再開━yoshika━
良佳は悪戯に過ぎゆく時間を持て余していた。
実際には5分にも満たないほどの時の進みだったが、彼の言葉を待つ彼女には酷く長く感じられる。
答えが返ってくるとは思わない。思えない。
でも、良佳は決意した。深澄を信じる事を。
逃げない―。
ずっと怖かった。
誰かに自分を知られる事が、自分をさらけ出す事が。
狭い狭い世界の中、殻にこもって生きてきた…この十七年間。
誰に認められる事もなく、誰に必要とされるわけでもない。そんな人生を生きてきた。
それが当たり前だった。
そっと目を伏せる。
そこにははるか昔に失くした思い出がある。もう再び戻る事はない、愛されていた記憶。
怖いモノなど何もなかった、全てを信じ受け入れていた幼い頃。
そんな暖かな日々が失われる事など知らずに生きていた無知な自分が蘇る。あの笑顔はもうすでにない。歯車はいつしか狂い、後には何も残らなかった。
信じてきたつもりが、本当は何も信じていなかったのかも知れない。
生まれ変わる事は出来ない。でも…。
私は変わりたい――。
確かにそう思った。
そして……。
「…っつ!?」
携帯が着信を知らせ不意に揺れる。
不安と期待に胸の鼓動は早まり、手が震えた。
―新着メール 1件―
画面に表示される文字を見て、良佳は眉を顰める。涙が出そうだった。
『良佳。
君がどうして再びメールを送ってきたのか、
僕には分からない。
君が伝えたかった詩の意味も―。
君と僕は違う。
分かり合うのは難しい。
全てを解ろうとか、分かって欲しいなんて思わないで。
僕はそれを望まない。
それでも、
僕らは他人だから分かり合える部分もきっとある。
君が言うように“独り”は寂しいのかも知れない。
哀しいのかも知れない。
それを僕に分からせて…。
崎本 深澄 』
メールを読み終えて、良佳は泣いていた。
そこに声はなくて、ただ携帯電話を握りしめ肩を震わせる。
前と変わらない、優しい言葉の深澄がそこにいたから…。
諭すような、慰めるような、丁寧な言葉遣い。良佳はその裏に隠された“明らかな敵意”に気付かない。挑発的な彼の言葉の真意にも…。
―崎本 深澄―
「崎本…み…すみ…」
初めて記された彼の名前。
ただ静かに、今までとは違う関係が始まろうとしていた―。
深澄からの返信に涙する良佳。
そのメールに隠された深澄の敵意には気づかず、彼女は彼を信じ抜く事を決めるが…。
こんにちわ^^
久しぶりの更新です☆
お待たせしてしまって申し訳ありません。
次回更新予定も未定ですが、宜しくお付き合い下さい♪