メール━yoshika━
その日の「朝」はいつもと違って見えた・・。
カーテン越しに差し込む「日差し」や、部屋の色。それら全てが、いつもより少しだけ「優しく」見える。不思議だ。
(もう・・朝か・・・)
いつもなら浅い眠りを繰り返し、気だるい朝陽に億劫に目覚めるのに、今日は良く眠れた。それこそいつ眠ったのかさえ覚えていないほどの「熟睡」だった。
時間が短く感じたのは、きっと眠りが深かったせい。それでも妙にすっきりしている。これも「熟睡」のおかげだと思った。
今日は何となく良い事がありそうだ。そんな根拠の無い期待に胸を弾ませ良佳は勢いよくベットから目覚める。
「おはよう」
カーテンを開けて、呟く。
応える人のいない室内には静寂があり、暖かな日差しが良佳を照らすのみだ。
良佳は光の差しこんで明るくなった室内を見回し、壁にかけられたカレンダーに目が止まる。今日で5日目。謹慎も、もうすぐ解ける。
(後2日・・・今日を入れて3日か。)
クローゼットから洋服を取り出して、手早く着替えると不意に白い紙が目に入った。あの日手渡されたメモ。「コウ」の、連絡先。
連絡したい気持ち半分、したくない気持ち半分。
こんな時、どうしたら良いのかが分からない。彼はどうしてコレを私に渡したのだろうか。それも分からない。
(彼女・・・いるって言ったじゃん・・・)
彼女がいるのに他の女と遊ぶのはいけない事ではないのだろうか。それとも、世の中の人はそういう事は割り切って付き合っているのだろうか。
いくら考えても、そこに答えはでない。でも・・・。
「私なら、ヤだな・・・」
もしも自分が「彼女」なら、それは哀しいし・・・淋しいと思った。
きっと、多くの人は友達は「友達」、恋人は「恋人」として自由にメールしたり、遊んだりするのだろう。それも分かる。分かるけど・・・・。
「やっぱり、淋しいよ・・・」
連絡はしない。もう一度彼に会えば、またあの楽しい時を過ごせるのかも知れないと思う。でも、自分自身がよく分からない気持ちのまま、彼に会う事は出来ない。今は会いたくない。
良佳は決意すると、机の上に置いてあるオルゴールの蓋を開け、その中にメモをしまった。
本音は・・・「会いたい」。
また揺れそうになる気持ちを抑え、ベットに置きっぱなしになっていた携帯に手を伸ばす。新着メール1件。謹慎も5日目になれば、そろそろ嫌がらせのメールもネタが尽きてきたらしい。最も、直接反応が見られないメールじゃ、面白くないと思っただけかも知れないが。
「1件・・・誰からだろ・・」
少し可笑しそうに目を細めると、良佳はそのメールを開く。
そして・・・。
「コレ・・・・でもっ」
その意外なメールの中身を見て言葉を飲んだ。送り主の処には、確かにあの「アドレス」が載っている。
今まで一度も返って来た事のない、送り続けるだけの相手。良佳が考えて、デタラメに打ち込んだアドレス・・・・その相手からの初めての返信。
日差しの差し込む部屋の中、良佳は携帯を見つめ動けずにいた・・・。
楽しかった時を思いながら「コウ」に連絡しないと決めた良佳。
そして、良佳の元に届いた一件のメール。
届くはずのなかった「気持ち」が、届いた・・・・。
このメールが何を現すのか・・・メールの中身とは!?
次回、乞うご期待です(^_^;)