるミィ。周囲の視線が一斉に注がれる。

「病院で騒ぐんじゃありませんっ。そんなに言うなら本当に金属バットより硬いか見せてもらおうじゃない。次の日曜に河原の少年野球に殴り込みね、ミィだけ手打ち野球で」

美月の静かなツッコミにミィが慌てて姿勢を正す。

「サーセン!大げさ言いましたっ」

「解かればよろしい」

 言いつつ会計に向かう。支払いは美月が立て替えることになった。最初からそんな気はしていたが、保険証もクレジットカードも大事なものは全て失くした巾着に入っていたそうだ。保険に関しては何パターンかある生体認証で本人確認ができるが、クレジットカードの方はそうもいかない。

「あとでちゃんとお金返しなさいよ」と、ミィにきつく念を押してから、痛み止めの錠剤を受け取って総合病院を後にする。

「バカは風邪引かないんじゃなく、風邪に気付かないだけだ、なんて言うけれど、ミィレベルになると、怪我した事さえも気付かないのね」

「よせやい、照れるぜ」

「褒めちゃいないわよ」

 ミィのギプスをため息混じりに眺める美月だった。

「ねぇ、美月。帰りに牛乳買って。カルシウムが足りてない」

「買いません。帰るんじゃなくて、落としたもの探しに行くんでしょう?」

 呆れ顔でたしなめる。

「ミィ。人に飼われるのは久しぶりだけど、美月には優しさが足りない!」

「いつどこで誰が飼うって言ったのよ」

 まったくもって身に覚えの無いミィの不平不満に驚いて反論する。

「なんて冷たい反応、この冷血漢!あーぁ、ばーちゃんはあんなに優しかったのに。しくしく」

「ちなみに、そのばーちゃんってのはミィのおばあさん?」

「しくしく。んー、元飼い主。しくしくしくしく」

 手で顔を覆うでもなくただそっぽを向いて、明らかな棒読みで「しくしくしくしく」言い続けるミィ。

「あー、そう……」

「しくしくしくしく」

「人の話を聞きなさいっ。だいたい何よ、そのやっつけなウソ泣きは……」

「可愛い女の子の涙になんて仕打ち!」

「今のどこに可愛げがあったのよ⁈憎たらしい雑な嘘泣きには当然の仕打ちです!」

 冷たくつっぱねる美月に、今度は大げさに天を仰いでみせる。

「あぁっ、ばーちゃん。ミィは今、無責任な飼い主に捨てられようとしているヨ」

「何を人聞きの悪いことを!だから探すの手伝ってるんじゃない。見つかったらさっさと帰んなさいよ、もぉ!」

「美月もカルシウム足りてない?」

「や・か・ま・し・いっ」

 ゴツンとミィの頭にゲンコツを落とす。

「いたいー」

「……ねぇ、そのお婆さんってどんな人だったの?」

 なんとなく気になったというか興味半分。不毛な会話をこれ以上続けたくないという話題逸らし半分で聞いてみる。落し物捜索の常套手段である「地道に昨日通った道を辿る作戦」遂行の間、丁度良い時間つぶしにもなるだろう。

「それはだね」

 そう勿体つけてから、ミィが語り始めた。

「昔々、ミィがまだ子供だった頃のお話さー。当時は一か所に住んでると何かと怪しまれて面倒だから、各地を転々と移り住む風来の旅人だったのだよ」

 遠い目で気取ってみせるが、様にはなっていない。

「どうせ、ドジでボロだして追い出されただけでしょうに」

「違うよっ。あれ、違うとも言えないか。でも、そうじゃなくて、ミィたちは寿命が長いからずっといると怪しまれるんだよ」

「へぇ、そういえばミィって歳いくつなの?」

「ん?いくつに見える?」

 ニヤニヤしながら質問で返してきた。

「えーと、そうね。16くらいかな」

 いわゆるテッパンネタ、お決まりのやり取りなのだろうか。分かりやすくそんな雰囲気を漂わせているミィに嫌な予感を感じつつ、無難に返しておく。言動を考えるともっと低くても良いと思うけど。と、心の中でそっと付け加えておくのも忘れない。

「ざんねーん。正解は116歳でしたー。まぁ、16を当てるあたりは見どころあるねー。ふひひ」

「ひゃくぅっ?!」

 思わず驚きの声をあげてしまった美月の反応に、満足げな顔で悪戯っぽく笑う。

「ふっふっふー。乙女の外見を表す16に、人生の奥深さを示す100を加えるというナイスアイデア。こりゃもぉ特許モンだね」

「・・・奥深さなんて微塵も無いじゃん。怪しさなら溢れてるから1万16歳にしなさいよ」

「そんな畏れ多い。悪魔の閣下に怒られるよ」

「なによ、それ?」

「いやいや、それは置いといて。ホントに116歳なんだよ。約だけど。」

「ぼそりとまた何かおかしなこと言った!約って何よ」

「そーは言ってもさー、こちとら生まれも育ちもネコだしー」

 そっぽを向いて口を尖らせる。なんとも要領を得ないが、深く追及するのにも疲れてしまった美月は湧いて出るツッコミを全て飲み込んだ。胃もたれしそうな量だったが、それはもう無理矢理に。

 強引に納得してはみたものの、百歳以上生きているのであれば確かにミィの説明も一理ある。

どれだけ慎重に立ち振る舞ったとしても、必ずボロは出るものだ。ましてや、美月の目の前にいるのは出会って半日足らずで正体がばれてしまうほどに注意力散漫の大雑把娘である。

点で接していれば多少の不自然もごまかせるだろうが、長く関わってしまえばそうもいかない。たちまち大騒ぎになってしまうだろう。

昭和以前ならば、個人個人のちょっとした不思議体験なんてオカルトや都市伝説で片付けられたかもしれないけど、これだけネットの発達した現在ではあっという間に動画に撮られて世界中に広まりかねない。慎重であるに越したことはないだろう。

だが、そんなミィも一度だけ、一つの場所に住みついたことがあったそうだ。

「長野の田舎町でひとり暮らししてたばーちゃんでさ、ミィにミィって名前をつけてくれたんだよ。なんか、変に気に入られちゃってぁ。ってか、野良猫見たら放っておけないタイプっての?ちょっとした猫屋敷だったんだけどーー」

 そう前置いて語り始めたミィの話は、意外にも良い話だった。

 そのお婆さんは猫の好きな人で、近所の野良猫が入れ代わり立ち代わり、多い時で十匹近くが出入りするような家だったらしい。ミィもそんな野良猫の中の一匹で、お腹が空いてはご飯をねだり、眠くなっては膝の上で丸くなりとしているうちに、とうとう住み着くようになったそうだ。

 それはそれは愛情たっぷりに可愛がられて、ミィもそれに応えるように近所の猫が悪さをしないように人知れず取りまとめ役を買って出たり、時折人間の姿になっておばあさんの手助けをしていたそうだ。

「…と、言うわけよ。近所の子のフリしてさ、話し相手になったり買い物の荷物持ったり」

「へー、いい話じゃない」

「おやつ貰ったりお駄賃貰ったり。ご飯ごちそーになったりーー」

折角のいい話がまた変な方向に向かい始めたので、そうはさせまいと話題を変える。

「で、ミィはどれくらいそのお婆さんと暮らしてたの?」

「んー。27年。いや、28年だったかな」

「ちょっと待て。怪しまれるから一箇所に長く居れないとか言ってなかったか?猫の寿命とかガン無視じゃないのよ。怪しまれなかったの?」

「そりゃーアレだよ。そんなの解からないくらいボケてたんじゃね?」

「うっわ、いい話台無しだ!」

 折角の感動話に水を差されて、美月のやる気は虫の息だ。

「はっ!美月!解ったよ!!」

「何がよ?今更自分のおバカさが解ったっていうなら、もはや手遅れの末期症状よ」

「そんなちっぽけなことじゃないんだよっ」

 なにがちっぽけなものか、そのおバカさは大物だよ。心の中でそっとつぶやいてミィの方を見ると、ミィは路肩の排水溝が気になって仕方が無い様子だった。

「もしかして、ここに落としたかにゃぁ」

「はぁ?」

側溝の蓋と蓋の合間にある隙間をしゃがみこんで凝視しているミィ。

「ちょっと、美月。フタ開けておくれよ」

「何言ってるのよ、嫌よ!」

「えー、でもさぁ。ある気がするんだよ。ここに」

 失くしものをした時に感じる疑心暗鬼。これだけ探しても見つからないんだから、きっと厄介な場所に落ちたに違いない。そう考えてドツボに嵌ってしまうのだが、大抵の場合は案外単純な場所から出てくるものだ。無理にでも押し込まないと入らないような側溝の隙間にホールインワンする確率なんてゼロに等しい。

「絶対ヤダ。あんたがやんなさいよ。こんな所には絶対にないもの!」

「んー、ダイジョブだよ。根拠はほら、野生のカン?」

それはダイジョバナイやつだ。美月は思わず頭をかかえてしまう。

「あんた飼い猫でしょう。」

「それは昔の話。長野の過去は捨てたのさ、今のミィは一匹狼!!」

「狼じゃなくて猫だし、今は会社に所属しているし…」

どこまでツッコミを入れたものかと思案してしまう。

「美月は真面目だねぇ。嫌いじゃないよ、その丁寧なツッコミの心!でもさ、ミィ、怪我してるもんー。自分じゃできないもんー」

「何よ、こんな時だけ!」

 精一杯の抵抗を試みた美月だったが。

 なんだかんだで結局。落ちてた木の枝を梃子の原理で使ってフタを開けようと悪戦苦闘していたら、お巡りさんが登場した訳で。

「おーい、君たち」

 そんな声がかけられる。お巡りさんは笑顔を張り付かせてはいるが、その内心はちょっとわからない。

 巡回中だったのだろうか、若いお巡りさんがゆっくりと二人に近づいてくる。

 怪しい行動をしているという自覚はあった。ミィはどうだかわからないが、美月には確かにあった。自分が警官だったら確実に職質すっとばして即逮捕する自信があるほどには怪しいと確信している。

「いや、あの。落し物をしまして」

 とっさに答えた美月だったが、自分でも無しだったな、と思う。

「ここに落としたのかね」

 お巡りさんは笑顔のまま美月に問い正すが、美月がしどろもどろする前にミィが勢いよく割って入ってきた。

 たぶん、美月を庇おうとか、その場を誤魔化そうとか、そういった類のものではなく、単純に何者からの挑戦も受ける。的な意味無くワイルドな感じで。

「たぶんね!いや、きっとここ。そう、この穴から落ちたんだヨ。ミィの野生の勘がそう言ってる!」

 飼い猫だし、それも28年モノの長期熟成家猫だし。心の中でツッコミをいれる美月と、状況の把握が出来ずに頭に目いっぱいのハテナを浮かべているお巡りさん。

「野生を信じるんだ!自分の奥底にも野生が眠っているだろう?」

 ミィが、もはや何も 解らないことを言い出した。

しかし、お巡りさんは弱々しくもコクリと頷いた。

「そうだ、その野生に免じてフタをあけてよ!枝じゃ折れそうだから警棒でも使ってさ」

「え?なんで?!」

「ミィたち困ってるんだよー。困ってる人を助けるのもケーサツの仕事じゃん」

 違うぞ、今あたしとお巡りさんはミィに困らされているんだぞ。心の中で再びツッコミを入れつつ見守っていると。

「あ、うん。まぁいいけど」

ミィの勢いで有耶無耶にできたのか、そう言って側溝の蓋に手をかける。ミィはあんな事を言っていたが警棒は使わない。梃子の力は必要ないのか、それとも警棒はそんなことに使ってはいけないのか。ともかくゆっくりと慎重に蓋を開く。

 側溝の中は意外にも奇麗だった。町内会などでの掃除が行き届いているのだろう。年末が近いので大掃除があったのかもしれない。

 だが、そこには昨日の雨の痕跡が少し残っているだけで何もなかった。

「えーと、探し物は見つかったかな?」

「ふーむ、無いにゃー」

 長期熟成で甘やかされた飼い猫に、野生の勘はやはり不発だったようだ。

「それで、探しているのはどんな物なのかな?」

「んー。これくらいの球ー」

 先ほど美月に見せたように、手でピンポン玉サイズの球を作って見せる。

「それはこの隙間からは落ちないねぇ」

 側溝の蓋を元に戻しながら冷静にお巡りさんが否定する。

 ですよねー。心の中で同意しつつ美月もうんうんと頷いた。

「とりあえず、交番行こうか?」

「えぇ!?」

 すっかり第三者の心持ちで油断していたところに突然の展開で涙目になる美月。勢いだけじゃやっぱりダメだった。

「いや、ほら。落し物なら届出あるかもしれないから」

 精一杯の笑顔を浮かべるも、お巡りさんの顔は引きつっていた。


ーーーーーー

     5


 近所の交番で落としものについて根掘り葉掘り聞かれる二人だったが、「虹色に鈍く光る、ピンポン玉よりちょっとだけ小さな球体」という事以外は落としたミィ本人にも解らない。

 泣いてこそいないものの童謡に出てくる迷子の子猫ちゃんばりに「わからなーい」を繰り返すミィの不毛なやり取りに、美月のほうが泣きたくなってくる。

「本当に君たちの物なのかな?」

 お巡りさんの当然の疑問。

「あたしは、ただの付き添いなので解りません」

 美月はそう答えるしかないのだが、いかんせんミィの説明は的を射ない。

 やっとの思いで、その遺失物が宇宙から届けられたもので、何だかは解らないが、会社に持ち帰る途中で無くした。と伝える。すると、お巡りさんは急に渋い顔をして

「宇宙関連は、手に負えないんだよね、対処のマニュアルもないし。なにせ得体の知れないものが多くてね、勝手な判断で対応出来ないんだ。宇宙人関連は第三ファクターの専門家がいるから、そこに当たってもらえるかな?」

 と、たらい回し宣言をされてしまった。

「宇宙人の専門家ですか?」

 興味津々で美月。だって、そこに頼んだらミィの世話から開放されるじゃないか。厄介ごとを押し付ける算段がついて息を吹き返す。

「うん、日本天球儀警備保障(Japan Armillary Sphere Security Service)といってね。通称はJA3Sジャスリーズって呼ばれているんだけど…」

 お巡りさんは急に前に出てきた美月に気圧されながらも教えてくれたのだが、今度はミィがぐぐっと間合いを詰める。

「ミィはそこから来たんじゃーーーっ」

 がしゃーん!、と。唐突に机の上の調書やらをぶっくら返してお巡りさんにメンチを切る。

「見つけないと、そこJA3Sに帰れないんだよー!

くそ、オマワリなんて所詮こんなもんだ。美月、帰るよ!」

「え、ちょっと、ミィ!?えと、あの。ゴメンナサイ、失礼します!」

 呆気にとられているおまわりさんを他所に、美月も今がチャンスと交番を後にするのだった。



 プンスカと不機嫌を隠そうともせずに交番を出て行ってしまったミィを慌てて追いかける美月。

「ちょっと、何で急にキレてんのよ、驚いたじゃない」

 ミィに追いついて不満を漏らす。

「だってさ、JA3Sに連絡されたら失くしたのバレてミィが怒られるじゃないか。人の失敗をツゲグチしようだなんて小学生か!まったくとんでもないオマワリだ」

「なによ、それ……」

「あれ?言ってなかったっけ?何を隠そうミィがそのJA3Sのエージェントなのだよ!」

誇らしげに胸を張って見せるが、このおとぼけ猫娘がエージェントを名乗れるようではその会社もたかが知れている。同じくツゲグチで現状打破を狙っていた美月は絶望的な気持ちで空を仰いだ。そもそもツゲグチではなく報告なのだが。

「で、そのえーじぇんとさんが何で雨の中迷子になってたのよ?」

「そんなの決まってるじゃん。エージェントが怪我するなんて、機密を狙う悪の組織に追われた時ってのは常識なんだぜ?」

「なんだ、怪我はどうせコケて屋根から滑り落ちたとかだと思ったわ」

「猫が屋根から滑り落ちるなんてそんなヘマするわけないじゃん!屈辱だーっ!!って、あれ?……でもあれだ、うん」

少し考え込んでから、こんなことを言い出した。

「猫の姿のミィはそうでも、人の姿のミィはどうかな?」

あごに手を置いてカッコつけたつもりらしいが、無理にもほどがある。

「落ちたのね?」

「う、うん。でもでも、襲われて追われてたのはホントだよっ!ミィたちが乗ってた自動車がフロント・スープレックスでバーンでドカーンで爆発炎上」

慌てて自分をフォローするが、ちょっと待って。美月は顔が真っ青になる。

「追われてるなんて聞いてないんだけど、危ないことに巻き込まないでよ!」

「えー、ダイジョブだよ、猫のミィしか見られてないしー」

ミィにはまったく緊張感がないのだが、じっと美月ににらまれてしまったので少し考える。

「それにそれに、もし追手が出てくるとしても、出てくる前にわかるんだよ」

 昨日もそうだった。車をひっくり返される前に出てくるのはわかったのだ。ただ、わかったからってどうにもならない事もあるのだが、それは黙っておく。

「美月さ、ラジオ持ってる?」

「あるわよ、ほら」

そう言ってスマホを差し出す。ちょっとした暇をつぶすにはラジオが最適だ。ラジオアプリはお気に入りのものがホーム画面に登録されている。

「そうじゃなくてさ、もっと古臭いダイヤルをグリグリとまわすようなさ?」

「??。なによ、それ」

「あー。美月の歳じゃわからないかにゃー」

アナログ放送の事を言っているのだが、今ではインターネット回線を使って聞くのが主流になっている。

「パパの車にはラジオ付いていたけど、それ以外でラジオ聞けるのはスマホだけよ?」

「まー、今どきの若いのはそんなもんか。昔は携帯用の小さいラジオがあってだね。今でも競馬を至上の趣味にしているようなオジサンなら持ってるんじゃないかな。ちょっと馬券売り場まで収穫に行く?」

「行きません、また交番行くハメになるでしょ。それよりも何でラジオなのよ?」

「それはだね」

 そう言ってチッチッチッと人差し指を立てて見せて説明を始める。

「ラジオってのは電磁波なんかの影響ですぐに雑音だらけになっちゃうんだって。宇宙人関連の物ってさ、けっこー電磁波漏れてるらしいんだ。美月はテレビで見たことない?UFOに出会ったときの再現ドラマで、車に乗っていたらカーラジオが雑音だらけになって腕時計が止まって、ピカーって周囲が光ったら目の前にUFOが!!……みたいなやつ」

「うん。たしかに見たような気がする」

 UFO登場シーンの後は記憶があやふやで諸説あったような?つまり、似たような話がいくつもあって、宇宙人を扱ったオカルト特番では割りとメジャーな物語の導入シーンだったのだろう。

「あんな番組ウソッこだと思ってたけど、ココだけはホントっぽいんだよね。だから、ラジオがあれば追手が現れる前にわかっちゃうから安心!」

「なるほどね。まあ、そのラジオが無いわけだけど」

「えっと、んー。あ、あるよラジオ!ミィのロッカーにまだ入ってるはず!!」

「ホントに?」

 慌てた様子のミィに疑いの目を向ける。

「ホントだって、昨日着替えを取るときに見たもん。すぐ近くだよ、ほら都営線の駅のロッカー。ここから徒歩3分くらい?」

「3分じゃ着かないわよ」

「そう?美月詳しいの?」

「あたしの最寄り駅だもの」

「ウッソ!?遠っ!結構歩いたよ?」

 美月の家からここまでの道のり、ランチを食べたし病院へも寄った。最短距離で来ていない事を考慮しても結構な距離を歩いている。

「家まで最短で徒歩40分よ」

「なにそれ、辺境?世界の果てに住んでるの?ここ東京だよ?」

「悪かったわね。でも利用駅だからわかるの、ここから駅まで3分じゃ無理よ」

「塀を越えて屋根を伝って徒歩3分」

それは徒歩って言うのかな?

「道を歩こうね、またお巡りさん来ちゃうから」

「ちぇー、じゃあ徒歩10分」

「そんな事やってるから怪我するんでしょ」

「しーらんぷいっ。と、もう一つ思い出した事が、あるんだけどさ」

「ん?なによ?」

「ミィの探しものってさ、思いっきり違法電波を垂れ流してるかも」

「なによ、それ。そんなモノ持ち込まないでよ」

 さきほどの交番でのやり取りを思い出して頭を抱える。もう職質は懲り懲りだ。


 法令厳守、絶対


ーーーーーー


 


お巡りさん登場。次回、宇宙人登場!

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まさかの子猫ちゃんが宇宙人⁈ ワクワク♬
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