ep1 その2-2「地球視察という名の新婚旅行」09
アクションパートは前回で終わってました。
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浅草駅から一駅、蔵前駅で下車して、美月は辺りを見回す。
しかし、目的のものを見つけるのに苦労はしなかった。
「やっぱり戻りましょうよ」
「そうですわ、心配です!」
「何度言われたって面倒だからやーだ」
食い下がる二人に、しかし無情にも心底面倒くさそうにミィが却下する。
「何でそんなに非情なんですの?」
「電車止まってるんだから無理だってーの」
「さっきまでは動いていたじゃないですか」
「歩いてでも行くべきですわ」
「もう片付いてこっち来るんだから、わざわざ面倒なことはやめようよ」
諭すようにため息交じりで説得を試みるが、それは失敗に終わったようだ。
「でもでもー」
声のトーンが少し上がる。感情が爆発しかかっているのだ。
要は、美月の目的のものたちは、大声でギャーギャーと騒がしくしていたので探すまでもなかったのである。
「あんたたち、ホント元気ねぇ」
背後からこっそりと近寄って声をかける。
「「美月さん!!」」
アランとメリルが驚きと喜びの声をあげる。
「おー、美月じゃん。やっと来たか⋯って、何でデロデロのグチョグチョなん?」
ミィは園児の引率が終わった保母さんの様な表情から一転してジト目になった。
「デロデロのグチョグチョって酷くない?そこまで酷くはないと思うんだけど」
「そう自分を過小評価するものじゃないぞよ」
「なによ、その悟ったような表情は。いいのよ、新しいコート買ってもいいって言質は取ってあるわ」
「え、ズルい。ミィもミィも!」
「ズルいって、あたしはお仕事の都合上汚れちゃったから仕方なくなんだから」
「そんなこと言って、これを気に良いのを買うつもりだな。ミィにもご褒美があって然るべき!」
「もう、これは補償なの!それに、ミィってお洋服にそんなにこだわりあったっけ?」
「ないよ」
ケロッとした顔で即否定された。
「だから、ミィは美味しいものを要求する!」
ずずいっと前に出て宣言する。そして、おいしいものと聞いては、バカップルが黙ってはいなかった。
「美味しいもの、僕も食べたいです」
「そんなズルいですわ、わたくしも要求致しますわ!」
口々に騒ぎ出す。
「あー、もぉーっ。わかった、わかったから。この格好じゃあ飲食店に入るのは憚られるから、コート買った後で良い?」
「「「わーい」」」
3人の声が見事にはもった。
とりあえずは外に出て、服屋に寄ってから美味しいものを食べられる店を探そうという事で話がまとまった。
美月はホクホク顔でブティックを後にする。
スマホで検索して入った最寄りのブティックで、お安めの価格で美月の好みドストライクな白いコートが買えたのだ。これはもう運命としか思えない巡り合わせに、知らずスキップなどしてしまう程の舞い上がり様である。天にものぼる心地とはこういう事を言うのだろう。
それともう一つ、こっそりとニーハイストッキングを脱いで新たにレギンスを購入したのだ。これで万が一の際にもお尻の公開は免れる。これで不意の突風も、突然の無重力だって怖くない。そして、もう北風にお尻を撫でられて震えることもないのだ。晴れ晴れとした顔の美月の陰で、メリルの瞳からハイライトが消えていた。
「美月、さん?」
どんよりとした暗い表情でメリルが問う。
「どうしたのメリル、なんだか元気が無いみたいだけど?」
「どうしたの、じゃありませんわ!あ、あし、脚。絶対領域は何処に行ってしまいましたの?!」
取り乱したようにメリルが問い詰めてくる。
「え?」「お御足から肌色が消えてしまいましたわ!」
「あーうん。レギンスに履き替えたからねぇ⋯」
「もしかして。ああ、なんてことですの!」
不意に後から美月のスカートをペロリと捲る。そこに白い双丘はなく、真っ黒いレギンスに覆われていた。
「きゃっ、なにするのよ」
慌ててスカート押さえるが、メリルにはもうどうでも良いことだった。膝から崩れ落ちて目元の涙を拭う。
「国宝のお尻がお隠れになってしまいましたわ」
「何を言ってるのよ、この子は⋯」
困惑する美月の肩をミィがポンと叩いた。
「愛されてるね、美月」
「⋯あんたも何言ってるのよ」
悲しみに暮れるメリルをどうしたものかとアランの方に視線を送ると、ふいっとそっぽを向かれてしまった。
なんとかしてくれないかな?新婚なんでしょ?
「えっと、ほら。美味しいもの食べに行くんでしょ?元気だして」
ダメ元でそう声をかけてみたのだが、メリルの中で食欲が勝ったようで
「そうですわね、早く行きましょうか」
「「ねー」」
と、次の瞬間にはあっさりいつも通りに戻っていたのだ。
「何を食べましょうか」
アランの提起に
「肉、やっぱり肉だよ!」
「甘味も食べたいですわ」
ミィとメリルの意見は真っ向から割れた。
「ぐぬぅ」
して言えばおやつ時で、そんなにガッツリと食べるような時間ではないのだが、ミィは引いてくれそうにない。
「歩きながら決めましょ。通りかかったお店が気になったら入る。ってのはどうかしら?」
「面白そうです、僕は構いませんよ」
美月が出した苦し紛れの折衷案にアランが乗っかった事で、
「ちぇー、しゃあなし」
「承知ですわ」
ミィとメリルの2人も了承してくれたのだった。
評価と感想ヨロシクー。




