約束━misumi━
再びの逢瀬への返信は予想外に呆気ない形で深澄の元へと舞い込んだ。
――私も…
貴方の事を知りたい。
深澄。
キミに逢いたいと思う 良佳 ――
たったそれだけの言葉。
これまでのメールの内容を思えば拍子抜けするほどの短い文章に、彼女の心を測り知ることは難しい。こんな風に端的な文章からは何の温度も色も感じられなかった。
――今までが今までだったからな…。
率直で偽りの無い彼女のこれまでの言葉たちは、だからこそ深澄の心にも直接届いたのかも知れない。例え直接会っていなくても顔を見なくても、それだけで彼女の存在を感じられた。それが無いと言うだけで、こんなにも複雑な気持ちになるものだろうか。
――“寂しい”…のか?
感じたことの無い違和感に彼は思わず眉を顰める。
自分の感情の行きつく先を知ってしまったから、余計に心が騒ぐ。こんなことは初めてだった。どう表現すればこの心が“彼女”に伝わるのだろう…。
――良佳。
返信をありがとう。
そして、再会を約束してくれて
正直に、嬉しいと思った。
キミに会えるのを楽しみにしています。
深澄――
端的な文章への返信だから“端的”になったわけじゃない。
そんな風に意図的な何かを匂わすだけの余裕なんて、本当に見つからないから――何も思い浮かばなかったとしか言いようがなかった。言い訳のしようもない。
一つ溜息が零れる。
その溜息は誰に吐いたものか、考えるまでもなかった。
あの日よりも少し暖かくなった風が初夏の匂いを連れてくる。
あと半月もすればじめじめとした雨季を迎える事だろう――だから、その前に。
もう一度、キミに逢いに行くよ――。