疑問━yoshika━
彼からの返信は、またも良佳の心を軽くした――。
冷たい布団に寝転がり、彼女は天を仰ぐ。そこにあるのは薄暗く灰色に染まった見慣れた天井で、区切られた四角はきちんと並びソレを崩すものはいない。当たり前だ。天井は造られたもので、計算されたもので、そして心を持たないのだから…。
――無機質な冷たい壁。塊。きっといつかは壊れゆくもの…。
眠れずに少し温かくなりだした布団の中で身じろげば、眼に留まるのは携帯電話。大きな月のストラップを指で転がして、その白い外装を見つめる。冷たいボディに触れてそっと開けば、そこにあるのは空に浮かぶ月と同じ――満月の――待ち受け画面。一つ溜息を漏らして彼女は慣れた手つきで画面を変えていく…。
――好きな事を…か。
深澄の言いたいことは分かる。
それは難しい言葉ではなく、誰にでも理解できるように書かれていて容易い文章だ。それでも、実現することは困難にも思えた。だって…。
――私の“好きなこと”って、何…?
生きる意味とか、理由とか、したい事とか、そういう“なにか”があるのなら、きっと自分は初めから迷うことなんてなかったはずだ。そう思えてならない。それが見つからないから、分からないから、自分以外の誰かに答えを求めた。
これが例え“逃げ”なのだとしても、誰かに――教えて貰いたかった。
――人はどうして生きてるの?
深澄の言葉を繰り返し眼で追って、もうすでに暗記してしまったようにその続きを思い浮かべる。それでも、疑問は後から後からただ虚しくも浮かび上がるだけだった。
まるで年端もいかない子供が問いかけるように、良佳はそれを言葉にして彼にぶつける。同時にソレは彼への確認でもあった。こんな自分をいつまで受け入れてくれるのだろうか…絶えずそんな不安が彼女の中には渦巻いていた。
――深澄。
答えをありがとう。
貴方の言葉は私にも容易くて
とても真っ直ぐだ。
私はソレがとても嬉しくて、
嬉しいのに同時に違う思いが浮かんでしまう。
やりたいことって何?
好きなことって?
それは誰でも当たり前に持っているモノなの?
ソレを持たない私に
生きる価値はあるの――?
…私に生きる意味はありますか…?
良佳――
くだらないことかもしれない。
彼に取っては取るに足らない小さな疑問で、考える価値もないような言葉たちの羅列に過ぎないのかも知れない。それでも、誰かに聞いてみたかった。きっとそこに“明確”な答えなんて存在しなくて、一人一人思いや考え方は違うだろうけど、それでも深澄の答えが知りたかった。
彼に、必要だと言って貰いたかった…。
また一筋頬を伝う涙。
そのまま良佳は眠りに落ちていった――。
こんにちわ^^
明けて一発目の投稿が「月さえ~」の良佳になりました!
しかもちょっとネガティブさん…(-_-;)
ようやく深澄への返信がされたので、次回からまた少し進展があるかと思われます(゜-゜)?
次回更新日は未定です…。
☆★来る1月14日で、「月さえ眠る夜に」も一周年となります!
一年間での約3万アクセス&1万ユニーク数ありがとうございました><
本当に頼りない作者の励みとなっております;;
つきましては次回更新までに記念画(お礼を込めた)を描こうと思いますので、楽しみに??していて下さい^^♪
今後とも「月さえ眠る夜に」を宜しくお願いします☆