キミへ━misumi━
一人屋上に佇む。
寝転んで見上げる空は大地に足をつけていた時よりも近くて、まるで手が届くんじゃないかと錯覚させる。手が届かないことなんてとうの昔に思い知ったと言うのに…。
少し冷たい空気を吸い込み、吸い込んだ分と同じだけゆっくりと吐き出す。そこに意味なんてない。ただあるのは“生きる”という本能的な行動だけ。
――生きる事に執着なんてなかった。
死にたいとも思わないが、代わりに生きていたいとも言わなかった。例えば今ここで自主的に呼吸することを止めてみても、自分と言う存在がココに居る事に変わりはない。息をしている事が重要なんじゃない。今ココに居ないと言うこと――それが叶わないのならば「死」なんて無意味だと思えた。
――肉体が消える訳じゃない。
自分と言う存在が無くならないのならば、生きていようといなかろうと大差はない様に思っていた。“深澄”という存在に“意味”を見出す日が来るなんて思わなかった。だから――。
――キミの“意味”になった瞬間に、キミが”生きる”ことへの意味になった。
不意に携帯電話を取り出すと、眩しそうにその画面を見つめる。返信は今ココにある。
彼女――良佳――の気持ちが、真っ直ぐなその言葉がいつも深澄を救う。この気持ちを言葉にする事に躊躇うけれど、彼はもうその気持ちの呼び名に気づいてしまった。自分が何を望んでいるのかも――。
――もう一度、良佳に…会いたいんだと思う。
この気持ちを言葉にする前に、何かが始まってしまう前に。もっと彼女の事を知らなければいけないと、そう思う自分がいる。その場の感情だけで動くことは出来ない。例えそれが未だその感情を認めたくない自分自身の微かな抵抗なのだとしても。解っているのに、心全てを砕いた訳ではないと否定せずにはいられなかった。自分が“深澄”である為に。
――だから。
もう一度、キミに会いに行く。
あの時とは違う自分で――キミの事を知りたいと願うから。
――良佳。
キミの事を知りたい。
キミが何を思い、何を考えたのか。
キミは漠然としていると言ったけれど、
きっとそこには沢山の感情が詰まっているはずだから…。
それを僕に教えて欲しい。
今、キミに会いたいと願うよ。
キミと会って話がしたい。
深澄――
不躾かも知れないと思う。
余りにも飾る事を知らない言葉たちは、言葉にするよりも易く深澄の気持ちを語っているようにも思う。それでも――。
――見る事の叶わない“未来”を、俺に見せて…。
もう願うことも忘れてしまったから。そんな未来があることなど想像もつかないから…。
流れる雲は足早に吹く風に乗せられ何処までも往く。熱い太陽に見送られけれども歩みを止めることは出来ない。
ただ高く飛びたいと願っても、きっとそれは叶わない。
また一つ溜息が零れた――。
キミの意味になった瞬間に、自分の”生”にも意味が生まれた――。
だから、どうしてもキミを知りたいと願う…。
☆こんにちわ^^
久しぶりの更新です。
相変わらずの深澄ですが、それでも彼は変わりつつあります。何が彼を変えたのか…それは言わずとも明白。
次回辺り、ようやく第二次接近へと入るかと思われます。
お待ちください☆




