戸惑い━misumi━
暗い、暗い部屋の中。
彼はただ窓から見える月だけを眺めていた。
(なんてクダラナイ人生なんだ・・・)
ただ茫然とドアに寄りかかり、深澄は自嘲の笑みを漏らす。
普通の家庭ならば子供の意思は尊重され、こんな理不尽な思いをする事はないのだろうか。それとも凝り固まった両親を持ったが故の事なのか・・・。
深澄にとって両親は尊敬の対象でも、愛情を持つべき相手でもない。ただ自分を縛り付ける存在。自分の「自由」や「意思」を害するだけの人々。
(「尊敬」・・・してたはずなんだけどな・・)
「尊敬」していたと思っていた。医者なんて職業をやっている事も、真面目に働き続けている事も。でも、自分に嘘はつけない。
彼は酷く「孤独」を欲している。それこそが全てだと言うように、何者にも害されない孤独を。
不意に携帯電話を取り出し、メール画面を開く。
そこには未開封のメールが一つ、名前ではなくアドレスで表示されている。深澄の心をかき乱すメール。深澄はそのまま携帯を閉じ、苛立たしげに前髪を掴む。
先程までは確かに、気分が良かったのに・・・今はもう最悪の状態だ。
何もしたくない。何も考えたくない。もういっそ・・・このまま死ねたら良いのに。
(自分の人生なんかじゃない・・・)
そう思って、そこでまた自嘲の笑みを漏らす。自分自身に嫌気がさした。
「・・・誰の為の人生だよ・・・」
そっと呟く。そのまま床に倒れこむと、深澄は仰向けになり天井を見上げた。
何もかもが自由にならない。生き方も、意志も、親も、学校も・・・・「優等生」なんかを演じている自分さえも。
━アナタハ、シアワセデスカ━
またあの言葉が頭を過る。酷く泣きたくなった。
もしも今、家の中に誰もいなかったら・・・・カーテンが閉まっていたら、声を上げてこの気持ちを吐き出す事が出来たのだろうか。暴れて、何もかもを滅茶苦茶にして・・・・。
(・・・無理だな)
例え誰もいなくても、誰にも見られていなくても・・・きっとそんな惨めな事は出来ないと思う。
酷く空しい。酷く・・・・寂しく感じた。
窓の向こうに見える月を見上げ、深澄は目を細める。
あの語りかける事のない月だけが、深澄を優しく見つめ・・・彼はその月灯に包まれて、そっと目を閉じた。
前回に引き続き、暗くて重いみっちゃん(深澄)です(^_^;)
彼は感情の変化が目まぐるしくて・・・忙しいですね(笑)
何だかんだ思考錯誤しながら「月さえ~」も25話まで来ました☆
お付き合いして(読んで)下さっている方、本当にありがとうございます(^^ゞ
まだまだ続きますよ~。