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変化━misumi━


 月を見ていた。

 いつかも考えたことだけど、誰かの二番煎じみたいな言葉だけど、月は“不条理”を模ったモノのように思う。それが本当かどうかなんて難しい事は分からないし、調べるつもりもないけれど、そう思うことで自分を肯定していたのかも知れない。


「不条理…か」


 潮の満ち引きのように、人間の感情の起伏にも“月”が影響しているのだと思うことにした。喜怒哀楽に憂鬱、それらすべてが自分の手の届かないような“大きな存在”によって動かされているのだとしたら、きっと、腹も立たないだろう…と。そんなこと、本当は分かっているのに…。

 

――ただの言い訳だ。そうだろ?


 人の感情は、関わりはまるで蜘蛛の糸のように細く絡まり合って、そうしていつか絡まり合ってしまった糸は解く事も出来ずにプツリッと切れるのを待つことしか出来ない。それはきっと辛く哀しいことで、傷付いたり傷つけ合ったりを繰り返し、それでも終わらせることは出来ないのだろう。どうして自分(ひと)他人(ひと)は分かり合えないのか。元は同じ人間(もの)だったはずなのに…。


――簡単だ…理解(わか)ろうとしてないんだろ。お前。


 一人でいる方が楽だった。

 一人でも生きられると思っていた。

 大勢(ひと)の中に入るのは億劫で、人を知る事も、自分を知られる事も面倒に思えた。孤独(・・)こそが“安らぎ”だと――。

 そうして歪んだこの心は“仮面”を被る事ばかり上手くなって、本音で生きることはしなくなる。他人にとって必要なのは“深澄(オレ)”ではなくて“仮面で出来た優等生(さきもと みすみ)”だったから。そのうち、自分自身も本当の“深澄(自分)”を必要としなくなり、この心は行き場を失くした。


「“深澄(おまえ)”なんか、必要(いら)ないんだよ…みんな」


 自嘲気味に呟いた言葉に月は優しく光を当てる。

 惨めなこの心に、それでも不条理は降り続くのか…。


――不条理は、俺の方か…。


 鳴らない携帯電話を開けば、そこにも同じ“月”があり空にかかる“満月(ソレ)”とは違う形をしていた。一つ溜息が零れる。冷えた身体にそっと手を当てれば自然肩を抱くような形になって、彼は苦笑いを浮かべた。

 

――貴方はそこにいますか…?――


 声のない言葉は見上げた月に静かに吸い込まれて行く。

 この心を必要としてくれる人に、深澄(じぶん)を必要としてくれる人に、会いたい(・・・・)と思わずにはいられない夜だった――。


月の夜、彼は一人空を見上げる。

目を逸らしてきたものを振り返り、彼が思う事は…。


☆今年もお世話になりました^^

次回更新は来年になります☆

深澄の回にしては文字数が少なかったので、次回はもっと頑張ります><;

来年も、”月さえ~”ともども宜しくお願いします。


よいお年を~^^

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