願い━misumi━
茫然とただ月を眺めていた。
メールを待っていたわけではない。
家に帰るのもなんとなく嫌で、時間を潰す。
何もかもが醜く見えて、その中でも一番自分が汚れている気がした。
―どうして、俺はこんな風にしか生きられないんだろう…。
自分に向けられた笑顔も、好意も全て跳ねのけて疑うことしか出来ない。
本当は信じられないんじゃない。人を知りたくないわけじゃない。
ただ、そうすることでより一層自分の“醜さ”を認めるのが怖かった―。
―どうして、人を信じようとするんだろう。
どんな境遇で育てば、彼女―良佳―のようになれるのだろう。深澄は眉を寄せる。
理解が出来ないものをいくら考えても答えはない。
数学のように答えがひとつならば導き出そうとも思うが、これはそんなに簡単なものではないのだ。 人が人を知ることは――あまりにも難しいことだと思えた。
不意に携帯が震える。
深澄はもう何度目かになる、そのメールを開いた。
「……」
―会いたい…会って欲しい―
良佳はまたも“会う”ことを願う。
そこにどれほどの意味があるのか、やはり深澄には分からない。
それでも――。
―俺を、変えられる…??
淡い期待に気持ちが揺らぐ。
このどうしようもない人間を、もしかしたら変える事が出来るのではないかと―。
他人に“期待”なんてしない方が賢明だと知っているのに…。
溜息がひとつ零れる。
誰にも知られないその溜息は、そっと夜風に溶けた。
『良佳。
君はどうしてそんなに頑ななの。
何が君をそうさせるの。
何か理由があるの。
君が僕と出会うことで、
変えられる何かがあるのだとしたら
僕もソレを見てみたい。
良佳、
キミに会いたい―
深澄 』
初めて口にした他人への願い…。
君がくれた機会を無駄にしないために―。
送信ボタンを押して、深澄はもう一度溜息を零す。
なんとなく見上げた空には先ほどと変わらない月が優しく輝いていた。
こんばんわ^^
月さえがようやく急展開(?)を迎えました!!!
とうとう二人が会うんですよ><
50話近くになってようやっと進んでくれました(/_;)
長かった…orz
まだまだココからが正念場!
頑張りますよ^^!!
お付き合いお願いします☆




