5 慣れてはいけないもの
「よっと……」
「ぐはっ!」
洞窟の前にいた見張りの男を素早く刀で切り伏せる。
「あ、これ良いかも」
見張りが持っていた刀は綻びも無いほぼ新品なものだった。これを朔夜に渡そう。
「おいっ、」
「あ、朔夜。これ貴方の武器ね。」
そう刀を手渡すと、朔夜は段々と青ざめた顔をする。
「……重い。」
「最初は重いけど、慣れたら大丈夫。取り敢えず私がこのあたりの奴ら一掃するから見て覚えて」
「見て覚えてって……」
「実戦嫌なんでしょ?なら見て覚えるしかないじゃない。」
「極端すぎんだろ!?」
「まあ、見てなさい。」
見張りが倒されたのを察した見張りの仲間たちが飛び込んでくる。
「全て切り捨てる……!」
流れるように、相手の動きを切り裂いた。血が跳ね散る。やがて大将と思しき男が、歪んだ表情で前に出てきた。遅すぎるにも程がある。
「テメェら一体どういうつもりだ……!?」
「別に。ただ、ある子が大事にしていたものがなくなったらしくてね。それを取りに来たの……それと、」
私は洞窟奥に積まれた衣服を捉えた。朔夜の視線もそこへ吸い寄せられ、顔の血の気が引ける。最悪の想像をしたのだろう。
「……貴方達、攫った人たちはどうしたの?」
「あ?」
大将はニヤリと下品な笑みを浮かべた。
「そりゃあ決まってんだろ、散々味見してからまとめて売り飛ばしてやったわ!」
味見…………ああ、そういうことか。
朔夜の方を見ると、彼は絶句して何も言えない様子で立ち尽くしている。
「……そう、気分が最悪になった。死んで。」
「は?なに――」
私は淡々と、大将の首を地に落とした。油断している相手はこういう時に一番切りやすい。残った仲間たちは動揺して後退する。
その瞬間、朔夜の近くにいた落武者が朔夜めがけて刀を振り下ろした。
「がぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!」
絶叫が洞窟内をこだまする。
「っ、」
朔夜は咄嗟に持っていた真剣を相手の左腕に突き刺した。
血が、朔夜の頬を濡らす。
私はその隙を突き、朔夜を襲った男の喉元を斬り裂いた。
「ひっ、」
「お、鬼だ……!!」
その様子を見た落武者たちは悲鳴を上げ、慌てて逃げ去った。
「……大丈夫?朔夜」
私の判断ミスだ。もっと距離をとるべきだった。彼を戦わせるには、まだ実戦は早い。
見て覚えさせようとしたのは失敗か。
「……たまるか、」
「?」
朔夜は震える声で、しかし確かな意志を込めて言った。
「……こんなこと、……慣れて、たまるか。」
彼は、そう呟いた。




