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2 降臨人と勇者

「本来、この世界はある法則がある。」

「法則……?」

「"人間は神秘には敵わない"……この法則を打ち砕く事が出来るのが、勇者と呼ばれてる"降臨人"なの。」

「……待ってくれ。じゃあ、その勇者を単体で召喚はできなかった?なんで建物ごと召喚されたんだ?」

 

ずっと、疑問に思っていた事をぶつけると、暫く黙っていた瑠璃だったが、「……まだ、早すぎた。」と口を開いた。


「本来、異世界から召喚するには今の時代では早すぎた。……恐らく、アサガネが使用したのは、かつて、異国の地にて現れた"原初の降臨人"の技術を模倣したもの。」

「降臨人……?」


さっきから聞く降臨人とは、一体どんな存在なのだろうか。


 

「そう、神々が恐れた存在。簡単に言えば、神の世界に現れた未知の来訪者たち。」


俺は昔から勉強が得意ではない。新しい単語が次々に出てきて頭がこんがらがるが、要するに“宇宙人"のようなものなのか?

瑠璃は少し考え込んでから、枝を拾って地面にしゃがんだ。

 


「遥か昔、まだ神が当たり前だった時代に――ある六人がこの世界に降り立った」

 

瑠璃は地面に六人の棒人間を描き始める。

 

「神々は未知の来訪者を恐れ、『降臨人』――別名、"アウトサイダー"と呼んだ。彼らの技術は凄まじく、その結果、神々との戦争にまで発展したと聞いたわ」

「……アウトサイダー。」


 

“神が恐れる存在”という響きに、ぞくりとした。

 

アウトサイダー……【部外者】って言う意味だったような気がする。

……神々はよほど、彼らを恐れたのだろう。

 

 

「その六人の中で、特に『神を倒す適性』を持った者がいた――それが勇者という存在。」

「つまり、勇者は降臨人の中でも突出した者、ってことか?」

「そうよ、貴方やその他の人は巻き込まれた"降臨人"ね。」

 

俺は自身が降臨人という事に何故か冷や汗が出てくる。

瑠璃は少し息を吐いてから荷物の中の竹製の水筒を取り出し、一口飲んだ。

「これ、昨日の夜に作ったの。衛生面は大丈夫なはず」と竹で作られた水筒をもう一つを俺に差し出す。彼女に出来ないことなんてなさそうに見えた。

「で、その技術をアサガネは使用した。

だが、結果は失敗ばかり。建物ごと召喚された……分かった?」

「失敗、ばかり……?」


勇者を単体で呼べなかっただけではなく、もっとまずいことが起きたらしかった。


「儀式が不完全だったからアサガネに惨敗した落武者どもの巣窟付近に建物が召喚された。本来ならアサガネの城周辺が召喚場所のはずだったのでしょうね。」

「な、」

 

 

俺の頭が混乱する。昨日の惨状と結びつき、冷や汗が流れた。


つまりはなんだ。

俺たちは不完全な儀式に巻き込まれた挙句、昨日の殺人鬼……落武者たちに襲われたのか?


「……あの惨状を見る限り、真の勇者は既に死んでいる可能性が高い」

「じゃあ俺たちは……もう、無意味な存在なのか!?」

 

自分でも驚くほど声が出ていた。【無意味】――その言葉が胸の奥で何度も反響する。

 

だって、そうだろう? 勇者が死んでいるのなら、俺のような学生たちや先生たちはどうなる? 無意味に巻き込まれただけなのか?


「……無意味、か。」

 

瑠璃は何かを噛み殺すように呟き、俯いた。その沈黙が答えの代わりだった。


本当に彼らは無意味に死んでしまったのか――。

あれだけ校庭で一生懸命やっていたやつらは、俺みたいなどこか捻くれた奴より、もっと前向きに頑張っていた奴らは、ただ無意味に死んだのか?


「なんで、なんなんだよ……」


目の前に広がる紅葉の林。昨日の惨状が頭をよぎる。

怒り、絶望、そして納得できない現実。アサガネ……何の関係もない人間を巻き添えにするなんて、許せなかった。

 

山神殺し? 勝手にしてくれ。アサガネがどんな目に遭おうと構わない――でも、なんでよりにもよって関係のないやつらが巻き込まれなきゃならないんだ。

 

 

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