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空白━misumi━

 気がつけば、いつのまにか空は「紫」に移り変わっていた・・・。


(もうこんな時間か・・・)


 いつものように先生の「手伝い(おつかい)」を済ませ、立ち寄った教室で深澄はふと立ち止まる。

 先程まで資材室での備品のチェックに追われ、外の様子を気にする暇などなかったからか・・・気がつけば5時を回っていた。通りで暗い訳だ。

 そこら辺にあった机に軽く腰掛けると、溜息を一つ吐く・・・妙に艶めかしいため息だった。


(何してんだろ・・・俺)

 

 結局いつものように「優等生」を演じている自分に嫌気がさす。

 いっそ誰か「壊して」くれないだろうか。そんなことを考えてしまう。

 なんといってもこの「優等生」という殻は、内側からだと余りに固くて・・・厚くて、壊せそうにない。でも、誰かが外から壊してくれたら案外簡単に壊れるのではないだろうか。


(壊してどうするんだよ・・・今更)


 沈みゆく太陽が空を「紫」から「濃紺」に染め上げていく。

 その様子をただ眺め、深澄は徐に「ケータイ」を取り出した。そう言えば「返信」がまだだった。

 思い出したかのように画面を開くと、そこにはまだ見ぬ「月」が映し出される。

 待ち受けに映る「月」・・・・不条理の詰まった「月」。そして・・・。


(多分、こいつも「月」にこだわってるんだろうな)


 メールの相手━yoshika━彼女もまた、「月」に囚われた一人のように思えた。

 彼女の書く「詩」には、月が幾度も登場している。しかも、深澄の事を「月」と呼んだのだ。

 

「月・・・ねぇ」


 またも艶めいた溜息と共に呟く。

 その言葉は誰に聞かれるでもなく、闇に溶けていった。

 暫く呆然と空を眺め月を探すが、今日は生憎「新月」らしい。その姿は何処にも見当たらなかった。

 

「帰るか・・・」

 

 自嘲気味に笑うと、深澄は腰を上げる。そのまま鞄を手に取り教室を後にした。

 


 誰もいない廊下を歩き、一人下駄箱で靴を履き替える。

 そんなに遅い時間ではないのに今日はやけに静かで、帰路を辿りながら深澄は「返信」の内容を考えていた。


 予想外だった。

 これだけは言える。

 呆れたとか、軽蔑するとか、そういう感情は今の処湧いていない。

 ただ、浅はかだとは思う。

 そんな得にもならないような「賭け」になんの意味があるのだろうか。理解しろといわれてもできないとも思う。でも・・・。


(その潔さは・・・嫌いじゃない)


 あっさりと自分の馬鹿さ加減を認め、嘘偽りなく告げたであろう「理由」には好感が持てた。たとえそれが、どんなに「馬鹿げた」ことであっても・・・。

 最寄りの駅に着き、電車を待つ。

 人も増え始め、もうすぐこの駅での「帰宅ラッシュ」が始まる。その中でも彼はいつも通りに列に並んでいた。ただ一つ違うのは、片手に握られた「携帯電話」。

 思案顔で口元に手を当てた彼は、なにやら徐に携帯を操作しだす。その指は止まることなく、電車がホームに着く頃には全文を打ち終えていた。


 

 空白の時間を超えて、3通目になる「返信」を・・・・。


 



メールって、ドキドキしませんか??

この相手からの返事を待ってる間!

凄くじれったい様な・・・彩人的には良佳の気持ちが分かります(^_^;)


そして、ようやく3通目!・・・・長い(-_-;)

頑張って書き進めます!

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